2022年6月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第39回 人材選別の時代に―衰える心身機能:“ゆとり職場”が前提

(「週刊 労働新聞」第2186号・1998年1月19日掲載)

 

明るい高齢者雇用を具現化するには高齢者に対する信頼感を醸成することが重要だ。高齢者に対する不信感は何に由来するかを見極めなければならない。スピードが遅い、敏捷性に欠けるといった心身に対する不安感を打ち砕くには、経験値あるいは判断力といったものに期待する以外にない。そうなると、高齢者の絶えざる選別が必要となってくる。有能な高齢者と有能でない高齢者との格差を是認していかねばならないということである。言ってみれば、一律定年延長といった処置ではなく、一定の能力を有することが高齢者雇用を保証する途であることを明示すべきである。その結果、高齢者は自覚的な態度をとり、結局自信を持てるようになる。高齢者が自信を持てると自ずから職場は明るくなり、当該高齢者にとっても明るい高齢者雇用となろう。

さて、高齢者自信が持っている能力を十分発揮させるためには、①サポートの在り方も問題になるし、②心身機能維持のための労働条件の改善が望まれることでもあるが、③これらの基本は高齢者の身体面や精神面での負担の軽減である。労働回復力の低下や瞬発力の低下という心身機能面での中高年の特徴に留意するならば、作業スピードを含めた作業場面でゆとりを持たせること等への配慮は重要となる。例えば、(1)作業余裕の形成、(2)作業方式の変更、(3)人事・労務管理における中高年に対する配慮の重視、といったものが大切となる。

そこで、この点について、日本の代表的企業の1つであるトヨタ自動車組立作業での中高年対策の取組みを紹介してみよう。

従来の自動車の組立作業は、ラインは1本の長大なもので、しかも自動化が高度に進むことで「機械に使われる」「自動車をつくっているという実感がわかない」「休憩時間も少なく、深夜勤務もある」というようなことから若年離れ、職務満足感に乏しい作業の代表とみなされてきた。そこで、トヨタでは、(1)作業員の動機づけを重視した完結工程、(2)身体的負担の軽減、(3)人と共存する自動化機械(分かり易く、扱い易く、人と助け合う自動化機器)、(4)作業環境の向上(静かで、明るい快適な作業ゾーン)という4つの組立作業での理念を90年代初頭に掲げている。現在、作業が作業員のリズムに合致するように、また働く意欲が増すような取組みを、中高年対策として重点的に行うように、モデル的にトライしている。

それは以下の6つの課題からなっている。(1)働く人の意欲の喚起、(2)使いやすい道具・装置による改善、(3)披露の少ない作業形態の検討、(4)組立作業の特性に合った温熱環境の構築、(5)組立作業に必要な体力づくり、(6)疾病防止の徹底強化、の重点課題である。

トヨタの取組みは、中高年の組立作業員をターゲットとする取組みのなかで60歳になってもいきいきと働ける組立ラインをめざしており、これは若年者や女性への対応にもつながるものとなっている。

そこで、次回からはトヨタの実態をチェックしながら、「明るい高齢者雇用」を始めている中小企業の事例をも紹介していくことにしよう。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第41回>社員のストレス解消策を急げ!お客様からのクレームに注意せよ!

(1997年10月14日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 企業の問題で最近多くなったのは自殺と放火。私が担当している会社も2社が新聞に出た。いずれも社員による放火が起きた。

 このような事件は、実力主義、成果主義で落伍する社員のフラストレーションが高揚して起こる。彼らの健康管理も大切だ。傷ついた社員が極めて罪の重い犯罪を起こしてしまう。殺人罪は3年以上の懲役から死刑までだが、放火は5年以上の懲役から死刑までと、放火は殺人罪よりも重い罪である。公共危険罪だから刑罰は非常に重くなっている。そういった重い犯罪を大企業の社員がやり出す時代になった。

 私は「上手に人を辞めさせたい」という本の中で、実力主義、成果主義ではフラストレーションが溜まる、と書いたが、まさにそれが現象として明確になった。社員のストレス解消策を積極的に行ない、気配りすることも経営の課題として大切である。

 手法は色々あるが、社員の異常な言動についてお客様から投書してもらうのが1つ。社員の異常な言動についてのクレームがあったら、慎重かつ果敢に対処する。上司や同僚の前では真面目でも、お客様の前で異常な行動をとっている者がいる。

 第2は、社員が精神科医と電話で匿名で相談するシステムを作り、社員の配偶者からの相談も受け付けるようにすること。たとえ匿名でも社員が電話したら会社にわかるから本人は絶対に相談しない。配偶者を通せば自分だとわからない安心感が生れ、率直に相談する。

 今、まさに精神健康管理が大事。自殺、喧嘩、放火などの様々な現象が、中小、零細、微粒子企業ではなく、一流企業で起きているのが問題なのである。企業は精神力の弱いものを抱えている以上、どこでも起こり得ることだ。

 それにはまず、社長は優しい言葉をかけたくない人にも時々は優しい言葉をかけないといけない。幼稚園で子供を成長させる方法として、声をかけることが第一に挙げられている。社長が目線を合わさないことが2か月もつつけば、自殺するか放火するかと言う時代になってきた。

 

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