2022年5月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第38回 人間性重視の職場を―衰える心身機能:企業努力も不可欠

(「週刊 労働新聞」第2185号・1998年1月12日掲載)

 

これまで述べてきたような高齢者であるがゆえの社会的、肉体的、精神的な制約をクリアし、様々な機能を維持するための方策として、どのような視点があるのか。

現代では、仕事がソフト化し、判断・意思決定、点検・検査、監視などの精神的な機能を発揮することが求められている。一方、身体的な作業能力を必要としない仕事はないのだから、判断力などの機能を充分果たすためにも、身体的機能は重要となる。高齢者は少しでも眼や耳などの働きの低下を遅くするような努力を怠るべきではないし、それをサポートする企業側の種々の対策も必要となる。

また、病気になると気力面でも弱気になりがちとなる。高齢者には心身の「健康」が特に大切となろう。作業関連疾患やストレス関連疾患といわれる高血圧や糖尿病などの成人病は、仕事に関連した要因により発症したり進んだりすることが判ってきている。つまり、これらの成人病の予防には、仕事の仕方、職場の組織や作業環境も考慮しなければならないということになる。

生産性の点からも、後に紹介するトヨタ自動車(株)の白水宏典常務取締役は次のように語っている。「工場では、作業が定時終了の時にはトラブルが少なく、ラインは止まることなく完全生産稼働ができます。しかし、残業を要請される日には、稼働時間が長くなるので人も機械も連続運転で疲れが出て効率が悪くなるのです。そこでこれまで定時と残業の間には労働時間の関係から休憩がなかったのを、例外として、思い切って『品質チェックタイム』という名目でラインを止めることにしました。休止する時間を設けることで、ラインの総合稼働率が向上しました」。

空白の時間を設けて作業者を緊張から解き放つことにより、生産性を上げることに成功したこの例は、作業条件にストレス緩和策を講ずる必要のあることの1つの証左であろう。

働きやすい職場づくりが高齢者の職務満足や意欲づくりの保証となる。活力ある国民経済の維持発展のためにも、また、中高年者が自らのQOLQuality of Life…生活及び人生の質)を高めるためにも「中高年が働きやすい職場づくり」「高齢者が生活しやすい社会づくり」は避けることはできない。さらには、この中高年齢層をターゲットとした「働きやすい職場づくり」こそが若年者をはじめ職場の人たちにとっての働きやすい職場づくりに通じ、組織や社会の活性化をもたらすものと考えられる。高齢化社会における職場環境づくりはこのような「より人間らしい仕事や職場づくり」を推進する以外にない。

さて、今後の中高年問題を考える際には、中高年の労働能力の活用こそ高齢化社会における国民経済の活力を維持する途でもあり、急速に進行しつつある高度情報通信技術はそのような労働環境を実現する上で役立つ可能性を大いにもっていることに留意する必要がある。こうした技術基盤のうえに労働環境の整備や労働条件を中心とした労働生活の質(quality of working life)の向上を目指すことが今後の高齢化社会において欠くことができないものとなっているのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第40回>「迅速・スピード・時間」を意識した経営を

(1997年8月20日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 「アジル経営(敏速経営)」の話をしてもう3年ぐらいになる。それから1年ほど前に「ドッグイヤー経営」という話をした。これは、犬の1年は人間の7年に値するから、今までの7倍速で仕事をしなければならないということだ。

 「考えるだけで実行しない」姿勢では経営は乗り切れない時代。つまり決断力を要請することが経営には不可欠だ。迅速な決断が経営体力を強める。的確な判断力・決断力を持った人を経営者に据えなければやっていけない時代だ。

 限られた時間に倒産から遠ざかるためには、一目散でなくてはいけない。ぼんやり時間を空費することは許されない。時間を意識しなければならなくなったのは、社会が委縮し、破たんに向かっている状況が反映されているからだ。右肩上がりの時には「安全だからゆっくりでもいい」という意識だったが、今はもうゆったり気分ではいられない。「一刻も早く安全な地帯に行きたい」という気持ちが時間を意識させているのだ。

 危機感が募っている消費者の心をつかむためには安全地帯に導くこと。消費者や一般市民がたくさんの防護策を講じるには、時間が必要になる。これが時間の大切さを意識していることになる。

 例えば、写真の現像が15分でできると保証すれば大当たりするだろう。時間に余裕が出来、安全が買えるなら少しぐらい高くても人は集まってくる。

 有能な人とは、何でも短時間で仕上げる人である。早く用件を済ませることで残りの時間をほかに使えるから、より安全な地帯に行ける。危険の淵から遠ざかることができる。それが時間を意識するということである。

 お客様を待たせるのは絶対ダメ。電話でもあまり待たされると切りたくなる。不安感、危機感が社会的に蔓延しているのである。

 経営の中で切迫感、焦燥感を与えるのは、社長の決済が遅いところから始まる。社長の決済は即日決済を旨としなければならない。何日考えても意味がない。私は即日決済だ。即時の判断力、決断力が要求されるが、それができない人は社長を辞めるべきである。

 何も社長だけ努力しろというのではない。営業部長、資材部長、経理部長も迅速決済をしなければ、この苦しい時期を乗り切ることはできない。後回しにせず「今」を心がけよ。少々間違っても何もしないよりはいい。

 最近はやっているのがCEO。会長が最高経営責任者になるシステム。社長は最高執行責任者、会長は最高経営責任者というシステムが日本でも取り入れられている。会長が考え、社長が実行する。これはアジル経営にとって好都合のシステムだ。会長が方針を示せば社長は考えずに実行できる。

 これからは鋭角的に経営政策を展開しなければならない。葛藤、矛盾、軋轢、煩悶を乗り越えてこそ、競争場裡で初めてイニシアチブをとることができる。そうなると、考える人と実行する人とを別にした方がいい。これからの経営はCEO(最高経営責任者)が当たる。この人が経営戦略を決定し、経営政策を鋭角的にCOO(最高執行責任者)に実行せしめる。

 

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