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 平成29年11月9日 第2回中小企業と企業統治セミナー 開催報告②

 

〈第2部〉

「非上場企業のプチ・コーポレートガバナンスのすすめ

――コンプライアンスと企業承継に重点を置いたコーポレートガバナンス」

(講師:学習院大学法学部法学科 教授 小塚 荘一郎 氏)

 

事例や図解を多く交えながら、日本の中小企業に焦点を置いたお話をして頂きました。

 

「守り」のコーポレートガバナンス=コンプライアンスの確保

・オリンパス事件

・大王製紙(オーナー経営者のコンプライアンス)

・大塚家具(企業承継の失敗)

・タカタ(ファミリー企業の危機管理)

・東芝「不適正会計」=粉飾決算

・神戸製鋼問題

 

 

「攻め」のコーポレートガバナンス

・『日本再興戦略 - Japan is Back -』 (2013)

攻めの会社経営を後押しすべく、社外取締役の機能を積極活用することとする。このため、会社法改正案を早期に国会に提出し、独立性の高い社外取締役の導入を促進するための措置を講ずるなど、少なくとも一人以上の社外取締役の確保に向けた取組を強化する。

国内の証券取引所に対し、上場基準における社外取締役の位置付けや、収益性や経営面での評価が高い銘柄のインデックスの設定など、コーポレートガバナンスの強化につながる取組を働きかける。

 

平成21年 東証上場規則による独立役員の選任義務づけ

平成24年 東証上場規則改正、取締役である独立役員の選任を強く要請

平成26年(27年施行) 会社法改正(社外取締役を置かない場合、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明義務)

平成27年 コーポレートガバナンス・コード適用開始(独立性のある取締役を2名以上選任しない場合、その理由をコーポレートガバナンス報告書で説明する義務)

 

▼社外取締役、独立取締役を置くか、置かなければその理由を説明する義務を課すこととしたことについて、その考え方の基本は、上場公開企業はモニタリング・モデルと呼ばれる考え方を取り入れてほしいというところにある。

 

 

コーポレート・ガバナンスのモデル

 

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(1)モニタリング・モデル

経営者・・・業務執行者

取締役会・・・株主利益に従った経営がなされているかどうかの監督だけをする

⇒ よってここには、株主利益の代表者である独立者が必要

 

*モニタリング・モデル的に考える会社は大抵、他の企業の有名な経営者に独立取締役を担ってもらっている。

 

(2)アドバイザリー・モデル

取締役会・・・

監督をしているわけではなく、経営者(典型的には社長)に対しアドバイスをする、アドバイザリーボードであること

⇒ 日本企業が目指していたのはこれではないか?

 

*アドバイザリーモデル的に考える会社では、例えば海外展開をしようとする際、法務が重要になっているので独立取締役は弁護士にお願いをしたい、税制の問題で悩んでいるので税理士やあるいは国税庁のOBにお願いしたいといった形で独立取締役を選任している。

このモデルにおいては、経営者は、株主利益だけでなく取引先やメインバンクや従業員、地域、いわゆるステークホルダーといった様々な利害を受け止めてバランスさせながら、最終的に望ましい経営をすることが経営の在り方だと考えている。

 

 

会社法のエイジェンシー問題

 

・エイジェンシー問題・・・調整しなければならない利害対立のこと

 

①経営者vs株主

②債権者vs会社

(債権者:典型的にはメインバンク)

③多数株主vs少数株主

 

※コンプライアンスの問題・企業承継の問題は、②③の問題にかかってくるものである

 

例:コンプライアンスの問題・・・タカタ倒産の例(②の問題)

企業承継の問題・・・規模の小さな同族会社で起こる承継争い(③の問題)

 

 

エイジェンシー問題から見たファミリー企業

 

・経営者vs株主の問題は小さい

創業者ファミリーが自ら経営(株主=経営者)

創業者ファミリーが経営者を監督

 

・多数株主vs少数株主の問題は両義的

経営者が主要株主として会社の将来に利害を保有しているため、経営破綻を回避するという点においては主要株主も少数株主も利害は一致

もっとも、主要株主の私的利益(過大な配当金支払い等)のために利害が対立する可能性がある

 

 

日本のファミリー企業

 

・齋藤卓爾教授の研究 (2008)

上場会社(当時の東証。以下同じ)の中のファミリー企業の割合

ファミリー企業=株主/経営者が創業者一族である会社: 23%

創業者一族が2割以上の株式を保有する会社: 11% (諸外国よりも少ない)

 

ファミリー企業の利益率――有意に高い(有意:統計的に意味があること)

⇒ つまり、一般的な株主が分散している企業に比べ、ファミリーがしっかりしている企業のほうが利益率が高いといわれる。

 

創業者の子・孫が株主かつ経営者の会社――トービンのq(株式市場の評価)が有意に低い

⇒ 「創業者の子、孫だからという理由だけで経営者になれたのではないか?」という投資家からの厳しい目

 

 

中小企業のコーポレートガバナンス

 

・「攻め」のコーポレートガバナンス

経営者と株主の利害は基本的に一致=上場企業と同じコーポレートガバナンスの意味は乏しい

企業承継の問題――経営能力とは無関係に次代の経営者が決定されるおそれ

 

・「守り」のコーポレートガバナンス

コンプライアンス――従業員管理の問題

ファミリーの「私的利益」の問題

 

解は「中小企業経営のルール化」ではないか?

 

 

企業承継問題

 

・相続と後継者(かつては「東京地裁商事部は家族法担当」とまで言われた)

「私的利益」目当ての後継者のリスク

株主間対立のおそれ

婿養子の意義=外部市場と内部昇進のバランス(上場企業では内部昇進のみ――ファミリー企業の方が進んでいる?)

・種類株式を活用した企業承継?

