2020年8月のアーカイブ

 

第8回  『仕事で人は成長する』 (2)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が出版で読者に伝えたい思いは、次のことでしょう。

 

 「読者の心が温まり、自分を高めるヒントになれば嬉しい」

 「チャンスはいつも、あなたの前を行ったり来たりしている」

 

 前回7月31日号に続いて、本号も表題の本から、このような環境下でも、ビジネスパーソンが生き抜くヒントになる言葉を選びました。

 

 

  • 進化する女性、退化する男性

 

 「男性は退化し、女性は進化していると言われている。

 

 第1に、ほとんどの企業の入社試験で、上位の成績を占めるのは女性である。

 

 第2に、女性は自己投資に余念がない。キャリアアップの有料の研修を自費で受けるのも、女性が圧倒的に多い。男性は身銭を切って研修を受ける人は少ない。

 また、いつまでも輝いていたいために、美しくあろうとすることに貪欲で、スポーツジム、ヨガ、岩盤浴、マッサージなどの情報収集にも余念がない。

 

 第3に、女性の方が情報交換の時間を持つことに積極的である。男性は成果主義によって仕事に追われ、情報交換が途絶えがちになっているという。

 

 第4に、女性はそれなりのポジションが少ないために、チャンスを得ようとキャリアアップを常に心がけているが、男性は意識的・集中的にも勉強しない。

 

 このように意欲を持った女性が、残念ながら管理職として伸びていないのは、言うまでもなく、日本が男社会であるということが背景にある。しかし、そのほかに、子どもを産み育てる性として、女性に本来的に備わっている特長が、原因していると思われる。

 

 そこでは当然のことながら、庇護、つまり自らを守る、自己愛という防衛意識が非常に強くなる。

 その結果として、仕事を他人に渡さず、自分で取り込んでしまうのである。ということは、とりもなおさず、マネジメント力を失うということにつながる。マネジメント力とは、牽制と互助を前提とするが、自分で仕事を取り込んでしまうと、その必要もなくなってしまう。

 

 そこに実は、女性の管理職が数多く現出しないという根本理由があるように思われる。

 これを打破するためには、女性が仕事を他人に任せること。そして、指揮・監督する手腕を身につける必要があるように思えてならない」

 

 このことは、管理職として成長するためには、男性にも欠かせないことと言えます。

 

 

  • 教養の有無で差がつく時代になる

 

 「温故知新という言葉をご存知の方は多いだろう。昔の事柄を研究・吟味して、新しい知識や見解を得ることをいう。『論語』に出てくる言葉である。時代がどんどん進歩し変化していく時代、私たちの目はとかく未来へ向けられがちだが、その目を確かなものにするためには、古い時代を振り返ってみることも必要だ。

 

 とくに古典と言われる書物、絵画、音楽、趣味、嗜好などは、長い年月残ってきたという一事を以ってしても、触れてみる価値がある。そしてそのような価値を、自分のものにすることが、すなわち『教養を積む』ということである。

 

 頭脳がものをいうソフト化時代は、仕事の能力が際立っていれば、一定の業績を収めることができる。しかし、これからの心の時代においては、人の心に触れることのできる人でなければ、良い結果は得られなくなる。

 そのためには教養を積んで心を養っておかないと、心の栄養失調になってしまう。

 

 爆笑問題の太田光さんが最も影響を受けた人物として挙げている亀井勝一郎氏。彼は、

 『若い男性は教養程度が低くなったので、目立つものしか心かれない。発見する能力を失ったのだ。女性もまた、教養程度が低くなったので、目立つようにしか化粧しない』

と言っているが、耳が痛い人もいるのではないだろうか」

 

 

  • 「他者評価」を高める正々堂々

 

 「評価には、客観的と主観的な評価があり、別の視点として、自己評価と他者評価がある。

 成果主義時代の評価は他者評価が軸となるから、個人としては他人にできるだけ高く評価してもらえるように、成果をアピールしたほうがいい。

 そのためのポイントは2つある。

 

