2018年12月2日(土)9:26 西新井大師にて紅葉を撮影
第12回 人事の役割
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
青木 昌一
1.経営の中での人事の位置づけ
私は今年の12月で人事コンサルタントになって18年になります。
その18年の間で「人事部」、「総務部」、「人材開発部」、「労務部」等々。名称は違っていても「人事部」の存在していない会社にお目にかかったことはありません。
業種や規模を問わずどんな会社にも人事部は存在しています。
このことは人事という機能が企業にとって必要で欠くことのできない重要な機能だということを表しています。
一方で「人事部」の機能には性質の異なるさまざまな機能が集約されています。
例えば、各組織と調整しながら人員の配置を決める機能。
給料を計算して社員に支払う機能。そもそもそのためには給与を決定する評価の仕組みを作らなければなりません。もちろんそれも人事の機能です。
また、人的な問題が発生したときにその解決にあたる機能。
社員の福利厚生を考え、実施する機能。
そして社員を採用し、戦力として高い能力を着けさせるために教育を行う機能などなど。
これらの目的は個々にはいろいろとありますが、究極的には世の中のコンペティターとの競争に勝ち、会社が未来永劫継続するために必要な機能だと言えます。
ゴーイングコンサーンと言われますが、企業の寿命が30年と言われる中で、経営としては何としても生き残っていくための取り組みが必須です。
したがって、どの会社においても人事部というのは経営に極めて近い組織だと言っても過言ではありません。人事部に所属する人たちには単に給与の専門家だとか社員のことをよく知っているということだけではなく、自社がどのようなリソースを持ち、それをどう活用して商売をしているのかを熟知し、同時に同業他社のみならず世の中の様々な企業の動向、世の中の状況を吸収するアンテナを備えていることが求められます。そのうえで、それらの知識や情報を駆使して難しい判断を下すことが求められる場面も多いといえます。
2.生産性の向上
昨今、働き方改革が各企業において大きなテーマとして取り組みが行われています。政府の「働き方改革実現会議」では19の対応策が提示されましたが、それら対応策の多くに共通する課題が「生産性の向上」です。
最近ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)やAI(Artificial Intelligence/人工知能)、RPA(Robotic Process Automation/ロボットによる自動化)などこれまであまり聞きなれなかった言葉をしばしば耳にするようになりました。
これらはすべて生産性の向上のために最近研究が進み、さまざまな企業で導入が進んでいるシステムの話です。少子高齢化の問題が取りざたされて久しいですが、これから各企業は本格的に労働人口減少の問題に直面することになります。これまで10人でやっていた仕事を3人でこなさなければならなくなる。そのためには今までと同じやり方では到底やり切れません。
このような状況に対処するために生産性向上に向けての取り組みをしなければならなくなっています。この問題は当然人事部も無縁では済まされません。まず、優秀な人材を採用をしなければなりません。その優秀な人材をさらに磨くために教育していかなければなりません。これは何も研修を施すだけでなく、スキル向上に役立つ仕事に配置することも重要です。その配置は生産性向上をしていくためにこれまでとは全く異なる論理で行う必要に駆られることが予想されます。
人事部ではこのようなシステムの配置と人の配置に関して経営企画や情報システムの担当者そして勿論様々な部署の人とすり合わせを行って決めていく必要がありますし、これらのシステムを使いこなす人材の採用・育成を進めていく必要が出てくるでしょう。
人事部の仕事も劇的に変化する可能性があります。先日も新卒採用においてAIを活用した書類選考を行う企業がニュースで紹介されていました。さらに在宅勤務やそのための就業管理もこれまでとは変わり始めています。これらに対応するために人事部がルール作りをする必要もあります。
生産性の向上は経営としても喫緊の重要課題になっています。企業においてその根幹を担う組織のひとつが人事部であることは間違いありません。
人事部はそういう意味でも企業の中でも極めて経営に近い組織だと言えます。
3.終わりに
高井先生はご案内の通り、人事・労務分野の弁護士として活躍されていらっしゃいます。その先生に若い頃にご縁をいただき、今日に至っている私はとても幸せな人間だと思っています。
私は日本総合研究所のコンサルタントとして、主にクライアントの人事制度の設計を中心とする人事施策策定のお手伝いをさせていただいていますが、自分自身が人事コンサルタントとしてさほど秀でているとは思えません。それでも多くのクライアントさんから声をかけていただけるのは企業の人事部や経営が抱える多くの課題を高井先生を通じて学ばせていただいたからに他なりません。さらに様々な企業の経営者の方々や今回述べてきたような経営に極めて近い組織である人事部の方々との取り組みが、コンサルタントにしては現場が分かると認識をいただきクライアントの方々から信用いただけるという循環ができているのだろうと考えています。
ここまで一年間連載させていただいたブログも本稿が最終回になります。
この連載のお話をいただいたときに高井先生から「最後はどう締めるのかね?」と尋ねられ、「特に考えていないので、成り行きに任せます。」とお話ししたことを覚えています。
結局、当時お話ししたままの成り行き任せで最終回を迎えることになりました。
これも私らしいかなと思います。
ここまでこのブログにお付き合いいただいた読者の方々と、今回の機会を与えてくださった高井先生に感謝をして筆を置きたいと思います。
ありがとうございました。
以上