スキームよりも重要な問題は後継者の選定(ルール化し、客観性、透明性を担保すること)

 

 

役員報酬をめぐる紛争

 

ルールを明確にしておいて、恣意的な判断を排除することが重要である。日本の会社法上も「役員の報酬は株主総会で決める」と書いてあり(会社法361条)、これは株主が経営者をコントロールするという発想であるが、中小企業ではこれだけでは不十分。

 

 

コンプライアンスの問題

 

①コンプライアンス=法令遵守

従業員による不正の予防・早期発見

経営トップ(社長)による不正の予防・是正

「経営トップの周辺」の統制も重要

②内部統制システム(金商法=上場会社)

経営トップによる社内の「統制」

社長自身を止める仕組みではない?

COSOレポート(米国の内部統制に関する基本的な文書)でも経営トップの統制には言及なし

 

コンプライアンスのシステム化(見える化)

三様監査(監査役、会計監査、内部監査)+会計参与により、監査を充実させる

「スリー・ストライク・ルール」

 

会計監査、内部監査部門は中小企業にはないところも多いが、個人の会計士など規模が小さくてもいいので、多少でもここを整えていく必要があるのではないか。

 


中小企業の監督(モニタリング)

 

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中小企業の定義・・・

規模だけから考えると、ファミリー企業(家族・同族会社)、大企業の子会社・合弁会社、ベンチャー企業が含まれる

 

コーポレートガバナンスについては、「ルール化されているか否か」が重要

株主間契約、種類株式

社内ルールの整備―特に承継とコンプライアンス

 

 

新たなタイプの監督(モニタリング)

 

・多様性(ダイバーシティ)

⇒ 女性、外国人、障がい者などに活躍の場を提供

・ESG(environment, social, governance)

⇒ 環境や人権への配慮をサプライチェーン全体について実施、開示

 

多様性、ESGについては、大企業だけでなく中小企業でも考えていかなければならない時代になってきた

⇒ 理由の一つとして、中小企業の海外進出がある

 

「日本型経済」論(バブル経済の時代)や、現在の日本経済

 

 

まとめ

主要株主を持つ会社

創業家・一族の影響力=株主利益と経営者の利益の乖離は小さい

(上場会社の子会社も実は同じ)

 

 

課題:

経営トップの承継

コンプライアンス(違法行為の予防・早期是正)

これらの課題に限定した「プチ・コーポレートガバナンス」の実践を

 

以上

 

新規レイヤー

平成29年11月9日 第2回中小企業と企業統治セミナー 開催報告①

 

はじめに

 

週刊『労働新聞』において連載された「経営・人事担当者向け 中小の企業統治論(全11回)」を契機として「中小企業と企業統治」と題したセミナーを昨年6月に開催したことは、以前本ブログでもご報告いたしましたが(/weblog/2017/12/post-316.html)、同セミナーがご好評をいただきましたため、去る11月9日(木)に同テーマで第2回目のセミナーを開催いたしました。

 

第1回目と同様、今回も連載の執筆陣にご出向いただき、参加者の皆様から高い評価を頂戴しましたので、本ブログで2回に亘りセミナーの概要をご報告いたします。

 

企業統治の問題は、東芝事件以降、大企業を中心に盛んに論じられていますが、間もなく中小企業にとっても他人事ではなくなるでしょう。

日本の人口は100年後には現在の3分の1に減少すると言われています。これに伴い、当然、企業の数も減っていくことが予想されますが、そこで企業統治の行き届いていない企業があれば、企業の規模は大きくなくてもその存在は目に付くようになり、ひいては日本企業全体の足を引っ張るような事態に陥ることが懸念されるからです。

 

以上のように、企業統治は、日本の中小企業の未来にとって大変重要なテーマですので、

本稿をご覧いただいた皆様にご関心をお持ちいただけるようになれば幸いでございます。

 

平成30年1月 会長弁護士 高井 伸夫

 

 

【講演概要】

〈第1部〉

「外国から見た日本の中小企業と企業統治」

(講師:一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 ブルース・アロンソン 氏)

 

多くのデータを元に、前半は、国際的な観点から見た中小企業の企業統治の総論、後半には日本の中小企業に焦点を絞ったお話をして頂きました。

 

1 中小企業の企業統治の総論

 

(1)なぜ中小企業のコーポレート・ガバナンスの議論はほとんどされていないのか?~4つの理由~

①中小企業の多様性・日本には共通の定義が存在しない

②大企業のような複雑なコーポレート・ガバナンス体制を持つ必要性はあるのかという議論

③コーポレート・ガバナンスの法律などは大企業向け

④コーポレート・ガバナンスの議論はオーナー企業に適用しにくい

 

(2)中小企業における企業統治の重要性

 

・大企業の場合は監視制度の強化

・中小企業の場合は、営業効率やパフォーマンスの改善

・中小企業でも、従業員、債権者、顧客などの様々な利害関係者(ステークホルダー)の利害の調整が必要

・中小企業の事業の拡大・複雑化

 

(3)上場企業と非公開の中小企業の企業統治

 

(4)中小企業にとってハードルが高い企業統治の環境

 

・上場企業のコーポレート・ガバナンスの基準が厳しくなっている

・中小企業はそうした基準の直接適用がなく、またそれに従おうとしない

・一方で、社外取締役の導入などの新しいベストプラクティスへの期待は?

