2019年12月のアーカイブ

 

第12回 宇宙からの視点が求められるこれからの時代に向けて

 

あすか人事コンサルティング
代表 太田 正孝

 

 令和元年も師走を迎えあっという間に終えようとしています。人は年齢を重ねるにつれ時間の進み方が早くなると言われていますので近年はなおさらそのように感じます。脳に記憶できる総量がかなり少なくなってきているので、記憶の「パラパラ漫画」のコマ数が減り、再生すると早送りになるようです。高井先生はじめ著名人のなかには高齢でも驚異的な記憶力を維持している方がおられるようですが多くの凡人は早送り型になっていきます。

 

 時間のことを考える時、思い浮かぶのはやはりアインシュタインの時間と空間を一体で考える「時空」のことです。それを思いながら晴れた夜空を見上げると無限の星々が瞬いていますが、夫々に異なる時代の姿なので「あの星はもう消滅しているのではないか」と想像したりします。

 

 冬の夜空ではオリオン座がよく見えます。四角い輪郭の左上はベテルギウスというオレンジ色に輝く星ですが地球から640光年余の距離にあります。超々巨大星で太陽の位置に置くと仮定すればベテルギウスの表面は地球を遙かに超えて火星の軌道あたりになる大きさで想像を絶します。近年の観測では既に球体が崩れて宇宙時間でいう近々のうちに爆発(超新星爆発)するといわれています。今見えている姿は約640年前のものですので日本でいえば室町時代になります。もし、ベテルギウスの周辺の惑星に「ベテル人」がいたとして瞬間移動で地球にきたら計算上では足利義満将軍に会えることになります。

 宇宙規模で時空(空間と時間)を考えると普段何気なくすごしている現在という瞬間も厳密にいえば一人一人違っているということに気付きます。思考訓練上では宇宙空間や高高度を飛行している人は地上に比べて時間が早く進んでいるのでその分早く年をとっていると言うわけです。もちろん原子時計でようやく分かるレベルなので人の寿命とは直接関係ないのですが、厳密にいえば時間の進み方は人それぞれで違うということになります。

 

 人は自らの立ち位置を主張しながら日々生活していますが、周りの人達とうまくいかないことが多いのが現実です。その理由として育った時代や環境、生まれもった性格の違いからと言われることも多いのですが、もしかしたら同じ時間・同じ場面を共有してきたとしても見ていた景色が異なっていたからかもしれません。だとすると「時空」を共有できない宿命をもつ人間として人を理解する能力は「自分の視点は一旦脇に置いておいて相手の視点での時間・景色をどの程度想像できるか」で評価できると思います。自分の視点視座から見えるもののみが絶対正しいと信じている人は大げさにいえば宇宙の理にも反していると言えそうです。

 

 かつて部下を預かる立場になったときに心がけたのは彼らと一緒により高い視点を身につけて成長することでした。部下だった頃、尊敬する上司から言われてきたことを真似たわけです。地面にへばりついていないで鳥のように鳥瞰しろ、飛行機から眺めて地平をみろ、人工衛星から国境のない地球をみろ、さらには月から眺めたつもりで星としての地球をみろ、と偉そうに言ってました。私自身宇宙好きだったこともありついつい熱気を帯びて話すので一部のリアクションとして「うちの上司はいつも宇宙がどうのこうのと変なことを長々と説教するので大変・・・」というのが耳に入っていました。話しの中で「UFO(未確認飛行物体)」のことも言っていたので変な人とみられても当然だったのですが、めげることなくこのスタイルを続けてきました。その後もあちこちで自己流に宇宙とUFOのことを話していたので「宇宙とUFO」についての「楽しい講演」を頼まれたこともあります。勿論オカルト的なことではなく科学に基づいて・・・。

 よくUFOと宇宙人はイコールと扱われますが分けて考えないといけません。ただ世界中のUFO目撃例の5%はどうしても合理的な説明がつかないようなので宇宙人の存在は完全否定できないまま残っています。ここに空想を楽しむ余地があるわけです。

 この妙な例ではありましたが世の中の多くの事象が科学的合理的に説明できるものばかりでないにも関わらず、昨今の世相は自明な事柄でも重箱の隅をつつくがごとく攻撃するなど余裕のない窮屈な社会になってきたように思います。IoT、AIの時代だからこそ人間的な柔らかさからくる多様な考え方を相互に認め合うことがより大事になっていると思います。高井先生が常々主張され行動基準とされているように時代のキーワードは「多様性の共有と寛容」しかないと思っています。

 

 ITに関する分野で成功した人の多くは何故か宇宙・航空に関連する事業に夢中です。

 ビルゲイツ、ブランソン、イーロンマスク、ザッカーバーク、ベゾスなどの世界的な有名人、それに日本ではホリエさんなど皆さん民間の力で宇宙開発をやろうとされています。

  職業柄この人達やその協力者・社員達はどのような働き方をしているのかが気になります。おそらく共通の夢を追っているのでしょうから彼らは労働時間を考えるよりも自らの夢の実現のために楽しみながら仕事をしていると思われます。人は自分のやりたいことや何か新しいチャレンジをしたい場面では寝食を忘れて熱中してしまいがちですがこれが楽しい人をも時間で縛るのはどうかと思います。 

