高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~
<第36回>これからは「人事と人件費」の時代 「抜擢と淘汰」の時代(1997年3月19日)
これからの最大の経営課題は「人事と人件費」である。事業計画も人事問題に焦点を合わせたものでなければ意味がない。
人事の本質は、優秀な者を引き立て、かつ無能な者を辞めさせることだ。引き立てる方は誰でもできる。ところが日本にはダメな者を辞めさせる仕組みがない。だから自社でつくるしかない。
人件費の課題は、端的に言えば生きたお金を使えということ。つまり成果のあがらない者には報酬を払わないことである。
要するに、実力主義・成果主義の時代に生き残るために、コア(核)になる人材の確保をいかに進めるかということだ。同業他社から引き抜かれそうな人間を何人抱えているか。社員100人ならば2人、いや3人は欲しい。社内で価値があるだけでなく、業界で価値ある人材を確保するのが人材・人事の時代ということである。
そしてさらに、淘汰をすすめる人事でなくてはならない。そしてそれが企業の浮揚感、社員の上昇感とを実現できることが企業のコンセプトとなるから、人員削減や人件費削減も、この浮揚感、上昇感を与える手続きとして理解しないと本末転倒になる。
今は水増しで10人のうち4~5人が管理職になっている。これを2人まで落とす。そのプロセスが人材含み損清算の手続きである。
もうひとつは組織のフラット化だ。社長から平社員まで4段階以内にする、というLess Than Fourの思想を日本でも取り入れること。これはソフト化時代に対応してのこと。ソフト化時代には頭脳労働がメインとなり、知恵、情感、意思、といったものが価値ある時代になる。
頭脳は個々の能力格差が大きい。その差の大きさは意欲によって決定的に左右されるため、自由、フレキシビリティのある世界が必要である。
規模の小さい中堅・中小企業はもともと階層化されていないところが多いから、人材さえ確保されればフラット化できる。組織の複雑な大企業より迅速に対応できる利点がある。企業には人は少なくていい。3人分の仕事をしてくれる人に切り替えていくことが今後の課題だ。