2020年10月のアーカイブ

 

第10回 『高井式 一生使える勉強法』(2)
成長モードにスイッチする

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 20年ほど前に、諏訪泰雄氏(前中央労働委員会会長・法政大学名誉教授)が提唱した「キャリア権」という概念があります。

 この理念は、「人びとが意欲、能力、適性に応じて希望する仕事を準備、選択、展開し、職業生活を通じて幸福を追求する権利」と定義されています。

 

 高井伸夫先生は、この概念に共感し、2008年、諏訪氏に座長をお願いして「キャリア権研究会」を立ち上げられました。

 

 さらに先生は、『「キャリア権」 法制化を目指す会』の代表者として、キャリア権の概念を社会に広く知ってもらいたいという思いから、啓蒙活動に力を注がれています。

 

 たとえば、2019年5月より、『週刊新潮』にほぼ隔月で、「キャリア権 法制化の意義」と題した意見広告を執筆されています。直近では、10月22日号に第9回目が掲載され、次回は12月の予定だそうです。

 

 また、『「キャリア権」法制化を目指す会紀要』も発刊されました。

 2020年2月の第1号には13名、9月の第2号には45名の著名な方が「キャリア権」について寄稿されており、読み応えがあり、着実に啓蒙活動の効果が出ているように思えます。

 

 

 さて本号は、前号に続き、かんき出版で先生が執筆された表題の書籍『高井式 一生使える勉強法』からです。

 

 先生は仕事柄、若いときから社長や役員の方との打ち合わせが多く、そこで分かったことは、成功が持続しているリーダーの人たちには共通しているものがあると言われます。

 

 それは「一生、成長し続けたい」という意欲が普通の人より強く、また、それに対して貪欲なまでに「学ぶ心」を持ち続けているということです。

 

 その学びの中身は、次の2つです。

 

 1つは、ビジネスに役立つ能力をつける。

 1つは、人間力をつける。

 

 最近、世の中全体の風潮として、小さな努力で大きな効果を求め過ぎるように思います。

 しかし、とくに勉強では、すぐに身につくものもあれば、一見、要領が悪いような反復行動、反芻思考によってのみ身につく力もあるのです。

 

 したがって、これらを意識して、キャリア形成を計れば、周りからの信頼も増すでしょう。

 あせらずに努力を続けることで、「骨太な人だ」「行動力もあるし、思慮深い人だ」などと思われる人に成長するために、勉強を続けたいものです。

 

 このように、成長した自分像を描きながら勉強することが、結果的に、一番確実に効果を上げる方法だと先生は言います。

 

 本書を読むと、先生が人や情報、読書などとの出会いを、丁寧にスピードを持って、ここまで考えるか、ここまでやるかというくらい対応されているのが分かります。

 

 以下に、項目だけ列挙いたします。先生の視点が伝わると思います。

 

 

  • 高井式・長続き勉強法

 

 第1原則  「いつでも、どこでも」の勉強グセをつける

 第2原則  同じ学びで大きな差がつくノウハウを知る

 第3原則  どんなときも楽しみながら勉強する

 第4原則  学ぶ師やテーマを先に決めておく

 第5原則  人から賢く学ぶ

 第6原則  自分流を貫く

 

 

  • 勉強グセをつける

 

 ・  勉強の習慣化のためには、考えすぎずに、まず何かを先に始めてしまう

 ・ 脳がクリアに働く朝型に替える習慣は、まず「3日続けて」を3クールで身につく

 ・ 忙しい人でも、1週間に1冊は本を読む

 ・ 読むときは2色以上のペンを用意して、重要箇所や気に入った言葉に印をつける

 ・ 新聞は勉強グセと、世の中の動きや変化を読み取るために最適

 ・ ブログ、メールなどもいいが、同時に手紙や日記を手書きで書く

 ・ スキマ時間の使い方で、自然と勉強グセと能力が身につく

 

 

  • 同じ学びで差をつける

 

 ・ みんなが歩む常識路線ではなく、脱常識路線を歩んでみる

 ・ 大きな力を出すには、自分によい形のプレッシャーをかける

 ・ 終身雇用、年功序列の時代は、大きなミスがなければ評価された減点主義の時代。
   いまは加点主義の時代。実績を積み重ねないと評価されない

 ・ 集中力は、数ある人間の能力を、同時に引き出してくれる能力である

 ・ 自己の価値を最大化するには、得意技を持つこと

 ・ 勉強は頭でするだけではなく、汗をかいたり、肌で感じたりすることも大切。
   勉強を頭だけの作業と狭く考えないようにする

 ・ 先見性を磨くために、現在を注意深く見ていく

 ・ 数字に強くないと、ビジネスパーソンとしての賞味期限を早める

 

 

  • 長続き勉強法で楽しむ

 

