2020年4月のアーカイブ

引き続き、中国広州在住の私の友人による、中国における新型コロナウィルス対策をテーマとした連載を掲載いたします。

 

【中国在住日本人から見た中国における新型コロナウィルス】
第3回 中国の防疫管理 APP編

 

 未だに各国で衰えることのない新型コロナウィルスに関して、これまでは2月に一気に封じ込めることに成功した中国における防疫対策と管理体制についてお伝えしたが、今回は中国におけるその管理が携帯電話のAPPを徹底活用することで、極めて効果的に成し得ていることをお伝えする。

 

1.穂康APP【本人入力情報】

 企業や学校あるいは住居エリアの指示により、パスポートや生年月日の個人情報、過去の滞在履歴、湖北省在住者との接触有無、自身の健康状況などを携帯APPで報告することが求められた。最後に記載内容に偽りがないことチェック。その後は、QRコードの背景色で感染リスクの有無を一目でチェック、QRコードスキャンにより情報詳細の閲覧が可能となる。ほぼ全ての国民の情報がこのAPPを通じて一元管理されていると考えられる。商業施設などでは検温にプラスしてこのQRコード画面提示を求めるケースも多い。

 

①初期画面

 

②情報インプット画面(最終頁で申告内容に偽りがないことを保証する項目あり)

 

③QRコード(感染リスクがなければ背景が青色、リスクがあれば赤色)
 「リスクあり」とは感染者のみならず感染者と接点があったケースも含まれる

 

 

2.疫病期間行程調査APP【携帯GPSの位置情報によるもの、本人入力不要】

 過去30日以内の滞在場所を確認できるAPP。以下QRコードスキャン後に自らの携電話番号を入力すると、過去14日以内と15日~30日の滞在国あるいは滞在都市が表示される。当初は湖北省・武漢への渡航履歴が確認され、現在では国外からの渡航履歴が確認されている。商業施設・ゴルフ場など、人との接点が多い施設に入る際に、検温に加えて提示を求められるケースが多い。

 

①携帯電話キャリア別QRコード

 

②過去30日滞在国・都市表示画面

 

 

3.疫病情報共有APP

(1)感染者数(前日新増感染者数、総感染者数、死亡者数、完治者数)

 エリアを入力することで当該エリアの感染者情報とその変遷を把握可能。

 

(2)感染者分布APP

 住所を入力すると、当該エリアの地図にて、感染者分布のみならず居住マンション名までわかる。2月は感染者が多数確認できたが(以下①)、現在ではあまり確認できない(以下②)。

 

①2月22日時点

 

②4月12日時点

 

(3)公共交通機関感染者発生確認APP

 日付と便名を入力すると、飛行機・鉄道などにおける感染者発生の有無を確認できる。
当初は自らが搭乗した交通機関にてリスクがあったのかを後追いながら確認するために活用した。

 

 

 日本と中国では個人情報の取り扱いが大きく異なるため、現実的ではないこともあるが、こうして商業施設と国民のそれぞれが責任持った対応をせざるを得ない仕組みづくりは見事である。そして、実際に中国国民はコロナを恐れ慎重に対応している。長期化に備えてこうしたAPPによる対策も十分検討してもらいたい。コロナウィルスは対策さえしていれば避けることができること、誰もが保菌している可能性があること(発症しないケースあり)からも、一人ひとりが正しい知識と正しい行動で、早期回復を実現してもらいたい。がんばれ!日本!

 

 

第4回 『3分以内に話はまとめなさい』 (2)
できる人と思われるために

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 以前にある会合で、50代後半の弁護士と隣り合わせになったときのことです。

 偶然にもその方は、ある裁判で、高井伸夫先生が弁護されている企業の相手側の弁護士だったそうです。そのときの高井先生の弁論や尋問が、「敵ながらあっぱれだった。聞きほれた」と思い出を話ししてくれました。「法曹界では、高井氏の反対尋問は評判ですよ」とも語っていました。

 

 先生が塾長をする勉強会の一つに、10年で100回以上続いた人気の『社長フォーラム』があります。そこで講演されたテープを起こして読むと、一字一句そのまま原稿になるほど、しっかり纏まっている。話に無駄がなく、構成も説得力があり、「て」「に」「を」「は」にも配慮された内容です。

