境健一郎の「高井先生との出版」の最近のブログ記事

 

第8回 『仕事で人は成長する』 (2)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が出版で読者に伝えたい思いは、次のことでしょう。

 

 「読者の心が温まり、自分を高めるヒントになれば嬉しい」

 「チャンスはいつも、あなたの前を行ったり来たりしている」

 

 前回7月31日号に続いて、本号も表題の本から、このような環境下でも、ビジネスパーソンが生き抜くヒントになる言葉を選びました。

 

 

  • 進化する女性、退化する男性

 

 「男性は退化し、女性は進化していると言われている。

 

 第1に、ほとんどの企業の入社試験で、上位の成績を占めるのは女性である。

 

 第2に、女性は自己投資に余念がない。キャリアアップの有料の研修を自費で受けるのも、女性が圧倒的に多い。男性は身銭を切って研修を受ける人は少ない。

 また、いつまでも輝いていたいために、美しくあろうとすることに貪欲で、スポーツジム、ヨガ、岩盤浴、マッサージなどの情報収集にも余念がない。

 

 第3に、女性の方が情報交換の時間を持つことに積極的である。男性は成果主義によって仕事に追われ、情報交換が途絶えがちになっているという。

 

 第4に、女性はそれなりのポジションが少ないために、チャンスを得ようとキャリアアップを常に心がけているが、男性は意識的・集中的にも勉強しない。

 

 このように意欲を持った女性が、残念ながら管理職として伸びていないのは、言うまでもなく、日本が男社会であるということが背景にある。しかし、そのほかに、子どもを産み育てる性として、女性に本来的に備わっている特長が、原因していると思われる。

 

 そこでは当然のことながら、庇護、つまり自らを守る、自己愛という防衛意識が非常に強くなる。

 その結果として、仕事を他人に渡さず、自分で取り込んでしまうのである。ということは、とりもなおさず、マネジメント力を失うということにつながる。マネジメント力とは、牽制と互助を前提とするが、自分で仕事を取り込んでしまうと、その必要もなくなってしまう。

 

 そこに実は、女性の管理職が数多く現出しないという根本理由があるように思われる。

 これを打破するためには、女性が仕事を他人に任せること。そして、指揮・監督する手腕を身につける必要があるように思えてならない」

 

 このことは、管理職として成長するためには、男性にも欠かせないことと言えます。

 

 

  • 教養の有無で差がつく時代になる

 

 「温故知新という言葉をご存知の方は多いだろう。昔の事柄を研究・吟味して、新しい知識や見解を得ることをいう。『論語』に出てくる言葉である。時代がどんどん進歩し変化していく時代、私たちの目はとかく未来へ向けられがちだが、その目を確かなものにするためには、古い時代を振り返ってみることも必要だ。

 

 とくに古典と言われる書物、絵画、音楽、趣味、嗜好などは、長い年月残ってきたという一事を以ってしても、触れてみる価値がある。そしてそのような価値を、自分のものにすることが、すなわち『教養を積む』ということである。

 

 頭脳がものをいうソフト化時代は、仕事の能力が際立っていれば、一定の業績を収めることができる。しかし、これからの心の時代においては、人の心に触れることのできる人でなければ、良い結果は得られなくなる。

 そのためには教養を積んで心を養っておかないと、心の栄養失調になってしまう。

 

 爆笑問題の太田光さんが最も影響を受けた人物として挙げている亀井勝一郎氏。彼は、

 『若い男性は教養程度が低くなったので、目立つものしか心かれない。発見する能力を失ったのだ。女性もまた、教養程度が低くなったので、目立つようにしか化粧しない』

と言っているが、耳が痛い人もいるのではないだろうか」

 

 

  • 「他者評価」を高める正々堂々

 

 「評価には、客観的と主観的な評価があり、別の視点として、自己評価と他者評価がある。

 成果主義時代の評価は他者評価が軸となるから、個人としては他人にできるだけ高く評価してもらえるように、成果をアピールしたほうがいい。

 そのためのポイントは2つある。

 

 第1のポイントは、たしかな実力を何か一つでいいから、身に付けておくことである。

 ちょっとやそっとでは代わりが見つからないスキル・内容で、仕事に役立つものがいい。

 それを自分の売りにする。そのためには、『彼はこういうことができる』と第三者が見て評価できるように、それを外部に表出することを忘れてはいけない。

 

 第2のポイントは、正々堂々としていること。

 人は他人を評価するとき、いくつかのモノサシ(損得・親疎・上下・適否……など)を持っている。

 だからこそ、全方位的にあらゆる人に好印象を与えるつもりで振る舞うのである。それがいろいろなモノサシによい影響を及ぼす。といって、何もおもねたり、迎合する必要はない。

 

 そういう振る舞いになると、おのずとすること・・・・は限定されてくる。善意とか、明るさ、公平さ、勤勉さ、正直さといったことしかできない。それでいい。極端な話、あなたが『職場で1番、正々堂々としている人』のレッテルが貼られれば、それだけで十分である。

 

 容易に代替えの利かないスキルと、全方位的な好印象。

 この二つが他者評価を高める武器となる。あと大切なことはブレないことである。360度評価の時代、とくにリーダーになればなるほど、これらが求められる」

 

 

  • まず感じる! それから考える!

 

 「私たちは『わかっている』という言い方をよくする。『わかっている』と相手から言われると、『理解しているのだな』と思ってしまうが、ここで安心してはいけない。聞いてわかっているのと、見てわかっているのとでは、理解度に天地の差があるからだ。

 

 私は1日に300枚くらいの仕事上の書類を読んでいる。読めば、『なるほど』と思う。しかし、それだけではダメだと思って、弁護士や秘書と打ち合わせをする。直に会って打ち合わせするのだが、その場にいなければ電話で打ち合わせる。

 そうやって書類を読んで、理解したことを補強する。

 

 しかし、それだけではまだ不十分である。 やはりクライアントとの打ち合わせの場に出ることだ。仕事は常に現場主義だと信じている。

 なぜかというと、頭で理解するほかに、五感でも理解しなければ正しい判断ができないからだ。

 

 現場には、目に見える情景、耳に聞こえる音、鼻が感じるにおい、肌や味覚まで迫るものがある。そういうものが大切な判断材料だ。五感を働かすには現場に立ち会う以外に方法はない。

 

 〝Don’t think,feel “ という言葉がある。『考えるな、感じろ』ということだ。

 私は、『仕事は、まず感じて、それから考える』を求めている。これをクリアするには、現場に出ることが必須になってくる」

 

 

  • 想定の範囲内に未来はある

 

 「未来予測というものは当たらない、と思っている人が多いようだが、詳しく調べてみると、案外当たっている。ここまで文明が進歩してくると、どんな未来も、誰かが想定した範囲内に収まると言ってよいと思う。

 

 その意味では未来を予測することは、なかなか楽しい。

 

 ピーター・ドラッカーは、近未来を予測して言い当てるのがうまかった人だが、彼の未来予測に、

  『今後の企業はフラットな組織に変わっていくだろう』

というのがある。これは既にそうなりつつある。社長から平社員までの階層が少なくなってきた。

 

 なぜなら、情報共有の結果、みんながそれぞれの立場で考える必要が出てきたからである。

 昔は考える人と実行する人が分かれていたが、今はそれでは対応が遅れてしまう。

 組織はフラットになっていかざるを得ないわけである。

 

 未来を見通すには、現在をつぶさに観察して、洞察して推理力を働かせることだ。そして近未来を予測してみる。

  『想定の範囲内』と言えない人は、現在の情報に疎く、また近未来に対して洞察も推察もしていないということになる。想定することがなぜ大切かというと、自分の能力と情報知識を動員することで、未来を見通すことができるからである。

 

 未来を見通すということは、『こうであったらいいな』という夢を語ることではなく、現在と地続きのなかで、自分がどこに位置し、何をするかを考えることだ。

 

 ドラッカーが、『近未来は現在に必ず萌芽ほうががある』と言ったのは至言である」

 

 

  • 決断と責任の修羅場をくぐりなさい

 

 「大正から昭和前期に活躍した経済学者・河合栄治郎は次のように言っている。

 『われわれを成長させるものは、人生における悪戦苦闘である』

 ビジネスの世界で一定の業績を挙げた人は、たぶんこの言葉にうなずくはずだ。要するに成功した人は、みんな修羅場をくぐっているのである。

 

 修羅場をくぐるとは、場数を踏み、時には矢玉に当たってみることだ。

 

 場数を踏むとは、実務で求められる能力の判断力・決断力・実行力をつけるチャンスを多く味わってみることである。

 またビジネスの矢玉とは、『責任を取る』ということである。

 この2つを数多く経験するのが、ビジネスにおける修羅場をくぐるということになる。

 

 成長したいと思うなら、『自分探しをする』などとのんきなことを言っていないで、目の前の現実にどんどんぶつかってみることである」

 

 

 『1勝9敗』(新潮文庫)の著書があるユニクロのオーナー・柳井正さんは、上記にあるように、数多くの修羅場をくぐって、場数を踏み、矢玉に当たってきました。

 

 そして絶えず、今でも、仮説・現場・検証を繰り返しながら、挑戦し続けているのです。

 それらの体験・経験から、胆力が生まれ、判断力・決断力・実行力を磨いてきたのでしょう。

 柳井さんは言っています。

 

 「どんな仕事の失敗も、挑戦し続ける人間の勲章だ」と。

                                 

次回は9月25日(金)に掲載いたします 

 

 

第7回 『仕事で人は成長する』(1)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で4冊目に書かれたのが、本書『仕事で人は成長する』です。

 

 今回の新型コロナウイルスによる雇用状況は、解雇等見込み者数が39,059人になり、(令和2年7月22日現在集計分 厚労省職業安定局雇用政策課 政策調整係)、毎週増加しています。

 

 また、リモートワークは新型コロナ終息後も、働き方改革の一つの選択肢として残る可能性が増えました。その結果として、オフィスが縮小され、社員の居場所も雇用形態も新時代を迎える可能性が増しました。

 

 新型コロナウイルスとは直接関係なく、大手金融機関を始め大企業も、次々と人員削減を発表しています。

 

 このような環境下で、「どのようなビジネスパーソンが生き抜けるのか?」のヒントになるのが本書ではないかと、あらためて思えました。

 

 本書は、ビジネスパーソンとして、人間として、成長するために必要な力を下記の5つに分けて、取り上げています。

 

 「仕事の質を高める力」

 「自分を高める力」

 「人を巻き込む力」

 「時代の流れを読む力」

 「リーダーとしての力」

 

 自分の資質を磨き、能力を高めるために、なにをすべきか?

