2020年9月のアーカイブ

 

第9回  『高井式 一生使える勉強法』(1)
成長モードにスイッチする

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 勉強熱心な経営者として知られ、その経営力においても、お人柄においても、高井伸夫先生が心から尊敬してやまないお一人に、日清製粉7代目社長の正田修さん(上皇后美智子さまの実弟)がいます。

 

 正田さんご自身が旨とされている「学び」のポイントは次の三つであり、どの一つが欠けてもいけないとおっしゃっています。

 

 ①「人から聞く」「参考文献などを読む」「現場などを見る」

  これらをしなければ、我流・ひとり合点に陥ってしまう。

 ② 「自分の頭で考え抜く」

  自分の頭で考え抜かないと、結局は借り物の知識になってしまい、自分の意見として実行するという本物の迫力を欠いてしまう。

 ③ 「自分で実際に行動して覚える」

  行動が伴わなければ、ビジネスパーソンではなく、ただの評論家になってしまう。

 

 「勉強に対する素晴らしい名言です。このような行動習慣を持ち続ければ、必ず大きな成果をもたらすはず」と先生は明言されています。

 

 

 本号は、かんき出版で先生が執筆された表題の書籍から、下記に格言や名言を紹介します。

 

 

  • 「よく生きる」ために年齢に応じてどのような意識で勉強すればよいのか

 

 『論語・為政第二』に次の有名な言葉があります。

 

 「子曰わく、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順したがう。七十にして心の欲する所に従えどものりえず」

 

 ・15歳までに「学問に志す」ための勉強をする

 ・30歳代までに「思想や見識を確立する」ための勉強をする

 ・40歳代までに「心の惑いがなくなる」ための勉強をする

 ・50歳代までに「天から与えられた使命を自覚する」ための勉強をする

 ・60歳代までに「何を聞いても耳に逆らうことのない」ための勉強をする

 ・70歳代までに「自分の欲望のままに振舞っても、その行動が道徳からはずれることがない」だけの勉強をする。

 

 

  • 人は何のために一生勉強するのか

 

 「若くして学べば、すなわち壮にして為すにあり、

  壮にして学べば、すなわち老いて衰えず。

  老いて学べば、すなわち死して朽ちず」

 

 江戸時代の儒学者・佐藤一斎の言葉です。充実した人生を過ごすには「生涯勉強」ということ。いま大切なことは「勉強するか、しないか」ではなく、「いかに勉強を続けられるか」といえます。

 

 

  • 成果主義の導入で、評価基準が変わった

 

 「知識より、変化に対応する思考力、企画力、創造力などが重視される時代になった。
 仕事の成果を測る物差しそのものが変容した」

 

 その結果、企業は頭脳労働を重視し、そのときどきの成果に着目するというアプローチをとらざるを得なくなりました。過去にあげた業績や豊富な経験も、それのみでは意味を持たない。それに意味を持たせるには勉強しかありません。

 

 「人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。

 ただ学問を勤めて物事を良く知るものは、貴人となり富人となり、

 無学なるものは、貧人となり下人となるなり」

 

 福沢諭吉は『学問のすゝめ』のなかで、こう述べました。厳しい言葉ですが、この本質は、今の時代も変わっていません。これから先、勉強しない人は確実に淘汰されていくでしょう。すでにそうなってきています。

 

 

  • 勉強とは最初の一歩をまず踏み出すこと

 

 「興味は仕事に伴って、またその最中にもっとも湧きやすい。

  だから、気が向かないなどを口実にせず、

  毎日一定の時間を仕事にささげることである」

 

 哲学者ヒルティの言葉ですが、「仕事」を「勉勉」に置き換えても、まったく同じです。

 

 

  • 新聞は、読む順番にコツがある

 

 「新聞は知りたいことを知るための媒体というよりも、〈世の中の動きを全体的に捉える〉〈知らないことを知る〉ための媒体として捉えるべき。そういうつもりで読んでいくと、大局観が養われる」

 

