「明るい高齢者雇用」
第13回 無形の価値認めて―低すぎる熟練対価―
(「週刊 労働新聞」第2159号・1997年7月7日掲載)
「中高年の明るい再雇用のキーワードは『経験を生かしたコンサルティング』です。デパートの家具コーナーにも、家を建てようという人にも、医者にかかろうとする人にも、適切なアドバイスを与えるコンサルタントが必要です。彼等は、自家営業でも、会社組織でも、ちゃんとした『営業』をするフレームワークがあれば、それでいいと思います。
『電話代を払い過ぎていないか』を調べてくれるコンサルタントを最近使いましたが、大分節約になりました。むろん、もと電話会社の偉いさんでした。
日本人は『無形』のものにお金を払わないのですが、今後は、こうしたコンサルタントがいかに大切かを悟る時代になると思います。まあ、米国ではこうしたコンサルタント業が繁盛するから“リタイア”も“ハッピー”なのでしょう…」(前回からの続き)。
これからますます、好むと好まざるとにかかわらず実力主義社会になるが、すべての人材がコンサルタントに向けて精進しなければならないということである。例えば、社長も、他の社長を教え導くことができるコンサルタント的な才能を持ち合わせなければ真の経営者とはいえない、といったことになるのである。
その意味において、コンサルタントが価値ある存在となるためには、本人の専門性も大切であるが、これを評価する社会風土が形成されることが必要でもある。それは具体的に何かというと、そのコンサルテーションに相応しい報酬が与えられるという社会である。まだまだ日本においては、コンサルテーションに対するフィーは低く、意味のない価値しか認知されていない場合も多いが、実力主義社会、即ち頭脳労働の時代になればなるほど、無形なものへの対価がより強調される時代になることはいうまでもない。
明るい高齢者雇用を実現するには、若い頃から専門性を身に付けるように努力し、精進しつづけなければならないのである。そして「高齢が若さの衰えというよりは、人生の経験を集約した豊かな表現の領域であること」(朝日新聞編集委員/扇田昭彦「杉村春子さん死去 71歳舞台70年」より)を社会的に認知する時代が到来するよう、各人が期さなければならないし、それは可能なのである。なぜならば、知的能力(IQ)は30歳ごろから下降する(理数系の理論、発見、発明等の業務は殆どの場合20歳代になされている)が、精神(心)面の能力(EQ)は、分別盛りという言葉があるように、豊かな人生経験に基づく判断力であって、社会生活・人間関係にとって大切な資質であり、これは、経年的に豊かになるものであるとされているからである。
近年、日本においても、定年後にいわゆる「コンサルタント」として活躍するケースが目につくようになってきた。「ビジネスライブの会」は大手企業の退職者が中心となってたち上げた組織だが、ここで働くのは、長年培った経験の下に社会貢献をしようという人たちである。専門知識や人脈を生かし、通訳や就業規則作成などで既に相応の成果を上げていると聞くが、いずれ改めてこの連載でこの様な事例を取り上げたいと考えている。