第2回 『朝10時までに仕事は片づける』(2)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 前回1月31日にも書いたように、伊藤忠商事㈱は2013年に「朝型勤務」制度を取り入れました。社員からは「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」などと好評で、その効果は業績にも反映されています。

 この「朝型勤務」を取り入れたのは、現在の代表取締役会長CEOの岡藤正広氏で、彼が社長に就任した後、提案し自ら実践したのです。「商社は不夜城と言われているが、ダラダラ残業をするよりも、朝早く仕事をするほうが効率的であり、身体にもいい。早朝から仕事をしているお客様にとってもすぐ連絡ができれば安心なはず、と考えていたからだ」と語っています。

 

 引き続き表題の書籍から、さらに【高井語録】を集めてみます。

 

  • 早朝はプラス思考の時間に向く

 「一流の人間、成功者はおしなべて早朝人間と言えます。人生が充実したものになるかどうかは、朝の過ごし方が極めて重要だと彼らは知っているからです。

 実際、戦略を考えたり、思考をめぐらしたりする頭をつかうビジネスパーソンにとって、朝の時間帯が仕事に向いていることは十分にうなずけます。特に朝は右脳が働きます。右脳は発想や着想(アイデア)などを導き出す脳ですから、なおさらです。

 いつもは忙しさに紛れて考えが及ばない『生き方や将来計画』などについても、プラス思考の発想が出てきます。脳波の状態でいえば、リラックス効果のアルファ波が出ているときですが、この脳の状態は健康にも寄与するので、まさにいいことずくめ。それに一人静かに過ごせるひとときとくれば、『早起きしないでいられるものか』という気持ちになって当然です」

 

 高井伸夫先生と面識のある多くの方は感じられていると思いますが、先生の行動軸は二つあるようです。

 一つは、仕事を濃密化すると同時にスピード化すること。本書には、そのためのツールや仕組みが数多く書かれています。

 もう一つは、お会いしている相手のために、自分のできることで何かお役に立てることはないかと瞬時に考え、すぐ行動すること。たとえば、会話のなかから、相手がいま関心持っていることがわかると、そのために参考になる人を紹介するなど数々あります。

 

  • 「凡事徹底」を意識する

 「仕事が遅いということは、『有言実行』ならぬ『有限速行』が求められる現代では、仕事人としては致命的な欠陥といえます。私の事務所では『明日やる』『来週やる』『来月やる』は禁句。すべては『今』。今が不可能な場合にのみ、でき得る最短速度で取り組むようにしてもらっています。

 会社で発生する一つひとつの仕事はそんなに難しいことではありません。そもそも仕事というのは9割雑事といってよく、本当に頭を悩ます、あるいは創造性を必要とする仕事は1割もあればいいほうです。

 ただ、その1割が重要なのですが、雑事もその積み重ねが大きな仕事の成就を支えるので、決しておろそかにはできません。『凡事徹底』です。仕事が遅い人というのは、凡事を軽くみておろそかにする人です」

 

  • 「時間」に対する固定観念を打破する

 「これからは時間ではなく、成果が賃金に反映される時代になります。中途半端に経験がある人ほど、『どんなに急いでも1週間かかる』『良い仕事をするには1ヵ月かかる』と言ったりする。

 さらに、仕事に伴う行動にも所要時間の常識がある。そういう常識を疑ってかかり、すべて固定観念を打破するつもりで、『どうしてそれだけかかるのか』『半分にできないか』『1/10にできないか』『もしそれを実現させるためには何を変えたらいいのか』と一つ一つ考えてみることです。

 そういう疑問をもって見直してみると、時間を短縮できることは山ほどある」

 

 たしかに、むしろ無くしてもいいものもある。役所なども、一度手にした予算を手放したくなく、継続させている仕事が多いと聞きます。企業にも慣れた仕事を手放したくない人がいませんか?

