第9回  『高井式 一生使える勉強法』(1)
成長モードにスイッチする

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 勉強熱心な経営者として知られ、その経営力においても、お人柄においても、高井伸夫先生が心から尊敬してやまないお一人に、日清製粉7代目社長の正田修さん(上皇后美智子さまの実弟)がいます。

 

 正田さんご自身が旨とされている「学び」のポイントは次の三つであり、どの一つが欠けてもいけないとおっしゃっています。

 

 ①「人から聞く」「参考文献などを読む」「現場などを見る」

  これらをしなければ、我流・ひとり合点に陥ってしまう。

 ② 「自分の頭で考え抜く」

  自分の頭で考え抜かないと、結局は借り物の知識になってしまい、自分の意見として実行するという本物の迫力を欠いてしまう。

 ③ 「自分で実際に行動して覚える」

  行動が伴わなければ、ビジネスパーソンではなく、ただの評論家になってしまう。

 

 「勉強に対する素晴らしい名言です。このような行動習慣を持ち続ければ、必ず大きな成果をもたらすはず」と先生は明言されています。

 

 

 本号は、かんき出版で先生が執筆された表題の書籍から、下記に格言や名言を紹介します。

 

 

  • 「よく生きる」ために年齢に応じてどのような意識で勉強すればよいのか

 

 『論語・為政第二』に次の有名な言葉があります。

 

 「子曰わく、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順したがう。七十にして心の欲する所に従えどものりえず」

 

 ・15歳までに「学問に志す」ための勉強をする

 ・30歳代までに「思想や見識を確立する」ための勉強をする

 ・40歳代までに「心の惑いがなくなる」ための勉強をする

 ・50歳代までに「天から与えられた使命を自覚する」ための勉強をする

 ・60歳代までに「何を聞いても耳に逆らうことのない」ための勉強をする

 ・70歳代までに「自分の欲望のままに振舞っても、その行動が道徳からはずれることがない」だけの勉強をする。

 

 

  • 人は何のために一生勉強するのか

 

 「若くして学べば、すなわち壮にして為すにあり、

  壮にして学べば、すなわち老いて衰えず。

  老いて学べば、すなわち死して朽ちず」

 

 江戸時代の儒学者・佐藤一斎の言葉です。充実した人生を過ごすには「生涯勉強」ということ。いま大切なことは「勉強するか、しないか」ではなく、「いかに勉強を続けられるか」といえます。

 

 

  • 成果主義の導入で、評価基準が変わった

 

 「知識より、変化に対応する思考力、企画力、創造力などが重視される時代になった。
 仕事の成果を測る物差しそのものが変容した」

 

 その結果、企業は頭脳労働を重視し、そのときどきの成果に着目するというアプローチをとらざるを得なくなりました。過去にあげた業績や豊富な経験も、それのみでは意味を持たない。それに意味を持たせるには勉強しかありません。

 

 「人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。

 ただ学問を勤めて物事を良く知るものは、貴人となり富人となり、

 無学なるものは、貧人となり下人となるなり」

 

 福沢諭吉は『学問のすゝめ』のなかで、こう述べました。厳しい言葉ですが、この本質は、今の時代も変わっていません。これから先、勉強しない人は確実に淘汰されていくでしょう。すでにそうなってきています。

 

 

  • 勉強とは最初の一歩をまず踏み出すこと

 

 「興味は仕事に伴って、またその最中にもっとも湧きやすい。

  だから、気が向かないなどを口実にせず、

  毎日一定の時間を仕事にささげることである」

 

 哲学者ヒルティの言葉ですが、「仕事」を「勉勉」に置き換えても、まったく同じです。

 

 

  • 新聞は、読む順番にコツがある

 

 「新聞は知りたいことを知るための媒体というよりも、〈世の中の動きを全体的に捉える〉〈知らないことを知る〉ための媒体として捉えるべき。そういうつもりで読んでいくと、大局観が養われる」

 

 以下に新聞の読み方のポイントを挙げておきます。

 ①必ず一面から順繰りに、見出しを眺めるように全面を見る

 ②読むべきと思った記事は詳しく読む

 ③広告面にもざっと目を通す

 ④コラムやエッセイを重視する

 ⑤ 注目記事は切り抜くかコピーをとる

 

 この地道な手順、作業が勉強の基礎になります。

 このような方法で新聞に目を通すと、あなたは前の日の地球上で起きたことの概略を、鳥瞰的に眺めたことになるのです。

 

 着眼大局、着手小局といわれるように、大局観が養われると、自然に「世の中はこんな風でいいのだろうか」「近未来はこうなるから、こんなビジネスが出てくるだろう」という大所に立った考え方ができるようになります。

 

 そして実際に行動に移すときは、一つひとつ細かいところにも、着実に手をつけていくことが望ましいのです。

 

 

  • 教えることで、教わることがいっぱい

 

 「教うるは学ぶの半ばなり」 (中国古典・書経)

 

 これは孔子の言葉です。人に教えるということは、半分自分が学ぶということだ—と。

 もっと勉強したいと思っている人は、人に教えることを考えたらいいと思います。最高の勉強法です。人に教えるとなると、いやでも自分で調べて勉強するようになるからです。

 

 「こちらに〈知りたい〉〈勉強したい〉という強い願望があって、

 なおかつ教えられるのではなく教える立場に立つ。

 そうすると、知りたい願望と教える責任感が、咀嚼そしゃく力を高める」

 

 人と対話をしているときに、不思議に独創的なことを思いつくことはありませんか。これはたぶん、自分のなかにあるものと他人が対話で提供してくれたものとが、自分の中で一緒になって、一つの着想になるのだと思います。

 

 

  • スキマ時間の使い方で、自然と勉強グセと能力が身につく

 

 「まずただ欣求ごんぐの志のせつなるべきなり

 たとえば重き宝をぬすまんと思い,

 強き敵を討たんと思い,

 高き色に会わんと思ふ心あらん人は,

 行住ぎょうじゅう座臥ざが、ことにふれおりにしたがいて

 種々の事は変わり来たれども、それに隨いて

 すきまを求め、心にかけるなり

 この心あながちに切なるもの,遂げずということなきなり」

 

 これは鎌倉時代の高僧・道元の弟子がまとめた語録書『正法眼蔵随聞記』に載っています。

 

 —まず求める気持ちが切実でなければいけない。たとえば宝物を盗もうと思ったり、敵を攻略しようとか、美女を手に入れようと思うとき、暇(スキマ)さえあればそのことを思い続けてみる。そうすれば、望みの叶わないということはない

 

 これを勉強することに引き寄せて考えてみれば、スキマの時間に勉強のことを考え、それを実践すれば、必ずできるということです。

 

 そこでスキマ時間を生み出すためには、前日の夜、寝る前の5分でいいので、翌日のスケジュールをチェックしてください。意外とスキマ時間がつくれることに気がつきます。

 

 ・お客様のところへ行く移動中の電車のなかの20分

 ・次のミーティングまでの15分

 ・同じ仕事をしていたとき、気分転換のために休んだ15分

 

 これらのスキマ時間でできそうな勉強項目を決めておくことです。

 スキマ時間とは、ある意味限られた時間です。

 仕事はタイムリミットを設定して進めるのが成果・効果を上げるコツですが、勉強も同じなのです。

 

次回は10月30日(金)に掲載いたします。

 

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