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「AIと私たち」

第2回 AIの飛躍と日本の遅れ―研究・投資・認識―

 

1980年代のコンピューターは、医療診断や定理の証明などを実現する一方で、画像に写るものが猫か犬かを判定したり、積み木を上手に積んだりといった、子供でもできることが何十年もできなかった。

それが2000年代に入り、AI自身が人間のように、与えられたデータから学習する技術「機械学習」が登場。さらに発展した「ディープラーニング(深層学習)」技術は、コンピューター上に人間の脳の構造・働きを再現し、特に言語処理を革新させた。AIの歴史を決定的に変えたディープラーニングは、登場から10年を超えて今なお最も熱い技術である。

 

ディープラーニングと「画像センサー」が組み合わさることで、AIによる画像認識の精度は急激に向上した。すなわちAIの眼の獲得である。人間の脳を再現する上で、五感の一つである視覚は非常に重要であることは言うまでもない。今そこにある映像や画像を見てデータとして取り込めるようになったことで、カンブリア紀の生物に眼が生まれ爆発的な進化を遂げたように、AIも進化・多様化し、活躍の場を飛躍的に拡げている。

 

また、近年のAI躍進の一助を担っているのがIoT(Internet of Things)の発達である。家電、自動車、電気メーターまで、ありとあらゆる機器がインターネットと接続できるようになり、様々かつ膨大なデータが得られるようになった。例えば、外出先からスマートフォンで自宅のテレビの録画予約をしたり、自宅で測った血圧などの健康状態を自動的にかつ瞬時に医師に送信したりすることが可能になっている。機器を使用することで得られたビッグデータは瞬時に企業へ送られ、AIで分析される。産業機器やインフラ設備など、取得できるデータ種類が多様化したことで、作業効率や生産性の向上、売上の拡大、人件費削減など、様々な業界でAIの活用が有効となった。

 

さらに、ここ数年でデータ収集や情報通信技術のコストは格段に下がっているから、資金力の乏しい中小企業や零細企業でもAIを導入できる可能性が広がっている。

AIやビッグデータ、IoTの利用は世界的に急拡大しており、「第4次産業革命」とも呼ばれている。18世紀の産業革命を経て人類の技術は手工業から機械工業へと転換した。技術革新のたびに人類は生産性を高めてきたが、ITによる変革はこれにとどまらず、企業や業界の垣根、国境を消し去り、世界中の人材が入り乱れる大競争を生んでいる。それがさらなる技術革新を促し、IT産業が異業種を飲み込み、産業構造をも大きく変えているのである。

 

世界におけるAIの研究と活用は米IT大手が主導してきた。近年は世界一の人口を誇り、国主導でそのデータを吸い上げる中国の台頭が目覚ましい。

他方、我が国のAI研究は世界に遅れをとっていると言わざるを得ない。関連する特許件数や論文投稿数、投資額のいずれをとっても大きく水をあけられており、年々その差は開いてすらいる。

さらには人材不足も深刻である。これは国人口や近年の人口減だけでなく、海外に比べ報酬面で魅力を欠くことも一因とされている。企業経営層のAIへの理解度が投資を含め研究環境に大きく影響するところ、日本の企業経営層がAIを熟知している割合は米国5割、ドイツ3割に対し、日本は7%台に止まっている(MM総研17年調査)。AIやITを他人事と思ってやまない人間がいかに多いかが見て取れる。実際、我が国のサイバーセキュリティー戦略を担当する大臣が「PCを使ったことがない」と答弁したばかりである。

 

AIやビッグデータ、IoTといった関連市場は専門家の予測をはるかに上回る超驚異的な速度で拡大している。AIと無縁でいられる人などもはや存在しない。早急に認識を改めなければ土俵にすら上がれず、ただ苦杯を嘗めることになろう。AI時代はデータ化によってあらゆる仕事がスピード化されている。生き残るためにはより一層、早期の判断と実行が必要不可欠である。

 

まとめ

・ディープラーニングと眼を得てAIは発展、多様化

・第4次産業革命は産業の垣根を撤廃

・経営層はAI時代を早急かつ主体的に認識せよ

 