 

  • 時間を一刻も無駄にしないために「経過書」を

 「仕事のすすめ方で常に心がけたいことは、『核心を突く』ということです。仕事を完了させるためには、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が大きな要素になのはご存じのとおりです。しかし、これは目的ではないので、できるだけ短時間で効果的に済ませる。そのために、部下に『経過書』をつくらせ、さらに『気がかりなことは何?』『次の一手は?』を必ず確認し合う。この方法を朝いちばんでやれば、関係者の本音を早く把握でき、朝10時までに仕事の段取りと、準備を完了できます。経過書が持つメリットは3つあります。

 ①その案件の全体像がすぐに把握できる。全体が見えていてはじめて的確な手が打てる

 ②選択的に迅速な理解ができる。適切に表現された経過書は、各自が知るべき内容の強弱、重軽がおのずと出てくるので、素早く理解できるようになる

 ③推測、予見、予知が可能になる

 

 経過書を上手に作るコツは、

 ・箇条書きにする

 ・比較対象する

 ・図式、図解の多様

 ・イラスト化

 ・キーワードの抽出

 これらのことを念頭に置いて、実際に作ってみることが上達の早道。たとえば、新聞の特集記事、企画記事、小説などを読んで、その内容を1枚の紙にまとめる練習をしてみるとよいでしょう。表現の仕方を習得するには、週刊誌などのイラストや特集記事や漫画なども参考になります。経過書の作成は、どんな仕事にも通用するはずです」

 

  • 文書化の腕を磨く

 「提案書にしろ、企画書にしろ、メール文章にしろ、ビジネス文書としての良しあしは厳然として存在します。それはビジネス的側面からみて、目的に適ったものかどうかが重要なのです。会社にはさまざまな雛形があると思いますが、微妙なニュアンスも必要であり、オリジナルで正しく伝えられるだけの技法は身に付けておきたいもの。では、どうしたら簡潔で正しく伝わるビジネス文書がつくれるか。それを5つあげておきます。

 ・必ず要件見出しをつくり、最初に結論をもってくる

 ・読む気にさせる。そのためにはキーワードを意識して書く

 ・箇条書きを多用し、拾い読みでもわかるようにする

 ・最初の1/3で読むのを止めても理解できるようにする

 ・すべてを肯定的、前向きに書く」

 

  • バランス感覚の有無を判定する

 「人間は本能的に安定を求めます。しかし、変化の時代は安定性の維持が難しい。そこで大切になってくるのがバランス感覚です。

 私がバランス感覚の有無を判定するポイントは5つあります。

 第1は、結果を想定する能力があるか――こちらがこう言えば、相手はどうこたえるか。こちらがこう答えたら、どんな結果が生じるか。それを考えられるかです。

 第2は、視野は広いか――視野が狭ければ、選択肢が限られてきます。どんな場合でも最低3つの選択肢をもつ必要があります。

 第3は、自己改革ができるか――自分を変えていけるのかどうか。こだわりや頑固さが表面に出る人は、バランス感覚を欠いています。今はフレキシビリティが大切な要素になってきます。

 第4は、定石を疑えるか――現代は常識が通用しないことが多くなっています。つまり経験が活きないのです。知識も常に更新していないと、判断を誤ります

 第5は、迷ったときに人に相談できるか――どんな優秀な人でも、人に相談できない人はダメ。迷ったときだけでなく、些細なことでも相談できる人、つまりメンターを持っていることです」

 

 本書の最後に著者・高井伸夫先生は次のように結んでいます。

 「あなたの今日が、1年前、半年前、1カ月前、そして1日前と同じだとしたら、あなたはかなり時流から離れたところで生きていることになります。時流に少しでも近づく方法――それには朝の時間を活用することをお勧めします。

 『古(いにしえ)をもって今を制する者は、事の変に達せず』

 中国の史書『戦国策』はこう述べています。その意味は、昔のやり方で、今を治めようとする者は、事の事変を十分にわかっていない――ということです。早起きをして朝の時間を活用することは、世のなか全体が夜型に傾きつつある現在、限られた一部の人しか実践していないことです。

 しかし、その人たちは自分の目標を達成し、人生を謳歌できる数少ない人たちでもあります。その仲間入りを果たすことは難しいことではありません。あなたの目覚まし時計の針を2時間、たった2時間早めるだけです」

 

次回は3月27日(金)に掲載いたします。

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