2020年1月のアーカイブ

 

第1回 『朝10時までに仕事は片づける』(1)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生には、7冊の書籍をかんき出版から発行させていただきました。
 そのなかにはベストセラーになり、それがさらに図解のムック本になったものや、新書スタイルのポケット本になったものまであり、発行部数は累計41.1万部になっています。
 またこれらの書籍は、他の出版社から文庫本や新書になり、さらに多くの方に読まれていることになるでしょう。

 これらの本をもとに【高井語録】を集めてみます。

 『朝10時までに仕事は片づける』は、2002年12月に先生がかんき出版で最初に書かれた本で、多くのビジネスパーソンから支持されベストセラーになりました。
 この本の企画は、必然的に生まれたものとも言えます。それは私が高井先生の早朝出勤を知り、素直に強い興味をしめしたからです。なぜ朝6時に出勤するようになったのか? 時間の使い方をどう変えたのか? その結果、どのようなメリットがあったのか? などを書いてもらおうと……。

 著者のことばや文章を引用しながら進めていきます。

 

  • 優秀な人と同じ行動特性を備えた人は、成果を上げる確率が高い  

 高井先生も、30歳くらいまでは夜型人間だったという。ところがある人との出会いで生活態度を一変させることになります。
 「土光敏夫さんに出会ってショックを受けた。土光さんは、業績が悪化した東芝の再建を依頼され社長に就任、一年で再建に成功し、その後、経団連の会長などをされた人です。朝7時20分、土光さんの事務所へ書類をもらいに訪問したら、いつも朝6時半には出勤しているとのことだった。そんな刺激を受け、土光さんより若い自分は朝6時ころには事務所に出るようにした。その後も、多くの経営者・経営幹部の方と接してきて、学んだことがある。それは一流といわれ実績を上げている人ほど早く出社して、朝10時までには一仕事や大仕事を終わらせているということです」

 

  • 仕事の生産性と人間らしい生き方を両立させるために、朝を有効活用する

 「ビジネスパーソンにとって重要なことは、いかに上手に時間を管理するか、ムダな時間を整理するか、ということです。同じ時間でも、私がとくに注目しているのは、朝の時間です。わたしはこの概念を、【モーニング・マネジメント】と呼んで、親しいビジネスパーソンや仲間たちと実践しています。つまり、長年の悪しきビジネススタイルを打破し、新しいビジネス&ライフスタイルを確立するーーを提唱しているのです」

 

  • 普段からしたいと思っていることはスキマ時間に、「いますぐ」を心がける

 「ビジネスパーソンにとって、美しいものを観ることは右脳にとっても有効です。美術鑑賞などは、暇ができたらーーと考えていたらいつまで経ってもできないことは当たり前。商談などのスケジュールを決めたとき、訪問先の途中に美術館などがあれば、ちょっと立ち寄ることをお勧めします。私の見方は独特で、まず部屋の中央に立ってぐるりと見回す。印象に残った絵を1つだけ探し鑑賞する。その基準は、この部屋のなかにあるどれか1点、あなたにあげると言われたら、どの絵をもらおうとするかな? その絵が決まったら、近づいてじっくり見る。同じことを各部屋で繰り返して出てくる。これだったら15分もあれば見終わる。これを繰り返しているうちに鑑賞眼が養われます。この場合も留意したいことは、所要時間です」

 

  • 時間は先回りして待ち伏せする必要がある

 「人を待たせて急いでいるときの時間は早く感じ、逆に、人を待っているときの時間は遅く感じる。ここに時間の秘密があり、時間の使い方のコツがある。つまり、時間は平等ではなく、追われると時間を奪われる。待ち伏せするとは、全体のなかから、今という時間を考えることです。新幹線で大阪へ行くとして車内での2時間40分にできることを実行するとき、意識はすでに2時間40分先まで到達しており、そこから逆算をして何かをしています。これが待ち伏せした使い方です。一流人物や成功者たちは、こういう意識で時間を有効有益にし、時間に追われることがなくなります」

 

