「明るい高齢者雇用」

第21回 雇用阻害要因:排除の論理が先行―低い大企業の意識― 

(「週刊 労働新聞」第2167号・1997年9月1日掲載)

 

 高齢者雇用において企業の姿勢にある障害とは、(イ)社会的責任論が通らない、即ち企業エゴが蔓延していることが根本である。高齢者を雇用することには、総論は賛成だが、各論になると競争力を減退させるとして「わが社はそれを回避せざるを得ない」と言って反対する。企業にそれを強く勧めれば、法律による強制を求める。すなわち全ての企業が同時に同一の舞台に上がらなければならない。わが社だけ先行実施することになれば、競争上不利益を蒙ることになる。この様なことを罰則もないのに採り入れるなど経営の任にあるものとしては到底考えられないという。だから、あえて言えば、罰則のない状況では、高齢者雇用問題には企業としてはメスを入れられないということになる。

(ロ)また、企業はリストラを進めている、すなわちスリム化を進めているが、大企業においては、高齢者を排除する論理が先行し切っている。つまり高齢者を“育成”“活用する”という意識を全く欠くのである。若年者のみで企業を構成することが、すなわち活性化であるという信仰すら抱いているといってよい。

“生産性は一人当たりで”という論理を進めるのみで、“高齢者を低賃金で雇用して”という人件費効率の考え方が稀薄である。高齢者については、在職老齢年金・雇用継続給付・社会保険料・源泉所得税を総合的に考えなければ、人件費の生産性は出てこない。

仮に60歳到達時の賃金額が月額50万円の人を定年後月額45万円で再雇用すれば、社会保険料などの負担を入れて考えれば、実質会社負担は年に614万円で本人の取得年額は446万円となる。企業負担は本人の能力・退職を考えれば614万円は厳しいかもしれないが、それでは本人の賃金を月額28万円にした時の社会保険料等を入れた実質会社負担額は382万円となり、これなら何とか負担できるということになるのかも知れない。この時の在職老齢年金・雇用継続給付を含めた本人の取得額年額は448万円となり、月額50万円の時の手取り446万円を上回るのである。

以上の試算は社会保険労務士白沢辰夫氏(ビジネスガイド445号[1995/10/10 )によるものであるが、効果的に国の制度を活用すれば、企業負担も少なく、従って人件費生産性を上げながらかつ本人手取り額も相当額を確保し得る途があることを示している。

(ハ)さらに、高齢者についての人事管理が手抜きの状態にあるといって良い。高齢者雇用は中小企業にも、多くが期待されるが、そこでは現実問題として、細かい処遇管理のノウハウを得ようとしない。即ち企業ニーズと高齢者ニーズのマッチングを行って処遇管理を行うという柔軟な発想で、複数処遇のメニューを用意して高齢者を雇用し管理していくという発想が稀薄である

複数処遇のメニューの例としてはA 社員同様、B 28時間/週、C 22時間/週――の3タイプや、フルタイム、パートタイムの2形態制あるいは半日、隔日、フル3形態など色々工夫されて来ているが、まだまだ一般化する状況にない。

 

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

2020年12月
« 11月   1月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

最近の投稿

カテゴリー

月別アーカイブ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
https://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成