 第1のポイントは、たしかな実力を何か一つでいいから、身に付けておくことである。

 ちょっとやそっとでは代わりが見つからないスキル・内容で、仕事に役立つものがいい。

 それを自分の売りにする。そのためには、『彼はこういうことができる』と第三者が見て評価できるように、それを外部に表出することを忘れてはいけない。

 

 第2のポイントは、正々堂々としていること。

 人は他人を評価するとき、いくつかのモノサシ(損得・親疎・上下・適否……など)を持っている。

 だからこそ、全方位的にあらゆる人に好印象を与えるつもりで振る舞うのである。それがいろいろなモノサシによい影響を及ぼす。といって、何もおもねたり、迎合する必要はない。

 

 そういう振る舞いになると、おのずとすること・・・・は限定されてくる。善意とか、明るさ、公平さ、勤勉さ、正直さといったことしかできない。それでいい。極端な話、あなたが『職場で1番、正々堂々としている人』のレッテルが貼られれば、それだけで十分である。

 

 容易に代替えの利かないスキルと、全方位的な好印象。

 この二つが他者評価を高める武器となる。あと大切なことはブレないことである。360度評価の時代、とくにリーダーになればなるほど、これらが求められる」

 

 

  • まず感じる! それから考える!

 

 「私たちは『わかっている』という言い方をよくする。『わかっている』と相手から言われると、『理解しているのだな』と思ってしまうが、ここで安心してはいけない。聞いてわかっているのと、見てわかっているのとでは、理解度に天地の差があるからだ。

 

 私は1日に300枚くらいの仕事上の書類を読んでいる。読めば、『なるほど』と思う。しかし、それだけではダメだと思って、弁護士や秘書と打ち合わせをする。直に会って打ち合わせするのだが、その場にいなければ電話で打ち合わせる。

 そうやって書類を読んで、理解したことを補強する。

 

 しかし、それだけではまだ不十分である。 やはりクライアントとの打ち合わせの場に出ることだ。仕事は常に現場主義だと信じている。

 なぜかというと、頭で理解するほかに、五感でも理解しなければ正しい判断ができないからだ。

 

 現場には、目に見える情景、耳に聞こえる音、鼻が感じるにおい、肌や味覚まで迫るものがある。そういうものが大切な判断材料だ。五感を働かすには現場に立ち会う以外に方法はない。

 

 〝Don’t think,feel “ という言葉がある。『考えるな、感じろ』ということだ。

 私は、『仕事は、まず感じて、それから考える』を求めている。これをクリアするには、現場に出ることが必須になってくる」

 

 

  • 想定の範囲内に未来はある

 

 「未来予測というものは当たらない、と思っている人が多いようだが、詳しく調べてみると、案外当たっている。ここまで文明が進歩してくると、どんな未来も、誰かが想定した範囲内に収まると言ってよいと思う。

 

 その意味では未来を予測することは、なかなか楽しい。

 

 ピーター・ドラッカーは、近未来を予測して言い当てるのがうまかった人だが、彼の未来予測に、

  『今後の企業はフラットな組織に変わっていくだろう』

というのがある。これは既にそうなりつつある。社長から平社員までの階層が少なくなってきた。

 

 なぜなら、情報共有の結果、みんながそれぞれの立場で考える必要が出てきたからである。

 昔は考える人と実行する人が分かれていたが、今はそれでは対応が遅れてしまう。

 組織はフラットになっていかざるを得ないわけである。

 

 未来を見通すには、現在をつぶさに観察して、洞察して推理力を働かせることだ。そして近未来を予測してみる。

  『想定の範囲内』と言えない人は、現在の情報に疎く、また近未来に対して洞察も推察もしていないということになる。想定することがなぜ大切かというと、自分の能力と情報知識を動員することで、未来を見通すことができるからである。

 

 未来を見通すということは、『こうであったらいいな』という夢を語ることではなく、現在と地続きのなかで、自分がどこに位置し、何をするかを考えることだ。

 

 ドラッカーが、『近未来は現在に必ず萌芽ほうががある』と言ったのは至言である」

 

 