 ・ つまらないと思う仕事からでも、「固有の面白さ」を発見してみる

 ・ 自分の抱えた課題を、好き嫌いを無視して、まず「見える化」する

 ・ 多様性の時代だからこそ、「無用の用」を知る

 ・ 相手のことを話題にすれば、相手は何時間でも話をしてくれる

 ・ 一人旅で自然と向き合い、自分を見つめなおす                                                           

 

 

  • 人から賢く学ぶために

 

 ・ 何か課題を抱えたら、「他人の知恵を借りる習慣」を身につける

 ・ 質の良いメンター(精神的支援者)をつくっておく

 ・ 歴史上の大人物も師匠にしておく

 ・ 統一ある刺激は数少なくとも、数多い散漫な刺激に勝つ

 ・ 先人から効率よく学ぶ一つの方法は、名言集を読むこと

 ・ グローバル化時代は、語学の前に「日本の歴史と文化、伝統」について学ぶ

 ・ 新聞、雑誌の科学記事に目を通して、理系の感性を磨く

 

 

  • 好奇心を失わないために

 

 ・ 好奇心にとって大切なことは、「子どもっぽさ」を失わないこと

 ・ 人の話をよく聞く勉強ほど、効率的な勉強はない

 ・ たとえお節介と言われようと、「世話好き」も有力な勉強法のひとつ

 ・ アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない

 ・ 自己暗示の法則1 意思と想像が争ったとき、必ず勝つのは想像である

        法則2 意思と想像が一致したとき、その力は和でなく積になる

        法則3 想像力はコントロールできる

 ・ 勉強会やセミナーに参加したとき、何を得たかの検証を怠ってはいけない

 

 

  • 自分流を貫くために

 

 ・ 自分流のメモ術で絶対に外せないポイント

    ①乱筆でメモをしても、新たに書き直すのは手間がムダ

    ②メモのストックは検索可能な状態にしておくこと

         ③情報の出所、メモした日付、自分の感想などを書き込んでおく

 ・ 自分流で勉強する前提である基本の押さえ方には、3つのポイントがある

    ①基本数字を把握すること

       ②原理、法則、定理を知ること

       ③用語(言葉の意味)を正確に理解すること

 ・ 自分流で勉強するときは、「時代遅れ」と思われることを恐れない

 ・ 大事を為すには、七分の道理と三分の無理

 

次回は11月27日(金)に掲載いたします。

 

「明るい高齢者雇用」

第19回 「こだわり」も必要―豊富な経験が裏打ち―

(「週刊 労働新聞」第2165号・1997年8月18日掲載)

 

 年齢を気にしない職種における出向もまた成功する例が多い。

 某大手商社から官庁絡みの仕事をする企業に出向した経理調査役D氏を紹介しよう。65歳までの雇用が保障され、年俸は当面800万円、60歳以降は640万円ということである。2年程で交替してゆく官庁からの出身者である40歳ぐらいの課長とうまくやり、かつ実務ができ、若い人にも教えることが採用要件であった。D氏は現在59歳、入社以来経理一筋であった。前の会社での職位は、56歳まで経理関係の部門で副部長を務めたという。

 経理業務はいわば年齢に関係のない職種であろう。高齢になって肉体的敏捷性が失われてもなお対応できる職種といってよい。そして役人とうまくやっていくとなると、出世欲を前面に見せない人物でなければならない。スペシャリスト志向というのが適当な表現であろうが、結果的に当人が入社以来経理畑一筋で他部署の経験がなかったことが幸いしたのである。

 さて、明るい高齢者雇用の要件には、即戦力、スペシャリストが求められることが一般的である。すなわち実務ができることがその要件となるが、これがしかし容易なことではない。日本においては、ゼネラリストとしてそのキャリアを積むケースが依然多く、さらに一定の年齢に達すると、専らマネジメント業務に終始して、実務から遠ざかることが少なくないからである。

 本来キャリアというものは、知識が多様な対処や判断に伴う経験に裏打ちされて、高いレベルのスキルとなって身につく過程をいうが、その意味では、加齢と共にその能力に厚みが増すことが期待される。

 先の例はその典型ということになろうが、しかし、慣れによる慢心があったり、常に新たな知識を求め吸収しようとする意識がなければ、スペシャリストたり得ることは到底おぼつかないのもまた事実であろう。

 加齢と共に衰える気力・体力を補ってなお余りあるスキルを持つこと、しかもそれが陳腐化していない、生きたスキルであること、そしてそのスキルを実務において活用・応用できることなどが重要となるが、さらに、その人が持つ価値観あるいは生きざまのようなものが出向あるいは転職の成否を分けるような気がしてならない。

D氏のケースでは、本人のプロ意識、さらにある種の自信と自負が、自ずと仕事そのものへのこだわりとなって発揚されたとも言えるだろうか。虚心に返って自分自身の見極めと棚卸しを行い、こだわるべき点が何かを得心した時に、現在の職場への出向が違和感なく受け入れられたに違いないのである。