・ヨーロッパでは中小企業向けの簡単なコーポレート・ガバナンスコードがあるが、日米には存在しない

 

(5)中小企業における主要な課題

 

・組織的経営・・・

一企業の意思決定構造・過程を確実に規則化すること(個々の事案について異なる対応をしない) 例:取締役会の機能化、正常化

・統治構造・過程の進化

・企業の事業環境変更に伴う企業の統治構造・過程の進化は自然に起こることではない

・ニーズに合わせて適切な統治構造・過程を維持するために、事前に計画を立てておくべき

 

2 日本の中小企業における企業統治向上への挑戦

 

(1)日本の中小企業の概要と特徴

 

・中小企業の数は減少している

・大企業に比べ生産性、投資、売り上げ、収益性などが低いが、

・一部(全体の10%-30%程度)は大企業の平均を上回る

・日本政府の支援もある

・ベンチャー企業の経済的な影響が小さい

・過半数は大企業の下請け

・開業は少ないが、中小企業は長く存続する

 

(2)急速に変化する環境

 

・日本の国内市場の収縮、日本社会の高齢化、従業員の確保が困難で終身雇用制度も維持しにくい状態になっていること、経営者の高齢化、下請け企業の割合の低下、グローバル化、技術の進歩など

 

(3)変化に対応するために、どのような企業統治を考えるべきか?

 

・「守り」に相当する監視に関する議論(不祥事を防ぐための監視制度〔内部統制〕)が多いが、より戦略的、長期的な意思決定を行う「攻め」の側面の方が実は重要

・すなわち、企業の構想、過程(意思決定)についてルール化すること(組織的経営)が重要

・取締役会の機能化・正常化がポイント

・大企業より高い業績をあげている一部の中小企業は、そうした組織的経営を持っていることが多い

・取締役会のない中小企業でも、計画や議論を行うための非公式な委員会設置が考えられる

 

⇒ 特定の個人(経営者)が事業環境の複雑かつ急速な変化に対応しにくい時代になっているが(例:海外の貿易や投資を維持・拡大するために必要な情報、人材、組織を持っているか?)、事前計画によって事業のチャンスやリスクをより明確に識別でき、事業拡大や持続的な成長に必要なリスクを取るだけの自信が生まれる

 

(4)海外貿易および投資とそのリスク

 

(5)経営後継者の問題

 

・経営者の高齢化(1995年では47歳が最多で、2015年では66歳)

・若い経営者の方が適切なリスク・テークに積極的

 

(6)企業統治と従業員(およびその他の関係者)の一体性

 

・中小企業の組織的経営は重要であるが、結局最も重要なのは「人」(従業員及び経営者)

・コーポレート・ガバナンス向上を積極的に使う(経営者とほかのステークホルダーの一体性や、従業員にモチベーションを与えること)

(例:情報開示の改善・・・一方的義務ではない情報開示を含め、従業員やその他のステークホルダーのみに開示するようにする)

 

(7)経営者の重要性

 

・企業のキーパーソンは、最終的には経営者

・取締役会が効果的に機能するかどうかは経営者次第

・一人で行う意思決定より、組織的経営構造の中での意思決定の方が、長期的な成功を導くことになる

・中小企業のコーポレート・ガバナンスの最大のポイントは経営者である

 

以上

 

(第2回企業統治セミナー開催報告②へ続く)

 

 

平成29年11月28日 第2回「AIと人事労務セミナー」 開催報告

 

11月28日(火)に弊所主催第2回AIと人事労務セミナー「AI(人工知能)が拓く未来~AIと人事労務~」を開催いたしました。大変有難いことにお申込者は40名を超え、満員御礼となりました。

AIによる社会の変化は今後ますます加速していきます。AIは人の仕事を奪うと言われています。確かにAIは特定の分野において、人よりも正確に素早く仕事をこなすことができます。しかし、人間にしかできないこともまだまだ多くあります。感じること、考えること、思うことは人間にしかできないと小生は考えています。AIによって業務効率化、コスト削減を実現し、人間にしかできないことは人間が担う。そのような「ハイテク」と「ハイタッチ」が融合する社会の実現を小生は研究し続けています。AIに使われる人間ではなく、AIを使う人間となるために、変化する社会で自身ができることを模索していくことが大切だと考えます。

また、小生はハイテクの極みである量子コンピューターについても勉強し始めようと思っております。量子コンピューターはAIをさらに発達させる可能性を秘めています。

これからも皆様のお役に立てるような情報を発信できるよう、AIに関する連載やセミナーを企画していきたいと考えておりますので、ぜひ今後ともご高配の程よろしくお願い申し上げます。

 

2017年12月 高井・岡芹法律事務所 会長弁護士 高井 伸夫

 

【講演趣旨】

AIの発達により社会構造が大きく変化する時代をどう生き抜いていくか考えるきかっけとしていただきたいと考え、2016年4月~6月に「週刊労働新聞」で連載を企画しました。この連載をきかっけに昨年10月に第1回AIと人事労務セミナーを開催し、大変ご好評でしたので、この度第2弾を開催する運びとなりました。今回は企業におけるAI活用についてお詳しいお二人を講師にお招きし、企業で導入されているAIの活用法を中心にお話しいただきました。

 

【講演要旨】

〈第1部〉

講演テーマ:「テクノロジーの進化と中小企業経営」

酒井 悟史 氏(株式会社repca 代表取締役 公認会計士)

 

クラウド、AI、RPA(*1)等のテクノロジーがどのように中小企業経営に影響するか、事例を交えながらお話しいただきました。

・中小企業におけるテクノロジー活用の現実

・テクノロジー活用について大企業とのアプローチの相違点

・テクノロジーを今後どのように捉えていくべきか

 

〈第2部〉

講演テーマ:「人事労務におけるAI活用とFRONTEOの人工知能「KIBIT(キビット)」

武田 秀樹 氏

(株式会社FRONTEO 取締役 最高技術責任者 行動情報科学研究所所長)

 

人事労務におけるAI活用について、具体例を織り交ぜながら下記のポイントについてご紹介いただきました。

・離職防止の取り組み

・生産性向上による残業の抑制

・営業日報を活用したコンプライアンスチェック

・AIの活用に必要な人材の教育

 