  • 決断と責任の修羅場をくぐりなさい

 

 「大正から昭和前期に活躍した経済学者・河合栄治郎は次のように言っている。

 『われわれを成長させるものは、人生における悪戦苦闘である』

 ビジネスの世界で一定の業績を挙げた人は、たぶんこの言葉にうなずくはずだ。要するに成功した人は、みんな修羅場をくぐっているのである。

 

 修羅場をくぐるとは、場数を踏み、時には矢玉に当たってみることだ。

 

 場数を踏むとは、実務で求められる能力の判断力・決断力・実行力をつけるチャンスを多く味わってみることである。

 またビジネスの矢玉とは、『責任を取る』ということである。

 この2つを数多く経験するのが、ビジネスにおける修羅場をくぐるということになる。

 

 成長したいと思うなら、『自分探しをする』などとのんきなことを言っていないで、目の前の現実にどんどんぶつかってみることである」

 

 

 『1勝9敗』(新潮文庫)の著書があるユニクロのオーナー・柳井正さんは、上記にあるように、数多くの修羅場をくぐって、場数を踏み、矢玉に当たってきました。

 

 そして絶えず、今でも、仮説・現場・検証を繰り返しながら、挑戦し続けているのです。

 それらの体験・経験から、胆力が生まれ、判断力・決断力・実行力を磨いてきたのでしょう。

 柳井さんは言っています。

 

 「どんな仕事の失敗も、挑戦し続ける人間の勲章だ」と。

                                 

次回は9月25日(金)に掲載いたします。

 

「明るい高齢者雇用」

第17回 キャリア総合化へ―新たな「道」を開拓―

(「週刊 労働新聞」第2163号・1997年8月4日掲載)

 

 B氏は中卒で就職し、一念発起して高校に入学、さらに国立大学を卒業した信念の人である。この経歴からも同氏は向上心の固まりであるといえるが、高齢になって海外で職を得るには、自立心・連帯心・向上心が日本企業で勤務する以上に要求されることは言うまでもない。

 また、管理部門系ではあるが2度のタイ赴任で合弁会社の設立から工場立ち上げ等の十分な経験もB氏の転職に極めて役立った。とりわけタイ語の能力が現地の文部省検定試験を持っているほど高レベルにあると同時に、これを習得する努力を続けてきたことが、タイの工場責任者として現地・現場に馴染む能力を有する裏付けとなっている。現地に溶け込む姿勢こそが、海外に限らず明るい高齢者雇用の必要条件であることを示している。

 さて「国際化」は、現地人とのコミュニケーションが十分にできて初めて可能である。超然として、英語あるいは日本語で現地人に話し続けるといった姿勢は、結局はコミュニケーション不足となり、喜怒哀楽を共にしない存在として相手にされないことになる。なぜならばコミュニケーションは相手の話をよく聞くことに始まるからである。B氏がタイ語能力について正式な資格を有しているということは彼の向上心の反映でもあるが、そのことが結局は現地工場を的確に運営することに大いに役立ったのはいうまでもない。

 B氏は、60歳まではM化学からの在籍出向であったため、本人の年収(現在は1,000万円強)に影響しなかったが、60歳以降はS工業に転籍し、年収800万円となったという。結局のところ、本人の旺盛な向上心といった資質によるところが大であるが、それを可能にする土壌もまた大切である。この場合、M化学の人事部が当人の定年前の出向に積極的であったこともB氏が新しい職場を得たことに寄与しているだろう。明るい高齢者雇用は、本人の資質のみならず、企業をはじめ周囲の支援があってこそ可能になる。活躍の場をグローバルに捉えて海外へ飛び出すことは、語学の問題から万人に通ずる訳ではないが、B氏の場合は若い年代からの体験と柔軟な思考力が大きくプラスした例である。

 B氏の例にみるように、出向の効用は少なくない。請われて出向先に赴くのであれば、まずもって本人の活躍の場が確保されているからである。社内で閑職に留まり、鬱々として退職まで過ごすのか、新たな機会を捉えて転身を図るのか、答えは明白であろう。能力に「定年」はないのである。