 仕事を、自分自身の人生におけるキャリアデザインの面から捉える参考になります。

 

 本号も表題の本から、【高井語録】を集めていきます。

 

  • 仕事で差がつく簡単な理由

 「成功した人・評価の高い人と、成功しなかった人・評価の低い人との差は紙一重である。

 たしかに結果からみると、両者の間には、天と地ほどの隔たりがあることが多いが、もともとはそんなに差はなかったと思われる。

 なぜなら、スキルという能力の差ではなく、心の持ちようという量りがたい差が原因だからである。

 

 失敗する人や評価が低い人は、仕事に関して執着心が不足し、あきらめが早いケースが多い。

 完成に90%超えるまで前進しながら、

 『だいたいできたから、これでいい』

 という〝だいたい病“のクセがでる人か、

 『もうだめだ』

 という〝敵前逃亡病“のクセがでる人である。

 

 本来、仕事というものは、最後の10%弱が一番手を抜けないところである。とくに始末が悪いのが、〝だいたい病“の人。自分に甘い点数を付けやすいから、反省がない。だからいつまでも成長しない。そういう人に限って、

 『自分の能力が活かされていない』

 と、上司や回りの人のせいにする。

 

 成功する人や評価の高い人は、最後の数%をやり切り、さらに120%の完成度をめざすから、仕事で磨かれ、成長する。120%とは、相手の期待値を上回る仕事をする人である。そこには満足を超えて感動が生まれる。そうなると、その他大勢と違ってキラリと輝く存在になる」

 

  • 自分をブランド化させる

 「ブランドの本質は、『約束』ということである。ブランドものに人が集まるのは、その製品がいつも変わらぬ価値を備えていると信じられるからだ。信じる理由は、ブランドがその価値を約束してくれているからである。人々はそこに『かけがえのなさ』を感じる。

 

 あなたも、そのような人になることを目指せばいい。

 

 『自分をブランド化させる』という発想で、個人のブランドイメージができてくれば、その自分自身のイメージを裏切れないとの気持ちが出てくる。だれでも必死にそのイメージを守ろうとする。

 その努力が、あなた自身をも成長させるのだ。

 

 これまでは過去の実績が評価の対象だったが、変化の激しい時代は、過去の実績だけを見ても正しい判断はできない。『ブランド力』の重要性が増してきている。

 

 では、どうやって自分のブランドイメージをつくるか。

 

 仕事の中身や個人の資質によって違ってくるが、『安心感』と『満足感』がブランドづくりのキーワードになるだろう。この2つをどうやって相手に与えられるかを、徹底的に考えることだ。

 

 私の場合は、決して空約束をしない。法律の仕事は、簡単に約束できない世界だからだ。だが、同時に依頼者を不安がらせないことも、弁護士の大きな役割であると思っているので、それなりの方法をとる。

 

 絶対ではないにしても、まず解決の道筋を示すようにしている。具体的に道筋を示しながら、

『この峠を乗り越えれば、いつごろには穏やかな平野を展望できますよ』

といった言い方をする。不安感というのは、先行き不透明なときに起きるから、曲がりなりにも展望が開ければ安心感が得られる。

 

 次に、

 『私も一緒に登りますよ』

 と付け加えれば、依頼者は安心感と同時に満足感が得られる。

 この2つを持ってもらうことで、『かけがえのない存在』と評価されることになる。

 

 これが、いわば私のブランドということになる」

 

  • 挫折しない目標の立て方

 「目標設定は活力を生む源泉でもある。目標を持つと行動が始まる。行動が始まると一日が充実する。逆に目標を持たないと、知らないうちに人はいい加減になっていく。

 

 また、目標を持つと人は成長する。目標に向かって邁進することが成長につながる。そんなときに素晴らしいアイデアが生まれたり、新しい情報や知識を吸収する力も出てきたりする。

 

 さらに言えば、目標は人を強くしてくれる。つらい出来事や困難にぶつかったようなとき、くじけてしまう人と頑張れる人に分かれるが、目標があれば乗り切る勇気が生まれて頑張ることができる。

 

 では、どうやって目標を持つか。

 それには自分の好きなことを目標にすればいい。ただし、以下の条件がつく。

 ・まず世の中に役に立つこと 

 ・自分を成長させること 

 ・周りの人を幸せにすること

 

 この3つの条件をクリアすれば、後はどんなことでもいい。目標に向かって努力することは、楽しい作業であるはずだが、途中で挫折してしまう人が少なくない。

 

 挫折しないための方法はいくつかある。

  1つは、目標を鮮明にする

  目標は単なる夢でも願望でもない。具体的な着地点を持ったものだ。それを鮮明にさせて
  おかないと、少しも目標へ近づけない。それで挫折してしまうのだ。

 

  1つは、タイムミリットを設ける

  目標はどんなときでも、はっきりと期限を設ける必要がある。期限を決めない目標では、
  『目標を持っている』とは言えない。期限のない目標は、淡い願望に過ぎない。

 

  1つは、目標は必ず紙に書き出す

  頭のなかにあっても目標は目標だが、紙に書き出すのと書き出さないのとでは、達成意欲
  に大きな差が出てくる。書き出す人はよく目標を達成し、書き出さない人は十中八九ダメ
  と思っていい。そのくらい書き出すことは大切だ。

 

  もう一つ加えれば、分相応より大きめの目標がいい

  そのほうが自分の成長につながるからだ。『大きすぎて達成できないのでは……』という心
  配は無用。まじめに正しく考えて前記の条件をクリアした目標なら、大きすぎることは決し
  てない。安心して目標に向かって突き進んでいけばいい」

 

  • 能力を拡大させる考え方

  「ビジネスを効率的に進めていくうえで、きわめて重要な考え方が、『選択と集中』である。

 そのポイントは、次の3点である。

 

  ・やることとやらないことを決める

  ・捨てるものはさっさ・・と捨てる

  ・集中すべきものに専念する

 

 ふだん忘れているが、私たちの生活は『絶えざる選択の積み重ね』によって成り立っている。

 朝目覚めたときから夜眠るまで、何かの選択をしている。その選択の適否によって、人生は大きく変わってくる。

 

 たとえば、食べ物の選択は体調に影響し、人生に大きな影響を及ぼしてくる。お金持ちになるのも、お金に苦労するのも、自らの選択が大きく作用しているはずだ。その意味では、人間に与えられた最高の特権が、『選択』ともいえる。

 

 だが、この選択をほとんど利用しない人がいる。

 また、誤った選択をしてしまう人もいる。

 

 せっかく正しい選択をしても、集中しない人がいる。

 

 適切な選択を行い、極度の集中力を発揮したら、誰もが信じられないほどのキラリと輝く能力を発揮する。人に潜在能力があるとよく言われるが、それを引き出すのは、『選択と集中』によると考えることができる。

 ガンジーの次の言葉と合わせて考えれば、誰にでも、こういうことも起きて不思議ではない。 

 

 『ひとりの人に可能なことは、万人に可能だと私は信じている』 (ガンジー) 」

 

  • 中途半端な仕事人の小理屈こりくつは信用されない

 「幕末の動乱期に活躍した勝海舟に、次の言葉がある。

 『小理屈で諦めてしまうからダメなんだ。世間は生きている。理屈は死んでいる。死んでいるものが、生きているものに勝つことなど、到底できることじゃない』

 

 物事は中途半端にしてはダメだ。何かを始めて経過がうまくいかないと、すぐ諦めてしまう人がいる。そういう人は、『やめることを正当化する理屈』を必ず言う。もっともらしい理屈が山ほど出てくる。そんな人に限って良い成果が挙げられない。

 

 徹底性という精神は、日本人には欠けているところがある。必要性は認めながら、なかなか徹底してやろうとはしない。そのくせ始めてしまうと、今度はなかなかやめようとはしない。だから過去の大きな変革も、外圧によらねばできなかった。

 

 徹底してやり抜くということは、一方で、先に進めなくなったとき、きびすを返してさっさと撤退することでもある。織田信長は、徹底することにけていたが、逃げ足も速かった。このスピード感が、いまの日本社会には欠けている」

 

  • 自分が自分にだまされる

 「自己啓発のポイントは、小さなことから始めるのがいい。

 最初から大げさなことを考える必要はない。問題は継続できるかどうかということ。

 

 継続の試みとして、たとえば『日本経済新聞の【私の履歴書】だけは1年間読む』と決めることをお勧めしたい。決めたらそれを続ける。クセになって、読まないと気持ちが悪いというくらいまで続けること。それができれば、あなたは小さな成功を経験したことになる。

 

 一度決めたことを継続できないのは、自分の行動に対し疑念や迷いが生じるからだ。

 『こんなことして何になる』

 気が乗らないときは、必ずこんな疑問が出る。そういうときは、

 『決めたことだから』

 ということでいい。決めたことは一種の目標だから、それへ向かってひたすら努力をする。やり遂げるには理屈はいらない。

 

 理屈のほとんどは怠け心から発する。これを称して古人は、

 『怠け者の舌だけは怠けない』

 と言った。まさにその通りで、『ほかにやりたいことが出てきた』など、『やらない』ための言い訳が山ほど出てくる。不思議なのは、どれももっともらしく感じられること。それで自分が自分にだまされる。

 

 怠け心を克服するには、試練をゲームのように楽しむクセをつけるといい。ゲームと言うのは意図的に試練をつくって、どちらがそれをうまく克服するかを競うものだ。

 ルールとは試練が姿を変えたものに他ならない。それでいてゲームが楽しいのは、試練を克服することが楽しいからだ。この原理を実生活にも取り入れてみればいい。

 

