2020年3月のアーカイブ

 

第3回 『3以内に話はまとめなさい』(1)
できる人と思われるために

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で2冊目に書かれた本が『3分以内に話はまとめなさい』で、これまたベストセラーになりました。

 この本は、先生が行動軸とされている仕事の濃密化・スピード化、そしてコミュニケーション能力について、「話す力」に焦点を当てながら書かれています。

 キーワードは「話をいかに短くするか」です。

 これを意識し続けていると、話し方がうまくなるにとどまらず、自分自身が磨かれ、デキル人と評価されるようになる――そんな本だと評判になりました。

 

 引き続き表題の書籍から、【高井語録】を集めてみます。

 

  • 3分以内に話をまとめる訓練の効果

 「自分の立場が上がったりお付き合いが増えてきたりすると、上司に報告・連絡・相談をする、部下に指示を出す、自分の提案をプレゼンテーションする、会合などでスピーチをする……など、話をする機会がますます増えてきます。

 そんなとき、長い話をする人は、何を話したいかを決める論理力、要約力がないと思われる。

 さらに、聞き手の気持ちを理解していないと思われる。なぜなら、人の話を聞くのは、話すより三倍以上エネルギーがいるのです。このことが理解できない人、思いやりがない人、と思われてもしかたありません。

 話す力を磨くためにも、『3分以内で話をまとめる』という訓練が一番よいと考えています。話を短くまとめる能力を磨くことで、日本人がとかく苦手としている

 ➀論理的な話の運び方

 ②独創的な発想

 ③状況変化に適応する即応性

 ……などが一緒に身についてくるからです。

 

 『ごく簡単な内容なら3分もあれば十分だが、本格的な交渉事や込み入った問題になったら、そんな短い時間で済むわけない』

と思われる人がいるかもしれません。でもデキル人の話しぶりを観察してみてください。みんな短く済ませています。だから多くの仕事をこなせる。話もその例外ではないのです。

 時間があると思うと、どうしても無駄な会話が増えてきます。

 『3分でまとめよう』としたら、どうしても必要な話だけを簡潔に要領よくしようと必死に努力するでしょう。人為的にそういう環境をつくって時間の無駄を省き、簡潔に話す能力を磨くことです。

 『デキル人は多くの時間を持っている』

 『仕事は忙しい人に頼め』

 とよく言われます。

 誰にも等しく与えられた24時間なのに、デキル人がたくさんの仕事をこなせるのは、一つの事柄に費やす時間が短いからです。短い時間を濃密に使っているのが、デキル人の特長なのです」

 

  • デキル人の話し方3要素

 「1つの話に対して3分以内のテンポで話がテキパキ進んでいくと、お互いに快感を覚えるようになり、自然に頭の回転もよくなり、動作も機敏になります。この仕事の快感テンポを味わえたらしめたもの。常にその線を目指して努力するようにすれば、自然に仕事のレベルアップができてきます。

 デキル人の備えるべき話の3要素は次のことです。

 ・きわめて手短である

 ・全体に対する目配りをしている

 ・核心を突く

 どんな場合でも、話はできるだけ『短く済ます』ほうがいい。その理由は、時間を合理的に使うということですが、もう一つ、短い方が印象に残るからです。
『多岐にわたる』とは、全体に対する目配りと解釈すればいいでしょう」

 高井先生のスピーチや会話・対話には、聞き手にその話材の本質や核心にふれながら、共鳴や気づきを引き起こされる人が多い。 それは幅広い教養と、常にアンテナを高くして、新たな情報を蓄積されているからでしょう。  

 

  • 短い時間で感動を与える

 「話をする目的とは、広義の説得です。説得方法には、感動による説得、理性的・理知的な判断による説得、あるいは損得勘定による説得、場合によっては恐怖・脅迫による説得があります。

 もちろん一番好ましいのは、自分のしゃべったことに相手が感動してくれて、自分の思うとおりに行動してくれたら言うことはありません。しかし、それには手間がかかりそう。そこで人はどうしたら数分の短い話で感動してくれるか考えてみましょう。

 

