2022年8月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第41回 老若男女が協働―衰える心身機能:人にやさしい自動化で

「週刊 労働新聞」第2188号・1998年2月2日掲載)

 

 トヨタ自動車は人と機械の共存を徹底して追求する生産現場作りを心掛けている。物作り、即ち車作りはあくまでも人が主体、人が主役のライン作りを目指し、自動化も、まず人がした方がよい作業と、機械に任せる作業とに分け、人と共存できる自動化を徹底して追求する。自動化はインライン化、メカニカル化が機構をシンプルにし、作業者にとって分かり易く扱い易い仕組みにするという基本方針で対処しているのである。人が主役であることは高齢者にとってより望まれるスタイルである。人が行う方がよい作業と機械に任せる作業とに区分けすることは、肉体的なあるいは精神的な能力の低下を否定できない高齢者にとって必要不可欠であろうし、作業者にとって分かり易く扱い易い仕組みにすることもまた、高齢者雇用には不可欠な手順といってよい。

 白水宏典取締役(当時)は1993年4月21日付中日新聞で既に、「若い人が体力を競って車をつくるのではなく、老若男女だれもが参加できるラインが理想」と述べていた。そして現在トヨタは“AWD6P/J”と銘打ち、次代を見据えた労働作業環境への改革に取り組んでいる。具体的には「チーム活動による魅力ある組立ショップ造り」を実現しようというもの。AWD6P/Jとは、Aging&Work Development 6 Programs Projectという意味である。Aging―加齢―に対する労働作業環境の対応に意図的・積極的に取り組むということだ。働く人すべてが60歳になっても生き生きと働ける魅力ある職場作りを目指す。

 さて、6 Programs Projectとは何かということになるが、順に述べていこう。(Ⅰ)意欲・意義…ラインで働く人のやる気を喚起する。ニューワーキングプランの策定、(Ⅱ)疲労…最小限の疲労で最大限の回復を得るシステムの提案、(Ⅲ)体力…自助努力を基本としながらも、体力を自覚・維持する雰囲気づくり、(Ⅳ)道具・装置…適切な対策が立てられていない負担の高い作業を改善するための道具・装置の開発、導入、(Ⅴ)温熱環境…温熱環境で疲労を助長せず、個人(工程、年齢、性別、etc)に適応した空調システムの実現、(Ⅵ)疾病防止…手指部の疾病を減少させる

 以上のような具体的なテーマを設定し、各部門からの参画を得て、これらの問題の改革に取り組んでいる。トヨタは巨大企業として世界に進出する、まさに日本を代表する企業であるが、代表的企業なるがゆえに、今後その立場を維持するためには高齢者雇用の問題、高齢者作業のありよう、工場環境の問題について極めて積極的に研究しているのである。そのことはトヨタ自動車だけの問題ではない。およそ日本の代表的企業が、この問題に積極的に取り組み、研究開発をしていかなければ日本の製造業の未来はない。

 さらに敢えて付け加えれば、トヨタ自動車はAWD6P/Jに取り組むに当たって独善に陥ることのないよう、(財)労働科学研究所の指導を仰いでいるとも聞く。トヨタ自動車の姿勢は誠に賞賛に値するものといってよい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第43回>年頭教書は「販売即経営」プラスもう1つの柱を

(1997年12月9日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 社長の仕事そして年頭の挨拶は自分で作らないといけない。秘書や総務が作った文章を読むようではダメ。自分の言葉で挨拶できないような人は社長の資格がない。それには、血となり肉となった経営方針、経営理念が大切だということである。

 そのとき社長として何か1つの柱を立てること。

 私がコンサルをしているある会社は来年20年目を迎える。新しい、次なる20年に向けて会社の構造をしっかり作り上げようと相談を受けている。来年はまず、そのための地ならしをする初年度であり、新しい取引先を集中的に開拓すべき年である。営業基盤の強化、新技術体制、コンピュータライゼーション等々、会社の構造をしっかり作り上げ、次なる20年のために地ならしをする準備期間である。

 皆さんも「販売即経営」という従来の思想に加え、もう1つ柱となる思想を確立しなければいけない。

 どの企業も時代に合った企業への切り替え戦略を社長のテーマにしないといけない。「来年はこうする」、「こうしたい」を、できるだけ1点に焦点を合わせて、企業をより時代に合わせる戦略行動を目指さないといけない。

 そのために幹部の人事をどうするか、投資のための資金調達をどうするか、あるいは提携先との関係づくりをどうするか、という、人・モノ・金についての具体的な実践方策を明示することだ。これが経営の基盤づくり、安定に不可欠だ。

 「統一的な刺激は数少なくても、散漫で数多い刺激に勝つ」とよく話しているが、そのために年頭教書をきちんと発表することが大切だ。

 社長個人の立場から言うと、「世代交代」「継承」がテーマになるだろう。これを従来以上に真剣に考えないといけない。株式公開、自社株の譲渡または分割を、社長として考えないといけない年である。買収、合併、売却も考えないといけない年だし、地域貢献、社会貢献の推進もいよいよ考えないといけない。今までのように成り行き・事なかれ・その場しのぎの経営は限界に来ている。

 対外的な問題として心がけないといけないことは何か。それは、銀行の貸し渋り対策は十分か、取引先の倒産対策は十分か、そして仕事の急減対策は十分か、ということ。

 ここまでを社長が毎年、年始めに明らかにしないといけない。

 

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