  • 「すぐやらない」「先送り」「引き伸ばし」を無くす

「この原因は3つあります。

 ①自分の置かれている状況に危機意識がない。怠け者である
  やるべき仕事は、すぐしなければ変化とスピードの時代には致命傷になりかねない

 ②優先順位(プライオリティ)がつけられない
  自分の目的が明確になっていないので、最初にすべきことが見えていない

 ③判断基準が作れない。もっといい方法があるかもしれないと迷ってしまう
  私が選択肢を決める際の参考にするのが、正か邪・和か戦・勝か敗・損か得です

 これでも悩む人は、原点にもどること。原点とは幼少のころ、親によく言われた『人様に迷惑かけるんじゃないよ』でもいいし、『自分のやりたいことをやりなさい』でもいい。企業であれば『お客様の満足を第一に考える』でもいい。その一点を基準にして考えると、悩んでいたことがすーっと見えてくる」

 

 本書が出版されてから10年後の2013年10月、伊藤忠商事㈱が「朝型勤務」制度を導入しました。20時以降の残業を無くし、朝5時からの出社を認め、夜の割増残業手当と同じ率で早朝手当を支給。8時前に始業した人には軽い朝食を用意して応援することを実施。それでもトータルの経費は削減され、今は約半数の社員が朝型勤務になっているという。結果、会議は夕方がなくなり朝早くの時間に代わったそうです。

 さらに「朝型勤務」の導入のほかに、「110運動」を徹底した。これは「夜の会食や飲み会は、
1次会だけで10時までに終わる」という改革で、これにより夜遅くまで飲むという習慣がかなり減少したそうです。

 その結果、「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」「夜早く帰ることで、家族との時間やビデオを見る時間が持て、リフレッシュにもつながる」と実感する社員が増えているといいます。

 もちろん朝型勤務の効果だけではないだろうが、下記の数字が示すように、伊藤忠の業績も極めて順調に成長している。株価や従業員一人当たり経常利益にも反映しています。

 

  伊藤忠 三菱商事 三井物産 丸紅
株価  2011年12月30日(円) 782.0  2000.0  1250.0 469.0
   ※2013年12月30日(円) 1299.0 1900.0 1465.0  756.0
    2019年12月30日(円) 2534.5 2900.0  1950.0  810.0

    2011年対比(%)  324% 145% 156% 172%
従業員1人当たりの経常利益(万円) 7166 8000 3197 3685

 

(※伊藤忠が「朝型勤務」を始めた年)

 

 まず従業員が健康的になり笑顔になり、クリアなクリエイティブな頭で働くことで、生産性を上げ、顧客にも会社にも、三方よしの結果を生むことの一因になっていると考えられます。
 個人でも企業単位でも、「朝型勤務」がいろいろな面で有効なことを示している例といえます。会社も施策面でバックアップすることが求められる時代になってきたのでしょう。

 

                                             次回は2月28日(金)に掲載いたします。     

 

「明るい高齢者雇用」

第10回 解雇に恐怖感も―アメリカ 難しい高齢再就職―

(「週刊 労働新聞」第2156号・1997年6月9日掲載)

 

 『20年程前までは、現役時代の70~75%の収入を死ぬまで退職金として支給するとう退職年金制度が多くの大企業にありましたが、現在はそのような退職金制度を維持している企業はほとんどありません。ちなみに高齢者は、個人の貯金、株の配当、ソーシャルセキュリティーという税金の内から積み立てた年金の3本立てで生活しています。

 しかし、これらの収入よりシリコンバレーのインフレーションが高いので、現役時代の生活ができなくなり、高齢者は家を売り、アリゾナやフロリダなどの物価の安い州、または税金が安い州へ移住します。例えば50万ドル位のシリコンバレーの家は、アリゾナ州では8万ドル位で購入出来ます。約6分の1で家を購入出来るわけです。中流階級で技術的バックグラウンドの無い人(もともと文科系の人でしょうが)は、年と共に生活を維持することが苦しくなってくると思います。この様な人達が、年をとってシリコンバレー時代の生活を維持するために物価の高いカリフォルニアから物価の安い他州に移り、シリコンバレー時代同様の生活を維持するわけです』(前回からの続き)。

 高齢者雇用の実像に迫るとすれば、その第一は、高齢者子用の場が少ないと共に、高齢者雇用における賃金が極めて低いという事実が挙げられる。その結果として、高物価の所では高齢者は生活出来なくなるということである。小生も8年前にアリゾナのツーソンに赴いたことがある。そこでは真に物価が安く600万~700万円でゴルフ場に面した一戸建ての家が買えたが、今でも多分そうであろう。生活コストの安い土地へ移住することにより生活をエンジョイすることが重要であるが、日本においては、そのような地域があるのかすらも疑問があるところである。

