「明るい高齢者雇用」

第20回 雇用阻害要因:各論大反対の荒波―組合エゴもひびく― 

(「週刊 労働新聞」第2166号・1997年8月25日掲載)

 

 東京都高齢者雇用開発協会は、高齢者問題の推進のため、企業への相談、指導援助、助成金の支給業務などで東京都をカバーする公的機関である。現在、事務局長以下職員23人、企業訪問などを行う高年齢者雇用アドバイザー33人の陣容。「時は今、継続雇用の65歳」というのが協会のキャッチフレーズであるが、これに向けて、総論は理解・賛成、各論大反対の荒海に漕ぎ出し、悪戦苦闘中である。

 その事情をお聞かせ頂いた末廣毅氏は、東京大学法学部を卒業後、三井鉱山(株)に就職。総務部で得た経験を生かし、昭和39年に入社した三井物産(株)では人事、企画業務に注力し、昭和55年より三井海洋開発(株)に出向した。昭和62年には同社常務取締役総務人事部長を務め、同時に三井物産(株)関連事業部部長職を兼任。昭和63年(株)エニー代表取締役社長に就任。平成4年に三井物産(株)を退職後は人事労務面での相談役として各方面で活躍している。公職として、東京都地方労働委員会使用者側委員をはじめ様々な団体において労働問題の委員、役員を歴任し、平成4年6月より東京都高年齢者雇用開発協会雇用アドバイザーとして労働者の雇用開発問題に尽力され、その企業訪問数は既に数百件を数えるに至っている。

 「しかし、その活動の成果の程は、と問われれば、いまだである。リストラの嵐の中で隔靴掻痒の感がある」と末廣氏は語る。以下はアドバイザーとして企業の高年齢者雇用に取り組む末廣氏にお話し頂いたものである。

 「訪問される側にしても、招かざる客なので、空いた時間はなかなか見つからず、また上層部はいつも忙しい。折角、ようようにして時間を割いて話を聞いてもらっても、前半は和気藹々、理解し合って意気投合、されど後半は、わが社のみはリストラの最中で高齢者まで手がまわりかねる云々、丁丁発止とすれ違いの議論となってしまう。話を聞かせて頂き、聞いて頂けたのが望外の幸せと謝辞を述べ、再度来訪の決意を秘めて退出するのが大方のパターンである。

 なかには干天の慈雨、地獄に仏の如き理解力のある優れた経営者の方にお会いでき、問題解決に向け大きな前進をみることがあり、感激し苦労が一挙に氷解する思いのすることもあるが、まだまだ事例としては少ない方で、前途遼遠の感がある。

 しかし、それでも、使命感を奮い起こし、排除先行の各論打破には、地道な説得の努力継続以外には途はないものと思い定めている昨今である。

 高齢者の継続雇用を阻むものとしては様々な要因があるが、敢えて言えば、①企業の姿勢、②労働組合・社員全体のエゴ、③高齢者自身に関わる問題、④世論の面から、といったものがある。さらには、行政サイドの問題もある」。

 「総論は理解・賛成、各論大反対」というのが、まさに高齢者雇用を巡る的を射た指摘であろう。末廣氏は高齢者の継続雇用を阻む要因として4つの観点を提示されているが、次回からは、上記それぞれの問題点について、末廣氏から伺った内容を基に検討していくこととしたい。

 

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