 そのためには『真・善・美』について語ることが効果的です。

 第1の『真』。これは『本音で語る』ということです。つまり真心をもって相手に語りかける。そうすれば相手の真心に触れる。こちらに真心がなければ、相手も決して心を開かない。だからどんな場合も、誠心誠意話をすることが肝要なのです。誠意を込めて語る言葉にワンフレーズが多いことは、名作映画の名場面を思い出していただけるとわかるはず。クライマックスに主人公が話す言葉は短い。

 第2の『善』。これは『前向きな気持ちを駆り立てる話』です。事務所に相談に来る人に私が言うことは『大丈夫、大丈夫』です。そうするとわずかな時間の面談で見違えるように元気になる。これは理性的な理解ではありえない。人を元気にさせるには、未来へ向け希望が持てるような前向きな方向で話をまとめること。これが感動を呼び起こす大きな要素になります。

 第3の『美』。これは『表現手段』と考えてください。同じことを語っても、とげとげしい言葉で語るのと、まろやかな言葉で語るのとでは、相手が受ける印象が違ってきます。だから語るときは、美の構成要素である明るさ・力強さ・優雅さを取り入れた話をすることです。

 

 真心を込め本音で、相手が前向きな気持ちを駆り立てられるような内容を、まろやかな言葉で語れば、短い時間でも相手は感動します。長い話はまったくいりません」

 

  • 最初に「結論」を持ってくる

 「限られた時間で簡潔に自分の言わんとすることを明示するには、まず結論をはっきりさせなければならない。ではどうやったら『最初に結論ありき』の話ができるか。

 条件はいくつかありますが、いちばん大切なのは瞬間的な判断力。これは日頃から意識して訓練しておく必要があります。そのためには、まず結論を先にもってきて、後で理由を縷々(るる)説明していく習慣を身につけるのです。もし説明が中途半端で終わっても、こちらの結論は明確に伝わっているので最低合格点はもらえます。

 結論がまだ簡単には出せないようなときでも、話を簡単に仕上げるには、結論でなくても結論らしきものでもいい。とにかく、両者の話の拠り所になるような前提を1つ掲げて、話を進めるのがベターなやり方と言えます。

 いずれにしても結論を先に言う訓練をすると、その分、思考力も鍛えられることになります。

 『あわてて結論を出して間違っていたらどうするんだ』と心配する人もいますが、中国の兵法に、『兵は拙速を聞く、巧遅を聞かず』(上手で遅いより下手でも早い方がいい)と書かれています。つまり、早ければミスに気づいても、すぐ次の手が打てるからです」

 

  •  相手巻き込んでしまう話し方

 「こちらが一生懸命に話しているのに、相手が少しも乗ってくれないときがあります。部下が他人事のように聞いて『私は関係ない』という態度をとるのは、参加意識が希薄だからです。そのようなときには次の三つのことを実行すれば効果があります。

  ・誉める

  ・頼る

  ・期待する

 

 『誉める』ということで、より効果が出るのは直接誉めるより、陰誉(かげぼ)めです。上司が部下を誉める場合、自分で誉めるだけでなく、当人がいないときに誉める。少し時間がかかるけど本人の耳に入ったとき、真実味を感じ、より嬉しくなるもの。

 山本五十六元帥の有名な言葉に、『やって見せて 言って聞かせて やらせてみて ほめてやらねば 人は動かじ』というのがありますが、ためしに『ほめる』を削除してみてください。名言も形なしになってしまいます。 

 『頼られる』と自己の重要感を感じられるので、人はその気になります。ご存知の人が多いマズローの法則によれば、人間には生理的欲求、安全欲求、所属欲求、自己尊厳欲求、自己実現欲求へと5段階の欲求があります。『頼りにされることによる満足感』は自己尊厳欲求に該当し、人を成長させる要素にもなるので、上司としては取り入れたい態度です。

 『期待される』と人間はそれに応えようとする。これを証明する心理学の実験があります。

 学校で新任の先生がアトランダムに数名の生徒に『成績が上がる』と期待する。そうすると期待された生徒の成績は『期待効果』によって本当に上がるのだそうです。

 

 誉める、頼る、期待する……3つとも『話すことだけ』で実現できることです。自分の話すことに相手を巻き込んでしまうためには、『言うことを聞いてくれない』と嘆くよりも、この3つを根気よく試してみることです」

 

次回は4月24日(金)に掲載いたします。

「明るい高齢者雇用」

第12回 経験と知恵で勝負―老いてなお指導者―

(「週刊 労働新聞」第2158号・1997年6月23日掲載)

