「中国の最新諸事情」
第3回 新型のコロナウイルスについて(2)

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 今回も、引き続き新型コロナウイルスについて、被災地中国にいる一中国人として、現在発生している状況を記録します。

 

 まず、今日までの状況を報告します。

 中国衛建委の発表によると、3月2日11時までに、新たな感染者が202人増え、感染者は全部で80026人となりました。その他、死亡者が2912人でした。

 ちょうど一ヶ月前に、本ブログで新型コロナウイルス肺炎に関する報告をしましたが、当時の感染者数は7711人でした。わずか一ヶ月の間にその数は10倍以上にも増えました。しかも、死者が続出しており、この一ヶ月中国は非常に深刻な状態となっていました。

 前回の投稿で、不謹慎にも私は今回の新型コロナウイルスを17年前の「SARS」と比べ、当時心の中で密かに、そろそろ拡大は収束を迎え、たかが「SARS」の再来になるだろうと気楽に考えていましたが、現状を見ると、新型コロナウイルスは「SARS」の再来のどころか、桁違いの規模で、猛スピードで中国、東南アジアのみならず全世界的に広がっています。

 我が国の現時点での反省として、以下の2点の教訓を書留めましょう。

 

 1、無症状感染者の存在

 前回記録したとおり、春節にも関わらず中国全土に発令した自主隔離命令により、自宅待機が余儀なくされてきた日から丁度30日めを迎えました。来週から、各会社が少しずつ仕事復帰でき、ようやく収束の目処が見え、一時の深刻な状況から脱しつつあると言えます。

 しかし、当初1週間で封じ込めると当局が考えたにも関わらず結局30日も掛かったことから、今回の新型コロナウイルスの拡散の予防は非常に難しいということが分かります。理由として、無症状感染者の存在と彼らによる静かな感染拡大が挙げられます。普段身近にいる健康そうな人々がスーパースプレッダーとなりえるし、二次感染、三次感染で多くの人を感染させています。症状がでないため、防ぎようがありません。これが、中国国内で一ヶ月で患者数が10倍にも増えた理由の一つだと思います。

 つまり、自分の周りに武漢に渡航歴ある人がいないから、必ずしも自分が安全だという慢心を持たないほうがいいということです。

 

 2、医療水準、死亡率、26人の英雄

 ネットの流行りで、今、武漢、湖北省の病院に関する映像が数多く流れていますが、見てる周辺の人々には、今回のウイルスは重症症状が必ず出るわけではないし、当地の医療水準が低い、医療常識が足りないから、死者が出ているのではないかという考えがあるかもしれません。この考えは危険です。実際、武漢は非常に現代化した大都市で、決して医療水準が低い田舎町ではありません。更に、感染拡大以来、中国全土からの医療資源が武漢に集まり、各地の精鋭の医者達が昼夜を問わずに患者の救助に力を入れてきました。発表されたデータを見れば、相当なレベルの医療が現地で施されています。

 しかし、2月26日までの統計では、患者とは別に、湖北省内で新型コロナウイルスの治療を第一線で行っていた医者が既に26人も殉職しました。その中には、病院の院長、主任も含まれています。彼らは殆どが治療の中で、患者から新型コロナウイルス肺炎を移され、重症になり、命を落としたのです。

 一国の全力を傾けても患者どころか、医者さえ救命できないような状況なのです。決して、病状が重くないから、医療水準さえ備えていれば、問題ないと今回の新型コロナウイルスを侮ってはならない、油断してはなりません。

 ウイルスの前に、国という境はありません、共にこの国難を乗り越えて行きましょう。

 

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