 『アメリカには、終身雇用というものはありません。歳をとっていきますと、いつ解雇されるかということが日々の生活の中で、恐怖としてあるようです。企業も、高齢者が多くなってくると、給料の高い高齢者を対象に、早期退職を薦めてきます。ゴールデン・アンブレラといってかなり良い条件で会社を辞めてもらうプランを作ります。45歳位の人は、まだ、次の仕事を見つけるチャンスがあるので早期退職をしますが、60歳近くなりますと、次の仕事を見つけるチャンスは難しいので、“辞めさせられる”まで会社に残ります。

 シリコンバレーの環境の中で、高齢者が仕事を見つけられる確率は非常に低いと思われます。シニアシチズン・エンプロイメント・センターという就職斡旋機関で仕事を斡旋してもらった場合でも、時間給が5~6ドル(日本円で600~700円)位の仕事しか無いようです。もともとアメリカは年寄りを尊ぶというカルチャーはありません』。

 アメリカでは高齢者も自立を迫られるが、それは即ち家族の崩壊を意味しているといえる。日本の社会もその様相を呈し始めているが、果たしてそれで良いのか議論されよう。高齢者が増加する一方で自立できる基盤、即ち雇用の場がないとすれば、改めて家族主義の復活が社会秩序の安定を確保する意味から要請されてくることになろう。

 

 

引き続き若手中国人の米留学生による米国所感を連載いたします。

 

第4回 アメリカの音楽
~90年代ヒップホップ文化とトミーヒルフィガー~

 

 米国の音楽産業は黒人と白人、メインストリームとサブカルチャー、そして自由と弾圧など摩擦と対立によって築き上げられたものであることは言うまでもないだろう。白人のエリート社会の象徴だったマンハッタンから押し出され、その郊外にあるハーレムという小さな地域でブルースやジャズ、そしてヒップホップの人気に火が付いたのは米音楽史でも有名な話だ。今回はその黒人音楽ブーム中に起きたアパレル会社のトミーヒルフィガー社への影響について書いていこうと思う。

 90年代のアメリカは英国出身のプロテスタントが経済界や政界でのエリート層を支配していた。ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントの頭文字をとって、WASPという略称で呼ばれていた彼らは、集団内での結婚や縁故採用を推奨していたことから長年米国の支配層に君臨し続けていた。裕福な家庭で育った白人の若者は「プレパラトリー・スクール」というお金持ちの子息が通う名門私立校に通い、ラルフローレンやトミーヒルフィガーのような上質な服を着崩すスタイルが流行っていた。このスタイルはプレッピースタイルと呼ばれ、貧困層の子供たちからは羨望の目で見られていた。

 そんな社会的背景の一方で、都市部の若者の間ではヒップホップブームに火が付いていた。Jay-ZやSnoop Doggなど、ヒップホップ業界からは白人の子供からも親しまれるスターが排出されていた。この時彼らは音楽のみにメッセージ性を持たせるだけでなく、着る服からでも何かメッセージを伝えられないかと模索していた。そして採用されたのが前述のプレッピースタイルであり、人気のラッパー達は凝り固まったブランドや見た目に対するイメージを崩すために、好んでトミーヒルフィガーの服を着てメディアへの露出を増やしていた。黒人のラッパーが富裕層の象徴ともいえる衣服を身に纏った姿は多くの者にとって刺激的だった。貧困層出身のラッパーでも裕福になれるアメリカンドリームを体現していた彼らは、多くの貧しい若者に夢を与え、ブランドの名が爆発的に広まっていく中、トミーヒルフィガーの売上は増加した。当然、白人エリート層からは批判的な声が多かったが、トミーヒルフィガーはブランドのルーツを捨て、ブームに乗ることを決意した。その後、トミーヒルフィガーは大胆に自社の広告に黒人のラッパーを起用した。結果として、90年代にトミーヒルフィガーは国際的にも知られるブランドとなり、ヒップホップブームのおかげでグローバルに展開する大企業となった。

 

