『労働新聞』明るい高齢者雇用の最近のブログ記事

 

「明るい高齢者雇用」

第2回 65歳定年の可能性―社会保障にもメスを―

(「週刊 労働新聞」第2148号・1997年4月14日掲載)

※当時の文章のまま掲載しております。

 

 

 定年問題に関しては次の2つに注意しなければならない。1つは中国にも好況感に陰りが生じていることである。例えば、昨年の成長率は9.7%と報道されているが、一時の明るさを失った。中国ですら好況でないという事実のゆえんは、エネルギー資源問題との関わりにある。資源、とりわけエネルギー資源の枯渇という不安・恐怖に、人類は無言の調整作用としてエネルギー等の資源が生産される程度に消費を抑えようとする。環境問題もその1つだが、実はそれが市場経済の進展にブレーキをかけている。

 「行け行けドンドン」、拡大再生産とは資本主義経済の合言葉、市場経済の原則だったが、いま萎縮しがちである。これこそ世界経済が減速経済、不況感を脱却し得ない理由である。先進国成熟社会・日本は更新国以上に資源を消費し、それだけに資源問題を意識せざるを得ない。従って中国以上に日本の高齢者雇用は今後ますます困難となる要因がある。

 第二の注目点は、中国でも(“でも”という表現が適切か否かは別として)退職年齢が年金問題と関わっていることである。日本ではいま65歳への年金受給年齢の引き上げが議論されているが、その背景は以下の通りである。

 今年1月厚生省人口問題研究所から発表された「日本の将来推計人口」によれば、日本の総人口はわずかあと10年間しか増えない。2007年1億2,778万人でピークを抑えた後は減少の一途を辿る。しかもただ減るのみならず若年者の急減と高齢者の急増とが同時進行する。既に日本の高齢化率は欧米先進国並だが、2000年には世界一の高齢国となる。現在1人の高齢者を65歳未満の国民5.8人で支えているが、高齢化率のピーク2049年(32.3%)にわずか2人で支えていかねばならない。年金・医療といった社会保障全体の枠組みに大きくメスを入れない限り、日本経済は破局のシナリオへと向う。未だかつて人口が減って豊かさを維持した国はない。この歴史的事実を厳粛に受け止めねばならない。

 厚生省の試算でも、国民負担率(税と社会保険料が国民所得に占める割合)を高齢化ピーク時でも50%以下に抑えるには“年金・医療の給付を2割以上削減しなければならない”としており、また経企庁の別の試算では、社会保障、国家財政とも無策のまま改革されずに推移したとすると、潜在的国民負担率は2025年73%に達する。もはや「高齢者が社会的に扶養されるだけの存在」という前提では、社会の安定維持が不可能なのである。

 高齢者雇用が促進されれば年金財政は大きく改善され個人や企業の負担も軽減する。高齢者がその人に会った就業形態を選択でき長く現役にとどまれば、年金給付者が減り年金拠出者が増える。これこそ退職年齢と年金問題が不可分で65歳への定年延長が今叫ばれている本質的意味である。

 若年労働力の減少により再び人手が不足し、女性も高齢者も雇用が活況を呈すという楽観論もあるが、はたしてもう陽が昇らない日本経済の下で65歳への定年延長は可能なのか、さらにはそれを可能にする条件を模索してゆくことも課題の1つであることを、中国の例からもうかがい知れる。

 

 

「明るい高齢者雇用」

第1回 失業率5.7%にも―世界的視野から模索―

(「週刊 労働新聞」第2147号・1997年4月7日掲載)

※当時の文章のまま掲載しております。

 

 日本のみならず全世界的にも「明るい高齢者雇用」はないのだろうか。まずは日本の現況を確認してみよう。平成7年10月1日時点で日本の高齢者65歳以上人口は1,860万人と総人口の14.8%を占め(「平成7年国勢調査」より)、65歳以上の労働力率(各年齢層に占める労働力人口の割合)では、日本37.6%、アメリカ9.1%、ドイツ4.6%(いずれも94年男性の数値)と国際的には極めて高い水準にある。

 またいわゆる定年制に関しては、高年齢者雇用安定法等によって平成10年4月1日までに60歳定年制が義務づけられており、現在60歳定年企業の割合は労働省「雇用管理調査報告」によれば、88.3%と着実に定着しつつある。しかし65歳まで働ける何らかの制度(65歳以上定年制、勤務延長制度、再雇用制度)を有する企業は20.4%にとどまっている。総じて高齢者の雇用は厳しく、平成7年平均で全体の失業率3.2%に対し60~64歳は5.7%、有効求人倍率も全体の0.63倍に対し、同0.08倍と全く冷え込んだ状況にある。

 一方中国では法律上の定年は男子60歳、女子55歳だが、現実には国有企業においては30年間働き続ける(国有企業であれば同一企業である必要はなく勤務年数は通算される)と定年時の給与の6~8割の年金が支給される。また、国有企業で30年勤務すると、退職後も終身医療保険の適用を受けることができる(30年未満で退職し、職に就かなかった場合には医療保険の適用がない)。

 このような状況下で、30年勤続した人は“肩たたき”があり退職せざるを得なくなる。退職後の年金の額が840元(1元は約15円)を超えないものには所得税がかからない。ちなみに法律上は800元を超えると所得税が掛かることになっているが、控除が40元あるので、840元ということになる。

 さて実際の退職年齢についてみてみたい。文化大革命時の青年が現在壮年期にある。彼等の修学年限は中学校が2年間、高等学校が2年間と短縮されていたことから、大半は14歳もしくは16歳で労働についた。その大方の者は「下放」により農業に従事し、そのあと大学に進学し国有企業に就職した場合には44歳で退職する途が開かれることになる。

 かくして中国では極めて若くして仕事を離れることが多い。60歳以上の人は退職後専門職に従事できる人は別として、再就職できないといってよい。“一人っ子政策”の下、孫の世話をするのが一般的である。また40~50歳代で退職をした者は再就職を心掛けるが、45歳以上の女性の就職口は、現実にはまずないだろう。

 以上は中国北京の弁護士・王君氏の語るところである。希世軟件系統(上海)有限公司の社員、李国麗さんは、上海(北京に比して経済活動ははるかに好況)では男性は従来55歳が事実上の定年であったが、最近50歳に下がり、女性の事実上の定年は40歳ないし45歳であると語っている。これも中国の実定年年齢が下降していることを裏書きする証言である。

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