「明るい高齢者雇用」

第14回 45歳から転身準備―新たな挑戦めざし―

(「週刊 労働新聞」第2160号・1997年7月14日掲載)

 

 戦後誕生した人たちが50歳を超えた。まさに団塊の世代が高齢者となる時代を迎えつつある。間もなく高齢者雇用問題は一気に噴出するであろう。中高年雇用の問題は、単に将来不足する労働力といった問題ではなく、国家財政との絡みがいよいよ加速度的に激しくなるだろう。高齢者雇用を進めなければ、逼迫した年金財政の危機は到底回避できない。現在14.6%の65歳以上の高齢者の比率が、2010年には21%、2025年には27.4%、2050年には23.3%になると、国立社会保障人口問題研究所は推定している。年金支給開始年齢が引き上げられると、60~64歳の労政年金受給者120万人はいわば失業者となる。仮に、年金支給開始年齢が67歳になれば、実に数百万人もの雇用の場を開発しなければならないことになる。少子化の進行も対岸の火事と言えない状態であるから、労働力、特に社会の基礎を支える労働力として、高齢者を活躍させなければならなくなる。高齢者を楽隠居させるには、国家財政的にも、また若者達にも荷が重すぎる。このような追い詰められた状況が、高齢者雇用に「深刻さ」の影を落とし、「暗い」イメージを引きずったものとなる。そのような状況下で、高齢者の雇用を開拓していくことは、まさにパイロットとしての明るい高齢者雇用の実像を紹介することから可能になろう。この項で紹介する人たちを見習い、またそれを踏み台として、高齢者雇用の場を広く深くしよう。明るい高齢者雇用の具体的な事例、成功例を紹介しながら、どの様な留意点が大切であるかを様々な観点から論じていくことにしたい。

 さて、今多くの斡旋機関によって大企業から資本関係のない中小企業への出向が進められている。すなわち大企業の賃金を保障されながら中小企業に雇用の場を見つけるというシステムである。出向という言葉は、官庁から民間へ、大企業から中小企業へ、親会社から子会社へ移るということから、一般に左遷、都落ちの響きがある。本人も意気阻喪することがあるようであるが、これを新しい世界への挑戦、自己能力の発見の場、労働寿命の延長の足掛かりとして捉え、思考の転換を図り、生き生きとした毎日をどう創造するかといったテーマを自身に課していくことで意欲、生きがいが生まれ、人生観、世界観まで変えることになる。そして高齢者雇用の全体を明るくすることにもつながるのである。

 長年習得した技術、経験を生かした人、異業種への転換を決意した人など、いくつかの出向成功例を紹介することにする。

 某大手電気メーカーに在籍したA氏は、品質管理・生産管理などを担当していたが、本社東京の某弱電メーカーの技術管理室長として甲県にある工場へ出向することになった。55歳を超えると転職は難しさを増す。統計上からいえば55歳を境に急激に有効求人倍率が下落するからである。具体的には、50~54歳では0.6倍だが、55~59歳のは0.2倍になってしまうのである。その意味では、いざその時になって準備をするのではなく、45歳から決心して転身を図ることに取り組まねば、およそ成功はおぼつかないと言えよう。

 

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