 継続性を奪うものは、怠け心のほかに、突然訪れる状況の変化もある。いわゆるピンチである。そういうときは対処できないと思うかもしれない。だが、ひとつ良い考えがある。それは、『時にゆだねる』ことだ。

 

 一時的に中断を余儀なくされても、柔軟に事実を受け入れ、またしぶとく始める決心を固めればいい。継続を、あまりマニアックに考えないこと。継続は断続でもいいのである」

 

  • 威張っている人は終わった人

 「『春風を持って人に接し、秋霜を持って自らを慎む』

これは江戸後期の儒学者・佐藤一斎の言葉である。他人に優しく、自分に厳しくあれという教え。

 

 しかし、実行となると意外と難しい。いざ人に接すると、自慢したり威張ったりしてしまう。だが、自己成長のためには、これは一番よくない。

 

 なぜかというと、人の成長は「他人によるところ」が大きいからである。もし周囲に他人がいなければ、成長の契機がつかめない。

 それなのになぜ威張るのか。

 

 謙虚さを見失って、自分を高いところにおいてしまうからである。高いところから見下ろすと、威張るしかなくなる。『バカは高いところに登りたがる』とはそいう意味である。

 

 どんな形であれ、威張っている人を見たら、『終わった人』と思って間違いない。

 なぜなら威張るということは、『過去自慢』にほかならないからである。過去のものだから、道行く人はあまり見ようとはしない。だから、自分から声を大きくして見られることを促しているのだ。

 

 威張る人とは、自分から成長を断念した人と言える。成長していくためには、学ぶ姿勢と同時に謙虚さがどうしても必要だが、それがないのだから、成長するはずがない。

 気を付けたいことは、誰でもこのような人間になるということである」

 

 次回は8月28日(金)に掲載いたします。

 

第6回 『3分間 社長塾』(2)
スピード判断力をつける

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生の本業はもちろん弁護士ですが、皆さまご存知のように、経営の合理化や改革・再建に50年以上の実績をお持ちの方です。

 とくに社長・経営幹部向けの講演や指導は、「半歩先を読み、問題点を的確に指摘し、解決への方向性を具体的に説く」として定評があります。ズバリ本質をつかむ先見性と実践対策を、新鮮さに溢れた分かりやすい言葉で語られることで、83歳になられた現在でも、相談者が後を絶ちません。

 

 前回5月29日号に続いて、本号も表題の本から、とくに社長の戒めとなる言葉を選びました。

 

社長の戒め・8つの言葉

 

①社長はもっと優しさを表現しなさい

  「経済縮小の時代は、経営者だけでなく社員にとっても厳しい時代だ。従来の仕事の質と量では通用せず、成果を上げなければ降給や降格、時には解雇という現実にも直面させられる。

 社員の能力や働きぶりをシビアに評価するのは社長の役割だ。

 ただ、厳しいだけでは組織はまとまらない。社員は血の通わないロボットではない。

 社長が厳しさと同時に、優しさを発揮することで、人間的なつながりが形成され、本当の意味で強い組織になっていく。

 

 レイモンド・チャンドラーの名作『プレイバック』に、

 『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない』

 という有名なセリフがあるが、これを社長用にアレンジするなら、

 『厳しくなければ経営できない。優しくなければ経営する資格がない』

 といったところだろうか。

 

 経営環境が厳しくなると、シビアな面ばかりを強調したくなるが、過酷な時代だからこそ、社長は優しさをいかに表現していくかが、大事なポイントになる」

 

②ケチな社長は嫌われる。ケチらない社長は経営に失敗する

 「社長は基本的にケチであるべきだ。

 コスト感覚のない社長に経営者は務まらない。 

 ただ「うちの社長はケチだ」というイメージが定着すると、社員の士気は上がらない。ケチという印象を社員に与えずに、いかにコストを切り詰めるか。それが社長の腕の見せ所である。

 

 会社に長年貢献した社員の円満退社が決まり、会社でちょっとした送別会を開いてあげることになったとしよう。出席するのは十数人の社員。あなたはどんな送別会を開くだろうか。

 どうせ身内の会なのだから、近所のレストランで1人5000円程度でいいと考える社長は、おそらく社員からケチのレッテルを貼られてしまうだろう。

 このようなときは、思い切って一流レストランで1万円程度の予算でやる。それで辞めていく社員に喜んでもらえ、残る社員の励みになるのなら高い出費ではない。

 

 大切なのは、そこからいかにコストを下げるかだ。

 1万円の予算を想定しているときは、幹事に7000円から交渉してもらう。それで一人9500円になれば500円の節約になる。この500円を『たかが500円』と笑う社長は、経営者には向いていない。おそらく社内のいたるところにムダな500円が落ちており、いずれ自分の首を絞める結果になるだろう。

 社長に必要なのは、『生き金/死に金』の感覚だ。ケチだと思われたら、5000円を使ってもすべてが『死に金』になる。

 

 また社員に気前がいいという印象を与ても、9500円で済むところ1万円かけていたら、500円が『死に金』だ。一方、気前がいいという印象を与ながら500円を節約できれば、使った9500円も、節約した500円も『生き金』に変わる。

 この『生き金/死に金』の感覚がない社長は、『生き金』をケチって企業の活力を失わせ、また逆に、『死に金』を積み重ねて、経営を圧迫させることになる。

 

③社長は異世代の人脈を持て

  「いずれの年代の社長も、世代のかなり離れた上と下の人脈を持ちなさいと伝えたい。

 自分が若い20代の社長なら40・50歳代の、自分が50歳の社長なら75歳の長老から30・40代の人物と親交を持つことだ。

 とくに40代を過ぎると、人間は体力の衰えを感じ始め、年齢を重ねるとともに考え方が保守的になる。そうならないためにも、意識して年下の人物と付き合わないといけない。若い人の得意分野である新しい価値観、新しい発想と交わるために……。

 

 ご自分のアドレス帳に、世代のまったく違う知り合いの名前が、2割以下なら黄色信号、1割以下なら赤信号と認識してもらいたい。

 そんな危険信号がついた社長は、意識して若い人と付き合っていただきたい。

 

 自分で勉強会を開いて若い人を集めてもいいし、若い経営者のいるベンチャー企業に商談を持ちかけてみるのもいい。身近なところで自社の若い従業員と会話の機会をつくったり、自分の息子や娘さんに新商品のアイデアを聞いたりするだけでも、新しい価値観に触れられるはずだ」

 

④社長は「えらい人」になりなさい

  「関西地方では『えらい』という言葉を二つの意味で使う。

 一つは文字通り『偉い』という意味。もう一つが『しんどい』という意味だ。

 私は名古屋の出身なので、幼い頃から自然に二つの意味を関連付けて考えていた。

   誰に教わることなく、しんどいことをするから偉い人なのだと。

 

 ところが、上京後、東京では『えらい』を『しんどい』という意味で使わないことを知って驚いた。辞書で調べてみても、『偉』と言う漢字は、優れている、大きいという意味があるだけで、しんどい、疲れたという意味ではなかった。

 それでも『しんどいことする人=偉い人』という信念は、今も変わらない。

 

 多くの社長は、社長になるまでに『えらい』状況を経験している。しかし、偉くなってから『えらい』仕事を続けている社長は少ない。

 社員が尊敬するのは、自ら汗を流す社長だ。現場にも出て、頭も使い、トラブルがあれば体を張って会社を守る。みんなが躊躇(ちゅうちょ)するようなしんどい仕事を積極的に買って出てこそ、本当の敬意を持ってもらえる」

 

⑤数々の「み」から自分を守れ

 「社長は成功すればするほど、対峙しなくてはならないものが現れる。それは数々の『み』だ

 妬(ねた)み、嫉(そね)み、恨(うら)みつらみ、やっかみ……。

 実際にこれらの『み』の被害にあって、悔しい思いをした社長も多いはずだ。

 

 これらを極力避けるには、感謝の気持ちを常に表すことが大切だ。レベルの低い社長は、物事がうまくいくと自分の手柄にし、妬み、嫉みを買う。一方、失敗すると周囲の責任にし、恨みつらみを買ってしまう。

 社長は成功したときこそ周囲に感謝の意を示し、失敗したときは謙虚に自分の非を認めなくてはいけない。

 感謝のできない社長は、たとえ自分が正しくても、余計な荷物を背負わされることになる。

 

 つまらないことに煩わらされないためにも、常日頃から、『ありがとう』の気持ちを周りに示す習慣を身につけたい」

 

⑥社長は心理学を学びなさい

 「社長が学ばなくてはいけないものは、経済学でもマーケティング理論でもない。

 相手の心を読む心理学だ。

 つねに相手の心理を読む眼力が必要とされるし、相手の心を動かす力も求められる。

 社長はあらゆる面で〝心の達人“でなければならない。

 そこで、とくに実践していただきたいのもが3つある。

 

 第1に、社員の心をつかむために、「勝てば官軍、負ければ賊軍」に徹する。勝つということは、社会に貢献し、実績を残すことだ。

 利益を上げるために、ときに社長は社員に厳しい要求をすることがある。厳しさを突きつけられて喜ぶ社員はおそらくいないだろう。ただ、改革に結果が伴えば、批判は称賛に様変わりする。

 会社の利益が上がって、それが自分たちの給与に反映されれば、抵抗する社員も黙って社長についていく。

 

 第2に、「引くことを知る」である。

 社長になるような人は、元来押しが強く、簡単に引かない肝の据わったタイプが多い。それは良いことだが、引くことを知らずに損をしてしまうこともある。

 強く推したいなら、あえて一度引くことも大切だ。相手が誘い水に乗ったところで、再び押すのもいいし、まだ押すタイミングではないと判断して、時が満ちるのを待つ手もある。いずれにせよ押し一辺倒では、相手の心理的抵抗は強くなって、ますます押しづらくなることを覚えておこう。

 

 第3に、『社長らしく身なりを整える』ということだ。

 見た目と経営能力に直接の相関関係はない。しかし、アメリカで行われた心理実験で、外見のいい人物は能力も高く評価されやすいことがわかったそうだ。

 滅多に会わない顧客や取引先に、外見で能力不足の印象を一度与えてしまうと、あとで挽回するのは困難だ。もちろん恰好さえ良ければいいというものではないのは当然。なにより中身の充実が大切だ。業績を上げて、社長が自信を持てば自ずと軽さが消え、貫禄がにじみ出てくる」

