中国広州在住の私の友人による、中国における新型コロナウィルス対策をテーマとした連載は今回で一旦最終回といたします。
【中国在住日本人から見た中国における新型コロナウィルス】
第4回 中国で再び・・・
未だに各国で衰えることのない新型コロナウィルスに関して、これまで3回に渡り一気に封じ込めることに成功した中国における防疫対策とAPPを活用した管理体制についてお伝えしてきた。そんな中国も、春節後に戻ってきた外国人が持ち込んだウィルスにより新増感染者をゼロに抑えきれず、再び警戒地区に設定されるエリアも出てきた。
日本の2ヶ月先を行く中国の現状から、この新型コロナウィルスの完全収束が簡単ではなく、収束したかに見えて再び小さなピークを迎えることを繰り返す可能性があること、そして徹底した管理の重要性が見て取れる。
1.中国にいて肌で感じる環境変化
2月9日春節休暇最終日に中国に戻って以来現在に至るまで、外出時は全員がマスク着用を徹底していることは、国家による管理の徹底と人民の意識の高さがうかがえる。
(1)2月:完全封鎖による徹底管理
・飲食店・娯楽施設は全面営業停止、仕事は在宅、食事は自宅で自炊かデリバリー、買物は1世帯1日1回1人まで。
・高速道路の料金所・スーパー・会社などで検温、37.3度以上の人は一切入れない。
(2)3月:徐々に回復の兆し
・飲食店は顧客同士の距離を離して、ゴルフ場はロッカー・更衣室の使用を禁止して、徐々に営業開始。企業によっては在宅頻度を減らす傾向に。
・飲食店は検温・記帳(身分証明書番号、携帯番号など)、ゴルフ場その他は検温以外にAPPで過去行動範囲を確認、会社では入る前だけではなく日中も検温。
(3)4月上旬:完全回復
・飲食店・娯楽施設・商業施設など、ほぼ完全回復するも、検温・記帳・APPによる行動履歴確認は継続。
(4)4月中旬以降:予想通りの再燃
・飲食店その他で外国人の感染者が発端となり、黒龍江省はロシア人から、広州はアフリカ人から、感染拡大。
・個人の行動管理が徹底されていることから、感染者と接点のある人は発症していなくても隔離することで拡散を防止。
※北京では5月全人代が開催されることもあり、上記広州に比べて各種管理は厳重で活動の回復は遅い状況。
2.収束したかに見えたが再燃した広州の例
(1)広州の白雲・越秀エリアの警戒レベルUP
安全レベルで安定していた同地区もアフリカ人が多いこともあり、4月中旬再び警戒レベルがあがる。
→同エリアへの立ち入りを禁じる日本企業も出てきた。
(2)広州からの渡航者を隔離
雲南省・海南島など、4月になって広州市の一部エリアで警戒レベルが上がったことを受けて、当該エリアに限らず広州からの渡航者を14日間隔離する都市がでてきた。
→日系企業も中国国内出張が解禁になりそうなタイミングであったが、事前に出張先の管理ルールやホテルその他の受け入れ可否を十分確認するなど慎重な対応を求められるようになった。
(3)市中心レストランで感染者が食事し店員も感染
感染した外国人がレストランで食事をしたため店員も感染。同日以降同レストランで食事をした全員が郊外の政府指定ホテルに14日間隔離され、その間に検査2回のPCR検査を受けて共に陰性で開放される。開放されて更に1週間後に改めてPCR検査を受けて陰性となり、これを受けて完全にシロと認定される。その間、各種APPの背景は青ではなく赤に表示されており、行動の自由は制限される状況。
→4月中旬以降、日本人の外食を禁止する日系企業もあったが、同エリアの新増感染者がゼロに収束したことを受けて、5月になって十分注意しながらの解禁としている。
日本でも専門家によれば“感染者が皆無になることは難しく、減っては増え、増えては減りを繰り返しながら収束に向かう”とのことであった。中国でも一旦新増感染者がゼロとなり収束したかに見えて、小さな波がまた来てしまった。
それでもその波を徐々に小さくし、そして完全収束させればよく、中国はそのための仕組みを構築し実践していると言える。感染者がいれば接触者含めて厳重に隔離できるのは、ビッグデータも活用したAPP活用や商業施設での記帳といった行動履歴管理のなせる業である。
新増感染者を完全に抑え込んだ中国でさえ、海外からの入境者の影響でこうしたことが起こる。
日本はまだそれ以前の新増感染者をゼロにする段階ではあるが、常に2ヶ月前の動きをしている中国を見ながら、中国同水準での対策徹底による早期の回復に期待したい。国情の違いから強い強制力は働かないが、個人の意識を高め日本にあった形での対策を実現して欲しい。がんばれ!日本!