「明るい高齢者雇用」

第12回 経験と知恵で勝負―老いてなお指導者―

(「週刊 労働新聞」第2158号・1997年6月23日掲載)

 

 藤松忠夫氏は筆者の10年来の知人である。まず同氏のプロフィールを紹介しよう。

 「1959年日本航空入社。営業各部を経て66年より本社広報部に勤務。1975年ニューヨークの同社米州地区支配人室に転勤となり、米州地区の広報を担当。1990年日航グループのJALインターナショナル・サービス社会長となり、日米間の文化交流事業に従事していたが、この5月からTFC(The Fujimatsu Corporation)を興こし、コンサート、展覧会のコーディネーション、文化交流に力を注いでいる。在米通算22年。この間、エッセイスト/コラムニストとして日米両国の新聞・雑誌・PR誌などに毎月30~40本執筆。著書多数」。

 この経歴で明らかな通り、藤松氏はアメリカ社会全般に通じている方であり、「明るい高齢者雇用」についてワンポイント・レクチャーを受けた。

 「ご存じのように、アメリカの大都会は中心部が空洞化する傾向にありますが、1人ニューヨークはマンハッタンがますます賑やかで活気に満ちた町になっており、5階建てのナイキ・タウンや5番街のディズニーストア、ワーナーストアなどのテーマパーク的『大店舗』が客を集めております。オフィス用品の『ステープルズ』、寝室と浴室用品の『バス・ベッド・アンド・ビヨンド』といった単品デパートが全米に展開され、購買意欲をいやが上にもかきたてております。

 こうしたリテール企業と日本のデパートの違いは、日本では若い店員が多いのに対し米国では圧倒的に中高年の店員が多く、実に的確なアドバイスをしてくれるのです。日本のデパートの家庭用品のコーナーで18歳の店員にシャワー・カーテンのことを聞いたって、何にも知らないのです。

 アメリカでは、中高年の役割は“コンサルテーション”に尽きるといってもいいでしょう。“ハッピー・リタイアメント・パーティ”で、『これからどうするの?』と聞くと、ロッキー山中で釣りをして暮らすという人もありますが、たいていは『コンサルタントになる』という答えが返ってきます。会社経営、大型合併のコンサルタントから、投資、保険、警備、レストラン経営、旅行、とにかく何でもコンサルタントがいて、ちゃんとそこそこの収入になる。つまり経験と知恵を買う人がいるのです。インテリア・コンサルタントなども、一流になると1室4万ドルも請求するのです。『この部屋はビクトリア風だから、この椅子でなければ。中国風の屏風は許されるが、日本風は置けない』とか…。日本でこうしたことが実現するには『知恵』という無形のものにお金を払う習慣を作らないとだめですね。アメリカ式に、弁護士に電話訴すれば30分で250ドル請求書がくる。あれです」。

 明るい高齢者雇用を求めるには、本人が粗大ゴミとして扱われないことが必要である。価値ある存在であるとなれば、指導者なり教師なりの立場、即ち人生の先輩であり知識と経験を兼ね備えた人物として、職場でも高齢化してなお地位を与えられることになる。指導者であり教師である、それがコンサルタントという世界なのである。

 

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

2020年3月
« 2月   4月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

最近の投稿

カテゴリー

月別アーカイブ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
https://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成