2020年7月のアーカイブ

 

第7回 『仕事で人は成長する』(1)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で4冊目に書かれたのが、本書『仕事で人は成長する』です。

 

 今回の新型コロナウイルスによる雇用状況は、解雇等見込み者数が39,059人になり、(令和2年7月22日現在集計分 厚労省職業安定局雇用政策課 政策調整係)、毎週増加しています。

 

 また、リモートワークは新型コロナ終息後も、働き方改革の一つの選択肢として残る可能性が増えました。その結果として、オフィスが縮小され、社員の居場所も雇用形態も新時代を迎える可能性が増しました。

 

 新型コロナウイルスとは直接関係なく、大手金融機関を始め大企業も、次々と人員削減を発表しています。

 

 このような環境下で、「どのようなビジネスパーソンが生き抜けるのか?」のヒントになるのが本書ではないかと、あらためて思えました。

 

 本書は、ビジネスパーソンとして、人間として、成長するために必要な力を下記の5つに分けて、取り上げています。

 

 「仕事の質を高める力」

 「自分を高める力」

 「人を巻き込む力」

 「時代の流れを読む力」

 「リーダーとしての力」

 

 自分の資質を磨き、能力を高めるために、なにをすべきか?

 仕事を、自分自身の人生におけるキャリアデザインの面から捉える参考になります。

 

 本号も表題の本から、【高井語録】を集めていきます。

 

  • 仕事で差がつく簡単な理由

 「成功した人・評価の高い人と、成功しなかった人・評価の低い人との差は紙一重である。

 たしかに結果からみると、両者の間には、天と地ほどの隔たりがあることが多いが、もともとはそんなに差はなかったと思われる。

 なぜなら、スキルという能力の差ではなく、心の持ちようという量りがたい差が原因だからである。

 

 失敗する人や評価が低い人は、仕事に関して執着心が不足し、あきらめが早いケースが多い。

 完成に90%超えるまで前進しながら、

 『だいたいできたから、これでいい』

 という〝だいたい病“のクセがでる人か、

 『もうだめだ』

 という〝敵前逃亡病“のクセがでる人である。

 

 本来、仕事というものは、最後の10%弱が一番手を抜けないところである。とくに始末が悪いのが、〝だいたい病“の人。自分に甘い点数を付けやすいから、反省がない。だからいつまでも成長しない。そういう人に限って、

 『自分の能力が活かされていない』

 と、上司や回りの人のせいにする。

 

 成功する人や評価の高い人は、最後の数%をやり切り、さらに120%の完成度をめざすから、仕事で磨かれ、成長する。120%とは、相手の期待値を上回る仕事をする人である。そこには満足を超えて感動が生まれる。そうなると、その他大勢と違ってキラリと輝く存在になる」

 

  • 自分をブランド化させる

 「ブランドの本質は、『約束』ということである。ブランドものに人が集まるのは、その製品がいつも変わらぬ価値を備えていると信じられるからだ。信じる理由は、ブランドがその価値を約束してくれているからである。人々はそこに『かけがえのなさ』を感じる。

 

 あなたも、そのような人になることを目指せばいい。

 

 『自分をブランド化させる』という発想で、個人のブランドイメージができてくれば、その自分自身のイメージを裏切れないとの気持ちが出てくる。だれでも必死にそのイメージを守ろうとする。

 その努力が、あなた自身をも成長させるのだ。

 

 これまでは過去の実績が評価の対象だったが、変化の激しい時代は、過去の実績だけを見ても正しい判断はできない。『ブランド力』の重要性が増してきている。

 

 では、どうやって自分のブランドイメージをつくるか。

 

 仕事の中身や個人の資質によって違ってくるが、『安心感』と『満足感』がブランドづくりのキーワードになるだろう。この2つをどうやって相手に与えられるかを、徹底的に考えることだ。

 

 私の場合は、決して空約束をしない。法律の仕事は、簡単に約束できない世界だからだ。だが、同時に依頼者を不安がらせないことも、弁護士の大きな役割であると思っているので、それなりの方法をとる。

 

