「中国の最新事情」
第4回 新型のコロナウイルスについて(3)
高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓
今回から詳細な数字データの報告を止めることにします。
既に170以上の国と地域で感染の確認がされている今、日々増加ペース(1日10万人ほど)が加速している感染者数はどこの新聞にも一面に取り上げられているので、ここでもう一度並べるのは遅いし、情報としてはもはや無意味です。
せっかくですので、この場を借りて、中国のネットで流行っているコロナウイルスに関する情報をお伝えします。今になって、やっと書くことができる内容でもあります。
次の内容はネットの噂による物で、登場する団体及び個人は実在する団体、個人とはなんら関系ありません。
2019年12月、新型コロナウイルス(COVID—19)が、まだ、「謎のウイルス性肺炎」と呼ばれていた時、武漢を中心に原因不明の肺炎のクラスターが発生しているのではないかという噂が、既に中国国内の一部のネットで流行り始めました。その後2019年12月28日、“「SARS」新種??”と記載された公文書(診断書)を勤務先の病院で発見した医師李文亮氏がウイチャットを使ってその写真を同窓会のグループに投稿したところ、瞬く間に、中国全土に伝わり、武漢当地の民衆の不安を煽りました。事態の拡散を止めるため、当局公安が李氏を嘘の情報を捏造、流布した罪名で召喚し、特別警告処分が与えられました(李氏はその後、コロナウイルスに感染し、2月7日死去)。しかし、一人の口を塞ぐのは簡単ですが、病状の拡散を防ぐのは容易ではありません。2020年1月から、感染者が続出、ついに死者(1月9日)、外国感染者(1月13日タイ、15日日本)まで出ました。1月23日、発見から一ヶ月半、政府はとうとう武漢市内の人の出入りの制限政策を決めました。
今になって振り返ると、未曾有の流行病をわずか1ヶ月で突き止め、瞬時に前例のない予防策を打ち出した武漢当局政府の果敢さは称賛に値しますが、一般民衆からの“どうして深刻な状况になる前にもっと早い段階で対策を講じなかったのですか”という声はやはりネット上に後を絶ちません。
一説として、2019年、2020年の年末年始は、あいにく丁度中国湖北省において一年に一度の最大な政治イベントを開催する時期でした。当該イベントは湖北省全省市民の将来に影響するので、イベントを無事開くことを最優先する武漢当局が意識せず、疫情の重大さを過小評価し、防疫体制の敷設を怠ったのではないか、と言われています。
もちろん、これはあくまでネットの仮説で、真実ではないと思います。
しかし、思い起こせば、丁度一世紀前、不沈船と呼ばれたタイタニック号も自らの過信で氷山に衝突し、悲惨な結果を招いたようです。悲劇はいつも繰り返されます(ちなみに、タイタニックには姉妹船が存在します)。
71万と3万3597人、冒頭で記すことを諦めた感染者と死者の数です。これらは、単なる情報や増えていく数ではなく、一人一人の命であることを忘れないでほしい。最優先すべきは命であります。