2013年11月3日(日)06:35
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯温泉
旅館「のりくら一休」にて秋明菊を撮影
花言葉:「忍耐」「薄れゆく愛」「多感なとき」
高井事務所の“業務現場”
月一回の掲載で始まった「百聞は一見に如かず」のコラム、いつも何を題材にすべきかと考え込んでしまうのだが、今回は、迷わずに「高井事務所の“業務現場”」というタイトルにした。「現場」との言葉を使ったのは、高井先生の指揮のもとで動いている高井・岡芹法律事務所の、その業務進行システムやスタッフの方たちの仕事ぶりをぜひ紹介したかったからである。
11月休日某日、高井先生にご一緒して岐阜の「奥飛騨」に行った。午前10時半、事務所の前から先生の車で出発、所要時間約4時間の旅である。
車が動き出して10分ぐらいした時、先生が事務所に電話をかけ業務を指示された。だが、この「高井流業務指示」は普通の業務指示といった生易しいものではない。高井事務所独特のシステム、やり方なのである。
まず、先生が考えたことや所員への指示内容等を口頭で所員に伝えるのだが、伝えるだけではない。先生から電話を受けた所員は即、電話の内容を録音に録り、それをテープ起こしで文章に作成して、移動中の先生にFAXする。だが、車にFAXはない。したがってFAX宅配便を利用する。移動中に見つけたコンビニに立ち寄り、事務所から送信されたFAXをピックアップするのである。
当日も、奥飛騨に着くまで2回、コンビニに立ち寄ってFAXをピックアップした。だが、これで終わりではない。先生は事務所から送信されたFAXを手にすると即、事務所に電話をかけて「読み合わせ」という確認作業を行う。つまり、文章に誤りはないか、ニュアンス的に不自然さはないか、誤字脱字は…などなど。一通りの確認が終わると「よし」との指示がくだされる。こうした一連の業務過程において、ときには現場が震えあがるぐらいの怒り・厳しき言葉が発せられる場合も少なくない。
午後3時頃に奥飛騨に着いた。目的地の山林を30分ほど見て回り、宿には4時過ぎに到着した。フロントに行くと仲居さんが「FAXが届いています」と言って渡してくれた。私が車中で眠っている間に指示されたようであった。所員の方たちは、先生が出張される際は海外であろうと国内であろうと、事前に行き先々の宿あるいは訪問先をチェックし、先生の到着をもってFAXが受け取れるようにしている。ドラえもんではないが「どこでもFAX」である。
宿のルームキーとFAXを受け取った先生は部屋に入るやいなや、事務所に電話をかけてFAXの「確認作業」にとりかかった。そして、そこに追加するものがあればさらなる指示を下し、所員たちはそれに対応して再度のFAXとなる。
事務所を出発してから10時間あまりの間、コンビニでのFAXもあわせて相当の枚数を受け取った。でも、今回は少ない方だ。先生はそれまで忘れていたことでも旅先で何か見、誰かと会って交わすちょっとした会話がきっかけで忘れていたことを急に思い出す場合が少なくないが、思いだすと即、事務所に電話し、それに関連する資料作成等を指示される。
そして、新たな指示が下されたら「リアルタイム」で対応しなければならない。ましてや先生は、類まれなる記憶力の持ち主ゆえ、過去に気にとめていたことが次から次へと出てくる。それだけに、指示をうける所員の方たちは「全方位」にて対応しなければならず、所員の方たちの緊張、精神力たるや、並では務まらない。みなさん実によく頑張っていると感心している。
こうした経験はいつかきっと、所員の方たちのキャリアにおいて「貴重な経験」「尊き学び」となるはずだ。今日の生ぬるい日本社会にあって、こうした厳しき現場にて教え、教えられる職場がどれだけあろうか。そういう意味では、高井・岡芹法律事務所に入所した「縁」もまた、人生における尊き導きであろう。
高井・岡芹法律事務所における「業務のリアルタイム進行システム」は、高井先生の仕事術…仕事術というより、先生の理念、仕事に対する価値観、ひいては「人生観」にて確立されたものであろう。先生は、常日頃から「何事も敏速に」「やるべきことは即やる」「仕事を持ちこさない」など、それらを自ら実践している。そこに加えて「完璧さ」「縁」を大切にされることから、クライアントや出会った人たちとのコミュニケーションや連絡には手を抜かない。手を抜かない分、業務は増え、所員たちの「リアルタイム対応」での業務が増えていくのである。
高井先生と行動を一日共にして、業務遂行においてこれほどまでに妥協を許さない徹底さは、半世紀のキャリアにて磨かれた「匠」の境地、といった方があっているかもしれない。