2021年8月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第29回 能力と責任重視へ―めざすべき社会:エイジレスに転換を

(「週刊 労働新聞」第2175号・1997年11月3日掲載)

 

※本稿は1997年連載当時のまま掲載しております。

 21世紀は創造を超える超高齢化社会になると言われているが、そこでは当然新しい社会システムを作り上げる必要に迫られるし、また雇用システムも転換せざるを得まい。しかしそれは一朝一夕で成し得るものではなく、当然ロングランの課題となろう。

 社会全体の構造は次の如く変化するだろう。

 第一には、仕事の分配は現在、年齢階層別に行われているが、仕事階層別、即ちそれぞれの仕事に要求される能力・責任に耐えられる者が、これに配置される社会となっていかざるをえない。要するに能力階層別社会であり“エイジレス”社会であるが、好むと好まざるとに拘らず、それを良しとする社会風土となるであろう。

 また高齢である者も働く経済生活においては、国民年金・企業年金という世界から、今後は個人年金を中心とした社会への移行が必要であるし、また仕事に対する報酬をより強く意識する社会へと変質していくだろう。言い換えれば、「企業が労働者の生活を保証するのではなく、労働者は、その生活を自ら担保していかなければならない時代になり」何人も人生を自分で設計しなければならないという当然な課題に直面することになろう。

 価値観は、企業から与えられた課題を達成し、そしてリタイアメントするという現状から、生涯学習を旨として自己に課題を課し、自己責任でこれを達成していくという姿勢が尊ばれよう。即ち自己表現をより充実させようという意欲と行動が、国民全体に強くなるだろう。

 さて、このような社会全体に関するロングランの課題とは別に、高齢者雇用に関する当面の課題を明らかにしなければならない。高齢者雇用のシステムが未整備・未成熟であることは否定すべくもなく、個人ベースによって明るい高齢者雇用を実現していかなければならない時代である。

 ここで既に十数年高齢者雇用の現場に携わってこられた横倉馨氏を御紹介したい。氏は、繊維畑の海外業務をメーンに商社マン30年余のキャリアを重ねた後、経営管理者を中心に45歳以上の斡旋が6割を超える人材バンク(株)キャリアプランニングセンター(昭和57年1月設立、以下キャプランと略)の代表を創業以来務めてこられた(一昨年6月より会長職、現在は相談役)。

 高齢者雇用に対する社会的関心が高まるずっと以前より、この分野の草分け的存在として、まさに“獣道をバイパスへ”と切り拓いてこられた先駆者である。現在横倉氏は労働省・通産省およびその外郭で、中高年の雇用と能力開発に関わる数々の懇談会・研究会の専門委員を歴任されている。また中高年人材と企業とのマッチングを軸としたキャプランの活動は、登録者(求職者)には個別カウンセリングから能力開発の研修まで提供し、企業に対しても研究会組織を通じた事例交流から中高年人材のスムーズな導入受け容れ・より良い能力発揮を目指した職務開発および支援態勢作りといった社内整備に至るまでのコンサルティングと、そのサービス内容はかなり踏み込んだものとなっている。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第32回>人を上手に辞めさせる(1996年10月24日)

 

 人を上手に辞めさせることについて、管理職ユニオンの資料『第2回職場いじめ110番 相談カルテ』にそのヒントがある。これは先日、TVでも放映された。

 管理職ユニオンには、辞めさせられるかもしれないと自覚する人が自分の保険のために加入し駆け込む。超一流企業の人もいる。この「110番」には5日間で1,032人から電話があったそうだ。そのうちユニオンに加入したのは200人だったとか。

 このカルテの第1項目に「自殺の場合のチェックマーク」とある。

 「処遇上、人間関係上の差別・嫌がらせ」の項目の筆頭に「仕事を与えない」がある。仕事がないことが苦痛(イジメ)になる。この本質を考えることがポイントだ。仕事がない状態にすることがイジメになる。仕事があってこそ満足感がある。

 つまり雇用関係を解消する方法のひとつは、企業に対する不満感を醸成することだが、それには、①仕事を減らす、重要な仕事から外す ②賃金を低くする(直接的過ぎて、あまりいい方法ではない) ③人間関係を遮断する、この3つがある。

 そこで、人を上手に辞めさせるにはこの3つの手続きを少し、あくまでもほんの少し始めてから、「実は辞めてもらいたい」と言うのが一番効果的なやり方だ。3つのことが充分な状況にあって辞めてもらいたいというのでは成功しない。

 特に人間関係を遮断するには、口をきく回数を少なくする、目線を合わせる回数を少なくする、という方法をとる。

 雇用関係は、代理が許されない人と人の契約関係だから人間関係といえる。人間関係は、思いを伝える/伝わるというコミュニケーションによって維持される。だから、従来と比べて何となく口をきく回数が減ったとなると、人間関係が希薄化する、雇用関係が希薄化する、結合の絆が細くなる、というプロセスになる。

 しかも重要な仕事が与えられない、あるいは減ったとなると、人間になる機会が減ることになる。人は仕事・労働を通じてこそ人間になる。手・足・口・頭、特に仕事で頭を使うということは人間的な能力を活性化させることだから、その機会が質量ともに低下するとなると、ここで働くことの意味を失う、という心理状態になる。

 そして引導をわたす。決断を迫る。「残念だが君を引き受ける職場がないから新天地を切り拓いてほしい。この際、勇退してもらいたい。ついてはこれこれの条件をつける……」といった話の切り出し方をする。その前段として上記の3つの手続きを踏む。

 雇用関係が解消されるということは、「首切り」という言葉のとおり、死に近いものを意味する。人間として付き合ってもらえなくなるということだ。

 管理職ユニオンがここまで踏み込んで分析しているのだから、まして私たち経営者はもっと考えることが必要であろう。

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