 その音源を聞いても、まろやかな口調で、人を包み込むような温かさが伝わって引き込まれます。

 

 このような「話し方」について、どのように身につけてこられたのか。

 3月27日号に引続き、今回も表題の書籍のなかから、【高井語録】を集めていきます。

 

  • 短時間に理解させる話の組み立て方  

 「相手の心に残る話し方のためには、出だしはゆっくり話し始めることが肝要。どんなに持ち時間が短いときでも、最初はつたないまでにスピードを遅くして話し始めると、スムーズに話に入っていけることが多いのです。

 とくに短い時間しかないと思うと、つい早口で始めてしまいがちですが、つんのめったようになって、いつまで経っても自分のリズムになりません。一通りの話はできたとしても、相手へのインパクトは欠けてしまうことになります。

 

 次に大切なのが、話の構成です。

 ご存知の方も多いと思いますが、文章の構成や物事の順序を表すのに、『起承転結』『序破急』という言葉があります。

 『起承転結』は漢詩の句の並べ方からきた4部形式の方法論です。スピーチや講演の場合、とくに気を使いたいのが『起』と『転』です。『起』でどれだけ話し手に関心を持ってもらえるか。これに成功すると、あとの展開がずっと楽になります。『承』ですこし緊張を解き、『転』で変化や落差を演出。そして『結』をスピーディに展開します。

 『序破急』は日本の音楽・舞踊・演劇における構成要素を表したもので、3部形式になっています。
 『起承転結』に比べると、スピード感があり、現代向きと言えそうです。
 話の構成も、このどちらかを選んで進めていくと、話が論理的になり、聞き手に理解しやすくなります。

 『起承転結』のなかに、さらにそれぞれ『序破急』や『起承転結』を入れて、論理的な展開や、ストーリー性を、リズムよく持たせる工夫をされたほうがいい。
 この手法は、3分間という短い時間でも同じです。つまり3分であっても起承転結や序破急は必要で、むしろ短いときほど、話の構成の輪郭がはっきりして理解してもらいやすい。

 

 私の話し方をまとめると次のようになります。

 ・あらかじめ話す内容を決め、資料を準備しておく

 ・はじめは超スローテンポで始める

 ・必ず話す時点の直近の話題を盛り込む(枕詞)

 ・序破急か起承転結で話を構成する

 これが短い時間で話をする基本であり、あとは相手、状況、時間などに応じて、その場で臨機応変な対応をすればいいのです」

 

  • 言葉のベルトをかけよ

 「話の上手な人の手にかかると、相手はちゃんと聞いている。これには秘訣があるのです。
 人間は誰でも、実際の年齢とは別に3つの心をもっていると言われています。親の心(ペアレント=P)、大人の心(アダルト=A)、子どもの心(チャイルド=C)です。

 

 小学校に通うようになった女の子がこう言いました。
 『お母さん、私、明日から小学生でしょ。だからお子様ランチはもうやめようと思うの』
 この子は大人の心で話しているのです。この女の子とスムーズな対話をしたいなら、親も大人の気持ちになってA-Aで会話をすれば、噛み合った話ができます。

 

 しかし、子どもを叱るときは、親がCの心になっては通じにくい。やはりPの心で叱らなければならない。なぜなら親の心なら、『とことん諭す』という気持ちになれます。
 ところが、Aの心で叱ると子どもは反発することが多くなるのです。

 最近、親の幼児虐待事件が増えています。これは、親が子どもを叱るとき、
 『この子は私の人生の邪魔をする』
 といった、自分勝手な大人の心で叱っていることが多いからと思われます。

 

 大人だから『わかるはずだ』とか、親・上司だから『こうあるべきだ』と原理原則に固執することなく、『いま相手はどの心でいるか』『自分はどの心で接するべきか』を考えて話をすれば、あなたの話は、思いのほかよく通るようになるはずです。

 話しがうまくいく状態は、両者が調和的な関係にあるときです。これをラポールといいます。この状態になると、お互いの心にベルトがかかったようになり、話がスムーズに運ぶのです。

 