 何かと後ろ向きな印象を与えがちな出向を、もっと見直すべきであろう。そのためには本人の意識の喚起、すなわち自分のキャリア形成の場が社内のあるのか社外にあるのかを定年がちらつく前の段階で考慮に入れておくことが重要である。一方、会社側としては社員が出向を積極的に受け入れる土壌を作るために、キャリアを積む過程で常に選択肢を複数持てる環境作りを制度として設ける必要がある。労働市場が未発達な日本において相場観を持つのは容易ではないが、一定の年齢に達するまでに、いかに有益な経験を積むかが出向の成否を分けるような気がしてならない。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第20回】分社経営のポイント(1995年6月19日)

 

 分社経営は権限分配の極みである。

 組織は目標を実現するためにある。それには絶えざる活性化が必要だ。活性化は競争原理を激化させることだが、競争しながらお互いに助け合わなければならないという難しさがある。分社経営は、うまく機能すればその役割を果たす。

 権限を委譲するにあたっては、その前提としてホウレンソウ(報告・連絡・相談)というタテの意思疎通をシステムとして確立すること。またヨコの意思疎通の仕組みとして、合議制の充実をはかることが大切だ。

 社長は、分社の社長に予め期待値(経営目標)を決め、提示しなくてはいけない。それで競争原理を機能させる。全分社を競わせ、目標を達成することによって充実感を体感させるシステムである。分社政策をとるときは、本社社長の支配権を忘れないこと。特に人事権、解任権を堅持しなければならない。したがって分社の株式の3分の2以上持つことが不可欠だ。できることならキーとなる分社は100%の株式を保有すること。

 分社の社長に株を持たせないとやる気が起こらない、というのは一見正論のように聞こえるが、惑わされてはいけない。株による支配権の確保を十分に意識する必要がある。

 また、経理担当者に意を用いること。本社ですべての経理をやっているところもあるが、それでは分社意識が希薄化する。分社ごとに経理担当者を配置した方がいい。

 分社する部門は自立できる部門、一定のスピードで走れる部門でなくてはならない。今は力不足だが分社したらうまくいくだろう、という考えは間違いだ。走る能力がある部門を分社したら、もっと速く走れるようになる。

 

 

「中国の最新諸事情」
第8回 世界的大企業が詐欺に遭う

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 最近中国の面白いニュースを紹介します。先月中国IT企業最大手のテンセントが3人の詐欺師によって、多額の金銭を騙しとられたことが明らかになりました。
 ことの発端は、中国の最大手IT企業「テンセント」が調味料業界の大手「老干媽」を起訴し、仮差押をしたことです。その理由は、テンセントと老干媽の間で去年から締結していたインターネットCM契約で約定したCM料金が振り込まれていないことでした。テンセントの訴状の中には、その一年間被告のために、数多くCMを作成、ネット上大量の関連商品を販売したにもかかわらず、被告が約定した報酬金おおよそ1600万元(日本円に換算して2億4000万円ほど)が一切支払われていないことが書かれていました。

 非常に明白な事実で争いのない案件とみんな思っていましたが、話が思わぬ展開を見せました。
 実際、裁判での「老干媽」の反論理由は実に簡単で、シンプルです。今まで一度もテンセントにCM依頼どころか、業務連絡をしたことすらないというのです。
 審判を進めると、テンセントが騙されたことが発覚しました。しかも、調べによると、テンセントを騙したのが学歴、技術、特別な権利など何ももってない中年3人組だったのです。その目的は莫大な契約金ではなく、テンセントが運営しているネットゲーム内の課金道具だそうです。ゲーム内の架空の物のために、中国最大手の2社を巻き込んだ詐欺ということで、瞬く間にネット上で話題沸騰となりました。 

 一般人としては笑って済ませるような話ですが、弁護士の私から見れば、数千名以上の弁護士を擁する現在世界屈指のIT会社が、3名の民間人にこんなに簡単に騙されたことは、蟻が象を倒したみたいに感じられます。教訓として覚えておかなければなりませんね。

 

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