「明るい高齢者雇用」

第8回 資産の目減り防げ―社会保障崩壊は目前―

(「週刊 労働新聞」第2154号・1997年5月26日掲載)

※当時の掲載文に一部加筆補正をしております。

 

  Q、高齢者雇用にやりがいのある仕事という概念はありますか。(前回から続く)

  A、やりがいのある仕事というのは、実際は主観の問題です。日本と違い外見を気にしない国なので、道路の掃除でもその人がよいと思っていれば、やりがいのある仕事ではないでしょうか。責任を持たせてもらえるかどうかの問題で、やりがいのある、ない、が決まるのでしたら、その考え方の基本はこちらにはないと言えましょう。本来、歳を取り、経験がある人だと責任のある、またはやりがいのある仕事を持ちたがるのが日本人だとすれば、こちらの人は、「今まで責任のある職に就いて仕事をしてきたのだから、そろそろ勘弁してくれよ」の方ではないでしょうか。

 

 個人の確立が日本より進んでいることの現れなのであろうか。企業のアウトプレースメント事情に詳しい専門家によれば、個人の確立が未熟な中高年は特に大企業に多いという。自分がいざアウトプレースメントの対象となっても、とかく大手企業にいたことを過大評価しがちである。数十年ぶりに面接される立場であるのに本人の意識が切り替わっておらず、面接時にもらった名刺をクルクル回したり、ふん反り返る等、いまだに自分が判定する側のつもりでいるという、笑えない話すらある。

 

  Q、高齢者は子供との関係をどう考えているのでしょうか。

  A、極端な例で、ある人と話をしていた時にこういうことを言いました。「株の配当と年金とで月々約6,000ドル収入があるし、死んだら遺産として子供たちに何百万ドルと行くはずだから、その遺産を目当てに、子供達も自分の世話をしっかり見てくれるだろうよ。遺言なんていつでも変えられるからね。この自分の財産が、自分が子供達に如何に良くされるかの保険だよ」と。

 

 平成6年厚生省発表の「国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯の平均家計支出額は月18.2万(平成6年5月中の家計上の支出金額)に対し年間所得は332.2万円なので、今の高齢者はまだそこそこ余裕がある。しかし団塊の世代については、従来国が面倒をみてきた社会保障制度の諸々が維持継続できる数ではなく、制度そのものが一変してしまう。既に始まった年金支給開始年齢の引き上げはその確かな前兆であり、いわば“これから何が起こってもおかしくない”と思っていた方がいいような状況である。「恒産なくして恒心なし」という言葉があるが、高齢者が資産を目減りさせないという意味において収入の場を獲得することは、恒産・更新にも通じることである。アメリカは日本よりも多少ましではあるが、まだ低金利が続いている。従って引退した人達は株に投資してより有利な利回りを稼いでいるし、ベビーブーマーたちも引退後のことを考えて株やミューチュアルファンド(オープンエンド型投資信託〔請求により随時解約ができるファンド]のこと)に投資している。アメリカの株が毎日史上最高値を更新しているのはこのためと言われている。

 

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