2013年4月8日(月)午前7:40
東京都渋谷区代々木公園にてチューリップを撮影
花言葉:「博愛」「思いやり」「名声」
前回に続き、この4月設立のNPO法人「キャリア権推進ネットワーク」の役員・部会長の顔合わせ会(3月5日〔火〕18時30分~)の模様を紹介します(今回は私のスピーチの内容の紹介が中心です)。
NPO法人「キャリア権推進ネットワーク」
(キャリア権研究会「報告書」も閲覧できます)
当日は、おもに本NPO法人の事業広報部会長 吉田修氏(株式会社リクルート・ジョブズ 審査部長)の司会進行により、顔合わせのほかに、4月16日(火)18時30分よりアルカディア市ヶ谷6階「伊吹」(地図)にて開催されるキックオフミーティングや、4月以降の活動予定等々に関する実務的な確認と意見交換がおこなわれました。
私は所用のため、20時過ぎには退席しましたが、キャリア権および本NPO法人の活動について、考えるところを皆様に手短に発表いたしました。
以下は、そのときのスピーチの内容に補足のうえまとめたものです。
3月5日(火)NPO法人「キャリア権推進ネットワーク」役員顔合わせ会での高井伸夫スピーチ
私がキャリア権概念と出会ったのは、いまから5年半ほど前、2007年7月のことでした。
ほかの用件で、西新宿のヒルトンホテルのロビーで諏訪康雄先生とお会いしたときに、先生からお話をうかがうなかで初めて「キャリア権」という言葉をお聞きしてハッとして、この概念は、私が企業の経営側の皆さんに日頃いろいろと申し上げている事柄をうまくまとめて集約して表現できる考え方かもしれないと思いました。リクルート社 吉田修さん(当時 株式会社リクルートHR審査室 エグゼクティブマネジャー)にこうした経緯をお話しして、2008年4月にキャリア権研究会という期間限定の勉強会を立ち上げるに至り、2010年5月に予定通り全9回の議論を終えて、2011年6月に「報告書」を刊行しました。
ちなみに、先月、3月9日(土)に法政大学外濠校舎6階薩埵ホールにておこなわれた諏訪康雄先生の最終講義「キャリア法学へたどりついた研究履歴」(法政大学大学院政策創造研究科)を聴講した者からの報告によれば、有り難いことに、諏訪先生は最終講義でこの経緯にも触れてくださったそうです。私が諏訪先生に、何かおもしろい話はありませんか?とお尋ねしたところ、諏訪先生は、おもしろい話はありませんが、「キャリア権」ということをやっていますとお話しくださって、それを受けて、私は、「そういう考えは是非社会に広めなければなりません」と申し上げたとのことです。
2013年3月9日(土)13時30分~
諏訪康雄教授(当時・法政大学大学院政策創造研究科)「最後の授業」会場にて
キャリア権概念は立法化すべきであると、私は2007年4月当時から言い続けております。日本の政府・官公庁の理解すら得られずに、未だに立法化されておりませんが、この度、戸苅利和先生という大変有能な方が本NPOの理事長に就任してくださるので、立法化の可能性はあると思います。
私は、2008年11月に左耳が突発性難聴に罹患し、くわえて2012年1月には右耳の聴覚過敏症が再発しました。聴覚過敏症は難病・奇病であり、治ることはないようです。こうした次第ですので、テレビは見るとしても音声を消して画面を見るだけですが、それでも聴覚には不快感が伝わります。そこで、この1年以上は、日々、ありとあらゆる本を乱読しています。
本の知識でいいますと、私が、NPO法人キャリア権推進ネットワークに関してご協力いただきたい方としては、まず、劇団四季の浅利慶太さんを挙げたいと思います。私も面識がありますが、非常に気さくな方です。浅利さんは、ミュージカルという非常に困難な世界で長年にわたり活躍されています。可能性があれば、ご協力をお願いしたいと思います。
そして、さきほど、出講のお願いをしたい先生としてお名前が出されましたが、清家篤先生(慶應義塾大学塾長/労働経済学)にも少しご縁があります。2~3年前に機内で私の隣席に座られ、「高井君」と話しかけられましたので、覚えていらっしゃると思います。清家先生も尊大ぶったところなど微塵もない爽やかな方ですから、講演をお願いするだけでなく、会員としてお迎えできればと思います。
