<イッピン> オーダーメイドハンドバッグ
「ペレッテリア(pelleteria)」-東京都豊島区雑司ヶ谷
「ペレッテリア」はイタリア語で「革屋さん」の意
「ペレッテリア」を知って5年ほどになる。店主の圓山省吾氏の手になる、オーダーメイドハンドバッグの店だ。雑司が谷に、白と青を基調にした瀟洒な佇まいである。
きっかけは、事務所参与の亀梨伸夫氏が手にしていたバッグだった。10年来の愛用品だというそれは、鮮やかな色遣いながら端正で、それだけで成立した世界感を持っていた。革の風合いも年を経て実に素敵、何も聞かずにおくのはもったいないと瞬時に感じた。
店主の圓山氏は、もの作りを心から愛する方だ。朴訥として誠実、話をしてすっかりファンになった。
「オーダーされるバッグにはそれぞれストーリーがある。そこがいちばん大切なんです。そのお客様の思いを汲み取り、喜んで頂けることだけ、それだけを考えてイメージをいっぱいに膨らませデザインしています」とおっしゃる。もちろん、好みや使い勝手に資する仕掛けにも細やかに応えてくれる。
実は、亀梨氏の話を聞いて、孫娘にプレゼントしようと訪問したのが最初、以来、小生も仕事用のバッグを作っていただき、今や体の一部かのような風情で、いつも側にある。
「物理的にメンテナンスをしていても、革の風合いは持つ人様々。革には、その人の生きざまがそのまま現れるんです」とは、蓋し名言である。
昨年暮れ、久しぶりに亀梨氏とともにお店にうかがった。変わらない笑顔であたたかく出迎えてくださった圓山さんに、今の夢を聞いた。即座に、「この仕事を死ぬまで続けることです。他に何もないんです」と答えられた。圓山さんのお人柄がそのまま映された言葉だ、と思った。
過去に、「才能とは何か」をデザインの師匠に尋ねたところ、「難しいことを聞くなあ、でも、その仕事を最後までやりとげたら、それが才能があったっていうことかな。」との言を聞いて、思い至ったという。
いつも真摯に「人とデザイン」に向き合い、寄り添う。なるほど、亀梨氏のように「圓山さんに作ってもらったもの以外、持たなくなった」「圓山さんだから、作ってもらいたい」という人がきっと多いはずだと得心した。
今は、それ以上できないとおっしゃる年間100件前後のオーダーを受け、イタリアからの厳選した革を用いて制作されているという。店の奥、まさに「職人の工房」といった風情の空間に、色とりどりの革や糸、工具が整理整頓されており、そこを見るだけでも作り手の心持ちがうかがわれ、生み出されるものへの期待感が高まる。リピーターはもちろん、遠くは山口や大阪、愛知などからも訪れるファンを持つ氏だが、「師匠にはまだまだ及びません」といたって謙虚、そんな氏のますますのご活躍を願い、微力ながら、氏の夢の後押しができたら幸せに思っている。
中学生の職業訓練がきっかけとなって始めたというワークショップ、居酒屋ならぬ「居革屋」にも老若男女が訪れ、目をきらきらさせてもの作りを楽しんでいると、実にうれしそうに話してくださった。
イッピンを生み出してきた氏の手から、またどんな創造が生まれていくのか、楽しみでならない。
【ペレッテリア】 http://pelle-teria.com/
圓山氏と。趣味も広くお持ちで、様々な経験値に裏付けされた魅力的なデザイン
これだ、というものは目覚めの時に湧いてくることが多いそうだ
こんなカード入れも。
「普段から20~30色の側を用意しています」
奥に作業場が見える。ここから「イッピン」が生み出されていく
「居革屋」での制作品
過去の作品はすべてファイルしてある。「これ、以前娘が作っていただいたものです」と亀梨氏
亀梨氏が小脇に抱えているのが、開店当初に作った愛用のセカンドバッグ、16年もの。
「使い込むほどに革の表情が変わっておもしろい」
8歳の誕生日、孫娘にプレゼントしたバッグ。
「明るいのがいいな」とオーダーした。
圓山さんが小生の想いに寄り添って作ってくださった、
大切なもの
※ペレッテリアの圓山様には、取材等々お力添えをいただきました。ありがとうございました。