以上

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2017年6月14日(水)11:22 長野市にてランタナを撮影
花言葉:「合意、厳格」

 

 

平成29年6月13日 中小企業と企業統治セミナー 開催報告

 


第1 ごあいさつ

 

今年1月~3月、「週刊 労働新聞」において連載された「経営・人事担当者向け 中小の企業統治論(全11回)」を契機に、連載執筆者のうち、エゴンゼンダー株式会社代表取締役社長の佃秀昭氏、中央大学法科大学院教授・弁護士の升田純氏を講師にお招きし、去る6月13日、市ヶ谷法曹ビル(弊所所在ビル)において「中小企業と企業統治セミナー」を開催した。具体的な数値、事例を元にした講演を行って頂き、受講者からは大変好評の声を頂いた。

 

富士ゼロックス、東芝が不正会計問題で生死をさまよっているが、インチキのない、厳格な時代に沿った感覚で今後の経営を考えていかなければ、企業は生き残れない時代になった。(そもそも「不正会計問題」ではなく、正しく「違法請求」というべきである。)

中小企業の経営者からしてみれば、中小企業は企業統治とは縁遠いと思われているかもしれないが、以上のことを念頭に置いて、今回、セミナー受講者にお話を聴いて頂いた。

 

 

第2 講演要旨

 

【第1部 実効的な企業統治の在り方を考える】
(講師:エゴンゼンダー株式会社代表取締役社長 佃秀昭氏)


1.統治実態調査2016と中小企業における課題

 

エゴンゼンダー社が東証一部上場企業380社から取ったアンケートの回答の結果から見えること。380社のうち、500億円未満の売り上げの会社(比較的規模の小さい企業も含まれている。ここでは、便宜的に中小企業と称する)が101社。1兆円以上の企業が57社であったが、売上高500億円未満の規模の企業に着目する。

 

(1)社外取締役の貢献に対する評価

 

中小企業の半数近くが、社外取締役の会社への貢献度に満足していない。中小企業では、社外取締役が法律・会計専門家にやや偏っているきらいがあり、3人に2人は弁護士か公認会計士であるというのが日本の中小企業の現状であるが、それが社外取締役の貢献に対する評価の相対的な低さにつながっている可能性がある。

→ 特に中小企業においては、まず社外取締役の出身・職業の構成について、企業経営経験者を入れるなどし、社外取締役の貢献度を高める方向性の検討をしてみてはどうか。

 

(2)後継者計画等の整備状況

 

企業規模を勘案すれば理解できる水準。指名委員会の設置状況は、売上高1兆円以上の大企業は80%以上が設置済みであるのに対して中小企業は約24%と非常に低い数値だが、これは使える資源が限られている中小企業にとって、運営が大変な負担になるからだと考えられる。

→ 指名委員会の設置は必ずしも必要ではないと考えるが、指名委員会の運営負担の大きさは企業にとって今後も大事な論点であると捉えたい。

そもそも、法律・会計専門家が指名委員である場合、経営者として優れている人を見極める知見があるのかどうか。適格性を備えた指名委員を招聘することの困難さも問題。

 

(3)取締役会評価(取締役会の実効性についての定期的評価)の実施状況

 

自己評価・第三者評価の実施率は、売上高1兆円以上の大企業では94.7%、1000~5000億円の企業は59.7%、500億円未満の中小企業では50.5%

→ 中小企業も、企業規模を勘案すれば積極的に対応していることがうかがえる。もっとも、企業規模が小さければ小さいほど、必要性を感じない経営者も相当にいる可能性がある。

 

2.取締役会の実効性を強化する

 

<中小企業の企業統治を考える>

 

(1)企業統治の目的

 

経営陣を「攻め」と「守り」の両面から規律し、結果的に企業価値の向上に資するような組織運営を行う仕組みを作ること


(2)中小企業の特徴

 

・企業価値に与える、トップの影響が大きい

・経営の意思決定が極めて迅速

・企業規模ゆえ、資源(人的・資金的)の制約がある<

 

※考慮すべき論点として、そもそも中小企業に企業統治改革は必要か?

 

→ 必要ない企業もたくさんあると思われる。(e.g. 優れた経営者によるワンマン経営で企業価値が向上しているケース)

 

<取締役会の責務>・・・企業規模に関わらず当てはまる責務

 

①企業戦略等の「大きな方向性」の決定

②経営幹部のリスクテイクの環境整備

③独立した立場からの実効性の高い監督

 

<取締役会機能の向上に向けた施策>
・・・取締役会の責務を果たすために何をすべきか

 

①取締役会の議案・・・戦略的重要性の高い議案の選定と付議基準の見直し

②取締役会の構成・・・社内・社外バランス見直しと多様性(知見・経験)の確保

③事務局機能・・・専任部署などの新設、優秀人材の配置など

④傘下委員会の機能・・・指名委員会・報酬委員会の設置、委員会体制の強化

⑤取締役会の議事運営・・・議事運営の見直し、議長のファシリテーション(*1)強化等

⑥社外取締役の支援・・・事前説明の充実、社内会議への陪席許可等

⑦開催頻度・時間等・・・開催頻度の減少と1回あたり時間の拡大など

⑧取締役会評価・・・取締役会の課題認識と自己内省・PDCAサイクル(*2)の導入

 

※特に大事なものは①②④

*1 会議の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理したりすることで合意形成や相互理解をサポートすることにより、組織や参加者の活性化を促進させる能力のこと。

*2  Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)を繰り返すことによって、業務を継続的に改善させる手法。


<指名委員会の機能~後継者計画の重要性と難しさ>

 

経営者年齢が上がるほど投資意欲の低下やリスク回避性向が高まり、経営者が交代した企業のほうが利益率が高いということは、中小企業庁のデータからも分かっている。事業承継は極めて重要な問題。

→ しかし、

・経営トップの影響力の強さゆえ、現在のトップが経営権を承継することに対してなかなか踏ん切りがつかないという問題

・人材確保の難しさ

 

経営者とは?

