「明るい高齢者雇用」

第33回 5タイプから選択―60歳代の職業生活:自分自身に答え聴け

(「週刊 労働新聞」第2179号・1997年12月1日掲載)

 

 今回は「ライフスタイル選好型」の実例を紹介するべく、まずは教師となって憧れを実現した丁氏について語っていこう。大学の先生の定年は極めて遅い。即ち70歳を定年とする大学が今もってたくさんある。丁氏はある東京の、短大から大学に昇格した大学に国際経済の専攻の教授としてスカウトされた。本人は、自ら今もって一番幸せな人と言っているが、それは若くして就職した企業において決して恵まれなかった人生であったからである。スポットライトが当たらなかった人物が今、若い女性に取り囲まれて、生き生きと仕事をしているのである。当人も極めて前向きであったことがこのような喜びを与えていると言ってよい。例えば大学教授に転職するに当たって、休暇を取りアメリカに短期自主留学をし、レポートを作成し、また抗議プランをまとめ上げたという人物である。即ち自費で留学までして、次の仕事に備えたのである。

 (ホ)長期就業型

 何の仕事であれ、長期に仕事を持ちたいという願望を実現するタイプである。これは、家庭の事情により働き続けなければならないとか、あるいは働くこと自体が趣味であるといった人物によくあるケースである。

 以上、ここまで高齢者雇用のタイプを5つに分けて見てきたが、これらのチャレンジ型、エキスパート型、リカバリーショット型、ライフスタイル選好型、長期就業型のどれに自分を当てはめていくかを40歳代の後半から見極めることが肝要だということである。つまり、高齢者になる前から一体自分はどこに値打ちがあり、またどんな生き方を望むかを自分自身に良く問い、自分自身の答えを聴き続けることが必要なのである。

 これまでの総括として、海外生活の期間が長かった戊氏に登場してもらおう。イギリスのロンドンにある日本のセカンダリースクールの舎監に就任した戊氏は、子供から慕われるというまさに若々しい世界で活躍している。それも本人が望んで赴いたということである。まさに若返るには若い人と接触することが必要であるが、学校の舎監というのはそれにうってつけの仕事であり、そして子供たちに慕われているとなれば、なおさら幸せな第2の人生が保障されているということである。

 チャップリンは、老後を過ごすための条件として、「好奇心」と「健康」と「すこしばかりのお金」を挙げたが、戊氏は若者に対応できるに足る若さをなお保持していることが成功の因となった。

 さて、明るい高齢者雇用にとって、何よりも健康であることが大切であることはいうまでもない。次回からは、高齢者の就業に影響を及ぼす精神的、肉体的な健康の意味について、労働科学の視点から分析してみたいと考えている。高齢になったからといって、一概に身体の機能が衰えるというものでもないだろうし、経験の蓄積によってむしろ向上する能力もあるのではないか。個人差も大きく、気持ちのあり様、日頃の行動スタンスによっても異なるだろう。心身共に若さを保ち、生き生きと働き続ける「秘訣」を、労働科学の専門家の分析に基づき述べてみたい。

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