2015年5月3日(日)12:33
東京都千代田区永田町二丁目にてスミダノハナビを撮影
花言葉「辛抱強い愛情」「クールな美しさ」
※ 3月6日(金)より、数回に分けて、私が過去に顧問弁護士を務めたある会社の経営危機打開のため、私が社長宛てに提出した再建建白書「A社自力再建の指針に関する助言」を、掲載しています。3月6日(金)付記事からお読み下さい。
提言
<1> 新経営体制の確立のために
- 社長はA社の自力再建のために全力投球していること、これに失敗すれば最早A社の自力再建の道は残されていないことを社内の隅々にまで周知せしめること
- A社の自力再建にあたる社長としての所信を、定期的に簡潔に、パターンを統一して、わかりやすく全社員に披攊すること
- 直ちに全役員に日付を空欄とする辞表の提出を求めること
- 社長と共にA社の再建を体を張って実現しようと考え、行動する役員によってのみ非常事態下にある役員会を構成する考えであることを宣言すること
- A社より少数精鋭、一騎当千の役員体制を早期に確立すること
- 営業用役員は顧問に就任せしめ、その報酬はメリット(成功報酬)システムによること
- 組織を全面的に見直し、営業強化に資する体制であるか否かを確認すること、すなわち役員の配置あるいは管理職の配置において適材適所であるか否かを全社的に改めて検証することをも含む
- 社長は何事についても責任者を指名し、且つタイムリミットを設定し、これを厳守させること
- 会社再建に力を発揮し得ない役員や管理職者には、現在のA社の力においてポストを提供し得ないことを知らしめること
- 技術者を適宜営業第一線部門に配置すること
営業部門、セールスマンに技術教育を実施すること - 全社部門から選出した再建策策定委員会を発足せしめ、2週間以内に昭和●年、●年度の採算分岐点を確定させること
(それは年間250億円を超えるものと目されるが、A社と比較して、何が故にかかる高額の採算分岐点となるかを分析することをも含む) - 上記委員会において、1月後の役員会に付議できるよう、A社自力再建策を社長に答申させること、就中その中には昭和●年度に採算分岐点に到達さしめる上で、人員合理化が必要であるか否かを必ず答申させること
(時間厳守) - 全管理職者、あるいは一般社員有志に対してA社再建の私案を書面にて募る旨公示すること
(社長宛親展とし、時間厳守) - 再建策策定委員会の社長宛答申を役員会にかけ、必要な具体的施策については昭和●年度内に実施に移すこと
(遅滞は許さぬこと) - 管理職者へ権限を委譲すること
- 成り行き任せの経営を打破するために、役員を含め会社の隅々まで厳正なる信賞必罰の態度を以って臨むこと
- 社訓・社是を見直したうえ、事業所内各所に掲出し、毎日の朝礼において、役員・管理職者はもとより全社員に唱和させること
(見直しに当っては、A社再生の祈願を込めて当ること) - 朝礼を毎日励行し、発言者を特定の者に限定せず、主催者が適宜に指名して、全社員が絶えず会社のために何を為すべきかを主体的に考える習慣づけを行うこと
尚、役員はどこかの朝礼に必ず出席すること - 人事考課結果を賃金に反映させること、すなわち査定制度の導入を早急に検討し実施すること
- 社内報を最低毎月1回発行し、経営意思の浸透を図ること
(必要あれば連日にわたることもいとわぬこと。社員の大半にA社再建にかける会社の真意と思想が誤りなく伝わるようになれば、左程頻繁にわたらずとも自然と用をたすことができるようになってくる。) - 管理職者の意思統一を図り、経営情報を適宜に流すために管理職者対象のニュース媒体を設け、適宜に発行すること
- 業務の外注化、他者のもっているノウハウの積極的取り入れを心懸けること
<2> 経営姿勢を正すために
- 役員は一般社員、管理職者よりも毎日少なくとも30分早く出社すること
- 役員の退社は原則として部下が退出した後とすること
(社員の出退勤、精勤度はこれだけで相当程度改善されよう) - 経営・管理とは看ることにはじまること
部下の働き、気働きに絶えず気を配り、褒め、叱り、そして叱咤激励することを忘れてはならないこと - 前日遅くまで仕事をしたからといって翌日遅く出勤することは許されないこと