既存秩序にとらわれず、リスク志向である。ビジョンが目標を定める。やりたいことが目標(やらなきゃいけないではなく、やりたいことは何か)。選択肢を狭めるのではなく広げていく。うまくいっている間こそどんどん手を入れていく。人との衝突を恐れない。変化の推進者である。

 

 

【第2部 法律の活用】
(講師:中央大学法科大学院教授・弁護士 升田純氏)


1.企業の経営と資源の活用

 

・企業統治は、法律によって支えられている。また、法律を遵守することが基本となっている。

・企業経営は、知っているかどうか、気が付いているかどうかにかかわらず、法律に関係し、法律が適用される場面が多い。

・経営資源には、資金の調達、原材料の調達、優秀な労働力の確保、信用の形成・向上、取引関係の形成・維持、情報の入手・活用など、有形のものに限らず無形のものもあるが、ここに法律の活用も加えるべき。

・法律の活用は無形の経営資源であり、代価、費用を要しない。

 

2.法律のイメージと実像

 

・法律の中には刑罰等の制裁を定める法律があり、そこに注目が集まりがちだが、事業者に様々な権利、利益、便宜を与える法律も多数存在する。(e.g. 補助金を与える法律)

 

・企業における実際の法律問題の実情として、法律の内容・改正動向への無関心、それ故の法律違反による信用の低下、コンプライアンス違反の指摘を受ける、権利や利益を提供してくれる法律の利用を見逃してしまう、訴訟対策に出遅れる等がある。

→ ただ、企業の中には、法律を積極的に活用し、経営・事業の戦略に活用する所もある。

 

3.法律の活用の基本戦略

 

・法律の内容、改正動向には常に関心をもつ。

・法律の変わり目(改正の前後)は、企業の経営、事業にとってリスクが大きくなるものの、逆に利益を得るということもあるため、注意しておくこと。

・同業者の会合、講演会、セミナー等、あらゆる機会を利用して法律に関する情報を入手する。

→ 特に、法律を所管する各省庁のホームページは情報が満載であり、これを日頃活用することをお勧めする。そして、詳細を正確に理解するためには各省庁への問い合わせ、弁護士への相談をすることが重要。

・企業の経営、事業の場面で法律のことを一度は話題にし、疑問が生じたりした場合には必ず確認する。

 

4.法律の活用と裁判の利用

 

・法律の活用は、最終的には訴訟において勝訴判決を得て、確定しなければ実現しない。

・また、訴訟に巻き込まれることもある。

・常日頃から訴訟対策に留意することも重要。

 

※「論より証拠」

・訴訟には「請求」「主張」「立証」「判断」の4つの手続きがある。

4つの手続きのうち、勝つために一番重要なものは何か?

→ 証拠による立証であり、「論より証拠」の格言

 

証拠の種類は5つ

①本人(会社の場合は代表者)の供述

②証人の供述(証言)

③鑑定人

④文書(インターネット上の電子文書、録音媒体等を含む)

⑤検証物

 

良く利用される証拠は①②④

訴訟対策として、証拠を常日頃から蓄えておくことが必要。

 

以上

 

2017年1月25日(水)14:00より、アルカディア市ヶ谷にて三田証券株式会社 代表取締役社長 三田邦博様をお招きして、「データで読み解くアベノミクス~歴史的失政リスクにどう向き合うべきか」と題してセミナーを開催いたしました。様々なデータをもとに、アベノミクスの功罪について、今後私たちがどうすべきかについて、ご講演いただき、50名の方にご参加いただきました。

講演会の様子

セミナーの概要(項目のみ)を以下にご紹介いたします。

 

テーマ:「データで読み解くアベノミクス~歴史的失政リスクにどう向き合うべきか」

Part1 アベノミクスの功罪~アベノミクスは何も生み出していない?!

  • アベノミクスの概要
  • アベノミクスは始動時に大成功を収めた
  • アベノミクスのその他の実績
  • 空回りを始めるアベノミクス
  • 黒田日銀総裁 異次元緩和の功罪
  • 空回りを始める黒田総裁と日銀
  • 政府はアベノミクスの成果を誇示するが・・・
  • 政府・日銀の努力が生み出したものは・・・
  • 副作用を生む政策―将来のリスク増大
  • 金融緩和は資産インフレを導いているー格差を拡げ、庶民を苦しめる

Part2 問題の本質を考える

  • 日本は戦後最も成功した社会主義国家
  • モノ作り大国ニッポン
  • 日本型資本主義は既に破綻している
  • 日本の生産性は先進国最下位
  • モノ作り大国の幻影
  • 日本人は豊かという幻想―貧困は深刻化

Part3 どのように対処すべきか

「私が10歳の日本人ならただちにこの国を去るでしょう」by Jim Rogers

  • 夢と安心を持てる社会を再構築できるか
  • 未来を担う子供たちへ
  • 語学は最も基礎的能力
  • 日本人の英語力は世界最低水準

 

 

 

以上

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2016年12月10日(土)7:19 中目黒公園にてアゲラタムを撮影
花言葉:「信頼、幸せを得る」

 

 

 

成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第5回(最終回)

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、最終回は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

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■今回、話を伺って、私(鮒谷)が強く感じたのは、

私自身、十数年の長きに渡り、

莫大な量のコンテンツをネット上に発信し続けてきたわけで、

それが「私自身の思索のすべて」とまでは言わないにせよ、

それらをすべて吸い上げ、解析すれば、「私がどのような人物であるか」、

私という存在が、おおよそ理解されてしまう時代が遠からず、

そしておそらくは間違いなく、訪れるであろうということです。

 

