2023年1月のアーカイブ

「明るい高齢者雇用」

第46回 山一産業で明確に―衰える心身機能:再就職は専門家のみ

(「週刊 労働新聞」第2193号・1998年3月9日掲載)

 

 前々回、前回と高井法律事務所所員である足代清氏から中高年への就職・転職に関する5つのアドバイスをご紹介した。

 次は企業の高齢者雇用へのアドバイス。彼は2つ挙げている。1つは「高齢者は賃金にこだわらない人も多い。やりがいある仕事にこだわる」というものである。平成9年版の労働白書の「高年齢就業者の就業理由調査(男子)」によれば、55歳~59歳では「自分と家族の生活を維持するため」という理由をあげる者が最も多いが、これは年齢層の上昇とともに低下し、「生き甲斐、社会参加のため」、「健康上の理由(健康に良いから)」等の割合が相対的に増加してくる。老齢年金の支給状況に対応する形で生き甲斐派が増えているようである。71歳の彼もこのケースに当たる。採用する企業側としては賃金額による誘因ではなく、仕事の意義・やり甲斐をいかに理解してもらうか、あるいはそのような仕事をいかに用意するかが課題となる。

 さて、高齢者を生かす「やりがいある仕事」とは何であろうか。2つの要素が考えられる。1つは「専門知識と経験を生かした教育的仕事」である。人に教える立場を与えるということは本人のそれまでの職業人生の積極的肯定を意味する。また、教えるという行為は属人的暗黙知としての知識・経験を誰でも理解共有できる形式知に転換することであり、職業上獲得した勝ち財産の社会的敬称である。本人にとっても企業にとっても極めて重要な意味を持っている。

 もう1つの要素は「コミュニケーション」である。仕事を通じて性・世代を超えた社会的交わりを継続することは社会と隔絶しがちな高齢者に心身両面の健全性をもたらす。人に教えつつ社会参加を継続することが仕事のやりがいにつながるのである。

 彼の企業の高齢者雇用に対するアドバイスの2つ目は、「ハイキャリアの高齢者は給与以外のサムシングが必要」とのアドバイスである。例えば超ハイキャリアであれば車・個室・海外出張時のファーストクラス等の待遇が考えられるが、一般的にはフレキシブルな勤務時間や名刺上での役職名への配慮がこれにあたる。

 これまで足代氏の中高年の就職・転職に関するアドバイスと企業の高齢者雇用へのアドバイスを書いてきたわけであるが、「若いうちに自分の商権を確立せよ」とのメッセージが強く印象に残っている。

 折しも昨年来、山一証券の自主廃業に伴う社員の再就職問題が話題になり、新聞も「中高年再就職に寒風」、「モテる若者、寒空の中高年」と中高年の再就職の厳しさを連日報道している。

 山一証券グループの社員の受け入れを表明した企業の募集職種を見ても、「デリバティブの専門家」、「M&Aの専門家」、「ファンドマネジャー」、「店頭、アジア株担当者」、「アナリスト」、「投資信託の専門家」等、その道のエキスパートを求めていることがわかる。

 「若いうちに自分の商権を確立せよ」とのアドバイスをもっと早く受けておけば良かった…と嘆息している中高年も残念ながら多いのではなかろうか。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第48回>社長の話し方6例~部下に責任を推しつける話し方ではダメ~

(1998年6月17日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

1)部下に責任を推しつける話し方や、経営判断を回避する態度ではいけない。「私がいいと思うからやる」という話し方でないといけない。社内を引っ張っていくのに、「私が責任を取る」という話し方でないと社内はまとまらない。

 「労働組合が悪い」と言う社長が多いが、それはその社長の経営力がないのだ。組合が会社を潰すことはない。経営が脆弱だから会社が潰れるのだ。その意識改革なくして再建はあり得ない。

2)社員に対して本人に不都合不利益なことを話す時は「残念だが」、「申し訳ないが」という一言を付ける。謝罪の意を表する態度でいかないと、その後の協力は得られない。

3)語尾が明瞭であること。明瞭でないと説得力がない。

4)幹部には、いいことにしろ悪いことにしろ、一般社員より一刻でもいいから先に話しておく。幹部と一般社員とに同時に話すのでは、幹部が統率力を失なう。

5)従来より少し数字を入れ込んで話をする。社会がデジタル化しているから、社長の話しもデジタル化しないといけない。抽象的なことを言うより、具体的な数字を入れること。

6)幹部には何でも真っ正直に話すこと。

 今朝、再建問題である会社に行った。その時いくつか条件を出したが、その一つが「何でもいいから悪い情報を必ず伝えてほしい」ということ。そうでないと私は引き受けない。社長は「自分の会社にとって都合の悪いことは顧問弁護士に伝えたら不利」と判断してはいけない。己を知らないと何もできない。それと同様、幹部には真っ正直に話すこと。

 もう、経営者が言葉巧みに部下を騙せる時代ではなくなった。逆に部下の方がよく知っていたりする。社長は裸の王様になってはいけない。企業の中で情報をディスクローズ(公開

する姿勢がなければ、社内で話をする資格も意味もない。

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