さらに、私はお会いしたことはないのですが、ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんを挙げたいと思います。沢木さんの一番わかりやすい作品は『深夜特急』でしょう。沢木さんは大学を卒業して、就職した銀行を1日で退職したそうです。「これは生きるところではない!」と感じて。そして、25歳のときに貧乏旅行をして、香港からロンドンまでバス旅行をした。沢木さんは、本当に苦労して今日に至っています。近著では『文藝春秋』新年号に書き、単行本にもなった『キャパの十字架』がよく知られています。20年来抱えていたという疑問を、現地取材も重ねて解き明かしたのです。沢木さんは、まさにキャリアを積み上げてきた人です。そういう方に会員になっていただきたいと思います。
より多くの方々に会員になっていただくためには、企業・組織等の経営者も含む万人に納得してもらえる大義名分が必要です。先日、戸苅先生を表敬訪問した折に、「政界に働きかけましょう」ということを私からお話ししたのですが、取り敢えず議員連盟(議連)の形成を目指すのがよいであろうというご教授をいただきました。議連を形成するためには、やはり、国を動かす思想がないと難しく、国を動かす思想がないとキャリア権は普及しないと思います。
いろいろな本を読みながら、キャリア権を普及させるにはどうすればよいかずっと考えておりましたところ、本日の配布資料としてもお渡ししましたが、2012年12月28日付け日経新聞(夕刊)「あすへの話題」に掲載された青柳正規氏(国立西洋美術館館長)のエッセイ「国の豊かさ」を読み、ほんとにいい発想だと思いました。このエッセイは、国の豊かさを「自然資本」「人的資本」「人工物(物的)資本」の総計で数値化することを提唱している国際的組織の報告書を紹介しながら、「日本が豊かさを維持するためには、いかに人的資本を増やすか、そのことにかかっている。」と結ばれています。私は、この考え方によって、政界を動かすことも、官界を動かすことも、マスコミを動かすこともできると思いました。
さきほど、会の冒頭で戸苅先生からお話がありましたように、日本は人口減少の時代を突き進んでおり、いまの状態でいくと、国立社会保障・人口問題研究所もいうように、2100年には5000万人足らずになるという見通しもあります。今が1億2000万人ぐらいですから、これでは半分以下になる。私は、特段の裏付け根拠はないものの、日本としての適正人口は5000~6000万人程度(国立社会保障・人口問題研究所の統計によれば、大正末期から昭和初期頃の人口)ではないかと思います。この規模の人口になったときにどうするかということが日本の課題として大切な問題です。
日本には、水以外の天然資源がほとんどないことは、周知の事実です。そのために、日本は社会資源を強化しなければならない。日本の再興のためには、社会資源を強化しなければならないのです。そうしてこそ、5000~6000万人の適正な人口を養っていけるというのが、私の、キャリア権に関する論理の始まりです。
社会資源のなかには、社会インフラ等の物的な「社会資本」のほかに、人に着目して、労働生産性や教育レベルの高さ等を示す「人的資本」という概念があるとされています。そして、この人的資本の価値を高めること、言い換えれば人材の価値を高めることが、日本の再興のために必要です。そのための重要な方途のひとつとして、「キャリア権」概念は位置づけられると思います。この位置づけが、キャリア権の立法化の必要性につながります。政界も官界も容易には動きません。やはり、大きなビジョン、日本の再興をはかるというビジョンを持たなければなりません。それが私の考えです。
2007年7月に、諏訪康雄先生から、ひょんなことから「キャリア権」概念をご教授いただいたときに、「ああ、これだ!」と天の啓示を受け、2008年4月にキャリア権研究会を発足させていただいて、今日のNPO法人へとつながりました。
私は、残念ながら、耳の故障のためにささやかなお手伝いしかできませんが、<「社会資源」→「人的資本」「人的価値」→「キャリア権」>という図式でいかないと、国家も動かないし、官界も動かないし、マスコミも動かない。もちろん、企業・組織も一般大衆も動かない。このように思っているわけです。
そういうことで、きょうはご挨拶して終わりにします。