 昨今、働き方改革が政治主導で進められていますがその大きな目玉の一つは残業規制のようです。人事コンサルタントとして残業は一律に法で細かく規制をかけるようなものではないように思います。仕事の種類が多岐にわたる現代ではこのような網掛けは当然うまく適合しない職種も多くあるので副作用も無視できないと思います。

 

 ことの本筋は働く人の希望を尊重してその人の意欲と能力に応じた仕事に就け、かつ円滑に移動できるようにする仕組みと定着にあるのは明らかです。高齢者や女性の登用、外国人労働力の拡大など歴史上初経験の事情も加わって新施策も必要になっています。

この有効な考え方として、何度か述べてきたように諏訪康雄法政大名誉教授の「キャリア権」の確立と、それに伴って仕事と人材の需給バランスを調整する人材マーケットの整備が必要です。(真新しいことではなく先進国では普通に行われています)

 

 高井先生はかねてより日本の将来の姿を正確にとらえそれに対応していくための避けて通れない道を示すなかでこの「キャリア権の法制化」に主導的に取り組んでおられます。

 将来のことを具体的に思い浮かべるのは簡単ではないのですが、過去現在という時の流れの「パラパラ漫画」を虚心坦懐に宇宙からの視点で眺めれば将来のために今やるべきことが浮かぶのではないかと思います。過去現在に過度にとらわれていると「思考の時空」は拡がらないことを肝に銘じたいものです。

令和2年は現時点では未来です。現在は直ちに過去になりその過去はもう存在しないのですから、年末は未来に集中してどう過ごしていくか考えたいと思っているところです。

 

 これで12回目、最終回になった私の高井先生のブログ「無用の用」への寄稿は終了です。この機会を与えてくださった高井先生、事務所の方々に感謝申しあげます。また拙い文をご覧くださった皆様には改めて御礼申しあげます。どうもありがとうございました。

終わり

 

「明るい高齢者雇用」

第9回 若年者が圧倒的―シリコンバレー 20年間で急成長―

(「週刊 労働新聞」第2155号・1997年6月2日掲載)

 

 私は、昨年12月20日から2泊4日でシリコンバレーに行った。それは著名なシリコンバレーの実像に触れることが目的であった。アメリカで経済的に最も活発であるというシリコンバレーの様相を見ながら、高齢者の雇用問題の実情を尋ねたかったからである。しかし、そこではそもそも高齢者の姿は見かけられなかった。

 S-MOS SYSTEMSの業務部長である三木和一郎氏にお会いした。三木氏は28年前に気の弱い自分を鍛えるために、2ヵ月分の生活費を持って、米国のマサチューセッツ州ボストンにある大学に留学、渡米した。4年間苦労の連続であったが、無事大学を卒業。その後、学生中にアルバイトや勉学で時間がなく、“見ることのできなかったアメリカを見るため”に米国に留まった。

 最初の10年間、3度転職した。米国企業で働き、特に興味のあったアメリカの底辺で生活をしている人達をより良く知るために、その人達との交流を、時間が許す限りした。

 1983年にカリフォルニア州に移住し、現在はコンピューターのメッカといわれるシリコンバレーで、半導体を販売する日系企業(S-MOS)に勤務している。アメリカ人の奥様と結婚され、シリコンバレーの生誕の地である、スタンフォード大学のある町、パロアルトで家族4人と暮らしている。

 様々なことを勉強されている三木氏から教えられることが多かったが、この度その三木氏に高齢者雇用問題について、以下のご報告を頂いた次第である。ちなみにS-MOSは、セイコーエプソンの子会社である。

 『まず第一に、シリコンバレーでは高齢者が働いているのをあまり見かけません。シリコンバレーは1980年代に脚光を浴び、ここに移ってきた会社、ここからスタートした会社も若いエンジニアが2、3人で始めた会社が多く、会社で仕事に従事しているエンジニアは、やはり、若い年齢層が圧倒的に多いのです。人事部長に聞いてみたところ、わが社では、60歳以上の人は2名(総従業員約250名)しかいないそうです。

 もともと、シリコンバレーは、ほとんどが農園か畑でありましたが、次から次へとビルが建ち、ここ20年くらいで大きな町になりました。シリコンバレーは、私が住んでいるパロアルトという市からサンノゼ市までの小さな平野を指し、狭い地域に何千というハイテクの会社がひしめいています(日本的感覚からすると「散在している」という表現が適切でしょう)。また、ここはアメリカでも1位か2位に物価が高い土地であることも有名です。そのせいか、そもそもあまり高齢者の人達をみかけません。見かけても、中流以上の人か、逆に経済的に困っている人達の2種類の人が多く、いわゆる中流の老人の姿はほとんど見られません。

