「明るい高齢者雇用」

第28回 独立開業も選択肢―自己実現の理想型に― 

(「週刊 労働新聞」第2174号・1997年10月27日掲載)

 

 企業の高齢者雇用の現状とありうべき方向性をデータを基に概観したが、今回は少し違った視点でこの問題を考えてみたい。

 国民金融公庫総合研究所編「新規開業白書」は毎年様々な観点で新規開業の状況を分析しているが、その中でも新規開業者に占める中高年齢者(45歳以上)の割合が増加しているというデータは注目されてよい。独立開業はだれでも一度は夢見るりそうであろうが、実際にそれを実現している中高年齢者が少なくないようである。91年には24.4%だった新規開業者に占める割合が、96年には34.6%と10ポイント以上上昇している。昨今のベンチャーブームの中では、その話題が比較的若年層に集中しているようだが、中高年齢者の新規開業が着実に増加し、今や3人に1人が45歳以上、平均年齢も40.4歳となっている。

 さらに、下図はそれらの新規開業の目的を尋ねた結果だが、「自分の能力を発揮したい」「定年がない」という理由が上位にきている。企業による雇用の継続が期待できない中で自己実現の機会を求め、年齢による制約に縛られずに仕事をしたいという意思が見て取れよう。これらの結果は、開業分野を元の勤務先との関係で見ると一層明らかになる。商品・サービスと市場・販売先が同じといういわゆる「分社型」が52%、市場・販売先は同じだが商品やサービスが異なるという「絞り込み型」が19%、商品は同じで販売先が異なるという「専門知識活用型」が10%と、約8割が何らかの形で、従前の仕事との関連性を持っている。中高年齢者であれば当然ともいえようが、知識や経験、人脈等を存分に生かして、その延長線上で自分のキャリアを花開かせようとする姿である。

 自身の雇用が企業に保障されないとなれば、また、働く場が与えられてもそれが意に沿わないものであるならば、このような独立開業がむしろ奨励されるべきかもしれない。キャリアを全うしようとする姿こそ自己実現の理想像といえる気がしてならないからである。

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