「中国の最新諸事情」
第8回 世界的大企業が詐欺に遭う
高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓
最近中国の面白いニュースを紹介します。先月中国IT企業最大手のテンセントが3人の詐欺師によって、多額の金銭を騙しとられたことが明らかになりました。
ことの発端は、中国の最大手IT企業「テンセント」が調味料業界の大手「老干媽」を起訴し、仮差押をしたことです。その理由は、テンセントと老干媽の間で去年から締結していたインターネットCM契約で約定したCM料金が振り込まれていないことでした。テンセントの訴状の中には、その一年間被告のために、数多くCMを作成、ネット上大量の関連商品を販売したにもかかわらず、被告が約定した報酬金おおよそ1600万元(日本円に換算して2億4000万円ほど)が一切支払われていないことが書かれていました。
非常に明白な事実で争いのない案件とみんな思っていましたが、話が思わぬ展開を見せました。
実際、裁判での「老干媽」の反論理由は実に簡単で、シンプルです。今まで一度もテンセントにCM依頼どころか、業務連絡をしたことすらないというのです。
審判を進めると、テンセントが騙されたことが発覚しました。しかも、調べによると、テンセントを騙したのが学歴、技術、特別な権利など何ももってない中年3人組だったのです。その目的は莫大な契約金ではなく、テンセントが運営しているネットゲーム内の課金道具だそうです。ゲーム内の架空の物のために、中国最大手の2社を巻き込んだ詐欺ということで、瞬く間にネット上で話題沸騰となりました。
一般人としては笑って済ませるような話ですが、弁護士の私から見れば、数千名以上の弁護士を擁する現在世界屈指のIT会社が、3名の民間人にこんなに簡単に騙されたことは、蟻が象を倒したみたいに感じられます。教訓として覚えておかなければなりませんね。