 以下に新聞の読み方のポイントを挙げておきます。

 ①必ず一面から順繰りに、見出しを眺めるように全面を見る

 ②読むべきと思った記事は詳しく読む

 ③広告面にもざっと目を通す

 ④コラムやエッセイを重視する

 ⑤ 注目記事は切り抜くかコピーをとる

 

 この地道な手順、作業が勉強の基礎になります。

 このような方法で新聞に目を通すと、あなたは前の日の地球上で起きたことの概略を、鳥瞰的に眺めたことになるのです。

 

 着眼大局、着手小局といわれるように、大局観が養われると、自然に「世の中はこんな風でいいのだろうか」「近未来はこうなるから、こんなビジネスが出てくるだろう」という大所に立った考え方ができるようになります。

 

 そして実際に行動に移すときは、一つひとつ細かいところにも、着実に手をつけていくことが望ましいのです。

 

 

  • 教えることで、教わることがいっぱい

 

 「教うるは学ぶの半ばなり」 (中国古典・書経)

 

 これは孔子の言葉です。人に教えるということは、半分自分が学ぶということだ—と。

 もっと勉強したいと思っている人は、人に教えることを考えたらいいと思います。最高の勉強法です。人に教えるとなると、いやでも自分で調べて勉強するようになるからです。

 

 「こちらに〈知りたい〉〈勉強したい〉という強い願望があって、

 なおかつ教えられるのではなく教える立場に立つ。

 そうすると、知りたい願望と教える責任感が、咀嚼そしゃく力を高める」

 

 人と対話をしているときに、不思議に独創的なことを思いつくことはありませんか。これはたぶん、自分のなかにあるものと他人が対話で提供してくれたものとが、自分の中で一緒になって、一つの着想になるのだと思います。

 

 

  • スキマ時間の使い方で、自然と勉強グセと能力が身につく

 

 「まずただ欣求ごんぐの志のせつなるべきなり

 たとえば重き宝をぬすまんと思い,

 強き敵を討たんと思い,

 高き色に会わんと思ふ心あらん人は,

 行住ぎょうじゅう座臥ざが、ことにふれおりにしたがいて

 種々の事は変わり来たれども、それに隨いて

 すきまを求め、心にかけるなり

 この心あながちに切なるもの,遂げずということなきなり」

 

 これは鎌倉時代の高僧・道元の弟子がまとめた語録書『正法眼蔵随聞記』に載っています。

 

 —まず求める気持ちが切実でなければいけない。たとえば宝物を盗もうと思ったり、敵を攻略しようとか、美女を手に入れようと思うとき、暇(スキマ)さえあればそのことを思い続けてみる。そうすれば、望みの叶わないということはない

 

 これを勉強することに引き寄せて考えてみれば、スキマの時間に勉強のことを考え、それを実践すれば、必ずできるということです。

 

 そこでスキマ時間を生み出すためには、前日の夜、寝る前の5分でいいので、翌日のスケジュールをチェックしてください。意外とスキマ時間がつくれることに気がつきます。

 

 ・お客様のところへ行く移動中の電車のなかの20分

 ・次のミーティングまでの15分

 ・同じ仕事をしていたとき、気分転換のために休んだ15分

 

 これらのスキマ時間でできそうな勉強項目を決めておくことです。

 スキマ時間とは、ある意味限られた時間です。

 仕事はタイムリミットを設定して進めるのが成果・効果を上げるコツですが、勉強も同じなのです。

 

次回は10月30日(金)に掲載いたします。

 

「明るい高齢者雇用」

第18回 転職でノイローゼ―適応の難しさ痛感―

(「週刊 労働新聞」第2164号・1997年8月11日掲載)

 

 今回は異業種への転職事例を紹介しよう。

 高齢者が転職する場合、自分が育った職場、即ち同業種への転職は必ずしも保障されない。異業種への転職ということも念頭に置かなければならない。

 某大手輸送機械メーカーから食品化学工場の工場長へ出向したC氏を紹介しよう。C氏は工業高校を出て以来製造技術一筋。出向決定当時は53歳であり、現場の課長であったという。転職先は惣菜メーカーで、資本金1億円、従業員250人程度の企業である。