 その状態に持っていくには、以下のような方法があると言われています。

 ・相手のまねをする

 ・相手に関心のあることを示す

 ・相手とラポールが成立しているかを確認する

 ・相手の価値観を知るために質問する

 ・相手のニーズを知るための質問をする

 この方法を使う場合に、相手の心のPACを考慮していれば、話はうまくいきます」

 

  • 個性とは「自分の見解」の披歴  

 「話をするとき、自分なりの個性を出そうと努力する人がいます。
 自己の独自性を出そうという志は買えますが、必ずしも他人と異なった意見を言う必要はない。
 大切なのは『自分がどう考えるか』ということ。最近は誤解して、『人と違ったことを言おう』とする人が増えてきているようです。これでは真の個性化は図れません。

 

 例えばAさんが強力なインパクトを与え相手を説得したとします。Bさんは同じテーマを自分の気持ちに素直に従って話した。結果はごく平凡な話し方になり、聞き手に強いインパクトを与えられず、必ずしもうまく説得できなかったとします。もちろん話し手に対する信頼性は、Aさん・Bさんが同程度だったとした場合です。

 話しが終わった時点では、AさんのほうがBさんよりも説得力で優れていたことになりますが、人間の態度変化(説得の結果)には、時間という要素が加わる。
 時間要素を加味すると、強いインパクトの説得の効果は右肩下がりに落ち込む傾向がある。

 逆にBさんの緩やかな説得の効果は、時間とともに上昇傾向を見せる。

 どちらが有効かは必ずしも言えませんが、契約書を書かせる様な性質の説得だったら、Aさんはクロージングを早くした方がいいし、Bさんはしばらく間を置いてプッシュしたほうがいい。

 

 結果として、話を通じさせるのに、あまり奇をてらう必要はありません。個性だ、独創性だと騒ぐ必要もありません。
 それより自分自身を磨いて、自分自身が考えて、それを素直に出せば、相手は説得できます」

 

  • 二人称で呼びかける  

 「いくら3分間で話し終えたとしても、相手に影響力というか話したことによる一定の効果が与えられなければ、短く話した意味がありません。
 どうしたら、短く話せば話すほど、相手が耳を傾け、効果が出てくる話し方になるのか。

 

 一つは相手を見て話せ、ということです。

 もう一つは、 『呼びかけ法』という話し方があります。この話し方をすると、ふつうの話し方では『他人事』にしか思えなかったような内容が、ガラリと変わり、聞き手自身の身に迫ってくる感じになる。なかなか便利な話し方です。

 たとえば、戦争反対を人々にアピールしたいとき、
 『戦争になれば多くの人が死にます』
 というような言い方では、『そんなこと当たり前だよ』 と思われてしまいがち。これではまったく説得力がありません。

 だが、学校の先生が生徒たちを前にして、
 『私は君たちの一人だって戦場で死なせたくない』
 と言ったらどうか。話の中身がにわかに自分に迫ってきます。

 

 このように二人称で呼びかける話し方は、きわめて『喚起効果』が高く、聞き手を引き込むことができるのです。

 話でも文章でも、言葉を操る場合の優劣は、喚起力がとても大切。
 喚起とは『注意、関心、自覚、良心などを呼び起こすこと』ですが、同じ言葉を使っても、言葉の組み合わせ方や文体で、喚起力はまったく異なってきます。

 『呼びかけ法』というのは、相手に呼びかけるだけではない。こちらの想いや意思、決意を効率よく相手に伝える方法でもある。だからインパクトがあり、聞いた人は感動したり、決心したり、次なる行動を起こさざるをえなくなるのです。

 つまり、身につまされる思いをさせて、イエスかノーかの判断を求めるところにポイントがあると言えるでしょう。
 そうすることで、相手が意志を表明せざるをえない、意志を固めざるをえない、意見を表明せざるをえない状況にもっていくということです」

 

  • 相手を批判するときの心得  

 「話をしていて、批判したくなるときがあります。その仕方が下手だと話がこじれる。こじれると壊れるか、長引くかどちらかです。といって、しなければならない批判もある。早く話を通すためには、批判のテクニックも大切になってきます。
 批判するとき留意しなければならないのは、普段にもまして、相手の面子(メンツ)をつぶさないような配慮が必要です。

 