 絶対ではないにしても、まず解決の道筋を示すようにしている。具体的に道筋を示しながら、

『この峠を乗り越えれば、いつごろには穏やかな平野を展望できますよ』

といった言い方をする。不安感というのは、先行き不透明なときに起きるから、曲がりなりにも展望が開ければ安心感が得られる。

 

 次に、

 『私も一緒に登りますよ』

 と付け加えれば、依頼者は安心感と同時に満足感が得られる。

 この2つを持ってもらうことで、『かけがえのない存在』と評価されることになる。

 

 これが、いわば私のブランドということになる」

 

  • 挫折しない目標の立て方

 「目標設定は活力を生む源泉でもある。目標を持つと行動が始まる。行動が始まると一日が充実する。逆に目標を持たないと、知らないうちに人はいい加減になっていく。

 

 また、目標を持つと人は成長する。目標に向かって邁進することが成長につながる。そんなときに素晴らしいアイデアが生まれたり、新しい情報や知識を吸収する力も出てきたりする。

 

 さらに言えば、目標は人を強くしてくれる。つらい出来事や困難にぶつかったようなとき、くじけてしまう人と頑張れる人に分かれるが、目標があれば乗り切る勇気が生まれて頑張ることができる。

 

 では、どうやって目標を持つか。

 それには自分の好きなことを目標にすればいい。ただし、以下の条件がつく。

 ・まず世の中に役に立つこと 

 ・自分を成長させること 

 ・周りの人を幸せにすること

 

 この3つの条件をクリアすれば、後はどんなことでもいい。目標に向かって努力することは、楽しい作業であるはずだが、途中で挫折してしまう人が少なくない。

 

 挫折しないための方法はいくつかある。

  1つは、目標を鮮明にする

  目標は単なる夢でも願望でもない。具体的な着地点を持ったものだ。それを鮮明にさせて
  おかないと、少しも目標へ近づけない。それで挫折してしまうのだ。

 

  1つは、タイムミリットを設ける

  目標はどんなときでも、はっきりと期限を設ける必要がある。期限を決めない目標では、
  『目標を持っている』とは言えない。期限のない目標は、淡い願望に過ぎない。

 

  1つは、目標は必ず紙に書き出す

  頭のなかにあっても目標は目標だが、紙に書き出すのと書き出さないのとでは、達成意欲
  に大きな差が出てくる。書き出す人はよく目標を達成し、書き出さない人は十中八九ダメ
  と思っていい。そのくらい書き出すことは大切だ。

 

  もう一つ加えれば、分相応より大きめの目標がいい

  そのほうが自分の成長につながるからだ。『大きすぎて達成できないのでは……』という心
  配は無用。まじめに正しく考えて前記の条件をクリアした目標なら、大きすぎることは決し
  てない。安心して目標に向かって突き進んでいけばいい」

 

  • 能力を拡大させる考え方

  「ビジネスを効率的に進めていくうえで、きわめて重要な考え方が、『選択と集中』である。

 そのポイントは、次の3点である。

 

  ・やることとやらないことを決める

  ・捨てるものはさっさ・・と捨てる

  ・集中すべきものに専念する

 

 ふだん忘れているが、私たちの生活は『絶えざる選択の積み重ね』によって成り立っている。

 朝目覚めたときから夜眠るまで、何かの選択をしている。その選択の適否によって、人生は大きく変わってくる。

 

 たとえば、食べ物の選択は体調に影響し、人生に大きな影響を及ぼしてくる。お金持ちになるのも、お金に苦労するのも、自らの選択が大きく作用しているはずだ。その意味では、人間に与えられた最高の特権が、『選択』ともいえる。

 

 だが、この選択をほとんど利用しない人がいる。

 また、誤った選択をしてしまう人もいる。

 

 せっかく正しい選択をしても、集中しない人がいる。

 

 適切な選択を行い、極度の集中力を発揮したら、誰もが信じられないほどのキラリと輝く能力を発揮する。人に潜在能力があるとよく言われるが、それを引き出すのは、『選択と集中』によると考えることができる。