 

 藤松忠夫氏は筆者の10年来の知人である。まず同氏のプロフィールを紹介しよう。

 「1959年日本航空入社。営業各部を経て66年より本社広報部に勤務。1975年ニューヨークの同社米州地区支配人室に転勤となり、米州地区の広報を担当。1990年日航グループのJALインターナショナル・サービス社会長となり、日米間の文化交流事業に従事していたが、この5月からTFC(The Fujimatsu Corporation)を興こし、コンサート、展覧会のコーディネーション、文化交流に力を注いでいる。在米通算22年。この間、エッセイスト/コラムニストとして日米両国の新聞・雑誌・PR誌などに毎月30~40本執筆。著書多数」。

 この経歴で明らかな通り、藤松氏はアメリカ社会全般に通じている方であり、「明るい高齢者雇用」についてワンポイント・レクチャーを受けた。

 「ご存じのように、アメリカの大都会は中心部が空洞化する傾向にありますが、1人ニューヨークはマンハッタンがますます賑やかで活気に満ちた町になっており、5階建てのナイキ・タウンや5番街のディズニーストア、ワーナーストアなどのテーマパーク的『大店舗』が客を集めております。オフィス用品の『ステープルズ』、寝室と浴室用品の『バス・ベッド・アンド・ビヨンド』といった単品デパートが全米に展開され、購買意欲をいやが上にもかきたてております。

 こうしたリテール企業と日本のデパートの違いは、日本では若い店員が多いのに対し米国では圧倒的に中高年の店員が多く、実に的確なアドバイスをしてくれるのです。日本のデパートの家庭用品のコーナーで18歳の店員にシャワー・カーテンのことを聞いたって、何にも知らないのです。

 アメリカでは、中高年の役割は“コンサルテーション”に尽きるといってもいいでしょう。“ハッピー・リタイアメント・パーティ”で、『これからどうするの?』と聞くと、ロッキー山中で釣りをして暮らすという人もありますが、たいていは『コンサルタントになる』という答えが返ってきます。会社経営、大型合併のコンサルタントから、投資、保険、警備、レストラン経営、旅行、とにかく何でもコンサルタントがいて、ちゃんとそこそこの収入になる。つまり経験と知恵を買う人がいるのです。インテリア・コンサルタントなども、一流になると1室4万ドルも請求するのです。『この部屋はビクトリア風だから、この椅子でなければ。中国風の屏風は許されるが、日本風は置けない』とか…。日本でこうしたことが実現するには『知恵』という無形のものにお金を払う習慣を作らないとだめですね。アメリカ式に、弁護士に電話訴すれば30分で250ドル請求書がくる。あれです」。

 明るい高齢者雇用を求めるには、本人が粗大ゴミとして扱われないことが必要である。価値ある存在であるとなれば、指導者なり教師なりの立場、即ち人生の先輩であり知識と経験を兼ね備えた人物として、職場でも高齢化してなお地位を与えられることになる。指導者であり教師である、それがコンサルタントという世界なのである。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第15回】組織を固定化しない~毎年1回は見直せ~(1994年11月16日)

 

 スピード経営のために現実問題として何をすればいいか。

 まず不要な会議を減らすことである。電話をかけると「会議中です」と返ってくることがしばしばある。「外出中」ならまだいいが、会議がやたら多い。

 不要な会議を減らすには、会議室を減らすこと。最近、いろんな企業で会議室の空室が目立つ。そのコストの高さを思うと執務室や作業室に変えたらいいと思うが、ワンフロアーを堂々と会議室に使っている。

 営業のチャンスを求めて外に出ることが大事だ。社内でいくら会議しても営業成績にはとかくつながらない。

 次には、組織の階層をなくすこと。私の事務所には30名程いるが、私と所員との間にチーフが3、4人いるだけ。そのチーフも権限が多いというわけではなく、連絡調整役程度ですごく権限が少ない。私と30人が直結しているわけだ。社長の下に専務、常務、平取、部長、課長、係長、主任、などとやっていてはダメだ。

 ソフト化時代は、頭脳労働が中心となるから成果は頭の中にあり、見えない時代だ。だから、専務や部長に「よきに計らえ」と言っていたら会社はダメになる。成果を見せようとしない者に仕事を任せて、しかも責任を取らなくていいとなると企業は無茶苦茶になる。