 絶対してはいけないのは全否定。
 相手を批判するときは、まず批判の前に相手の話のなかから、肯定できる材料を引き出し、その旨を先に伝えておく。それから批判に入るようにする。
 ただし批判する内容に関しては、妥協してはならない。何がよくないか、はっきりと言うべきです。

 

 次に、批判を批判で終わらせないこと。
 そのためには批判したあとに、必ず『建設的』な意見を付け加えておくこと。このような形で批判すれば、相手との関係をこじらせることなく話が進められます。

 たとえば、
 『売り上げが伸びないことについてどう思うか』
 というのも非建設的な質問です。『どう思うか?』ではないのです。

 『現状はどうか?』

 『原因は何か?』

 『対策は何か』

 『そのときのリスクは何か?』

 『何から始めるか?』

 といった具体的な質問が必要なのです。

 

 当事者意識を持ち、建設的な方向へと話を持っていくことが、極めて重要です」

 

  • 自分の話し方を点検する5項目 

  「言葉は誰でもしゃべれるので、その巧拙がもたらす差を意識しない人が意外と多い。
 しかし、人間は言葉で社会生活を営んでいるので、正しい話し方こそが、人生を切り開いていく重要な道具と言っても過言ではありません。話し方を研究して、人を説得し、人から好かれる話し方をしないと、人生はうまくいかない可能性があるのです。

 

 言葉を操るにあたって、私は次の点に気を付けて点検することだと思います。

➀余計な言葉を使っていないか

 人と話をしたあとの自分の気持ちを考えてみればいい。その人と別れて何か心に引っかかるものがあったら、『言い過ぎたのではないか』と疑ってみること。ほとんどの原因が自分の側にある。
 気楽なおしゃべりは別だが、仕事上の会話の場合は、『余計な言葉は極力使わない』という節約発想が大切。特に知ったかぶりの発言は禁句。

 

②言葉が不足していないか

 これは比較的避けられる。事前に言うべき内容を点検し、最低限これだけは伝えるという項目を頭にたたき込んでおく。そのとき『何項目』と数を意識しておくと忘れにくい。

 

③必要以上に言葉を飾り立てていないか

 言葉を飾り付けると、内容がぼやけてくるおそれがある。下手に飾ることで混乱し、誤解、曲解することがある。仕事上の話では、修飾語はできるだけ使わないようにする。  

 

④相手のためになっているか

 これは見落としがちなこと。普段は気づいていないが、人と会って話をするということは、世の中全体から眺めたら、ものすごく縁のあること。世界には60億の人間がいるが、1人の人間が出会う人はほんのわずか。
 しかも親しく話をする機会を持てるのは、僥倖と言ってもよい出来事。『ああ、この人と出会え、話ができてよかったな』と思われるような話を心がけたい。

 

➄自分のためになっているか

 人と話すのは何か目的がある。その目的が常に自分にとってプラスになるかを考えること。もしプラスにならないなら、話をする必要はない。無理に話をすると、ろくなことにならない。話をする前に『これから話をすることはどう自分のためになるか』を点検することが大切。

 

 この5点をいつも念頭に置いて、自己反省する習慣をつければ、おのずとよい話し方ができるようになります」

 

            次回は5月29日(金)に掲載いたします。

引き続き、中国広州在住の私の友人による、中国における新型コロナウィルス対策をテーマとした連載を掲載いたします。

 

【中国在住日本人から見た中国における新型コロナウィルス】
第2回 中国の防疫管理

 

 未だに各国で衰えることのない新型コロナウィルスに関して、前回は一気に封じ込めることに成功した中国における防疫対策についてお伝えしたが、今回はそれを徹底させることができた中国におけるその管理体制についてお伝えする。

 

1.マンション

 春節帰国後には、パスポートの入国日確認・検温を実施。地域やマンションによっては、発熱などなくても2月初旬早々から14日間の自宅待機や外出時の行先報告を義務付けるケースあり。

 

2.高速道路

 料金所で検温し37.3度以上の場合、その後の活動を禁止され自宅待機の上で行動をフォローされる。各種経済負担を考えてか、6月までは高速料金無料。

→2月中徹底、落ち着いてきた3月以降停止。

 