 ガンジーの次の言葉と合わせて考えれば、誰にでも、こういうことも起きて不思議ではない。 

 

 『ひとりの人に可能なことは、万人に可能だと私は信じている』 (ガンジー) 」

 

  • 中途半端な仕事人の小理屈こりくつは信用されない

 「幕末の動乱期に活躍した勝海舟に、次の言葉がある。

 『小理屈で諦めてしまうからダメなんだ。世間は生きている。理屈は死んでいる。死んでいるものが、生きているものに勝つことなど、到底できることじゃない』

 

 物事は中途半端にしてはダメだ。何かを始めて経過がうまくいかないと、すぐ諦めてしまう人がいる。そういう人は、『やめることを正当化する理屈』を必ず言う。もっともらしい理屈が山ほど出てくる。そんな人に限って良い成果が挙げられない。

 

 徹底性という精神は、日本人には欠けているところがある。必要性は認めながら、なかなか徹底してやろうとはしない。そのくせ始めてしまうと、今度はなかなかやめようとはしない。だから過去の大きな変革も、外圧によらねばできなかった。

 

 徹底してやり抜くということは、一方で、先に進めなくなったとき、きびすを返してさっさと撤退することでもある。織田信長は、徹底することにけていたが、逃げ足も速かった。このスピード感が、いまの日本社会には欠けている」

 

  • 自分が自分にだまされる

 「自己啓発のポイントは、小さなことから始めるのがいい。

 最初から大げさなことを考える必要はない。問題は継続できるかどうかということ。

 

 継続の試みとして、たとえば『日本経済新聞の【私の履歴書】だけは1年間読む』と決めることをお勧めしたい。決めたらそれを続ける。クセになって、読まないと気持ちが悪いというくらいまで続けること。それができれば、あなたは小さな成功を経験したことになる。

 

 一度決めたことを継続できないのは、自分の行動に対し疑念や迷いが生じるからだ。

 『こんなことして何になる』

 気が乗らないときは、必ずこんな疑問が出る。そういうときは、

 『決めたことだから』

 ということでいい。決めたことは一種の目標だから、それへ向かってひたすら努力をする。やり遂げるには理屈はいらない。

 

 理屈のほとんどは怠け心から発する。これを称して古人は、

 『怠け者の舌だけは怠けない』

 と言った。まさにその通りで、『ほかにやりたいことが出てきた』など、『やらない』ための言い訳が山ほど出てくる。不思議なのは、どれももっともらしく感じられること。それで自分が自分にだまされる。

 

 怠け心を克服するには、試練をゲームのように楽しむクセをつけるといい。ゲームと言うのは意図的に試練をつくって、どちらがそれをうまく克服するかを競うものだ。

 ルールとは試練が姿を変えたものに他ならない。それでいてゲームが楽しいのは、試練を克服することが楽しいからだ。この原理を実生活にも取り入れてみればいい。

 

 継続性を奪うものは、怠け心のほかに、突然訪れる状況の変化もある。いわゆるピンチである。そういうときは対処できないと思うかもしれない。だが、ひとつ良い考えがある。それは、『時にゆだねる』ことだ。

 

 一時的に中断を余儀なくされても、柔軟に事実を受け入れ、またしぶとく始める決心を固めればいい。継続を、あまりマニアックに考えないこと。継続は断続でもいいのである」

 

  • 威張っている人は終わった人

 「『春風を持って人に接し、秋霜を持って自らを慎む』

これは江戸後期の儒学者・佐藤一斎の言葉である。他人に優しく、自分に厳しくあれという教え。

 

 しかし、実行となると意外と難しい。いざ人に接すると、自慢したり威張ったりしてしまう。だが、自己成長のためには、これは一番よくない。

 

 なぜかというと、人の成長は「他人によるところ」が大きいからである。もし周囲に他人がいなければ、成長の契機がつかめない。

 それなのになぜ威張るのか。

 

 謙虚さを見失って、自分を高いところにおいてしまうからである。高いところから見下ろすと、威張るしかなくなる。『バカは高いところに登りたがる』とはそいう意味である。

 