 成果が見えない時代だから社長自らがやらないといけない。そのためには、組織の階層をなくすこと。「社長は自分の頭越しに部下に指示する」と文句が出ないためにも階層を少なくする。

 階層をなくすと同時に、組織の改廃を少なくとも毎年1回、実行するシステムにしないといけない。人事異動ではなく、組織の改廃だ。

 組織が固定化すると、その組織にへばりついたかの如き仕事ができ、それにとらわれて付加価値が減退していく。ソフト化社会では斬新さの中にこそ初めて付加価値が生まれる。斬新さを求めて既存の付加価値を絶えず革新しなければならないからである。

 

 

「中国の最新諸事情」
第3回 新型のコロナウイルスについて(2)

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 今回も、引き続き新型コロナウイルスについて、被災地中国にいる一中国人として、現在発生している状況を記録します。

 

 まず、今日までの状況を報告します。

 中国衛建委の発表によると、3月2日11時までに、新たな感染者が202人増え、感染者は全部で80026人となりました。その他、死亡者が2912人でした。

 ちょうど一ヶ月前に、本ブログで新型コロナウイルス肺炎に関する報告をしましたが、当時の感染者数は7711人でした。わずか一ヶ月の間にその数は10倍以上にも増えました。しかも、死者が続出しており、この一ヶ月中国は非常に深刻な状態となっていました。

 前回の投稿で、不謹慎にも私は今回の新型コロナウイルスを17年前の「SARS」と比べ、当時心の中で密かに、そろそろ拡大は収束を迎え、たかが「SARS」の再来になるだろうと気楽に考えていましたが、現状を見ると、新型コロナウイルスは「SARS」の再来のどころか、桁違いの規模で、猛スピードで中国、東南アジアのみならず全世界的に広がっています。

 我が国の現時点での反省として、以下の2点の教訓を書留めましょう。

 

 1、無症状感染者の存在

 前回記録したとおり、春節にも関わらず中国全土に発令した自主隔離命令により、自宅待機が余儀なくされてきた日から丁度30日めを迎えました。来週から、各会社が少しずつ仕事復帰でき、ようやく収束の目処が見え、一時の深刻な状況から脱しつつあると言えます。

 しかし、当初1週間で封じ込めると当局が考えたにも関わらず結局30日も掛かったことから、今回の新型コロナウイルスの拡散の予防は非常に難しいということが分かります。理由として、無症状感染者の存在と彼らによる静かな感染拡大が挙げられます。普段身近にいる健康そうな人々がスーパースプレッダーとなりえるし、二次感染、三次感染で多くの人を感染させています。症状がでないため、防ぎようがありません。これが、中国国内で一ヶ月で患者数が10倍にも増えた理由の一つだと思います。

 つまり、自分の周りに武漢に渡航歴ある人がいないから、必ずしも自分が安全だという慢心を持たないほうがいいということです。

 

 2、医療水準、死亡率、26人の英雄

 ネットの流行りで、今、武漢、湖北省の病院に関する映像が数多く流れていますが、見てる周辺の人々には、今回のウイルスは重症症状が必ず出るわけではないし、当地の医療水準が低い、医療常識が足りないから、死者が出ているのではないかという考えがあるかもしれません。この考えは危険です。実際、武漢は非常に現代化した大都市で、決して医療水準が低い田舎町ではありません。更に、感染拡大以来、中国全土からの医療資源が武漢に集まり、各地の精鋭の医者達が昼夜を問わずに患者の救助に力を入れてきました。発表されたデータを見れば、相当なレベルの医療が現地で施されています。

 しかし、2月26日までの統計では、患者とは別に、湖北省内で新型コロナウイルスの治療を第一線で行っていた医者が既に26人も殉職しました。その中には、病院の院長、主任も含まれています。彼らは殆どが治療の中で、患者から新型コロナウイルス肺炎を移され、重症になり、命を落としたのです。

 一国の全力を傾けても患者どころか、医者さえ救命できないような状況なのです。決して、病状が重くないから、医療水準さえ備えていれば、問題ないと今回の新型コロナウイルスを侮ってはならない、油断してはなりません。

 ウイルスの前に、国という境はありません、共にこの国難を乗り越えて行きましょう。

 

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