 求人企業側がC氏を採用するかにつき迷った点は、まず異業種で、それも大手企業出身の者が、会社に溶け込めるかということであった。お役人出身者が民間企業に移った場合、判断事項の多さに戸惑い(要するに判断力すら無いということ、さらには責任をとるという態度が長年に亘って欠落していること)、またそのスピードに全くついて行けないこと等から、カルチャーショックを受け、仕事が手につかなくなる、ノイローゼにすらなるという例が非常に多い。20年、30年の間、およそ何をしてきたのか、実は何も仕事をしていなかったのではないかという疑問をもたれる確率が50%以上に及ぶという。民間企業においても、大手企業出身者が中堅中小企業で仕事ができないことを露呈するというケースが役人出身者ほどではないが、よくあるといってよい。求人企業の社長が、大手の人、しかも異業種からの転換で、会社に溶け込めるのかと疑問に思うのも無理からぬところである。

 また、中堅中小企業はオーナー企業が多いから、オーナーたる社長の価値観によって採用の成否が決まるといってよい。この求人企業においても、家族構成の中で子供がいないということが懸念事項となった。この社長は、子供がいない人物は部下を指導するのに適切でないのではないかと迷ったというのである。

 さて、採用決定のポイントは何といってもC氏の若々しいルックス、態度であり、また前向きな気持ち、即ち中小企業で適当に時間を過ごすのではなく、今までの経験を生かしてやりたかったことを実現するという、まさに前向きな気持ちがあったことにあると採用を決断した社長は語っている。

 いってみれば達成意欲が旺盛であるということである。この意欲は先に述べた向上心と直結するものであるが、それがあればこそ若々しいルックス、態度といったものにもつながろう。

 それはいうまでもなく、若い時から健康に意を用いるということだけでなく、様々なことに関心を持ち精神的な刺激を求め続けることでもある。

 頑迷さを取り除き、過ちは直ちに正す姿勢、そして視力を維持すること、とにかく歩くことなどがその具体策となるが、出向先においてもその若さを維持し、同時に若い人と付き合っていくとなれば、若さをマネージメントする意識と行動がことのほか重要となるのである。

 この人物のケースは、転職後1年半経った現在、高い評価を得ているということから、まさに成功例といえるが、やはり高齢者になっても心身共に若さを保つということが秘訣であろう。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第21回】サービス業は教育業でなければならない(1995年7月18日)

 

 これからはサービス産業が拡大していく。

 なぜサービス産業は需要があるか。一般には、社会が多元化して自分一人では生きていけないから、手際よくやってくれる人が必要になってくる、と言われている。

 私は、知識社会、知的社会という時代になってきたことと関係があると思う。人間は知識・知能が高まるにつれ、多くの人が晩年を思い浮かべ、さらには自分の死に際を想起しながら生きるようになっていた。それは極限での孤独を意味する。つまり、生きている間に多くの人と接触したいという集団欲が刺激されてくる。連帯したいという気持ちが強くなる。ここに、サービス産業の基盤がある。

 自動販売機で買うより、喫茶店でコーヒーを飲みたい、人と接触したいと思う人が大勢いる。高齢化社会になればなるほど、老後を意識する時間が長ければ長いほど、サービス産業は成長する。

 ただ、サービス産業は製造業ほど儲からないということを念頭におくこと。サービス産業は機械任せにすることができず、人手を必要とするからだ。連帯心を満足させる、触れ合いをもつ、安堵させるという世界は、対人技術である。対人技術だから省人化できない。ロボットに「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言わせても成り立たない世界だ。

 低生産性、低収益性の中で、ひたすら対人技術を磨くことにサービス業の中心がある。つまりどんなサービス産業も、教育産業、教育事業でなければならないということだ。教育を持続的に展開し、均一の品質と臨機応変を保障し続けることに、常に配慮しなければサービス産業は成長しない。

 

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