 

⑦社長は常に自己評価を怠るな

 「社長は常にフレッシュであろうと努力しなければいけない。もし、自分に賞味期限が来たことを悟ったら、いさぎよく後継者に会社を託す覚悟も必要だ。

 ただ、オーナー社長の場合は見極めが難しい。

 

 では、自分の引き際を自分で決めるにはどうすればいいのか。

 そこで重要になってくるのが、第二者評価、第三者評価だ。

 

 自分で自分を評価するのは、第一者評価。

  ステークスホルダーの評価が、第二者評価。株主・顧客・従業員・取引先などの評価だ。

 ただ、ステークスホルダーは自分の立場から評価してしまうのが難点だ。

 顧客から見れば、商品やサービスを安く提供してくれる人がよい社長。

 従業員から見れば、給与や待遇の面で優遇してくれるのがよい社長。

 それも評価の一つであるが、公正な評価にはほど遠い。

 

 いちばん良いのは、社外取締役や社外監査役といった第三者に評価してもらうことだ。

 この人にダメ出しされたなら納得できるという人を、きちんと選んでおけば、それが自己評価の参考になる。

 それが社長が最前線で長く活躍するコツである」

 

⑧後継者選びにはシビアな眼を持ちなさい

 「経営者の最後の仕事は、事業承継といえる。

 あくまでも次期社長選びは、温情ではなく、『利益を出せる経営能力を身につけているかどうか』―この一点が、もっとも重要な判断基準となる。

 もし本気で息子や腹心に後を継がせたいと思っているなら、継がせる前に、徹底的に一人前の経営者に鍛え上げなければならない。それができなければ会社を譲るべきではない。それが社員やその家族の生活を預かり、また社会に貢献している会社の社長としての責任である。

 

 では、どんな後継者教育をすればいいのか。

 創業社長と比べて二世が頼りなく見えるのは、経験に裏打ちされた確固たる自信を持っていないからだ。自信がない人は決断も遅いし、周囲を不安にさせる。自信をつけさせるためには、修羅場を経験させるのがいちばんだ。たとえば……

 ・親の手の届く世界の外に放り出す

 ・実力主義の企業でゼロから働かせる

 ・赤字の子会社、不採算部門の責任者にさせる

 こういう地べたを這いずり回るような経験をさせ、その困難を克服してこそ、次の社長としての自信がつくのである。

 

 ところが、多くの経営者は逆の方法で自信をつけさせようとする。彼らもそれに気づいているから、実績をいくら積んだところで、自分の実力でつかんだものでないという不安にさいなまれる。

 息子が複数いるなら、厳正に判断して優秀な人材を選ぶ。劣る方をトップにすえると、その会社はいずれ割れてしまう危険性がある。

 

 息子の後継者教育に成功しなかったら、無理して息子に継がせてはいけない。ホールディング・カンパニー(持ち株会社)を設立して、息子をそこの社長にするといいい。株は息子に、経営は信頼できる経営幹部に、という後継オーナーと後継社長に分けてしまうことである。

 ここは心を鬼にして、シビアな眼を持たなければならない」

 

次回は7月31日(金)に掲載いたします。 

 

第5回 『3分間 社長塾』(1)
スピード判断力をつける

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で3冊目に書かれたのが『3分間社長塾』。

 多くの社長や社長を目指す人、中間管理職の人たちから「何度も読み返している」と評判になっている本です。

 

 「デキる社長」と「デキない社長」の差が生じる原因はいくつもありますが、共通して言える大きな要因は、「判断力の差」だ、と本書では言っています。

 さらに、瞬時に情報が世界中にいきわたる現在、すべてに、ますますスピードが最重要視されるようになりました。

 だから、判断力があるだけではダメで、「スピード判断力」でなければ価値がない、と言い切っています。

 

 では、デキない社長は、

  なぜ、判断が遅いのか? 

  なぜ、間違ってしまうのか?

  そしてなぜ、行動も遅いのか? 

 

 その原因は次の3つであると指摘しています。

  一つは、自分の価値観・判断基準が定まらない。

  一つは、視野が狭い。

  一つは、自分にとらわれすぎる。

 

 したがってスピード判断力をつけるには、この三つの原因を潰していけばいい。

 本書には、その潰し方のヒントになることが書いてあります。

 ここから【高井語録】を集めていきます。

 

 なお、先生が塾長をした勉強会の一つに、10年で100回以上続いた人気の『社長フォーラム』があります。本書は、そのフォーラムで特に評判の良かった話をもとに書かれたものです。受講された社長の会社のほとんどが、「大黒字になった」と言われています。

 

  • 考えるよりスピード。スピードをもって結論を実行に移す

 「人間には誰にも迷いが生じる。

 『迷ったら原点に戻れ』

 『迷ったら原理原則に戻れ』

 

 創業経営者なら、どういう会社をつくろうとしたのか。何を大事にして会社を起こしたのか。

 継承経営者なら、この会社の原点は何だったのか。

 人間として、社会人として、やってはならないことは何なのかを思い起こすと、すぅーと目の前の霧が消えていくことが多い。

 

 先手必勝の時代だ。

 先行したヤマト運輸に他の宅配業者はなかなか追いつかない。

 コンビニのセブン-イレブンにしても同じだ。

 

 お客さまのニーズは極めて移り気である。その変化に対応するためには、普段からスピードを意識することである。

 仮説を立てたらすぐ実行。後で検証しながら改善・改良していけばいいのだ。これは社長だけでなく、すべての組織でそのようにスピード化させなければいけない。

 

 スピード判断力を意識できない会社に、明るい未来は訪れない」

 

  • 価値判断の優先順位を決めておく

 「決断は迅速に歯切れよく。これがビジネスという戦場で勝ち残るための秘訣なのだ。

 だが、いざというとき迷いが生じてしまうのはなぜか。

 それは自分の価値判断基準をあいまいにしたまま、その場しのぎで判断しようとするからだ。

 

 例えば、次のケースを考えてみよう。

 新規事業がうまくいかず、赤字の額が脹らんだ。しかし、社会的に意義のある事業だし、いま撤退すると売り上げが下がってしまう。この事業は長年の夢だっただけに、あきらめたくない・・・・・・。

 

 この問題の論点をざっと上げると、次のようになる。

  ・利益が出るのか、損をもたらすのか(損得)

  ・社会的に見て正しいのか、ただしくないのか(正邪)

  ・続けるべきなのか、撤収すべきなのか(存廃)

  ・ことは大きいか、小さいか(大小)

  ・感情を優先すべきか、理屈を優先すべきか(情理)

 

 このように、一つの問題もさまざまな角度から検証できるが、難しいのは、それぞれの価値が衝突する場合だ。経営の現場では、

 『損だが正しい』

 『撤退すべきだが売り上げが下がる』

 というように、ある決断を下せば他の価値判断基準が満たされないことがたびたび起こる。社長があれこれ迷う原因もここにあるのだ。

 

 いま挙げた他にも、経営における価値判断基準にはさまざまなものがある。

 強弱、善悪、和戦、親疎、公私……。

 

 これらの価値のうち何を優先するか、問題が発生するたびに考えていれば、迷うのも当然だ。

 だから歯切れ良い決断を下すためには、価値判断基準を事前に決めておくことだ。

 

 たとえば最初から「損益」を第一に考えると決めておけば、たとえほかの価値判断基準を満たさなくても、スムーズに決断を下すことができるはずだ。

 ただ、判断すべき価値は、時代によって変化するという点には気をつけたい。

 

 では、いま重要な価値判断基準とは何なのか。それは次の3つである。

 ・正邪……ルールに沿っているかどうか

 ・善悪……社会的に良いことをしているかどうか

 ・顧客……お客様に満足していただけることになるかどうか

 

 あなたの判断基準は本当に明確か」

 

  • 商談は3回以内に道筋をつけろ

 「『相手の元に100回通って契約を取った』と自慢げに話す営業マンがいる。確かに、石にかじりついてでも、という精神力には感服する。

 

 しかし、一つの契約を取るのに100回も通っているようでは、仕事は非効率。

 私は3回交渉しても商談が進展しなければ、撤退も選択肢に入れることをすすめている。

 

 3回以内で話をまとめるには、事前の準備と、1回目の訪問に気を配ることが重要だ。

 

 アポイントが取れたら、まず面会していただくことについて礼状を出す。そして初めての面談の二日ほど前に、今回の商談で検討していただきたい内容を書面で送る。この2つをしっかりやれば、こちらの誠意や熱意の大部分は、事前に伝えておくことができる。

 

 そして1回目の訪問では、事前に書面でいろいろ要望を伝えていたとしても、あえてこちらの薦める点を1点に絞って話を進め、あとは柔軟に対応する。

 最初からあれやこれやと要求すると、相手との間に壁ができるばかりだ。譲る姿勢があることを示せば、相手との距離もグッと近くなって、交渉もスムーズに進むはずだ。

 たいていは2回目の交渉でまとまる。

 

 2回目も状況が思わしくなければ、3回目は別の角度から攻めてみる。こちらの味方になってくれる第三者を連れて行ったり、条件をガラリと変えてみたりするといった方法で、1回目、2回目とは違うアプローチをする。

 

 それで進展がなければ、商談は失敗に終わる確率が高い」

 

  • リーダーシップにカリスマ性を加えろ

 「経営者のなかには、

 『リーダーシップのある社長がよい社長だ』

 と信じている人がいる。しかし、それだけではまだ不足だ。

 リーダーシップのある社長は、難局においても素早い決断を下すことができる反面、その強引さゆえに批判を受ける。

 

 リーダーシップのある社長がいる会社でも、社員の3割くらいは何らかの不平不満を持っているのが普通だ。そんな不平不満を弱めさせる力、放棄させる力。それがカリスマ性だ。

 

