「明るい高齢者雇用」

第22回 雇用阻害要因:全員退職でスッキリ―賃金制度も未整備― 

(「週刊 労働新聞」第2168号・1997年9月8日掲載)

 

 前回は、高齢者雇用における企業の姿勢にある障害について言及した。排除先行の論理、企業のエゴが蔓延し、多様な人事管理制度が検討されていない状況をまず指摘したが、そこに共通するのは、育成や活用といった視点を全く欠いているという点である。

 (ハ)に挙げた複数処遇のメニュー未整備ということでは、査定制度もその例に漏れない。高齢者向けの査定制度が確立されていないのである。例えば体力すなわちリフレッシュ度、やる気、意欲・自己啓発度といったものを査定項目に導入することが望まれるが、それを実施しようとしない。

 賃金制度も単一給管理で、いわゆる若年者・中年者の賃金の6割とか8割といったような単一基準で運用しようとしている。高齢者向けの賃金制度を工夫しないのである。

 身分・資格は専ら嘱託一本ということで、バラエティーに富む高齢者に相応しい対応をしていない。これはまた、育成とか活用とかという思想が希薄であることを物語っている。

 (ニ)そして職場と能力面からの高齢者対策を確立しない。積極面では、高齢者向けの職務の開発あるいは高齢者に時代に即応する新しい能力を身に付けさせるための能力開発といったものが要求されるし、また高齢化に対する支援策としては、職場改善・教育訓練が必要であるが、このような対策を検討して実施しようという意欲が、多くの企業において欠けるといって良い。一部高齢者雇用の先進的企業においては、この問題について極めて熱心であって、力仕事はできるだけ機械に任せ、ムリ、ムダ、ムラを排し、だれでもが楽に働ける職場への転換を図り、能力面では中高年層の活性化を図る能力開発プランを実行したりして、成功している。

 (ホ)高齢者の保有する知識・経験・ノウハウに対する軽視といったことも甚だしい。専ら新技術のキャッチアップのみが先行し、創造力優先で、知識・経験・ノウハウを軽視するといった傾向が極めて強い。現実には、企業は新技術・情報だけでその盛衰が決せられるのではなく、企業の販売組織・技術・財務、さらには人間関係の総合力によってはじめて、その優位性を保てるのであるが、とかく新技術・情報だけに走りがちなのである。

 (へ)かくして企業において高齢者について、排除の論理のみがまかり通り、育成・活用の論理がないことになるが、実は「手間がかかる・リスクがある」といった障害のほかに、高齢者活用は、社内的に評価されないという状況が根本的にあると言って良い。実例としてこれまで定年後散発的に再雇用をしてきた会社で、今後は一律に再雇用を行わないことにしたことが、むしろ社内的に評価を受けているという話を聞いたことがある。会社が必要とする人材を見限ってでも、無能な定年到達者が労働組合をバックに居残ることがないよう全員定年で退職してもらうのがリストラ面ではすっきりするということなのである。

 企業において高齢者対策をなおざりにすることは、一面において企業の技能レベルの低下、企業の体力の脆弱化にもつながる。それは人間の味がまさに成熟しようとしている時にそれを捨て去ることを意味するからである。

 

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