注:トミーヒルフィガー…ニューヨーク州出身のファッションデザイナー、トミー・ヒルフィガーが興したファッションブランド。

注:Jay-Z…ニューヨーク州ブルックリン出身のラッパー・プロデューサー・起業家。グラミー賞の常連で、最も偉大なラッパーの一人と評される。妻は歌手のbeyonce。代表曲「Empire State of Mind」は米ビルボードのシングルチャートで5週連続1位となるなど、世界的なヒットを記録した。

注:Snoop Dogg…カリフォルニア州出身のラッパー。これまで発売した楽曲のセールスは全世界で3500万枚にも上る。俳優としても活動しており、数多くの映画に出演している。

 

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第13回】役員の退任規定には「社長が推薦し」の一項を入れよ(1994年9月28日)

 

 人事権は社長の特権である。新任役員の選任についても、前項の「神棚意思決定」で指摘したように、他人の意見は聞いてもそれに左右されないことが大切である。最終決定はあくまでも社長が独自に決めたというプロセスを演出することが非常に重要。

 さて、社会も企業も実力主義が色濃く反映するようになったが故に、協調性、連帯感、助け合いが大切だ。企業は組織社会だからである。そこで役員の選任にあたっては、能力だけでなく、ことのほか人間性を尊ぶ心構えが必要である。正確的に偏った人物を選んではならない。実力主義が言われるだけに、能力については多くを語られているが、それだけに人間性、とくに社長との信頼関係が問われなければならない。

 逆に言えば、社長自ら全役員と信任関係に立てるよう努力研鑽することが大切だ。「社長はやり手だが人間的にはイヤ味だ」ではいけない。

 役員の選任にあたって社長の支配力を表現するポイントは、役員に就任するには「社長が推薦し、株主総会にはかり、その議決を得なければならない」という項目を役員規定に明文化すること。「社長が推薦し」は商法の規定にはないが、役員規定として入れる。

 そして新任役員を発表するときは、まず神棚に祈って、次に「中には勇退していただく方もあるが、しかしこれは、わが社の展望を見据えた末の経営責任者としての私の決断であるので、ご了承いただきたい」と前置きして進めることが大切である。

 

 

 

今回より、高井・岡芹法律事務所 上海代表処 顧問・中国律師である沈佳歓先生に、中国の最新諸事情についてご寄稿いただきます。連載は1年間の予定です。

 

「中国の最新諸事情」
第1回 秦の始皇帝と香港民主化デモ

 

 最近、出版関連の顧客からある漫画を紹介された。中国の歴史を描いた傑作で、是非読んでみて欲しいと言われた。そう、原泰久による日本の漫画作品“キングダム”であった。秦の始皇帝が難局を乗り切っていき、古代中国を統一し、初の帝国を建設する成長物語である。

 実際、読んでみたところ、実に良くできた作品である。しかし、同時になんだか違和感もある。秦の始皇帝といえば、私の世代から見れば、どちらかと言うと暴君・独裁者的なイメージがあり、鮮血にまみれた印象が圧倒的に強かったが、この漫画の中では人間味溢れたリーダーで皆の憧れといった存在となっている。もちろん、漫画だからといって馬鹿にしてはならない。私は史記など文献を調べ、始皇帝が暴君とされる根源を探し出した。

 その発端には“焚书坑儒(ふんしょこうじゅ)”という歴史事件があった。簡単に言えば、天下統一をし、至上の権利を手に入れた始皇帝の周りに、媚びる詐欺師とヤブ医者が群れてきた。当初は看過ごされた詐欺や騙しはどんどんエスカレートし、ついに、始皇帝の逆燐に触れ、彼らは処分され、詐欺に使われた書籍も焼かれたという事件であった。この出来事が後世の悪意が満ちた人達により誇張され、始皇帝が天下全ての書籍を焼く、自分に反対する学者を皆殺しにしたという話にまで歪曲されたのである。そのため、後世に暴君と残虐者のレッテルが貼られることになってしまった。なんという悲しい結末だろうか。

 真実は語られる度に変わっていくものだ。時間が経てば経つほど物事本来の全貌と目的は見失われるだろう。最近、世間を騒がせた香港でのデモ事件も、最初は「逃亡犯条例」の改正案を巡る紛争だったが、そのうち、改正案の延期が決定されたにも関わらず、デモが止むことがなかった。参加する民衆は、今回の「デモ」という行動の本来の意味についてもう一度考え直す必要がある。始皇帝のように“焚书坑儒”の二の舞にならないことを祈るばかりだ。

 

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