 例えば私が住んでいる家は、1947年に建てられたものですが、当初8,000ドルから1万3,000ドルで売り出されたこれらの家は、現在40万ドルから50万ドルするそうです。アメリカでは金利が高いため、働いているうちはローンを支払えますが、仕事を辞めますとローンを支払うことができず、家を維持することができなくなってしまいます』。

 

 

 

 

 前々回より、若手中国人の米留学生による米国所感を連載しております。

 

第3回 アメリカの教育

~米国教育の実態~

 

 「日本の教育はアメリカと比べたら」と高々に語られることをしばし見かける。確かに毎年発表される学術論文の数はアメリカの大学が日本のそれをはるかに超えており、ハーバード、スタンフォードといったトップレベルの大学の華やかな話がよく比較対象に出される。しかし、実態は多くの日本人の想像とかけ離れており、教育は現在アメリカが抱える最も大きな問題のひとつである。

 まず、米大学の学費は年々インフレしている。その背景として、国からの支援や公金がニーズに対して圧倒的に足りてないことがある。その上、国内外から生徒を勧誘している多くの米大学はインフラ投資に力を入れていることも要因の一つとして加わる。私が接してきたアメリカの大学生は国際生徒を除くほぼ全員が学費による借金を抱えていた。特に印象的だったのが昼に働き、隙間時間で単位を取りに大学にくる26歳の生徒がいたことだ。表向きにはダイバーシティが学園生活の豊かさにつながることを掲げている米トップ大学は、富裕層しか許容できない額の学費を請求している矛盾を抱えている。

 さらに国外からは盲点になるのがアメリカの高等教育だ。ブッシュ元大統領政権時、2002年からアメリカの公教育に導入されたNo Child Left Behind Act(通称NCLB法)はその名の通り、学力格差が生まれることを防ぐために発案された「どの子も置き去りにしない」ことを主旨にした政策である。NCLB法は共通テストの比重を重くし、生徒がACT (American College Test。米国中部の大学を中心に適性試験として採用)やSAT(Scholastic Assessment Test。米国の各大学で合否基準として広く採用)などの標準テスト*で高得点を取れたか否で学校のパフォーマンスが評価される。その結果、一年間通して学校で学ぶ授業内容が軽視され、生徒は共通テストで点数を取るための勉強をする傾向になってしまった。その為、国家単位で学力は低下し、比重の重い大学入試共通テストなどで不正を働く生徒が一定数いることが一時期問題となった。NCLB法は2015年に撤廃されたが、1世代を影響したこの制度はアメリカ社会に醜い爪痕を残したことで語り継がれるだろう。

*米国の大学進学には、SATかACTのいずれかのテストの点数の提出が義務づけられている。

 

 

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第12回】社員の人事権と神棚意思決定(1994年7月6日)

 

 

 社長の支配力の原点は人事権だ。人事権とは、どんな仕事を担当させるかということ。仕事を割り付ける権利、これを人事権という。その決定権を社長が持っている。

 仕事を割り付けるとは、人間性の発揚にかかわってくる。つまり人事権とは、どの程度人間を人間にするか、人間になるかを規定することである。だから社長は、ゆめゆめ人事権を手放してはいけない。

 「専務、今度の役員昇格候補は誰がいいですか」、「営業の加藤がいいと思います」。「常務、人事担当としての意見を聞かせてください」、「開発にいる佐藤を推薦します」。このやりとりから社長は、加藤と佐藤が候補者であるという社内的な認識があると理解する。

 専務はその瞬間、加藤に対して「君を推薦しておいた。次期役員としてがんばってくれたまえ」と言う。それは励ましよりも自分の勢力を張ろうとする目的があるわけだ。一方、常務は佐藤に向かって「専務は加藤を推したけれども、僕は君こそと言っておいたよ」と言う。

 その結果としてこの人事がそのまま決まると、専務が加藤を決め、常務が佐藤を決めたことになる。社長の人事権は霞んでしまう。

 だから社長としては、意見は聞かなければならないが、どうやって他人の意見の介入を遮断するかが課題となるわけだ。この問題に対して私が編み出した方法が「神棚意思決定法」である。

 まず社長が直筆で書く。「第○期株主総会において新たに役員に迎える者、加藤一郎、佐藤治郎」と書く。その内容を秘して3日間神棚にあげておく。そのことを社内に知らしめる。即ち「役員候補者の名は神棚にあるよ」とリークすることだ。それを3日後にみんなの前で読みあげる。そうすると社長と神様が合議のうえで決めたということになる。これが日本人の感覚に極めてふさわしい社長の支配力確保表現の方法になる。

 ここで大事なのは「書くこと」と「神棚に供える」こと。神棚がなければ金庫に入れる。入れてあることを社内に知らしめておく。社長の人事権犯すべからず。社長が独自に決定したという世界を演出することだ。

 

 

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