2022年3月11日のアーカイブ

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第38回>企業には「ターゲット・セッター」が必要だ(1997年6月25日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 上海に法律事務所を設立する申請書を上海市政府に提出するにあたり、日本企業20社ほどの推薦状が必要になったため、先日ソニー副社長の橋本綱夫さんにお会いしお願いした。

 ソニーの業績を訊ねると、橋本さんは「うちはターゲット・セッターに恵まれていますから」とおっしゃった。ターゲットとは経営目標のこと。セッターとはバレーボールのセッターと同じで、様々な条件の中で、得点をあげるためにボールを誰に打たせるかを瞬時に決定する人。

 橋本さんは、アタッカーやポイントゲッターに恵まれている、とは言わず、ターゲット・セッターに恵まれているとおっしゃった。私は目からウロコが落ちる思いだった。

 企業にターゲット・セッターがいないところはダメである。年間のターゲットを定めても、厳しい変化に対応するために目標を微調整する人が重要になる。橋本さんはまさに人事と人材の時代にふさわしい話をして下さった。

 原則倒産の時代の中で生き残るためには、同業他社の客を奪い取っていかなければならない。共存共栄の思想はない。「打倒、同業他社であれ」という話は社長フォーラムで繰り返ししているが、ターゲット・セッターとは、同業他社をつぶす戦術を展開する人でもある。

 今回はこれに加えてドメインの話をする。ドメインとはビジョンとフィロソフィーを合体させて自社の事業領域を確定すること。ビジョンと経営哲学を持っていても、限られた時間と戦力でライバルを倒すためには、ドメインの決定が非常に大事になる。事業領域の確定が経営体として今一番肝要なことである。

 規制業種には、ビジョンの発見、フィロソフィーの設定、ドメインの決定をする必要がなかった。こういうところでは事業家センスが要求されないだけに、競争社会でなくなる。当然、競争原理は否定され、優秀な人材が出たら殺されてさえしまう。

 いま企業としての事業領域、ドメインの決定が極めて大切な時代になっている。自社のセールス分野を確定しないでライバルとの戦いを乗り切ることはできない。

 今日のライバルだけではない。明日のライバル、明後日のライバルを絶えず意識して今日のライバルを潰さなければいけない。企業の安定地帯はもうなくなった。今日のライバルだけを意識してやっていると、社員はそれを倒したあと、次のライバルを倒す目標を見失い意欲さえ削がれる。今日のライバルと戦いながら、明日、明後日のライバルを社員に意識させるのが経営者である。

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