2020年1月31日のアーカイブ

 

第1回 『朝10時までに仕事は片づける』(1)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生には、7冊の書籍をかんき出版から発行させていただきました。
 そのなかにはベストセラーになり、それがさらに図解のムック本になったものや、新書スタイルのポケット本になったものまであり、発行部数は累計41.1万部になっています。
 またこれらの書籍は、他の出版社から文庫本や新書になり、さらに多くの方に読まれていることになるでしょう。

 これらの本をもとに【高井語録】を集めてみます。

 『朝10時までに仕事は片づける』は、2002年12月に先生がかんき出版で最初に書かれた本で、多くのビジネスパーソンから支持されベストセラーになりました。
 この本の企画は、必然的に生まれたものとも言えます。それは私が高井先生の早朝出勤を知り、素直に強い興味をしめしたからです。なぜ朝6時に出勤するようになったのか? 時間の使い方をどう変えたのか? その結果、どのようなメリットがあったのか? などを書いてもらおうと……。

 著者のことばや文章を引用しながら進めていきます。

 

  • 優秀な人と同じ行動特性を備えた人は、成果を上げる確率が高い  

 高井先生も、30歳くらいまでは夜型人間だったという。ところがある人との出会いで生活態度を一変させることになります。
 「土光敏夫さんに出会ってショックを受けた。土光さんは、業績が悪化した東芝の再建を依頼され社長に就任、一年で再建に成功し、その後、経団連の会長などをされた人です。朝7時20分、土光さんの事務所へ書類をもらいに訪問したら、いつも朝6時半には出勤しているとのことだった。そんな刺激を受け、土光さんより若い自分は朝6時ころには事務所に出るようにした。その後も、多くの経営者・経営幹部の方と接してきて、学んだことがある。それは一流といわれ実績を上げている人ほど早く出社して、朝10時までには一仕事や大仕事を終わらせているということです」

 

  • 仕事の生産性と人間らしい生き方を両立させるために、朝を有効活用する

 「ビジネスパーソンにとって重要なことは、いかに上手に時間を管理するか、ムダな時間を整理するか、ということです。同じ時間でも、私がとくに注目しているのは、朝の時間です。わたしはこの概念を、【モーニング・マネジメント】と呼んで、親しいビジネスパーソンや仲間たちと実践しています。つまり、長年の悪しきビジネススタイルを打破し、新しいビジネス&ライフスタイルを確立するーーを提唱しているのです」

 

  • 普段からしたいと思っていることはスキマ時間に、「いますぐ」を心がける

 「ビジネスパーソンにとって、美しいものを観ることは右脳にとっても有効です。美術鑑賞などは、暇ができたらーーと考えていたらいつまで経ってもできないことは当たり前。商談などのスケジュールを決めたとき、訪問先の途中に美術館などがあれば、ちょっと立ち寄ることをお勧めします。私の見方は独特で、まず部屋の中央に立ってぐるりと見回す。印象に残った絵を1つだけ探し鑑賞する。その基準は、この部屋のなかにあるどれか1点、あなたにあげると言われたら、どの絵をもらおうとするかな? その絵が決まったら、近づいてじっくり見る。同じことを各部屋で繰り返して出てくる。これだったら15分もあれば見終わる。これを繰り返しているうちに鑑賞眼が養われます。この場合も留意したいことは、所要時間です」

 

  • 時間は先回りして待ち伏せする必要がある

 「人を待たせて急いでいるときの時間は早く感じ、逆に、人を待っているときの時間は遅く感じる。ここに時間の秘密があり、時間の使い方のコツがある。つまり、時間は平等ではなく、追われると時間を奪われる。待ち伏せするとは、全体のなかから、今という時間を考えることです。新幹線で大阪へ行くとして車内での2時間40分にできることを実行するとき、意識はすでに2時間40分先まで到達しており、そこから逆算をして何かをしています。これが待ち伏せした使い方です。一流人物や成功者たちは、こういう意識で時間を有効有益にし、時間に追われることがなくなります」

 

  • 「すぐやらない」「先送り」「引き伸ばし」を無くす

「この原因は3つあります。

 ①自分の置かれている状況に危機意識がない。怠け者である
  やるべき仕事は、すぐしなければ変化とスピードの時代には致命傷になりかねない

 ②優先順位(プライオリティ)がつけられない
  自分の目的が明確になっていないので、最初にすべきことが見えていない

 ③判断基準が作れない。もっといい方法があるかもしれないと迷ってしまう
  私が選択肢を決める際の参考にするのが、正か邪・和か戦・勝か敗・損か得です

 これでも悩む人は、原点にもどること。原点とは幼少のころ、親によく言われた『人様に迷惑かけるんじゃないよ』でもいいし、『自分のやりたいことをやりなさい』でもいい。企業であれば『お客様の満足を第一に考える』でもいい。その一点を基準にして考えると、悩んでいたことがすーっと見えてくる」

 

 本書が出版されてから10年後の2013年10月、伊藤忠商事㈱が「朝型勤務」制度を導入しました。20時以降の残業を無くし、朝5時からの出社を認め、夜の割増残業手当と同じ率で早朝手当を支給。8時前に始業した人には軽い朝食を用意して応援することを実施。それでもトータルの経費は削減され、今は約半数の社員が朝型勤務になっているという。結果、会議は夕方がなくなり朝早くの時間に代わったそうです。

 さらに「朝型勤務」の導入のほかに、「110運動」を徹底した。これは「夜の会食や飲み会は、
1次会だけで10時までに終わる」という改革で、これにより夜遅くまで飲むという習慣がかなり減少したそうです。

 その結果、「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」「夜早く帰ることで、家族との時間やビデオを見る時間が持て、リフレッシュにもつながる」と実感する社員が増えているといいます。

 もちろん朝型勤務の効果だけではないだろうが、下記の数字が示すように、伊藤忠の業績も極めて順調に成長している。株価や従業員一人当たり経常利益にも反映しています。

 

  伊藤忠 三菱商事 三井物産 丸紅
株価  2011年12月30日(円) 782.0  2000.0  1250.0 469.0
   ※2013年12月30日(円) 1299.0 1900.0 1465.0  756.0
    2019年12月30日(円) 2534.5 2900.0  1950.0  810.0

    2011年対比(%)  324% 145% 156% 172%
従業員1人当たりの経常利益(万円) 7166 8000 3197 3685

 

(※伊藤忠が「朝型勤務」を始めた年)

 

 まず従業員が健康的になり笑顔になり、クリアなクリエイティブな頭で働くことで、生産性を上げ、顧客にも会社にも、三方よしの結果を生むことの一因になっていると考えられます。
 個人でも企業単位でも、「朝型勤務」がいろいろな面で有効なことを示している例といえます。会社も施策面でバックアップすることが求められる時代になってきたのでしょう。

 

                                             次回は2月28日(金)に掲載いたします。     

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