 カリスマ性のある社長は、同じような決断を下しても、慕われ尊敬される。社員にとってはまさに憧れの対象なのである。

 ただし、カリスマ社長になるには、いくつかの条件がある。

 

 まず第1に、軸足が定まっていること。価値判断基準がふらふらしているようでは、社員はついてこない。

 

 第2に、どんな質問や課題がきても、きちんと答えられることが大切だ。たとえ分からないことがあっても、電話1本で事実関係を確かめることができる人脈を持っている。あるいは、すぐに何にでも応えられる腹心がそばにいるなど、あの社長に聞けば、解決の糸口が見つかると思わせることだ。

 

 第3に、カリスマを作る条件として忘れていけないのは、社長が醸(かも)し出す〝不思議さ“だ。

 知り合いの社長は、会社設立以来、毎朝7時に出社し、深夜2時まで残業して帰るという生活をしている。それなのに疲れた顔は一切見せずに、毎日違うスーツをピシッと着こなしている。

 社員はその姿を見て、「いつ寝ているのか?」と驚き、その超人ぶりに畏敬の念をいだくようになったそうだ。

 

 平凡からカリスマは生まれない。不思議さは、どんなことでもかまわない。この人はすごいと思わせることだ」

 

  • 儲けたければ知性・感性を磨け

 「いま顧客の判断基準は、快か不快か。面白いか面白くないか――。つまり自分のかゆい所を掻(か)いてもらえるかどうかが、財布のひもを緩める基準になる。

 保険業界で常にトップ10に入っているようなセールスマンたちは、ほとんどが次のように話す。

 『アポを取って60分の時間をもらっても、最初の50分は世間話に費やす』

 およそ保険に関係のないことで相手を喜ばせる。これを続けると、こちらから保険の営業をしなくても、保険に入ってくれたり、人を紹介してくれたりするようになるという。

 

 では相手のかゆいところを、どう見極めるのか。これは理詰めではなく、相手が何を考えているかを感じる力、つまり感性が豊かであることを要求される。

 ビジネスは相手があって初めて成り立つもの。儲けたければ、相手の気持ちを考え、思い、感じることが何よりも大切なのである。

 

 知性・感性の時代は、理論だけで人は動かない。

 『理に動く理(り)道(どう)、知に動く知動(ちどう)という言葉は辞書にない。感情で人が動く感動という言葉があるのみ』だ。

 安いから買ってくれる、品質がいいから人気が出る、という理屈だけでは通用しない」

 

  • 稼げる仕組みづくりは、すぐそばにある

 「あなたの会社には、『名物』と呼べるものはあるだろうか。

 社員でもいい。商品でもサービスでも、とにかくお客様の目を引いて、一度は買ってみたい、試してみたいと思われる特長があると、それが業績回復の起爆剤になる。

 もしなければ、自分たちでつくればいい。

 

 私はあるスーパーの再建をお手伝いすることになった。そのとき各店舗の店長に、

 『ジャンル別に名物商品を3つ作ってください』

 とお願いした。たとえば、青果売り場なら産地直送のナス、総菜売り場なら揚げたてのコロッケといった具合だ。最初は各店舗に名物が1つあるかないかの状態だったが、各売り場に3つできるようになると、客足が戻ってきた。

 

 次にお願いしたのが、

 『それぞれ名物店員になってください』

 ということだった。

 

 魚のことなら何でも知っている。レジを打つスピードが速い。いつもニコニコしている……など、なんでもいいから個性を出してお客様に顔を覚えてもらう。

 各店員がそれを心がけることで、お客様とのつながりが太くなり、一時落ち込んでいた売り上げも安定して増えていった。

 

 このように身近にあるものから、名物商品や名物サービス、名物社員を意図的に作れば、業績不振から抜け出すことも可能だ」

 

  • 社長自らが営業のパイプを総点検せよ  

 「全国規模のあるメーカーの経営再建をお手伝いをしたが、業績悪化の原因は営業パイプの劣化だった。

 

 パイプが壊れた原因のひとつは、押し込み販売だった。そこで私は、全役員に担当の営業所を割り当てて、押し込み・押し売りのチェックを徹底的にやってもらった。いわばパイプの総点検だ。

 

 さらに一度失った信頼を回復するため、全役員に担当の販売店や代理店を回ってもらった。

 一度や二度ではない。黒字化するまで、何度でもだ。

 パイプが細くなって行きづらいという販売店があれば、とくに重点的に訪問してもらった。苦情やお叱りに役員が現場で耳を傾けてこそ、信頼回復の足がかりができるし、営業がいかに会社にとって重要なものかが自覚できる。

 

 役員の外回りは社員教育にもつながる。自分の上司が必死に駆けずり回っている姿を見て、社員は営業の厳しさを学ぶ。研修を100回受けさせるより、役員と一緒に頭を下げて回ったほうがずっと効果的だ。

 

 また同時に、役員にはそれぞれの担当営業所で、新しいパイプを作ることもお願いした。つねに新規開拓し、新しいパイプを敷設することで、企業は安定的に成長していける。

 ほかに改善した箇所もあったが、こうした一連の営業改革で、そのメーカーは1年で赤字をほぼ解消できた。黒字化の原動力になったのは、やはり営業力の強化だった」

 

次回は6月26日(金)に掲載いたします。

 

第4回 『3分以内に話はまとめなさい』 (2)
できる人と思われるために

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 以前にある会合で、50代後半の弁護士と隣り合わせになったときのことです。

 偶然にもその方は、ある裁判で、高井伸夫先生が弁護されている企業の相手側の弁護士だったそうです。そのときの高井先生の弁論や尋問が、「敵ながらあっぱれだった。聞きほれた」と思い出を話ししてくれました。「法曹界では、高井氏の反対尋問は評判ですよ」とも語っていました。

 

 先生が塾長をする勉強会の一つに、10年で100回以上続いた人気の『社長フォーラム』があります。そこで講演されたテープを起こして読むと、一字一句そのまま原稿になるほど、しっかり纏まっている。話に無駄がなく、構成も説得力があり、「て」「に」「を」「は」にも配慮された内容です。

 その音源を聞いても、まろやかな口調で、人を包み込むような温かさが伝わって引き込まれます。

 

 このような「話し方」について、どのように身につけてこられたのか。

 3月27日号に引続き、今回も表題の書籍のなかから、【高井語録】を集めていきます。

 

  • 短時間に理解させる話の組み立て方  

 「相手の心に残る話し方のためには、出だしはゆっくり話し始めることが肝要。どんなに持ち時間が短いときでも、最初はつたないまでにスピードを遅くして話し始めると、スムーズに話に入っていけることが多いのです。

 とくに短い時間しかないと思うと、つい早口で始めてしまいがちですが、つんのめったようになって、いつまで経っても自分のリズムになりません。一通りの話はできたとしても、相手へのインパクトは欠けてしまうことになります。

 

 次に大切なのが、話の構成です。

 ご存知の方も多いと思いますが、文章の構成や物事の順序を表すのに、『起承転結』『序破急』という言葉があります。

 『起承転結』は漢詩の句の並べ方からきた4部形式の方法論です。スピーチや講演の場合、とくに気を使いたいのが『起』と『転』です。『起』でどれだけ話し手に関心を持ってもらえるか。これに成功すると、あとの展開がずっと楽になります。『承』ですこし緊張を解き、『転』で変化や落差を演出。そして『結』をスピーディに展開します。

 『序破急』は日本の音楽・舞踊・演劇における構成要素を表したもので、3部形式になっています。
 『起承転結』に比べると、スピード感があり、現代向きと言えそうです。
 話の構成も、このどちらかを選んで進めていくと、話が論理的になり、聞き手に理解しやすくなります。

 『起承転結』のなかに、さらにそれぞれ『序破急』や『起承転結』を入れて、論理的な展開や、ストーリー性を、リズムよく持たせる工夫をされたほうがいい。
 この手法は、3分間という短い時間でも同じです。つまり3分であっても起承転結や序破急は必要で、むしろ短いときほど、話の構成の輪郭がはっきりして理解してもらいやすい。

 

 私の話し方をまとめると次のようになります。

 ・あらかじめ話す内容を決め、資料を準備しておく

 ・はじめは超スローテンポで始める

 ・必ず話す時点の直近の話題を盛り込む(枕詞)

 ・序破急か起承転結で話を構成する

 これが短い時間で話をする基本であり、あとは相手、状況、時間などに応じて、その場で臨機応変な対応をすればいいのです」

 

  • 言葉のベルトをかけよ

 「話の上手な人の手にかかると、相手はちゃんと聞いている。これには秘訣があるのです。
 人間は誰でも、実際の年齢とは別に3つの心をもっていると言われています。親の心(ペアレント=P)、大人の心(アダルト=A)、子どもの心(チャイルド=C)です。

 

 小学校に通うようになった女の子がこう言いました。
 『お母さん、私、明日から小学生でしょ。だからお子様ランチはもうやめようと思うの』
 この子は大人の心で話しているのです。この女の子とスムーズな対話をしたいなら、親も大人の気持ちになってA-Aで会話をすれば、噛み合った話ができます。

 

 しかし、子どもを叱るときは、親がCの心になっては通じにくい。やはりPの心で叱らなければならない。なぜなら親の心なら、『とことん諭す』という気持ちになれます。
 ところが、Aの心で叱ると子どもは反発することが多くなるのです。

 最近、親の幼児虐待事件が増えています。これは、親が子どもを叱るとき、
 『この子は私の人生の邪魔をする』
 といった、自分勝手な大人の心で叱っていることが多いからと思われます。

 

 大人だから『わかるはずだ』とか、親・上司だから『こうあるべきだ』と原理原則に固執することなく、『いま相手はどの心でいるか』『自分はどの心で接するべきか』を考えて話をすれば、あなたの話は、思いのほかよく通るようになるはずです。

 話しがうまくいく状態は、両者が調和的な関係にあるときです。これをラポールといいます。この状態になると、お互いの心にベルトがかかったようになり、話がスムーズに運ぶのです。

 

 その状態に持っていくには、以下のような方法があると言われています。

 ・相手のまねをする

 ・相手に関心のあることを示す

 ・相手とラポールが成立しているかを確認する

 ・相手の価値観を知るために質問する

 ・相手のニーズを知るための質問をする

 この方法を使う場合に、相手の心のPACを考慮していれば、話はうまくいきます」

 