 どんな形であれ、威張っている人を見たら、『終わった人』と思って間違いない。

 なぜなら威張るということは、『過去自慢』にほかならないからである。過去のものだから、道行く人はあまり見ようとはしない。だから、自分から声を大きくして見られることを促しているのだ。

 

 威張る人とは、自分から成長を断念した人と言える。成長していくためには、学ぶ姿勢と同時に謙虚さがどうしても必要だが、それがないのだから、成長するはずがない。

 気を付けたいことは、誰でもこのような人間になるということである」

 

 次回は8月28日(金)に掲載いたします。

「明るい高齢者雇用」

第16回 キャリア総合化へ―新たな「道」を開拓―

(「週刊 労働新聞」第2162号・1997年7月28日掲載)

 

 次に紹介するB氏の事例は、もともと従業員5,000人の大手化学メーカー国際部所属の男性(58歳)が、従業員100人余のコンピューター部品製造メーカーのタイ工場責任者として出向したケースである。B氏は、かつて2度、7年間にわたりタイに赴任した経験を生かし、また永住を考えるほどのタイへの思い入れから、60歳定年後には出向先に転籍し、現地責任者として勤務し続ける予定と聞く。

 B氏は昭和12年11月生まれであるから、間もなく60歳を迎えようとしている。昭和28年に中学卒業と同時にM造船所に溶接工として入社し、併せて同社の技術学校へ入学した。昭和32年に同社を退職して県立高校へ転入、昭和34年には国立大学経済学部に入学し、昭和38年に同大学を卒業後、前期の大手化学メーカーM化学に入社したのである。同社九州工場の経営企画を振り出しに、東京本社調査部、事業開発部などで経営資料の作成・事業調査・新製品開発の経済性計算等、一貫して経営企画、調査畑の業務に従事した。

 昭和49年6月から昭和52年2月までの2年9ヵ月間、同社のタイの合弁会社(繊維紙加工剤製造)に現地法人社長として赴任し、会社設立から工場建設までを担当したという。

 その後本社に帰任し、経理部門・営業部門等で部長に昇進したが、平成3年6月にふたたび上記とは別のタイの合弁会社(樹脂関連の製造業)に社長として赴任し、前回同様設立から担当して、4年2ヵ月を同地で勤務することとなった。平成7年7月以降は、本社国際部に在籍し、東南アジア合弁会社管理関係の業務を担当していたという経歴の持ち主である。

 出向先である日本S工業株式会社は、コンピューター用精密部品等の製造を事業内容として1961年に設立し、現在資本金5,000万円、年商36億円、従業員125人。典型的な大手企業の下請会社で、岡山県に工場があるが、大手メーカーの工場海外移転に伴い既にタイで合弁工場を稼働中である。280人のタイ人労働者と日本人の現地会長副社長および3人の技術者で運営している同社は、副社長を補佐し工場全般を管理する工場長として、海外工場の管理職経験者でタイ語を話せる人を求めていた。

 B氏は55歳の時に役職定年を迎え、既にラインの長ではなくなっていたが、会社の社外出向施策と本人の2度赴任したタイへの強い愛着から、定年60歳以降の再雇用を含め、タイで働く仕事を探したいとしていた。平成7年にタイから帰任した直後から人事部門へその旨を申し出て、すぐに日本S工業のタイ工場責任者として出向することになった。

 中小製造業の海外移転が増加するなか、工場長経験者は引き合いが多いと聞く。ことにB氏のように実際に海外への赴任経験があり、かつ国内でも多面的なキャリアを積んだとなればなおさらのことであろう。このことは今盛んに言われる“複線型人事”の先の「キャリアの総合化」の重要性を物語る。管理職は管理職として、専門職は専門職としてその領域を固めるのではなく、一定の年齢に達したならば、それまでのキャリアを棚卸して、さらに別の途を準備することが必要となるのである。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第19回】著者は年功序列よりも実力を評価されることを望んでいる(1995年5月18日)

 

 リクルートが7,000人を対象に調査した結果によると、「独立して仕事をしてみたい」と答えた人は42%超。その内4分の1は「すぐにでも独立したい」か「近いうちに独立したい」と答えた。