■とはいえ、(以下、異論もあるかとは思いますが)

これから時代において、それを恐れて、

一切の情報を発信しないという選択は許されなくなりつつある、

のではないでしょうか。

 

■あるいは、もし、発信しないという選択を取ったとすれば、

「伝えなければ、伝わらない」わけだから、

その分、発信することに対する報いが少なくなるのも仕方ない、と自らを納得させるしかない、

という二律背反状態に置かれることになるのかもしれません。

 

■とはいえ、考えてみるとやはり、

「社会に対して何らかの貢献をする」「仕事上で成果を残す」

ことを心がけようと思ったら、

やっぱり、どうしたって、一切の発信を止めることはできないわけで、

であるならば、やがて、発信してきた情報から解析されるであろう、

「(私の)性格、価値観、思考、態度、姿勢」等々について、

解析されても問題ないように(!?)

今から自らを律し、躾け、陶冶していくしかないのではないか、と思われた次第。

 

■そのようなことは以前より、漠然とは考えておりましたが、

この度の講演を聞いて、漠とした思いが確信に変わりました。

どのみち、鮒谷という人間は近い将来、(もちろん私だけでなく、あなたもそうです)

外面のみならず、内面も含めて丸裸にされるわけだから、

「(永遠の理想であるところの)本物の存在」

になれる日は永久に訪れないとはいえ、目指すべき北極星として、

「本物」を目指し、日夜、精進を重ねていくことが

来るべき将来に向けて、今からできる最適、最善の準備、といえるのかもしれません。

 

■もちろん、私を含め、あなたも、あるいはこの世の全ての人間は、

これからも、そしてこれまでも不完全であり続けるわけであり、

それがAIの発展とともに、白日の下に曝け出されることとなるわけだから、

この大局的な流れの中で、それなりの時間をかけて

「新たな人間観」「新たな倫理観」が構築されていくのでしょう。

 

■だからこそ、(以下は仮説ですが)

どうしたって人間、聖人君子たり得ないわけであり、濁りから逃れることはできませんが、

多少濁っているけれども相対的に許容できる、

あるいは濁りきっていてとても社会的に許容されうる存在ではない、

といったことが見透かされる時代が遠からず訪れるのであるとするならば、

そうした未来が訪れる前提で、

今から「自らを律し、躾け、陶冶する」日々を過ごすことが

(一見、大変なように見えてその実)

「安寧の未来を手に入れる最善の道」なのではないかということを、改めて考えた次第です。

 

■こうした日常が習慣化されたレベルで実現できるようになれば

「仮説が当たっても、当たらなくても、未来の泰平が約束される」ようにも思われます。

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全5回にわたって、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」についてご報告させていただいた。

AIは今こうしている間にもすさまじいスピードで進化している。すべての人間にとって身近でかつ重大な問題であることは間違いない。少しでも読者のAIへの興味関心を喚起できていれば幸いである。

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2016年12月10日(土)7:20 中目黒公園にてゴールデンボーダーを撮影
花言葉:「友情、献身」 

 

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第4回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第4回は、第2部「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~」について、講演要旨と、講師である藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長)のご感想を掲載する。

 

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1.講演要旨

【第二部:㈱リクルートキャリア リクナビネクスト編集長 藤井薫氏】

<新しい時代の幕開け>

今は第四次産業革命。AI で加速している。

・「新しい人事」の幕開け:能力の刷新、仕事の定義、人類のあり方が問われている。

・民多利器、國家滋昬。民多智慧、邪事滋起。(老子の言葉より)

訳:民に利器(=AI)が多く行きわたると、国はますます混乱する。老子の心配が現実になりつつある。

・今こそ民多智慧になるべき。訳:民に知恵多くなるべき。

人事プロフェッショナルこそ、現代の利器(=AI)の可能性と留意点を知らならない。

 

<人事は何故、AIに向き合う必要があるのか?>

・企業を取り巻く3つの変化:

GDP(Global/Diversity/Productivity)、サービス経済化、KKD(勘と経験と度胸) → KDD(Knowledge Discovery in Database)

・人事に要求される新たな力

L人智を超えた多様性対応力、人智を超えた可視化力、人智を超えた意味抽出力

 

<AI ×人事 何ができる?>

・人事のあらゆる領域でAIの利活用が広がっている

人材採用、労働生産性の向上、優秀人材の保持、業績管理・評価、動機付けなど

・グローバルでは既に5割前後の企業が、データで未来予測をしている。

 

<未来の活用例>

・AI×採用

AIが、世界中のWebの海から自社の戦略やタスク、ポートフォリオに合った人材を自動探索したり、景気シミュレーションを活かして、早めに組織構成・配置を変えるように提案する。

・AI×リテンション(維持)

従業員が希望するキャリアプランやプロジェクトアサイン期間、労働時間や日常のコミュニケーションデータから、意欲の低下や体調不良などの異常値がある場合に警告を発し、予防的に仕事やキャリアの見直しを提案する。

 

<人事×AI どう利活用する? 未来の留意点は?>

・Archiveなくして Analyticsなし

・Account (勘定)よりAccountability(説明責任)へ

※AIの限界を示す思考実験

・AI が下記のような提案をしてきた場合、それを実行できるか?