 出向者と出向先企業が相互に理解し合うこと、それも本人のキャリアのみならず、その背後にある価値観や経営理念を理解することが何よりも重要であることを、この出向例は物語っているようである。

 ここまで4氏の出向事例をもとに、明るい高齢者雇用の実相を見てきたが、さらに次回からは、求人企業の開拓に奔走するある方を通して、この高齢者雇用を巡る障害と解決の方途を考えてみたい。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第22回】製造物責任法(PL法)と社員教育(1995年9月20日)

 

 PL法の施行によって、消費者からの問い合わせやクレームは間違いなく増加する。

 あるメーカーでは、1995年の問い合わせは約25,000件で、前年比25%増。そのうち金銭要求をともなうクレームは0.3%あったという。因みにこの会社は支店ごとに顧問弁護士を雇った。

 問い合わせをしてきたお客様がクレーマーになるかファンになるか、これは会社の将来を大きく左右する。そしてそれは、問い合わせを受けた社員の言動が分かれ道となる。これからは、電話の応対をはじめとするお客様とのクレーム対応教育は、いままで以上に意味をもってくる。

 クレーム処理はトップダウンで取り組む課題だ。クレームが来たら、すべて社長まであげること。新商品、新サービスが出たときは、なおさらトップダウンでクレームを処理することが肝心だ。

 営業担当に売上目標と販売テクニックだけを教える教育や、工場の社員にひたすらマニュアルによるチェックのみを教えるといった教育では、PL法への備えは生まれない。

 PL法対応のキーワードは、「品質」と「安全」である。品質と安全がすべての部門で意識されるように社員教育を組み立てていく必要がある。理想的な姿は、それを何らかの形で1人1人の業務に組み込むことだ。さらには、取締役会をはじめとするすべての意思決定に際しては、品質と安全に配慮したかどうかを必ずチェックすることが必要であり重要である。

 

 

「中国の最新諸事情」
第9回 デリバリーサービスの台頭

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 出前、デリバリーといった職業について、皆さんはどういうイメージを持っているでしょうか。一時的、補助的な仕事だという印象が多いと思いますが、中国では、近年飲食プラットフォ—ムの台頭とともに、食事の配達人の数が急上昇しました。統計によれば、2020年7月までに専門的な飲食配送人員(外売員)の数は700万人までに達しています。

 その勢力が拡大する裏で、外売員という職業は最も危険な職業になりつつあります。上海交通機関の統計によれば、平均毎日1名の外売員が交通事故で死亡しています。その理由は、アツアツな作り立ての食事を客の前に配達するために、プラットフォ—ムが常に非常に厳しい配達時間制限を設けていることです。制限時間までに配達を完了できなかった場合、外売員に減給、罰金などの処罰が科されます。そのため、外売員の中では、日々シビアな配送時間を守るために、交通信号を無視することが日常茶飯事となり、むしろ、時間厳守で配達するための必要スキルになってしまいました。

 こういった状況や危険と隣り合わせの職場環境を改善するため、中国最大手飲食プラットフォ—ム“餓了麼(ウーラマ)”は“配達制度改革―優しい客の選択機能“を実施しました。その内容とは、出前を申し込む優しいお客が自らの選択で、外売員に5~10分間の猶予時間与えることが可能となる、というものです。これにより、日々時間に追われている外売員に少しの時間の余裕を与えることができます。一見、他人思い、緩やかで良さそうな改革策ですが、実際運行してみると、各方面から大批判が寄せられました。

 なぜかというと、そもそも外売員に厳しい配達時間制度を制定したのはプラットフォ—ム側であり、時間通り配達できないと、罰金を科すのもプラットフォ—ム側です。さらに、配達数で外売員の能力を評価し、一定の配達数に達成できないと解雇するのもまたプラットフォ—ム側です。プラットフォ—ムと外売員の問題はサービス提供者側の内部問題なのに、上記の“優しい客の選択機能”を取り入れることによって、この問題を外部者であり、サービス受ける側のお客に責任転嫁したのです。そして、お客を矢面に立たせ、猶予時間与えないと、人間性に問題があり、優しくない人であると言わんばかりの工夫が施されています。その無責任なやり方は世間の怒りを買いました。

 この問題を弁護士の視点から見れば、契約精神を尊重すべきです。客との契約履行がうまくできないからといって、サービス代金の減額などの努力もせず、道徳的な圧力で、契約内容を一方的に変えようとするプラットフォームのやり方にはとても賛同できません。

 しかし、角度を変えれば、誰しも別の形の“外売員“といえます。自分の権益がプラットフォームに侵害されたとき、きちんと意識をし、自分のために奮闘しているのでしょうか?

 

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