3.スーパーやショッピングモール

 入り口を1つに絞り赤外線検温(接触無)を徹底し、37.3度以上の場合入店不可。

→新増感染者がなくなった4月現在も継続中、高級店では空港同様赤外線カメラで捕捉。

 

4.ジム、マッサージ、ゴルフ場、などの娯楽施設

 開業後もパスポートでの入国日確認、検温、氏名・パスポート番号・電話番号・体温の記載。

 更には、APPによる過去14日以内・30日以内の滞在場所確認(QRコードスキャンにより、携帯画面に滞在国・都市が表示される)。

→2月閉鎖のジムやゴルフ場も3月になり徐々に営業開始。当初はロッカー・シャワー禁止を徹底し、徐々に解禁。

 

5.映画館、コンサート会場など

 人が密集する娯楽施設やイベントは未だ解禁されていない。

 

 例えば、中国における支払いは、全国民が一切現金を持たず全てスマホを活用しWeChat(中国版LINE)-PAYあるいはALLY-PAYにて完了させることを見ても分かるとおり、あらゆる面で強制力・実行力が極めて強い。また、企業・商業施設が一定期間休業指示を受けた場合、日本では休業補償を国に求めるであろうが中国ではそれもない。一方で、非常事態宣言を発令してもロックダウンできない日本は、同じ対策を展開しても同程度の効果は得ることは難しい。しかし、少しでも行政・企業・メディアによる民間への啓蒙と有効な仕組みづくりにより、国民一人ひとりの意識と責任が高まることで、この危機を脱してもらいたい。がんばれ!日本!

 

「明るい高齢者雇用」

第13回 無形の価値認めて―低すぎる熟練対価―

(「週刊 労働新聞」第2159号・1997年7月7日掲載)

 

 「中高年の明るい再雇用のキーワードは『経験を生かしたコンサルティング』です。デパートの家具コーナーにも、家を建てようという人にも、医者にかかろうとする人にも、適切なアドバイスを与えるコンサルタントが必要です。彼等は、自家営業でも、会社組織でも、ちゃんとした『営業』をするフレームワークがあれば、それでいいと思います。

 『電話代を払い過ぎていないか』を調べてくれるコンサルタントを最近使いましたが、大分節約になりました。むろん、もと電話会社の偉いさんでした。

 日本人は『無形』のものにお金を払わないのですが、今後は、こうしたコンサルタントがいかに大切かを悟る時代になると思います。まあ、米国ではこうしたコンサルタント業が繁盛するから“リタイア”も“ハッピー”なのでしょう…」(前回からの続き)。

 これからますます、好むと好まざるとにかかわらず実力主義社会になるが、すべての人材がコンサルタントに向けて精進しなければならないということである。例えば、社長も、他の社長を教え導くことができるコンサルタント的な才能を持ち合わせなければ真の経営者とはいえない、といったことになるのである。

 その意味において、コンサルタントが価値ある存在となるためには、本人の専門性も大切であるが、これを評価する社会風土が形成されることが必要でもある。それは具体的に何かというと、そのコンサルテーションに相応しい報酬が与えられるという社会である。まだまだ日本においては、コンサルテーションに対するフィーは低く、意味のない価値しか認知されていない場合も多いが、実力主義社会、即ち頭脳労働の時代になればなるほど、無形なものへの対価がより強調される時代になることはいうまでもない。

 明るい高齢者雇用を実現するには、若い頃から専門性を身に付けるように努力し、精進しつづけなければならないのである。そして「高齢が若さの衰えというよりは、人生の経験を集約した豊かな表現の領域であること」(朝日新聞編集委員/扇田昭彦「杉村春子さん死去 71歳舞台70年」より)を社会的に認知する時代が到来するよう、各人が期さなければならないし、それは可能なのである。なぜならば、知的能力(IQ)は30歳ごろから下降する(理数系の理論、発見、発明等の業務は殆どの場合20歳代になされている)が、精神(心)面の能力(EQ)は、分別盛りという言葉があるように、豊かな人生経験に基づく判断力であって、社会生活・人間関係にとって大切な資質であり、これは、経年的に豊かになるものであるとされているからである。