「5 年後、売り上げを、10 倍にする打ち手があります。その答えは、経営陣全員クビ。その理由は説明できません。」

→人事は、「最適解」より「納得解」が大事である。人間の脳を真似る人工知能は説明しづらい。(例:「好き」に理由は無い。)

 

私たち人間は、「最適解<納得解」が必要 。

 

20161109§AIセミナー△1ブログ掲載原稿用_第4回挿入画像.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.講師からの感想

高井先生の構想で始まった『労働新聞社』様の連載「人工知能が拓く未来」にお声がけいただいたご縁で、講演の機会をいただきました。「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか?」随分、遠大な演台でお話しましたが、思いは一つ。AIが駆動する第四次産業革命の前夜の今こそ、「新しい人事」の幕開けであること。能力・仕事・会社の在り方も激変すること。その推進には、人事プロフェッショナルの概念工事が不可欠であること。そのことをお話しました。

可視化→最適化→自動化。AIが突きつける原因と結果の連動システム(因果律)の広範な社会適応は人・組織の新たな可能性を拓く。ただし全て可視化できるかと言われれば否。縁が起こり、臨機応変が生まれるのが社会の実相です。因果の間には縁がある。因果律ではなく因縁果律。その目に見えない「縁」を見つめ、臨機応変する力こそ、AI全盛時代に人事プロフェッショナルの正念場、真骨頂なのだと思います。私自身も、引き続き、機に臨み、変化に応じ、縁を観つめてゆきたいと思います。

(リクルートワークス研究所 兼 リクナビNEXT編集長 藤井 薫)

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※次回(最終回)は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

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2016年11月23日(水)8:40 武道館にてユッカを撮影
花言葉:「勇壮、偉大、颯爽とした」

 

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第3回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第3回は、第1部「センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善」について、講演要旨と講師である青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表)のご感想を掲載するを掲載する。

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1.講演要旨

【第一部:ユカイ工学㈱ 代表 青木俊介氏】

<AIとは何か>

AI=人口知能

弱い人口知能(機械学習、ディープラーニング)←今ブームになっている。

強い人口知能(ヒトと同じ汎用的知能、ココロを持つ)

 

<AIブームの背景>

1.ビッグデータの登場

Google、Facebookなど

2.ディープラーニング

ビッグデータを学習することにより、ヒトより高い精度の画像認識が可能に。

計算機の高速化により実現した。

 

<AIの特徴>

1.ビッグデータが必要

勤怠情報などを学習するとしても、社員数や勤続年数の少ない事業所では精度が落ちる

2.データがあれば学習ができる

センサを使用し、ビッグデータを収集すれば学習が可能になる

 

2.講師からの感想

「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」という、今一番新しく、また注目度の高いテーマにおいて、新聞記事連載と講演の機会をいただき有り難く思います。

連載や講演でも述べさせていただきましたが、現在実用化されているAIは、汎用的な人工知能や人の心を再現するものではなく、ビッグデータと呼ばれる膨大な量のデータを処理して意味のある結果を導き出す技術です。そのため、画像処理、音声認識、翻訳などの、インターネット上のデータを利用できる分野においてAIの応用が先行してきました。そのAIが、今後は人間の行動、性格、感情の予測・分析にも応用が進んでいくのは必然的な流れだと思います。現在、人材のマッチング、退職者の予測などを目的としたサービスが数多く出始めており、その有効性が注目されています。それに加え、従業員にセンサを装着し、行動・生体データを収集すると、今まで数値では見えてこなかった、ストレス・モチベーションといった従業員の心理も数値化できることがわかってきています。

上記のような、新しいAIの応用が矢継ぎ早に開発されつつある状況で、弊社でもセンサを使った人の行動のモデル化の取り組みを進めているところです。弊社の事例を中心にいくつかの事例を紹介させていただきましたが、皆さまの業務においてもAIの応用に取り組むきっかけになれば幸いに思います。

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※次回は、第2部「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~」について、講演要旨と、講師である藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長)のご感想を掲載する。

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2016年11月27日(日)8:12 千代田区麹町6にてプリムラを撮影
花言葉:「青春の恋」

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第2回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第2回は当日の私の開催挨拶文を一部抜粋して掲載する。

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「ご挨拶に代えて ~AIの限界 人間の素晴らしさ~」(抜粋)

 

2 AIと人間の違い、人間がAIになお優ることとは

AIが凄まじい勢いで発達する今、AIと人間の違い、そして、AIがどれだけ発達してもなお人間に劣ることが何かを見極めることが、これからの時代を生き抜いていく上で最も重要になります。昨今テレビや新聞などをにぎわしている人間の脳に匹敵する知能、場合によっては人間の脳を凌駕する知能を備えたAIと、人間との決定的な違いとはなんでしょうか。

自然界において生物は生きるか死ぬかの生存競争の中で生きています。しかし人間は頭を使い、脳を発達させ、人として、人類として、保全されるようになったため、生存競争に身を置くことがなくなってしまいました。

一方、なお生存競争の只中にある動物一般は、絶えず生きるか死ぬか、日々おびえながら生活しています。雪崩が起きたときに動物の死骸がないのは、彼らに雪崩を事前に察知する能力が備わっているからです。

人間は文明の力によって自らの身を守れるようになったことと引き換えに、こうした危険予知能力を鈍化させてしまいましたが、たとえば「胸騒ぎがする」、「虫の知らせ」といったものはわずかに残された危険予知能力による反応でしょう。実体験に即して言えば、裁判で胸騒ぎがするときは、敗訴するという予感がしますから、そうした時には一層裁判に勝ち抜く努力をしたものです。

すなわち、生物には、生まれながらの野性的な本能から、第六感ともいうべき危険予知能力が備わっているのです。それに引き換え、生物ではないAIにはこうした本能に基づく能力が全くありません。

 

