高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~
【第18回】経営内紛と株主代表訴訟(1995年3月17日)
同族の内紛は他人同士のケンカより激しい。
兄弟の序列が確立しているとか万世一系がよいのだが、現実には、愚兄賢弟で争いが起きる。承継問題で、よく長男と次男に株を分けることが行われるが、原則として兄弟を同じ企業で働かせてはいけない。長男は往々にして親に対して反抗的であり、次男は協調的である。次男は兄貴に対して対抗的だから「敵の敵は味方」になるわけだ。強打宇井一貴に会社を相続させることは親父を中にしてケンカが始まる。
株主代表訴訟は、株主が監査役に対して会社に損害を与えた役員の責任の追及を促すシステムだ。監査役が行動を起こさなかった場合、株主は訴訟が提起できる。公開会社、未公開会社にかかわらず留意が必要。
さて、中小企業では本来の意味で株主代表訴訟がなされている例は少ない。起こり得るとすれば経営権の争奪戦のひとつの手段として使われる。経営内部に内紛があるとき使われる可能性があるのだ。
経営判断の是非が問われる。経営結果の責任を問うのではない。経営判断にミスがあったから責任を問う、という世界だ。ミスがあったかなかったか、ということが課題になる。いまは何をやるにも成功率は従来と比べて格段に低くなっているから、経営判断のミスをつきやすいのだ。
だから、経営判断の妥当性を裏付ける資料を絶えず整えておくことが大切になる。専門家の意見を聞くのが一番いい。その内容を書面で残すこと。そしてその書面について公証役場に行って確定日付をとればなおいい。
株主代表訴訟では、監査役が極めて重要な役割を演じる。なぜ監査役は責任を問わなかったか、が重要な課題になるわけだ。
監査役に閑職意識をもたせてはいけない。飾り物にしてはならない。むしろ勉強家を配置する。そして人柄のよい人を置くことが大事だ。監査役が同時に株主の場合は要注意だ。ひとたび会社と諍いが起これば、一番訴訟を起こしやすい人物になるからだ。