  • 個性とは「自分の見解」の披歴  

 「話をするとき、自分なりの個性を出そうと努力する人がいます。
 自己の独自性を出そうという志は買えますが、必ずしも他人と異なった意見を言う必要はない。
 大切なのは『自分がどう考えるか』ということ。最近は誤解して、『人と違ったことを言おう』とする人が増えてきているようです。これでは真の個性化は図れません。

 

 例えばAさんが強力なインパクトを与え相手を説得したとします。Bさんは同じテーマを自分の気持ちに素直に従って話した。結果はごく平凡な話し方になり、聞き手に強いインパクトを与えられず、必ずしもうまく説得できなかったとします。もちろん話し手に対する信頼性は、Aさん・Bさんが同程度だったとした場合です。

 話しが終わった時点では、AさんのほうがBさんよりも説得力で優れていたことになりますが、人間の態度変化(説得の結果)には、時間という要素が加わる。
 時間要素を加味すると、強いインパクトの説得の効果は右肩下がりに落ち込む傾向がある。

 逆にBさんの緩やかな説得の効果は、時間とともに上昇傾向を見せる。

 どちらが有効かは必ずしも言えませんが、契約書を書かせる様な性質の説得だったら、Aさんはクロージングを早くした方がいいし、Bさんはしばらく間を置いてプッシュしたほうがいい。

 

 結果として、話を通じさせるのに、あまり奇をてらう必要はありません。個性だ、独創性だと騒ぐ必要もありません。
 それより自分自身を磨いて、自分自身が考えて、それを素直に出せば、相手は説得できます」

 

  • 二人称で呼びかける  

 「いくら3分間で話し終えたとしても、相手に影響力というか話したことによる一定の効果が与えられなければ、短く話した意味がありません。
 どうしたら、短く話せば話すほど、相手が耳を傾け、効果が出てくる話し方になるのか。

 

 一つは相手を見て話せ、ということです。

 もう一つは、 『呼びかけ法』という話し方があります。この話し方をすると、ふつうの話し方では『他人事』にしか思えなかったような内容が、ガラリと変わり、聞き手自身の身に迫ってくる感じになる。なかなか便利な話し方です。

 たとえば、戦争反対を人々にアピールしたいとき、
 『戦争になれば多くの人が死にます』
 というような言い方では、『そんなこと当たり前だよ』 と思われてしまいがち。これではまったく説得力がありません。

 だが、学校の先生が生徒たちを前にして、
 『私は君たちの一人だって戦場で死なせたくない』
 と言ったらどうか。話の中身がにわかに自分に迫ってきます。

 

 このように二人称で呼びかける話し方は、きわめて『喚起効果』が高く、聞き手を引き込むことができるのです。

 話でも文章でも、言葉を操る場合の優劣は、喚起力がとても大切。
 喚起とは『注意、関心、自覚、良心などを呼び起こすこと』ですが、同じ言葉を使っても、言葉の組み合わせ方や文体で、喚起力はまったく異なってきます。

 『呼びかけ法』というのは、相手に呼びかけるだけではない。こちらの想いや意思、決意を効率よく相手に伝える方法でもある。だからインパクトがあり、聞いた人は感動したり、決心したり、次なる行動を起こさざるをえなくなるのです。

 つまり、身につまされる思いをさせて、イエスかノーかの判断を求めるところにポイントがあると言えるでしょう。
 そうすることで、相手が意志を表明せざるをえない、意志を固めざるをえない、意見を表明せざるをえない状況にもっていくということです」

 

  • 相手を批判するときの心得  

 「話をしていて、批判したくなるときがあります。その仕方が下手だと話がこじれる。こじれると壊れるか、長引くかどちらかです。といって、しなければならない批判もある。早く話を通すためには、批判のテクニックも大切になってきます。
 批判するとき留意しなければならないのは、普段にもまして、相手の面子(メンツ)をつぶさないような配慮が必要です。

 

 絶対してはいけないのは全否定。
 相手を批判するときは、まず批判の前に相手の話のなかから、肯定できる材料を引き出し、その旨を先に伝えておく。それから批判に入るようにする。
 ただし批判する内容に関しては、妥協してはならない。何がよくないか、はっきりと言うべきです。

 

 次に、批判を批判で終わらせないこと。
 そのためには批判したあとに、必ず『建設的』な意見を付け加えておくこと。このような形で批判すれば、相手との関係をこじらせることなく話が進められます。

 たとえば、
 『売り上げが伸びないことについてどう思うか』
 というのも非建設的な質問です。『どう思うか?』ではないのです。

 『現状はどうか?』

 『原因は何か?』

 『対策は何か』

 『そのときのリスクは何か?』

 『何から始めるか?』

 といった具体的な質問が必要なのです。

 

 当事者意識を持ち、建設的な方向へと話を持っていくことが、極めて重要です」

 

  • 自分の話し方を点検する5項目 

  「言葉は誰でもしゃべれるので、その巧拙がもたらす差を意識しない人が意外と多い。
 しかし、人間は言葉で社会生活を営んでいるので、正しい話し方こそが、人生を切り開いていく重要な道具と言っても過言ではありません。話し方を研究して、人を説得し、人から好かれる話し方をしないと、人生はうまくいかない可能性があるのです。

 

 言葉を操るにあたって、私は次の点に気を付けて点検することだと思います。

➀余計な言葉を使っていないか

 人と話をしたあとの自分の気持ちを考えてみればいい。その人と別れて何か心に引っかかるものがあったら、『言い過ぎたのではないか』と疑ってみること。ほとんどの原因が自分の側にある。
 気楽なおしゃべりは別だが、仕事上の会話の場合は、『余計な言葉は極力使わない』という節約発想が大切。特に知ったかぶりの発言は禁句。

 

②言葉が不足していないか

 これは比較的避けられる。事前に言うべき内容を点検し、最低限これだけは伝えるという項目を頭にたたき込んでおく。そのとき『何項目』と数を意識しておくと忘れにくい。

 

③必要以上に言葉を飾り立てていないか

 言葉を飾り付けると、内容がぼやけてくるおそれがある。下手に飾ることで混乱し、誤解、曲解することがある。仕事上の話では、修飾語はできるだけ使わないようにする。  

 

④相手のためになっているか

 これは見落としがちなこと。普段は気づいていないが、人と会って話をするということは、世の中全体から眺めたら、ものすごく縁のあること。世界には60億の人間がいるが、1人の人間が出会う人はほんのわずか。
 しかも親しく話をする機会を持てるのは、僥倖と言ってもよい出来事。『ああ、この人と出会え、話ができてよかったな』と思われるような話を心がけたい。

 

➄自分のためになっているか

 人と話すのは何か目的がある。その目的が常に自分にとってプラスになるかを考えること。もしプラスにならないなら、話をする必要はない。無理に話をすると、ろくなことにならない。話をする前に『これから話をすることはどう自分のためになるか』を点検することが大切。

 

 この5点をいつも念頭に置いて、自己反省する習慣をつければ、おのずとよい話し方ができるようになります」

 

            次回は5月29日(金)に掲載いたします。

 

第3回 『3以内に話はまとめなさい』(1)
できる人と思われるために

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で2冊目に書かれた本が『3分以内に話はまとめなさい』で、これまたベストセラーになりました。

 この本は、先生が行動軸とされている仕事の濃密化・スピード化、そしてコミュニケーション能力について、「話す力」に焦点を当てながら書かれています。

 キーワードは「話をいかに短くするか」です。

 これを意識し続けていると、話し方がうまくなるにとどまらず、自分自身が磨かれ、デキル人と評価されるようになる――そんな本だと評判になりました。

 

 引き続き表題の書籍から、【高井語録】を集めてみます。

 

  • 3分以内に話をまとめる訓練の効果

 「自分の立場が上がったりお付き合いが増えてきたりすると、上司に報告・連絡・相談をする、部下に指示を出す、自分の提案をプレゼンテーションする、会合などでスピーチをする……など、話をする機会がますます増えてきます。

 そんなとき、長い話をする人は、何を話したいかを決める論理力、要約力がないと思われる。

 さらに、聞き手の気持ちを理解していないと思われる。なぜなら、人の話を聞くのは、話すより三倍以上エネルギーがいるのです。このことが理解できない人、思いやりがない人、と思われてもしかたありません。

 話す力を磨くためにも、『3分以内で話をまとめる』という訓練が一番よいと考えています。話を短くまとめる能力を磨くことで、日本人がとかく苦手としている

 ➀論理的な話の運び方

 ②独創的な発想

 ③状況変化に適応する即応性

 ……などが一緒に身についてくるからです。

 

 『ごく簡単な内容なら3分もあれば十分だが、本格的な交渉事や込み入った問題になったら、そんな短い時間で済むわけない』

と思われる人がいるかもしれません。でもデキル人の話しぶりを観察してみてください。みんな短く済ませています。だから多くの仕事をこなせる。話もその例外ではないのです。

 時間があると思うと、どうしても無駄な会話が増えてきます。

 『3分でまとめよう』としたら、どうしても必要な話だけを簡潔に要領よくしようと必死に努力するでしょう。人為的にそういう環境をつくって時間の無駄を省き、簡潔に話す能力を磨くことです。

 『デキル人は多くの時間を持っている』

 『仕事は忙しい人に頼め』

 とよく言われます。

 誰にも等しく与えられた24時間なのに、デキル人がたくさんの仕事をこなせるのは、一つの事柄に費やす時間が短いからです。短い時間を濃密に使っているのが、デキル人の特長なのです」

 

  • デキル人の話し方3要素

 「1つの話に対して3分以内のテンポで話がテキパキ進んでいくと、お互いに快感を覚えるようになり、自然に頭の回転もよくなり、動作も機敏になります。この仕事の快感テンポを味わえたらしめたもの。常にその線を目指して努力するようにすれば、自然に仕事のレベルアップができてきます。

