「明るい高齢者雇用」
第27回 柔軟な就業機会を―一律処遇の必要なし―
(「週刊 労働新聞」第2173号・1997年10月20日掲載)
前回に引き続き、企業の高齢者雇用の実相を見てみたい。「高年齢者就業実態調査」は今後2年程度の間に高齢者の雇用を増やす意向の有無とその理由を聞いているが、増やすと回答したのは僅か10.7%に過ぎず、前回調査(1992年)に比べて8.5ポイント低下している。一方、増やす予定のない企業が39.4%と、こちらは逆に15.5ポイントの大幅増となった。その理由としては、「高年齢労働者に適した仕事がないから」「若年・中年層の採用で人手は充足できるから」が上位に挙げられている。
前回述べたが高齢者の雇用は将来的に不可避といえる。増やさないと回答した経営者は時代認識を欠いていると言わざるを得ない。今こと強い危機感を持ち、高齢者の雇用機会の確保、開発に取り組まなければ企業の永続発展はやがておぼつかなくなるであろう。
他方、高齢者自身の意識はどうであろうか。総理府が行った「勤労意識に関する調査」では、6割弱が65歳位まで、あるいは働ける限りずっとと回答している。まさに類稀な勤勉性であると言えるが、働く理由もまた多様である。図は各年齢層毎に就業理由を尋ねたものだが、生活を維持するためというのは当然としても、年齢の上昇と共に健康維持や生きがい、社会参加へとそのウエートが変化している。また、複数回答で聞いた「熟年ライフに関する調査」でも生計費を得るためという回答が60歳代前半層では60.1%であるのに、60歳代後半層では34.7%である。
これらの結果は高齢者の雇用の在り方を考える際の重要な視点となる。すなわち必ずしも高齢者を一律に処遇する必要はなく、本人の思考に応じて、正規雇用や賃金の多寡に拘らない柔軟な就業機会を創出する余地が十分にあるということである。働く理由は、実は個人差であって年齢差ではない。体力の衰え等に配慮する必要はあろうが、ことさらに年齢で区別することはなく、むしろ当然のごとく高齢者が職場にいるという状態を実現する方策がもっと検討されてよい。