まして前夜深酒したから……などという遅参はもってのほかであること - 愚痴や批判を社員に語ることはしないこと
(社員から軽くみられ、軽蔑されるのが落ちである) - 役員は営業日にはゴルフを行わないこと
(金が惜しいからではなく、時間が勿体ないからであることを明言しておくこと) - 万已むを得ず接待ゴルフをしなければならないときは、月曜日、金曜日、祝祭日の前日と後日を避けたうえ、社長の許可を得たうえで行なうこと
役員はその報酬の1割を辞退すること - 月間行事予定表を作成し、全社的にこれを知らしめること
- 役員は毎日の行動・所在を具体的に予め明らかにし、即時に連絡できるような態勢にすること
- 役員は外出した場合には少なくとも2時間おきに会社に電話を入れ、用向きのあるなしを確認すること(糸切れ凧は認めない)
- 役員は率先して経費の削減に努めること
役員専用車を廃止すること - 特段の理由のないグリーン車は利用しないこと
- 業者からのリベートの有無につき実態調査をすること
もし規律違反の事実があれば3年前にさかのぼり即時全額返済させること
尚、本日以降同様の所為に及んだ者は、背任横領を理由として告訴をする旨を社内に明確に宣言すること - 何事によらず責任者を明確にし、オンタイムで仕事をさせること
- 役員はA社が再建会社であることを常に忘れず、社員の行動の範を示さなければならない。行動を正すことが即萎縮管理に陥いることになってはならない。萎縮してしまっては企業の生命源でありバイタリティを喪うことになるので、左様な事態にならぬよう工夫すること
<3> 管理職者の意識改革と能力再開発のために
- 役員に対する教育を進めた後、管理職者に対する教育を継続的・徹底的に行なうこと
- 管理職者に目標管理システムを修得させ、実践させること
- 係長あるいは主任に対して実質的権限を一部付与し、責任を自覚せしめること
- 各階層別あるいは各部門別の管理職会議を制度的に設営し、効果的に運営するよう取計うこと
- 管理職者につき定期異動を励行すること
- 管理職者の能力・適格性を年1回必らず全面的に見直すこと
適格性を欠く管理職者についてはその都度降格すること - 管理職者に責任と能力に相応しい待遇を付与すべく、賃金制度・賃金体系・資格制度につき早急に検討を加えること
- 全社共通の認識に立って判断・管理を行う上で、営業現業部門以外の管理職者は、新たに出勤させる土曜日を中心に最低月2回は営業応援を実践し、実体験すること
- 会議は営業活動に支障を生じさせぬ時間帯・日時に設営するように心懸けること
<4> 営業の増進及び士気向上のために
- 営業部門の質的向上を図るのが急務であるので、接遇訓練をはじめとする営業基礎・専門教育を開始し、持続すること
- 代理店経由の販売高を策定し、その半期毎1割増を期する施策を具体的に緻密に立案し、直ちに実行に移すこと
- 押し込み販売、すなわち架空売り上げを厳禁すること、これを行った責任者については懲罰的人事異動を行うこと
- 毎日の売上げが各職場で発表できるようデータ作成をすること
- 営業成績向上のために、毎朝一定数の電話を必ずかけさせること、定型的な電話や宿題の電話の外、新規の営業開拓電話を必ず数本含ませるようにすること
- 顧客への訪問回数を増加すること、これを組織的にすすめること、行きにくいところへ意識的に訪問すること
- 全社員がセールス活動に注目を払うよう、営業応援を計画し実施すること
- 全社員にホーレンソーを忘れないよう徹底すること
- 不良社員とは上司を疲れさせる社員のことである。裏切る者、背信の者等々の不良社員を牽制することを忘れず、絶えず攻めること
- 毎日営業日報を提出させること及びこれの効果的活用を図ること
(営業日報と日当・交通費の精算が同一の書類様式となっているよう作成することも一案) - 各部門責任者は営業報告書を毎月提出すること
営業報告書は計画・実績・次の期間の目標・それを達成する具体的手だてを明らかにするものであること