 デキル人の備えるべき話の3要素は次のことです。

 ・きわめて手短である

 ・全体に対する目配りをしている

 ・核心を突く

 どんな場合でも、話はできるだけ『短く済ます』ほうがいい。その理由は、時間を合理的に使うということですが、もう一つ、短い方が印象に残るからです。
『多岐にわたる』とは、全体に対する目配りと解釈すればいいでしょう」

 高井先生のスピーチや会話・対話には、聞き手にその話材の本質や核心にふれながら、共鳴や気づきを引き起こされる人が多い。 それは幅広い教養と、常にアンテナを高くして、新たな情報を蓄積されているからでしょう。  

 

  • 短い時間で感動を与える

 「話をする目的とは、広義の説得です。説得方法には、感動による説得、理性的・理知的な判断による説得、あるいは損得勘定による説得、場合によっては恐怖・脅迫による説得があります。

 もちろん一番好ましいのは、自分のしゃべったことに相手が感動してくれて、自分の思うとおりに行動してくれたら言うことはありません。しかし、それには手間がかかりそう。そこで人はどうしたら数分の短い話で感動してくれるか考えてみましょう。

 

 そのためには『真・善・美』について語ることが効果的です。

 第1の『真』。これは『本音で語る』ということです。つまり真心をもって相手に語りかける。そうすれば相手の真心に触れる。こちらに真心がなければ、相手も決して心を開かない。だからどんな場合も、誠心誠意話をすることが肝要なのです。誠意を込めて語る言葉にワンフレーズが多いことは、名作映画の名場面を思い出していただけるとわかるはず。クライマックスに主人公が話す言葉は短い。

 第2の『善』。これは『前向きな気持ちを駆り立てる話』です。事務所に相談に来る人に私が言うことは『大丈夫、大丈夫』です。そうするとわずかな時間の面談で見違えるように元気になる。これは理性的な理解ではありえない。人を元気にさせるには、未来へ向け希望が持てるような前向きな方向で話をまとめること。これが感動を呼び起こす大きな要素になります。

 第3の『美』。これは『表現手段』と考えてください。同じことを語っても、とげとげしい言葉で語るのと、まろやかな言葉で語るのとでは、相手が受ける印象が違ってきます。だから語るときは、美の構成要素である明るさ・力強さ・優雅さを取り入れた話をすることです。

 

 真心を込め本音で、相手が前向きな気持ちを駆り立てられるような内容を、まろやかな言葉で語れば、短い時間でも相手は感動します。長い話はまったくいりません」

 

  • 最初に「結論」を持ってくる

 「限られた時間で簡潔に自分の言わんとすることを明示するには、まず結論をはっきりさせなければならない。ではどうやったら『最初に結論ありき』の話ができるか。

 条件はいくつかありますが、いちばん大切なのは瞬間的な判断力。これは日頃から意識して訓練しておく必要があります。そのためには、まず結論を先にもってきて、後で理由を縷々(るる)説明していく習慣を身につけるのです。もし説明が中途半端で終わっても、こちらの結論は明確に伝わっているので最低合格点はもらえます。

 結論がまだ簡単には出せないようなときでも、話を簡単に仕上げるには、結論でなくても結論らしきものでもいい。とにかく、両者の話の拠り所になるような前提を1つ掲げて、話を進めるのがベターなやり方と言えます。

 いずれにしても結論を先に言う訓練をすると、その分、思考力も鍛えられることになります。

 『あわてて結論を出して間違っていたらどうするんだ』と心配する人もいますが、中国の兵法に、『兵は拙速を聞く、巧遅を聞かず』(上手で遅いより下手でも早い方がいい)と書かれています。つまり、早ければミスに気づいても、すぐ次の手が打てるからです」

 

  •  相手巻き込んでしまう話し方

 「こちらが一生懸命に話しているのに、相手が少しも乗ってくれないときがあります。部下が他人事のように聞いて『私は関係ない』という態度をとるのは、参加意識が希薄だからです。そのようなときには次の三つのことを実行すれば効果があります。

  ・誉める

  ・頼る

  ・期待する

 

 『誉める』ということで、より効果が出るのは直接誉めるより、陰誉(かげぼ)めです。上司が部下を誉める場合、自分で誉めるだけでなく、当人がいないときに誉める。少し時間がかかるけど本人の耳に入ったとき、真実味を感じ、より嬉しくなるもの。

 山本五十六元帥の有名な言葉に、『やって見せて 言って聞かせて やらせてみて ほめてやらねば 人は動かじ』というのがありますが、ためしに『ほめる』を削除してみてください。名言も形なしになってしまいます。 

 『頼られる』と自己の重要感を感じられるので、人はその気になります。ご存知の人が多いマズローの法則によれば、人間には生理的欲求、安全欲求、所属欲求、自己尊厳欲求、自己実現欲求へと5段階の欲求があります。『頼りにされることによる満足感』は自己尊厳欲求に該当し、人を成長させる要素にもなるので、上司としては取り入れたい態度です。

 『期待される』と人間はそれに応えようとする。これを証明する心理学の実験があります。

 学校で新任の先生がアトランダムに数名の生徒に『成績が上がる』と期待する。そうすると期待された生徒の成績は『期待効果』によって本当に上がるのだそうです。

 

 誉める、頼る、期待する……3つとも『話すことだけ』で実現できることです。自分の話すことに相手を巻き込んでしまうためには、『言うことを聞いてくれない』と嘆くよりも、この3つを根気よく試してみることです」

 

次回は4月24日(金)に掲載いたします。

 

第2回 『朝10時までに仕事は片づける』(2)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 前回1月31日にも書いたように、伊藤忠商事㈱は2013年に「朝型勤務」制度を取り入れました。社員からは「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」などと好評で、その効果は業績にも反映されています。

 この「朝型勤務」を取り入れたのは、現在の代表取締役会長CEOの岡藤正広氏で、彼が社長に就任した後、提案し自ら実践したのです。「商社は不夜城と言われているが、ダラダラ残業をするよりも、朝早く仕事をするほうが効率的であり、身体にもいい。早朝から仕事をしているお客様にとってもすぐ連絡ができれば安心なはず、と考えていたからだ」と語っています。

 

 引き続き表題の書籍から、さらに【高井語録】を集めてみます。

 

  • 早朝はプラス思考の時間に向く

 「一流の人間、成功者はおしなべて早朝人間と言えます。人生が充実したものになるかどうかは、朝の過ごし方が極めて重要だと彼らは知っているからです。

 実際、戦略を考えたり、思考をめぐらしたりする頭をつかうビジネスパーソンにとって、朝の時間帯が仕事に向いていることは十分にうなずけます。特に朝は右脳が働きます。右脳は発想や着想(アイデア)などを導き出す脳ですから、なおさらです。

 いつもは忙しさに紛れて考えが及ばない『生き方や将来計画』などについても、プラス思考の発想が出てきます。脳波の状態でいえば、リラックス効果のアルファ波が出ているときですが、この脳の状態は健康にも寄与するので、まさにいいことずくめ。それに一人静かに過ごせるひとときとくれば、『早起きしないでいられるものか』という気持ちになって当然です」

 

 高井伸夫先生と面識のある多くの方は感じられていると思いますが、先生の行動軸は二つあるようです。

 一つは、仕事を濃密化すると同時にスピード化すること。本書には、そのためのツールや仕組みが数多く書かれています。

 もう一つは、お会いしている相手のために、自分のできることで何かお役に立てることはないかと瞬時に考え、すぐ行動すること。たとえば、会話のなかから、相手がいま関心持っていることがわかると、そのために参考になる人を紹介するなど数々あります。

 

  • 「凡事徹底」を意識する

 「仕事が遅いということは、『有言実行』ならぬ『有限速行』が求められる現代では、仕事人としては致命的な欠陥といえます。私の事務所では『明日やる』『来週やる』『来月やる』は禁句。すべては『今』。今が不可能な場合にのみ、でき得る最短速度で取り組むようにしてもらっています。

 会社で発生する一つひとつの仕事はそんなに難しいことではありません。そもそも仕事というのは9割雑事といってよく、本当に頭を悩ます、あるいは創造性を必要とする仕事は1割もあればいいほうです。

 ただ、その1割が重要なのですが、雑事もその積み重ねが大きな仕事の成就を支えるので、決しておろそかにはできません。『凡事徹底』です。仕事が遅い人というのは、凡事を軽くみておろそかにする人です」

 

  • 「時間」に対する固定観念を打破する

 「これからは時間ではなく、成果が賃金に反映される時代になります。中途半端に経験がある人ほど、『どんなに急いでも1週間かかる』『良い仕事をするには1ヵ月かかる』と言ったりする。

 さらに、仕事に伴う行動にも所要時間の常識がある。そういう常識を疑ってかかり、すべて固定観念を打破するつもりで、『どうしてそれだけかかるのか』『半分にできないか』『1/10にできないか』『もしそれを実現させるためには何を変えたらいいのか』と一つ一つ考えてみることです。

 そういう疑問をもって見直してみると、時間を短縮できることは山ほどある」

 

 たしかに、むしろ無くしてもいいものもある。役所なども、一度手にした予算を手放したくなく、継続させている仕事が多いと聞きます。企業にも慣れた仕事を手放したくない人がいませんか?