 近年、日本においても、定年後にいわゆる「コンサルタント」として活躍するケースが目につくようになってきた。「ビジネスライブの会」は大手企業の退職者が中心となってたち上げた組織だが、ここで働くのは、長年培った経験の下に社会貢献をしようという人たちである。専門知識や人脈を生かし、通訳や就業規則作成などで既に相応の成果を上げていると聞くが、いずれ改めてこの連載でこの様な事例を取り上げたいと考えている。

 

今回より、中国広州在住の私の友人による、中国における新型コロナウィルス対策をテーマとした連載を開始いたします。

 

【中国在住日本人から見た中国における新型コロナウィルス】
第1回 中国の防疫対策

 

 2003年のSARSは北京での封じ込めに成功したが、今回の新型コロナウィルスは武漢で封じ込めきれず、また運悪く春節直前という民族大移動の時期とも重なり、中国全土にそして更には世界中に一気に広まることとなった。

 2004年に初めて中国に足を踏み入れた際には、本来であれば北京で語学研修するはずが前年のSARSの影響で上海に場所を移した。そして、現在は2018年以降3度目の駐在で生活の拠点を広州としており、発生から現在に至るまで中国に駐在している日本人の目線で新型コロナウィルスを捉えてみたい。

 現在の欧米や日本における新感染者急増を鑑みると、中国における防疫対策と管理の徹底振りに目を見張らざるを得ない。2月に一気に封じ込め、3月も気を緩めず継続的に管理を徹底して諸外国からの入境を禁止し、4月初旬には回復を見極めた上で武漢と他地区の行き来を解放した。日本の動きが1ヶ月遅い!そして徹底が甘い!ともどかしく感じていた日本人もこちらには多い。以下中国の具体的な防疫対策事例を紹介する。

 

1.春節休暇の延長

 旧正月休暇(1月下旬~2月初旬)を1週間延期し、企業並びに学校などの休暇中の再開を禁止。

 

2.マスク着用義務

 外出時にマスク着用が義務付けられ、不要不急の外出を控える様に指示。当初はマスク不足もあり、1世帯1日1人のみ買物のための外出する以外は一切外出を控える期間が続いた。

※当初は、地下鉄でマスク着用していなかった男性が、駅員の下車要請を無視し続けたため強制的に降ろされる映像が出回った。

→感染者増のなくなった現在でも外出時のマスク着用は100%義務化されており、マスクをせずに外出している人は皆無。

 

3.企業・教育・商業等活動の管理

 企業・学校・商業・娯楽施設の営業・稼動停止を徹底。スーパーなど生活に必要な施設のみ営業。また、地方政府によっては国の指示を更に強化した施策を展開。

 

(1)企業の稼動

 春節休暇以降も必ずしも春節明けの2/9に再開できず、更に1週間2週間後に再開する企業もあり。また、再開後も在宅勤務・テレワークを推奨し、2月中は原則在宅勤務を徹底していた企業も多い。地方によっては在宅勤務を推奨ではなく強制させたエリアもある。 

→3月初旬からほぼ回復するも、テレワークを推奨し、会議はソーシャルディスタンスを確保。食堂は教室型に机を設置し、決して向き合うことなくしかも一定距離をおき、座る際にはその位置と時間を特定するためのQRスキャンが義務付けられた。

 

(2)学校の休校

 即全校休校、そのまま春休みとなり、4月開校は学校により少し遅らせるところもあり、早期にオンライン授業活用。

 

(3)娯楽施設・飲食店の営業停止

 レストラン・居酒屋などの飲食店、映画館や子供の遊び場などの娯楽施設などは、国の指示を受けて2月中は完全営業停止。

→2月下旬から順次許可を得て一部営業開始。入店前の検温・連絡先記載・署名は必須。レストランは開業当初、お客様同士のテーブル距離を離すなど対応。3月末までには全面回復。ゴルフ場などは、開業後も当面は更衣室・シャワーの使用は禁止。

 

 同じ対策を展開するにも、中国と日本においてはその徹底度合いは大きく異なる。中国は国の強制力が働くが故に早期の回復が実現したことは間違いない。自由度の高い日本において、ややもすると個人任せの状況が続けば危機を脱することはできないと危惧する。国・地方政府・企業・メディアなどからの各種発信や仕組みづくりと、個人が高い意識で対策を徹底してくれることに期待したい。がんばれ!日本!