人間の機械に対する決定的優位は「死」です。人間が有する深い情緒はすべて、いずれ朽ち果てるという絶対的宿命に起因しています。いつか死ぬという運命にあるからこそ、生きている中でより多くのことを感じ取り、思いを馳せることができるのです。永遠に生き長らえるのであれば、私たちのあらゆる情緒は極めて希薄になるか、あるいは消失するでしょう。人間には「死」があるからこそ恐怖がもたらされ、生きる喜びを感じ、幸福感を得るのです。孤独になれば寂しさに浸り、身内や親しい人を亡くせば哀しみを感じます。「死」という概念と無縁であるAIが果たしてこうした情緒を持ちえるでしょうか。こうした情緒に由来する小説や音楽を生み出すことができるでしょうか。将来AIが完全に自律的に発想し、物事を創造できるようになったとしても、肉体を持たず、生命体ではないという点は、覆しようがありません。その創造力にはおのずと限界があるように感じております。

 

特定の作業に対するAIの能力は人間を簡単に越えていきますから、人間固有の能力を伸ばさないと、なんでもAIに依存するようになってしまいます。人間がひらめくためのヒントとして、また、生産性や効率を向上させるためのツールとして、AIを最大限に利用し、最終的な判断や決断は、「死」という限界のある命をもった、情緒のある人間が、時には第六感を活用し、自信をもって下してゆくことが大切です。

 

3 AIに使われず、AIを使う立場になる

AIに代替させることで、今ある人事の業務の多くは不要になります。たとえばAIは、人間が作業するよりも早く、正確に、客観的に人事選考や評価の基準を導き出すでしょう。しかし、そうして導き出された基準を運用するのは私たち人間です。最終的な判断は、データ以外の印象や直感も加味して行われます。企業にはそれぞれ文化があり、人材との相性がありますが、企業も時代とともに変化します。データが教えてくれるのは、過去あるいは現在において最適な人材に過ぎません。

自らの仕事、ひいては人事部の仕事がなくなってしまう、とAIを恐れたり毛嫌いしたりするのではなく、もっと柔軟に技術的な進化を受け入れて、より精度が高く、効率的な方法に目を向けるべきです。AIを使えるところは使い、生産性や利益を最大化し、最終的な判断は人間が担えばよいのです。

AIの発達によって大規模な失業が生じたり、人間力や社会力が衰退したりするのではないかという懸念の声もありますが、そうとは言えません。技術の進歩で社会構造は大きく変化し、社会状況も現在とは変わる可能性が高いわけですから、従来の知識にこだわらず、様々な可能性を視野に入れた広い議論が必要でしょう。AIに頼ること、人間がやるべきこと、これからの時代をどう生き抜いていくかを考えるきっかけとしていただければ幸いです。

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※次回は、第1部「センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善」について、講演要旨と、講師である青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表)のご感想を掲載する。

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2016年11月12日(土)7:29 目黒区青葉台3にて菊を撮影
花言葉:「破れた恋」

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第1回

 

1.はじめに

昨今テレビや新聞を毎日賑わせている「人工知能(AI)」。人工知能が私たちの生活に及ぼす影響は甚大であり、今まさに大きな注目点です。その進化の速度は凄まじく、未来の話と思っていては取り残されてしまう。

より多くの方々にこの問題を身近に感じ、また考えていただく機会となることを願い、今年4月~6月、「週刊 労働新聞」において連載「人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~(全12回)」を企画した。僭越ながら私は最終回を担当させていただき、「AIの発展に備える」ことの重要性を多少なりとも啓蒙させていただいたつもりである。

 

さて、この連載は私を含め5名で執筆したのだが、このうち、ユカイ工学株式会社 代表 青木俊介氏と、株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長 藤井薫氏の2名を講師にお招きし、去る10月12日に、連合会館(千代田区)において、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」を開催した。企業におけるAIの活用状況や人間とAIのこれからの付き合い方についてお話しいただき、大盛況のうちに幕を閉じた。

当日の来場者数は80名の満員御礼となり、ありがたくも定員超過のためご来場をお断りする方が生じる事態となった。開催後の参加者アンケートには、次回の開催を望まれる声が少なくなく、世間のAIへの注目度が高まっていることの証左であろう。

これからますますAIに関する議論は加熱し、いかなる企業・個人においても大なり小なり影響を受けざるを得ない。この問題について少しでも多くの方にお考えいただくべく、私は今後も鋭意活動してゆく所存である。その一つとして、このブログで、今回のセミナーの概要を、講師の方のご感想を含めご紹介していく予定である。ご一読いただき、AIへの関心を深めていただく機会となれば幸いである。

高井・岡芹法律事務所 会長弁護士   高井 伸夫

 


2.講演概要

◎第1部 センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善

(講師:青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表))

センサを活用して私たちの労働環境からビッグデータを作り出し、AIを活用して職場環境改善に役立てるサービスが始まっている。各企業の取り組み事例をご紹介いただきながら、今後AIが職場環境改善にどう利用されていくかについて解説いただいた。

 

【主な内容】

●センサを活用した労働環境計測の事例

●デバイスの例

●AIによる分析を活用した職場環境改善事例

●人事分野におけるセンサデータを活用した最新のサービス内容の紹介 など

 

◎第2部 今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~

(講師:藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長))

今なぜ、人事がAIに向き合う必要があるのか?変化のキーワード、利活用の方向性、活用に向けた2つの壁、人間がやるべきことをベースにお話しいただいた。

人智を超える新たな力であるAIが、どう人事や企業組織を変えるのか?講師が人事プロフェッショナルやAIの先端研究者の方々との対話の中から掴んだ視座から「AI×人事が拓く未来」について語っていただいた。

 

【主な内容】

●変化のキーワードからみる

1.不可逆な経営環境GDP

2.サービス経済化

3.KKDからKDDへ

●人事における利活用の方向性

●2つのAの壁

1.A〇〇〇〇なくしてA〇〇〇〇なし

2.A〇〇〇〇よりA〇〇〇〇

●人間がやるべきこと

 

※次回は、セミナー当日の私からのご挨拶をご紹介し、AIと人間の違い、人間がAIより優れていることについて考える。

 

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内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

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