 

  • 時間を一刻も無駄にしないために「経過書」を

 「仕事のすすめ方で常に心がけたいことは、『核心を突く』ということです。仕事を完了させるためには、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が大きな要素になのはご存じのとおりです。しかし、これは目的ではないので、できるだけ短時間で効果的に済ませる。そのために、部下に『経過書』をつくらせ、さらに『気がかりなことは何?』『次の一手は?』を必ず確認し合う。この方法を朝いちばんでやれば、関係者の本音を早く把握でき、朝10時までに仕事の段取りと、準備を完了できます。経過書が持つメリットは3つあります。

 ①その案件の全体像がすぐに把握できる。全体が見えていてはじめて的確な手が打てる

 ②選択的に迅速な理解ができる。適切に表現された経過書は、各自が知るべき内容の強弱、重軽がおのずと出てくるので、素早く理解できるようになる

 ③推測、予見、予知が可能になる

 

 経過書を上手に作るコツは、

 ・箇条書きにする

 ・比較対象する

 ・図式、図解の多様

 ・イラスト化

 ・キーワードの抽出

 これらのことを念頭に置いて、実際に作ってみることが上達の早道。たとえば、新聞の特集記事、企画記事、小説などを読んで、その内容を1枚の紙にまとめる練習をしてみるとよいでしょう。表現の仕方を習得するには、週刊誌などのイラストや特集記事や漫画なども参考になります。経過書の作成は、どんな仕事にも通用するはずです」

 

  • 文書化の腕を磨く

 「提案書にしろ、企画書にしろ、メール文章にしろ、ビジネス文書としての良しあしは厳然として存在します。それはビジネス的側面からみて、目的に適ったものかどうかが重要なのです。会社にはさまざまな雛形があると思いますが、微妙なニュアンスも必要であり、オリジナルで正しく伝えられるだけの技法は身に付けておきたいもの。では、どうしたら簡潔で正しく伝わるビジネス文書がつくれるか。それを5つあげておきます。

 ・必ず要件見出しをつくり、最初に結論をもってくる

 ・読む気にさせる。そのためにはキーワードを意識して書く

 ・箇条書きを多用し、拾い読みでもわかるようにする

 ・最初の1/3で読むのを止めても理解できるようにする

 ・すべてを肯定的、前向きに書く」

 

  • バランス感覚の有無を判定する

 「人間は本能的に安定を求めます。しかし、変化の時代は安定性の維持が難しい。そこで大切になってくるのがバランス感覚です。

 私がバランス感覚の有無を判定するポイントは5つあります。

 第1は、結果を想定する能力があるか――こちらがこう言えば、相手はどうこたえるか。こちらがこう答えたら、どんな結果が生じるか。それを考えられるかです。

 第2は、視野は広いか――視野が狭ければ、選択肢が限られてきます。どんな場合でも最低3つの選択肢をもつ必要があります。

 第3は、自己改革ができるか――自分を変えていけるのかどうか。こだわりや頑固さが表面に出る人は、バランス感覚を欠いています。今はフレキシビリティが大切な要素になってきます。

 第4は、定石を疑えるか――現代は常識が通用しないことが多くなっています。つまり経験が活きないのです。知識も常に更新していないと、判断を誤ります

 第5は、迷ったときに人に相談できるか――どんな優秀な人でも、人に相談できない人はダメ。迷ったときだけでなく、些細なことでも相談できる人、つまりメンターを持っていることです」

 

 本書の最後に著者・高井伸夫先生は次のように結んでいます。

 「あなたの今日が、1年前、半年前、1カ月前、そして1日前と同じだとしたら、あなたはかなり時流から離れたところで生きていることになります。時流に少しでも近づく方法――それには朝の時間を活用することをお勧めします。

 『古(いにしえ)をもって今を制する者は、事の変に達せず』

 中国の史書『戦国策』はこう述べています。その意味は、昔のやり方で、今を治めようとする者は、事の事変を十分にわかっていない――ということです。早起きをして朝の時間を活用することは、世のなか全体が夜型に傾きつつある現在、限られた一部の人しか実践していないことです。

 しかし、その人たちは自分の目標を達成し、人生を謳歌できる数少ない人たちでもあります。その仲間入りを果たすことは難しいことではありません。あなたの目覚まし時計の針を2時間、たった2時間早めるだけです」

 

次回は3月27日(金)に掲載いたします。

 

第1回 『朝10時までに仕事は片づける』(1)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生には、7冊の書籍をかんき出版から発行させていただきました。
 そのなかにはベストセラーになり、それがさらに図解のムック本になったものや、新書スタイルのポケット本になったものまであり、発行部数は累計41.1万部になっています。
 またこれらの書籍は、他の出版社から文庫本や新書になり、さらに多くの方に読まれていることになるでしょう。

 これらの本をもとに【高井語録】を集めてみます。

 『朝10時までに仕事は片づける』は、2002年12月に先生がかんき出版で最初に書かれた本で、多くのビジネスパーソンから支持されベストセラーになりました。
 この本の企画は、必然的に生まれたものとも言えます。それは私が高井先生の早朝出勤を知り、素直に強い興味をしめしたからです。なぜ朝6時に出勤するようになったのか? 時間の使い方をどう変えたのか? その結果、どのようなメリットがあったのか? などを書いてもらおうと……。

 著者のことばや文章を引用しながら進めていきます。

 

  • 優秀な人と同じ行動特性を備えた人は、成果を上げる確率が高い  

 高井先生も、30歳くらいまでは夜型人間だったという。ところがある人との出会いで生活態度を一変させることになります。
 「土光敏夫さんに出会ってショックを受けた。土光さんは、業績が悪化した東芝の再建を依頼され社長に就任、一年で再建に成功し、その後、経団連の会長などをされた人です。朝7時20分、土光さんの事務所へ書類をもらいに訪問したら、いつも朝6時半には出勤しているとのことだった。そんな刺激を受け、土光さんより若い自分は朝6時ころには事務所に出るようにした。その後も、多くの経営者・経営幹部の方と接してきて、学んだことがある。それは一流といわれ実績を上げている人ほど早く出社して、朝10時までには一仕事や大仕事を終わらせているということです」

 

  • 仕事の生産性と人間らしい生き方を両立させるために、朝を有効活用する

 「ビジネスパーソンにとって重要なことは、いかに上手に時間を管理するか、ムダな時間を整理するか、ということです。同じ時間でも、私がとくに注目しているのは、朝の時間です。わたしはこの概念を、【モーニング・マネジメント】と呼んで、親しいビジネスパーソンや仲間たちと実践しています。つまり、長年の悪しきビジネススタイルを打破し、新しいビジネス&ライフスタイルを確立するーーを提唱しているのです」

 

  • 普段からしたいと思っていることはスキマ時間に、「いますぐ」を心がける

 「ビジネスパーソンにとって、美しいものを観ることは右脳にとっても有効です。美術鑑賞などは、暇ができたらーーと考えていたらいつまで経ってもできないことは当たり前。商談などのスケジュールを決めたとき、訪問先の途中に美術館などがあれば、ちょっと立ち寄ることをお勧めします。私の見方は独特で、まず部屋の中央に立ってぐるりと見回す。印象に残った絵を1つだけ探し鑑賞する。その基準は、この部屋のなかにあるどれか1点、あなたにあげると言われたら、どの絵をもらおうとするかな? その絵が決まったら、近づいてじっくり見る。同じことを各部屋で繰り返して出てくる。これだったら15分もあれば見終わる。これを繰り返しているうちに鑑賞眼が養われます。この場合も留意したいことは、所要時間です」

 

  • 時間は先回りして待ち伏せする必要がある

 「人を待たせて急いでいるときの時間は早く感じ、逆に、人を待っているときの時間は遅く感じる。ここに時間の秘密があり、時間の使い方のコツがある。つまり、時間は平等ではなく、追われると時間を奪われる。待ち伏せするとは、全体のなかから、今という時間を考えることです。新幹線で大阪へ行くとして車内での2時間40分にできることを実行するとき、意識はすでに2時間40分先まで到達しており、そこから逆算をして何かをしています。これが待ち伏せした使い方です。一流人物や成功者たちは、こういう意識で時間を有効有益にし、時間に追われることがなくなります」

 

  • 「すぐやらない」「先送り」「引き伸ばし」を無くす

「この原因は3つあります。

 ①自分の置かれている状況に危機意識がない。怠け者である
  やるべき仕事は、すぐしなければ変化とスピードの時代には致命傷になりかねない

 ②優先順位(プライオリティ)がつけられない
  自分の目的が明確になっていないので、最初にすべきことが見えていない

 ③判断基準が作れない。もっといい方法があるかもしれないと迷ってしまう
  私が選択肢を決める際の参考にするのが、正か邪・和か戦・勝か敗・損か得です

 これでも悩む人は、原点にもどること。原点とは幼少のころ、親によく言われた『人様に迷惑かけるんじゃないよ』でもいいし、『自分のやりたいことをやりなさい』でもいい。企業であれば『お客様の満足を第一に考える』でもいい。その一点を基準にして考えると、悩んでいたことがすーっと見えてくる」

 

 本書が出版されてから10年後の2013年10月、伊藤忠商事㈱が「朝型勤務」制度を導入しました。20時以降の残業を無くし、朝5時からの出社を認め、夜の割増残業手当と同じ率で早朝手当を支給。8時前に始業した人には軽い朝食を用意して応援することを実施。それでもトータルの経費は削減され、今は約半数の社員が朝型勤務になっているという。結果、会議は夕方がなくなり朝早くの時間に代わったそうです。

 さらに「朝型勤務」の導入のほかに、「110運動」を徹底した。これは「夜の会食や飲み会は、
1次会だけで10時までに終わる」という改革で、これにより夜遅くまで飲むという習慣がかなり減少したそうです。

 その結果、「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」「夜早く帰ることで、家族との時間やビデオを見る時間が持て、リフレッシュにもつながる」と実感する社員が増えているといいます。

 もちろん朝型勤務の効果だけではないだろうが、下記の数字が示すように、伊藤忠の業績も極めて順調に成長している。株価や従業員一人当たり経常利益にも反映しています。

 

  伊藤忠 三菱商事 三井物産 丸紅
株価  2011年12月30日(円) 782.0  2000.0  1250.0 469.0
   ※2013年12月30日(円) 1299.0 1900.0 1465.0  756.0
    2019年12月30日(円) 2534.5 2900.0  1950.0  810.0

    2011年対比(%)  324% 145% 156% 172%
従業員1人当たりの経常利益(万円) 7166 8000 3197 3685

 

(※伊藤忠が「朝型勤務」を始めた年)

 

 まず従業員が健康的になり笑顔になり、クリアなクリエイティブな頭で働くことで、生産性を上げ、顧客にも会社にも、三方よしの結果を生むことの一因になっていると考えられます。
 個人でも企業単位でも、「朝型勤務」がいろいろな面で有効なことを示している例といえます。会社も施策面でバックアップすることが求められる時代になってきたのでしょう。

 

                                             次回は2月28日(金)に掲載いたします。     

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