高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~
【第21回】サービス業は教育業でなければならない(1995年7月18日)
これからはサービス産業が拡大していく。
なぜサービス産業は需要があるか。一般には、社会が多元化して自分一人では生きていけないから、手際よくやってくれる人が必要になってくる、と言われている。
私は、知識社会、知的社会という時代になってきたことと関係があると思う。人間は知識・知能が高まるにつれ、多くの人が晩年を思い浮かべ、さらには自分の死に際を想起しながら生きるようになっていた。それは極限での孤独を意味する。つまり、生きている間に多くの人と接触したいという集団欲が刺激されてくる。連帯したいという気持ちが強くなる。ここに、サービス産業の基盤がある。
自動販売機で買うより、喫茶店でコーヒーを飲みたい、人と接触したいと思う人が大勢いる。高齢化社会になればなるほど、老後を意識する時間が長ければ長いほど、サービス産業は成長する。
ただ、サービス産業は製造業ほど儲からないということを念頭におくこと。サービス産業は機械任せにすることができず、人手を必要とするからだ。連帯心を満足させる、触れ合いをもつ、安堵させるという世界は、対人技術である。対人技術だから省人化できない。ロボットに「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言わせても成り立たない世界だ。
低生産性、低収益性の中で、ひたすら対人技術を磨くことにサービス業の中心がある。つまりどんなサービス産業も、教育産業、教育事業でなければならないということだ。教育を持続的に展開し、均一の品質と臨機応変を保障し続けることに、常に配慮しなければサービス産業は成長しない。