 日本の経済は沈没の方向に向っている。このことは社長フォーラムで論証し続けてきたとおりだ。国に対する信頼が失われ、同時に企業に対する信頼も失われつつある。

 企業も成長が止まる、衰退が始まる、社員数がどんどん減る。企業とともに歩んでいけば自分も小さくなっていく、という不安感、焦燥感。その一方で、しかし人間である以上、自律心、向上心を持っている。それ故に独立志願が強くなる。

 皆さんの会社の社員100人中42人が独立したいと思っている。専務が、あるいは営業部長が独立するかもしれない。社長は、この調査結果を意識して経営にあたらないといけない。

 再就職するとしたら、半数強が「年俸制の会社を希望」という記事がある。富国生命が20歳~59歳のサラリーマン500人を対象に行った調査結果だ。

 これまで日本的経営として特徴づけられてきた制度の崩壊を目の当たりにしたサラリーマンたちが、意外にしたたかな考えを持って変化に対応している様子が読み取れる。

 例えば、年俸制が導入された場合、自分の年収が「減る」と見るのはわずか6%弱。「同じくらい」が約半数の53%を占めるものの、「増える」が40%にものぼり、自負(うぬぼれ)のほどをうかがわせる。

 再就職するとしたら、「年功序列の会社」(42%)よりも「年俸制の会社を希望」(52%)の方が多い。自分の実力を正当に評価される企業で働きたいという風潮が強いのだ。年俸制の会社の方が若者たちに歓迎される。これは独立志願が4割強いるのと同じこと。社員にどのようにしてやり甲斐という希望を与えるかが、企業経営者の課題となる。

 

 

「中国の最新諸事情」
第7回 6月から続く豪雨

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 中国では最近大雨が続いています。

 中国国営の宣伝部によると“四川省が80年ぶりの大雨に遇いました”、“その大雨の影響で各地域を合わせて、既に1000万人以上が被害に遭っています”。“数十年ぶりの大型豪雨に苦しんでいる、中国南部地域を中心に26の省、市、自治区を直撃し、甚大な水害をもたらしています”などの報道が相次いでいます。

 6月24日、中国人民日報も“雨が傾くように降り続く”という題を記事にし、6月に入って、豪雨により各地で洪水災害対応レベルをⅣ(最高級)まで切り上げました。

 問題は、その“未曾有”“歴史級”と言われる雨がまだ降り続いていることにあります。6月2日から、ほぼ毎日雨が降っていて、今日(7月3日)まで、一切止む兆しがありません。統計によれば、既に家や建物9300軒が崩壊し、直接的な経済損失だけで241億元(4000億円)に達しました。

 こうした中に、国外メディアから中国水利の奇跡と言われたあの三峡ダムが決壊危機に迫るのではないかという心配の声がまた上がってきました。

 三峡ダムは、中国のみならず、世界最大の水力発電ダムであり、全長は570kmにも及びます(東京から大阪までの距離は550kmです)。年間発電力はおおよそ1000億kwhで、この一つのダムで中国の年間総発電量の5分の1を占めます。

 三峡ダムに纏わる不祥事の声は、竣工当時から出ていました。設計ミスとか、欠陥工事などの見解は後を絶ちません。一定期間ごとに、カレンダーを巡る度に、ネットや外国メディアにより提起されてきました。2009年から10年間の間ずっと、本当に暇な人達です。まさに「隣の芝生は青い」ならぬ、「となりのダムは脆い」という発想です。

 こういうノストラダムス達に言いたいのは、時代は変わったということです。机上の空論からは何にも生み出せません。もちろん、私はテクノロジー至上主義者ではありません。自然に絶対勝つ、何も絶対に発生しない、というようなことは言いません。形あるものはいずれ崩れるでしょう、想定外の災害に遭遇したダムは今まで以上危険に曝されているでしょう。しかし、中国の政府、中国の人民達は必ず全力を尽くして、最善の方法でこの困難を乗り越えるでしょう。今までのように、これからも同じように。

 

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