2022年1月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第34回 中年自殺が増加へ―衰える心身機能:“心”の問題重要に

(「週刊 労働新聞」第2180号・1997年12月8日掲載)

 

 高齢になれば誰しも人間としての機能が低下する。明るい高齢者雇用の実現には、この事実を受容し、前提としてかからなければならない。60歳の定年を境にガタッと落ち込む人がいる一方で、第2の職場でかくしゃくとして働く人も多い。そこで、今回からは労働科学の側面からこれらの心身の様子を検討し、明るい高齢者雇用のあり方をまずは「心身」という大きな枠組みの中で分析してみよう。

 まず第1に指摘しなければならないのは、「精神」の機能も「体」以上にバラエティーに富むという事実である。つまり、精神機能は高齢になっても十分な機能を保っている面もあり、50歳代まで発達し続け、60歳位までは30歳以前よりも水準が高いものも出てくる。精神的といっても数多くの機能があり、単純に同じ様に加齢に伴い低下するとは言えないのである。高齢者は機械的な暗記には弱いが、意味を持った事柄の記憶はさほど悪くないという実験結果も出ている。

 また、高齢者に対する記憶のさせ方も、自分にあったスピードで覚える場合には若者との成績の違いは少なくなってくる。高齢者の記憶実験の成績などがかなり異なってきたり、精神機能が単純には衰えていないという結果が出るのは、覚える内容や覚え方の違い、練習の効果による差であるとされている。これらが高齢者の個人差に他ならないのである。

 この個人差はまさに20歳・30歳からの心構え、即ち「精神」にみずみずしさを涵養することへの努力があったかどうかによって顕れる

 次に「心」の問題の極端な例である精神疾患や自殺の例で、精神的不健康の実態を見てみる。警察庁が最近発表した自殺統計では、50歳代の割合が90年代に入り徐々に増加しており、また、管理者の割合の伸びが著しくなっている。一方、都内の金融機関の調査では、精神疾患と診断される例が中間管理職に多く、とりわけ最近では30歳代の男性に目立つと報告されている。「体」以上にばらつきがある「心」の問題は、今後の高齢者雇用問題に大きく投影する。

 さて、「せっかく高齢者になったのだから」というコンセプトでなければならないと提言しているのは、(財)労働科学研究所労働生理心理研究部主任研究員・前原直樹氏である。労働科学研究所は、工場やオフィスなど産業現場の労働に関する実証的な調査研究を行い、作業方法、職場環境や労働生活の改善に役立てることを目的に活動している文部省所管の民間研究所である。その研究方法は、医学、心理学、工学、社会科学などにまたがる学術的なアプローチを基に、現場の問題解決に有効な科学的で現実的な対策を提言するというユニークな特色をもっている。1996年の『労働の科学・51巻・7号』で前原氏は「せっかく中年というハンディを背負ったんだから」という巻頭言を書いているが、そこでは「21世紀はハンディを持ちながら働き続ける人が増える時代であり、その中心は体力が衰えた中高年であることは間違いない。」だからこそ「体力の衰えを経験と知性で補うことが必要だ」と述べている。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第37回>絶対的な評価基準はない~社長の主観を明確にする以外にない~(1997年5月21日)

 

 人事と人件費の問題にメスを入れる時に、いつも遭遇するのは評価の問題だ。経営者は、いかに正しく評価するかを考え、それを見直し続ける努力を惜しまないこと。それが企業の発展と共に、浮揚感、上昇感を与えることにもつながる。評価の問題が一番難しいのだ。

 足腰の時代はスピードで評価できた。手先の時代はスピードと手際の良さ、即ち品質で評価できた。商業・サービス業の口先の時代は売上げという数字で決着がついた。

 ところがソフト化の時代となると非常に評価が難しい。評価する人の感じ方、考え方、思い方によって評価が左右されるからだ。

 主観で評価するためには八方美人ではダメ。経営者の個性によって評価されるということを社内に浸透させること。そして主観性を明確にすることだ。モノサシをはっきりさせて評価基準を社内に透徹する。社長がモノサシを明確に定めること。それを明確に語り続けること。

 年功序列給は年を重ねるごとに雪ダルマ方式に賃金が増えるシステム。一方、年俸制は下がる人もあれば上がる人もいるという世界を作ることである。各人が成果を上げ、そして企業の業績が上がれば給料も上がるというシステムだ。

 ただし年俸制は評価基準の明確化が一層求められる。ソフト化の時代になったがゆえに、管理職の評価基準が非常に難しい。社長は、企業のソフト化の要請に応じた管理職のマネージメント力を判定する数値的なモノサシを持たなければならない。モノサシを明確にし、それがなぜわが社に必要かを語らなければならない。

 

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