尚、営業報告書は書式をつくり、簡にして要を得たものとすること - 営業行動基準、標準作業を作成し、合理的、効率的な営業活動の展開を図るようにすること
- 各部門別、各支店、各営業所別に5日目毎に営業成績を集計し、それぞれの予算達成度を公表すること
- 営業会議を各セクション毎に毎週定期的に開催し、戦略戦術を議し、適宜決定すること
その決定事項は必ず議事録に留め、次回の会議においてその進捗状況を確認すること - 毎月5日までに作成された月次報告書をもとに、社長が主催して月次業績検討役員会を毎月10日までに開催し、当月及び翌月の取り組みを検討し、重点施策を具体的に決定すること
責任者への示達と報告を怠らぬこと - 代理店をブロック別に組織化したうえ、貢献度を基準として処遇に差異が生ずるシステムを導入すること
- 社内に競争意識を植え付けるべく、営業実績に功顕著の部門、あるいはセールスマンには然るべく(相応の)褒賞を行う制度を設け、実施すること
但、刺激給政策をとることは不可 - 出勤状況良好な者については一定の基準を設けて然るべく(法に抵触しない範囲内で)褒賞する制度を設け、実施すること
- 工事は全面的に外注に委託するよう取計うこと
- 外注工事単価は小型外注10%カット、大型外注30%カット、平均20%カットの方針で直ちに対処すること
- 資材購入単価は10~20%カット、平均15%カットの方針で直ちに対処すること
- 全事業所に対して速やかに業務監査を実施すること
<5> 非常事態に即応する労働条件の設定
- 労働条件の改訂に当っては、それ以外の再建策の改訂如何と併せ検討し進めること
- 営業日を増設すること
全土曜日を営業日とし、とりあえず全役員全管理職者を出勤せしめること - 一般社員については年間所定労働時間を2050時間以上とすること
- 残業手当の削減を図るべく労働組合の合意をえた上固定手当制を導入するとともに工事部門の外注化を徹底すること
- 再建に支障がある労働協約事項については、組合に積極的に改訂を申し入れ、已むを得ないときは廃棄する手続きをとること
- 経営陣の意思力の強靭さ、再建への不退転の覚悟を浸透させる姿勢を示すこと
すなわち、組合に態度表明するに当っては、真摯に取り組み、最善の案をまとめ、一発回答方式を旨として提示すること - 労組に対する説得活動には役員・管理職者は一枚岩で当ること、ときに社長自らが当たることも必要であること
- 争議は好んではならないが、経営の意思を貫徹する上で避けられない争議については断じて惧れないこと
むすび(進んで困難に挑戦すべし)
以上の提言は、A社に企業らしさをとり戻す、すなわち健全な企業に復元させるために最低限必要不可欠であると考える施策を示したものである。
だが、これら施策に入魂させる、すなわち実践は一に懸って新経営陣の精神力・人間力にかかっていると言ってよい。
いずれもA社の現状を考えるとき容易ではないことは充分承知している。
しかし、最早困難であるとか難しいとかいって、A社が直面する問題・課題から逃避をすることは許されないのである。逡巡して困難な命題の解決を1日、1日と先にのばしてみても却って困難を一層深めるばかりであることは否定しようもない事実である。
もとより現状を守ろうとする本能から発する労働組合の抵抗は考えておかねばならない。しかし、それを恐れてはならないのである。労働組合は自らの力で企業再建を果す役割を担うことができない存在である以上、企業はその責任においてこの役を果たさなければならないのである。
企業が健全であることは即社員の幸せに繋がるということを固く確信し、至誠天に通ずの気概をもってことに当たるべきである。
再建を実現した会社は、それぞれに困苦・苦汁を味わって、漸く勝利の果実を手にしたのである。A社もその灯を消してはならない。困難を克服したときの杯を手にすることができたとき、人は峠に立ってものをみる喜びにひたることができる。
以上
追而
尚、毎月1回定例日に本提言に対する経過実効報告が受けられれば、更に現実的な提言をなし得よう。
技術、生産部門ほかに係る提言は、今回は時間的事情もあって割愛した。又の機会に纏めてみる所存ではある。