2021年9月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第30回  “高評価”は諦めて―60歳代の職業生活:興味・関心の領域で

(「週刊 労働新聞」第2176号・1997年11月10日掲載)

 

 前回御紹介した横倉馨氏は、中高年人材と企業とのマッチングに当たり“キャプラン((株)キャリアプランニングセンター)紹介10則”を挙げている。高齢者雇用にとっても示唆に富む、そのいくつかの切り口に触れてみたい。

 「求職者に目線を合わせ、キャリアの裏を読め」、高齢者も同様に勝負の分かれめは、“キャリアの裏”即ち、キャリアの背景・中身であろう。履歴書に綴られる○○会社取締役もしくは部長といった肩書きよりも、そのポジション・職位において(もしくはそこに至るまでに)仕事を通じ何を生み出し変革し成してきたのか、を語れることが重要である。

 「すべての時間が“情報”につながる。蓄積の厚みと再生の柔軟さがマッチングの鍵」、とりわけ高齢者にとっては後段の“再生の柔軟さ”こそがキーワードであろう。変化を恐れず、むしろ変化を楽しんでいくぐらいの心と頭の柔らかさの保持が不可欠である。

 「“紹介”の成立はゴールではなくスタート」、転身は第二の就社の始まりでは断じてない。いかにみずみずしい気持ちを持って新たなスタートラインに立てるか、横倉氏の言葉を借りれば熟成した自己による後半労働の幕開けなのである。

 さて、明るい高齢者雇用のより良い実現に向けては、個人の寄らば大樹のカゲといった価値観を抜本的に自主思想へと転換しなければならないことが基本となる。

 50歳代の中高年は、未だ生き方を選択できる年代である。即ちライフプラン型という選択、具体的に言えば、第一線から引き下がり、従来のキャリアから離れた第二の人生をあえて選択することも当然可能な年代であるが、それだけではなくて、キャリアプラン型、即ち従来のキャリアを生かしてもう一つ仕事をこなしていこうとの姿勢を選択することも可能な年代なのである。言ってみれば、もう一つ仕事をこなしていくという夢を実現するには、50歳代から取り組まなければ、大半のものは成功しないと言ってよい。

 60歳代になると、期待と現実のギャップは余りにも大きくなり、キャリアプラン型の人生を送ることは、いよいよ困難になってくると言えよう。職業生活においても、50歳代に比して60歳代となれば主観的価値、個々人の趣味・興味・関心といったものに重点を置いた職業生活を送っていかなければならない。職業人としての生き方を求めず、人間としての生き方を求めるといったことになろう。例えば、自分の趣味に生きて一人で悦に入るといった生き方が、60歳代の大方の者にとって現実的に可能な道となるのである。それは自分の余力の程度を自覚して、大いなる報酬とか高い身分とか思い役割にこだわらず、自分の興味・関心を持ち得る領域で自分の存在感を味わっていくという生き方であるし、また社会的な存在として生きること、即ちボランタリーに打ち込み社会との連帯の中で存在感を味わい続けるという世界なのである。

 要するに、客観的に高く評価される、あるいは客観的に然るべく遇されるということは半ば諦めなければならないのが、60歳代の高齢者の実情なのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第33回>育成機能のない評価制度は凶器になる(1996年11月21日)

 

 評価制度は単に格付けするだけではなく、「育成する」という意識がなくてはうまく機能しない。

 実力主義は結果重視型になりがちだが、評価においては、努力、人間性、気配りなど、プロセスを重視することが必要だ。人間性をないがしろにする評価では人の活性化はできない。この意識がないと、とかく「結果さえよければいい」という、手段を選ばずの世界に陥る。育成機能のない評価制度は、恐ろしい凶器となる。

 風土刷新を掲げつつ、原生な秩序づけを成果主義とともに同時並行的に推進することだ。

 そして評価基準と評価結果は必ず明確にすること。とくに評価基準は、まずは管理職者に期首に公表しなければならない。評価がオープンでないために、評価する側の真剣さが低下する。また評価される側が、一般的能力ではなく特殊な能力を求められるならば、自分はどんな能力が欠けているのかわからない、といった弊害も生じかねない。

 評価で格差をつけたら反発が起きるという心配は無用である。やってみると案外アッケラカンと進む。ざっくばらんにホンネでやる評価、そういう時代である。

 マネジメントとは自分自身の働きではなく、部下にやる気を起こさせる働きかけであり、部下が他人を手助けしたいという気持ちを湧き上がらせる力である。

 そこで評価による育成テーマは、社員によってターゲットの絞り方を変える。「君はこれだよ」とズケッと言う。そのうえで「だから、こうしろよ」と1つ2つ付け加えればいい。評価のときだけではなく、つねに現実の業務を通じて評価結果に照らし合わせた指導育成をはかることが大切だ。こうなると「人材育成」の世界が実践できる。

 

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