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第16回】あらためて人間尊重経営の視点をもて(1995年2月3日)

 

 文化とその基礎にある精神性を踏まえて日本人の育成を図らなければならないと思う。文化とは人間性である。

 これからは企業の人間性なくして収益をあげることはできない。平たく言えば、企業文化はカネになる。

 そのとき、経営理念と企業の人間性が重要になる。実力主義、成果主義の中で、人間がモノや道具としてしか扱われないというのは邪道である。企業は人で構成されている。いつの時代でも人間尊重経営でなければならないが、ソフト化時代から心の経営体に少しずつ移行していくにつれて、今、改めて人間尊重の視点が必要になった。

 日本の企業は原則倒産の時代。その中で生き延びていくためには、単に自らの企業に貢献する商品・サービスであってはならない。社会貢献型、人類貢献型、地球貢献型の商品・サービスであってこそ、初めて企業の存在が許される。言い換えれば、これが日本企業が息を吹き返す原動力となる。

 いずれの企業も、この思い入れこそを発信の基本波長にしなければならない。

 

 

「中国の最新事情」
第4回 新型のコロナウイルスについて(3)

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 今回から詳細な数字データの報告を止めることにします。

 既に170以上の国と地域で感染の確認がされている今、日々増加ペース(1日10万人ほど)が加速している感染者数はどこの新聞にも一面に取り上げられているので、ここでもう一度並べるのは遅いし、情報としてはもはや無意味です。

 せっかくですので、この場を借りて、中国のネットで流行っているコロナウイルスに関する情報をお伝えします。今になって、やっと書くことができる内容でもあります。

 次の内容はネットの噂による物で、登場する団体及び個人は実在する団体、個人とはなんら関系ありません。

 2019年12月、新型コロナウイルス(COVID—19)が、まだ、「謎のウイルス性肺炎」と呼ばれていた時、武漢を中心に原因不明の肺炎のクラスターが発生しているのではないかという噂が、既に中国国内の一部のネットで流行り始めました。その後2019年12月28日、“「SARS」新種??”と記載された公文書(診断書)を勤務先の病院で発見した医師李文亮氏がウイチャットを使ってその写真を同窓会のグループに投稿したところ、瞬く間に、中国全土に伝わり、武漢当地の民衆の不安を煽りました。事態の拡散を止めるため、当局公安が李氏を嘘の情報を捏造、流布した罪名で召喚し、特別警告処分が与えられました(李氏はその後、コロナウイルスに感染し、2月7日死去)。しかし、一人の口を塞ぐのは簡単ですが、病状の拡散を防ぐのは容易ではありません。2020年1月から、感染者が続出、ついに死者(1月9日)、外国感染者(1月13日タイ、15日日本)まで出ました。1月23日、発見から一ヶ月半、政府はとうとう武漢市内の人の出入りの制限政策を決めました。

  今になって振り返ると、未曾有の流行病をわずか1ヶ月で突き止め、瞬時に前例のない予防策を打ち出した武漢当局政府の果敢さは称賛に値しますが、一般民衆からの“どうして深刻な状况になる前にもっと早い段階で対策を講じなかったのですか”という声はやはりネット上に後を絶ちません。

 一説として、2019年、2020年の年末年始は、あいにく丁度中国湖北省において一年に一度の最大な政治イベントを開催する時期でした。当該イベントは湖北省全省市民の将来に影響するので、イベントを無事開くことを最優先する武漢当局が意識せず、疫情の重大さを過小評価し、防疫体制の敷設を怠ったのではないか、と言われています。

 もちろん、これはあくまでネットの仮説で、真実ではないと思います。

 しかし、思い起こせば、丁度一世紀前、不沈船と呼ばれたタイタニック号も自らの過信で氷山に衝突し、悲惨な結果を招いたようです。悲劇はいつも繰り返されます(ちなみに、タイタニックには姉妹船が存在します)。

 

 71万と3万3597人、冒頭で記すことを諦めた感染者と死者の数です。これらは、単なる情報や増えていく数ではなく、一人一人の命であることを忘れないでほしい。最優先すべきは命であります。

 

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