(第2回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

「AIと私たち」

第1回 AIの歴史~フィクションから現実へ~

 

今やすっかり日常に浸透した「AI(人工知能)」。街ですれ違う人がごく自然に「AI」と口にしているのを耳にする。

私が本格的に(といっても素人の域を出ないが)AIについて勉強を始めたのは2015年の春頃。研究者を除けば日本でAIに関心を持つ人間は限られていた。しかしそれでも日々、新聞各紙面の後ろの方に小さな関連記事を見つけられており、「AI時代」の到来を感じた私は、より早く、多くの方にAIを身近に感じ、考えていただく機会となることを願い、各所のお力を借りながら幾度もセミナーを開催し、自らの論稿や著作でも取り上げてきた。

多くの人々にとってAIが別世界のことではなくなった今、ひとまずのものとして、自らの学んだ足跡を発信していく。

 

2016年3月、我が国におけるAIの一般認知度が急激に上がった。Google DeepMindのAI「アルファ碁」が韓国のトッププロ棋士・李世乭(イ・セドル)を打ち破り、「AIが人間を超えた」とメディアが連日大々的に取り上げたためである。「AIとは」という特集が各所で組まれ、家電、スマートフォン、会計・経理ソフト、コミュニケーションロボットなど、実はすでにごく身近に浸透していたAIが、ついに日の目を浴びることとなった。

 

「コンピューター」「ロボット」「AI」の三者、特に昨今「ロボット」と「AI」は混同されがちだが、コンピューターは人間の操作を受けて処理を行う電子計算機にすぎない。代表例がパソコンだ。このコンピューターに人間同様の知能を実現させたものがAI(artificial intelligence)である。これに対し、ロボットとは、人間がコンピューターを操作して行うような処理を、自身で自動的に実行できる機械である。簡単にいえば、人間の心や頭脳(ソフトウェア)を機械化したコンピューターがAI、コンピューターを操作する身体(ハードウェア)を機械化したものがロボットと言えよう。

今の日本人の多くは幼少期から鉄腕アトム(手塚治虫)やドラえもん(藤子・F・不二雄)といった「心を持ち人間を助けるロボット」と共に育った。「ロボット」と聞けば彼らを思い浮かべる人が少なくないはずだ。では現実のロボットはどうであろうか。一昔前までは製造業における産業用ロボットが主流であり、日本は長年「ロボット大国」としてその技術力を世界に誇ってきた。しかし、昨今の高齢化や人口減少に伴い、医療や介護、サービス業といった非製造業でのロボット需要が高まり、搬送作業や介護の負担を減らす装着型ロボット、コミュニケーション型ロボットなどその種類は多岐にわたるようになった。それはAIの発達と共にあったと言っても過言ではない。AIとロボットが組み合わさったことで、フィクションの中のロボットが次々と現実化しているのが今の世界である。

 

さて、AIの歴史は意外にも長い。古代の神話や伝説などに起源し、中世の錬金術やホムンクルス、ゴーレムを経て、19世紀には人造人間や思考機械というアイデアに発展。メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」やカレル・チャペックの戯曲「R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)」が発表された。

AIが「科学」として研究され始めたのは1940年代。以来、AI研究はブームと「冬」の繰り返しだった。1956年に学問分野として確立された際は第1次AIブームが巻き起こったものの、高まりすぎた期待に応えられず、1970年代には一転「冬の時代」となり、批判と資金縮小に晒された。1980年代になると第2次AIブームが到来、日本政府や企業も500億円以上の資金をAI研究に注ぎ込んだが、80年代末には再び投資が撤収された。

こうした中、1997年に米IBMが開発したスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が、当時のチェスの世界チャンピオンに勝利した。これが現在の第3次AIブームのきっかけとなり、世界は本格的なAI時代へと向かうのである。

 

まとめ

・AIは人間の心と頭脳を機械化したコンピューター

・AIとロボットの融合がフィクションを現実化

・ブームと冬を繰り返し、ついに「AI時代」へ

 

(第1回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

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