引き続き若手中国人の米留学生による米国所感を連載いたします。

 

第5回 アメリカのエンターテインメント
~Marvel Japan Market~

 

 派手な服装に身を纏ったスーパーヒーローが活躍し、世界を救う。そんなシナリオのいわゆる「アメコミ映画」は世界に浸透しつつある。ディズニーが所有するマーベルスタジオが制作するマーベル映画は現在20作品以上も上映され、2019年に上映された「アベンジャーズ/エンドゲーム」は「アバター」や「タイタニック」といった名作を抜き、興行収入歴代一位となっている。筆者がアメリカにいた頃、マーベル映画が公開される日は町中が浮き立つ空気になり、映画館では拍手喝采が起こるほどの一大イベントだった。

 しかし、「アベンジャーズ/エンドゲーム」が公開された2019年に、世界中で興行収入一位がマーベル映画に塗りつくされていた中、日本では名探偵コナンの映画が首位に立っていたことで注目を浴びていた。文化の近い隣国の中国や韓国でもメガヒットを出し続けるマーベルスタジオはなぜこうも日本の特殊すぎる市場で他国に比例するヒット作品を出せないのか。

 一つ理由として考えられるのが主人公の年齢だ。日本は漫画、アニメ、映画などのエンタメ業界でやたらと若い主人公を採用する。対してアメリカではハリウッド映画をはじめ、ほとんどの主人公が中年だ。ここには根本的な、成長に対する文化的な考え方の違いが存在する。日本では30歳を超えたら安定した定職につくことが昔から一般的、あるいは理想的とされているため、安定した将来のことよりも自由を謳歌できた10代20代を見ることを好む傾向にある。一方、個人主義の強い欧米では大人になり、親元を離れて独立することで自由を手に入れられると考える傾向にあるため、中年のスーパーヒーローは皆が将来なりたい理想像となっている。

 この理論からすると、青年のピーターパーカーを主人公とした「スパイダーマン」シリーズが日本でもヒット作になったのにも納得がいく。現在リブートされたスパイダーマン作品では主人公が高校生となっており、日本で最も人気なアメコミ映画の一つとなっている。

 メディアやコンテンツを他国に輸出し、相手国の文化を「アメリカナイズ」する手から免れ続ける日本の市場を誇らしいと称揚する声もしばしあるが、私は将来を希望的に見る文化と過去を希望的に捉える文化では生き方や幸福度に大きな違いが生じると危惧している。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第14回】信用社会から契約社会へ

~契約書の本質は権利と義務の限界を明確にすること~(1994年10月26日)

 

 国に対する信頼、企業に対する信頼がなくなった。これから大切になるのは「契約」、信用できない社会になると契約社会になるということを念頭に置かなければいけない 。

 契約書にハンコを押すときは、慎重の上にも慎重を期さないといけない。どんなに忙しくても社長自ら声を出して読むこと。本文だけでなく隅々まで読みあげる。そして、再度、弁護士なり会計士なり第三者の専門家と一緒に読む。違法か適法か、だけではない。経営者は損得という価値基準も加えて見ないといけない。これが非常に大切だ。

 契約書についての日本の法学者の話は曖昧模糊としているが、法律書によると「契約の本質は権利と義務を確定すること」とある。単に話し合ったことを書くのは合意書でも覚書でも契約書でもない。自分がやらなければならないことと相手にやらせること、権利と義務をきちんと書くのが契約書である。

 もっと突きつめて言うと、請求できる限界と、やらなければならない義務の限界を、明確にすることである。即ち「権利の最大化と義務の極小化」を意識することである。

 日本の契約書は、そういうギリギリの判断がないまま、「お互いにうまくいかなかったら、信義誠実の原則にもとづいて協議して決めましょう」とわけのわからないことが書いてある。それではダメだ。これが第1点。

 第2は所有権概念。所有権ということを絶えず意識すること。モノ、金、人、そしてソフトについて、誰が所有権を持つのか、誰が支配権を持つのかを意識して契約することだ。支配権をもってコントロールするとなれば責任も負わないといけない。

 気のいい会社はお金ばかり出して所有権は1つも増えない、支配権は何もない、という例が多い。お金ばかり出すのではない。その見返りに何が確保できるかを、契約時にきちっと抑えることが大切である。

 

 

 

 

「中国の最新事情」
第2回 新型のコロナウイルスについて

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 本来、今回は中国の春節に纏わる話を書こうと思っていましたが、不幸にも新型のコロナウイルスが予想外に中国国内に猛威を振るっているので、急遽話を変えて、新型のコロナウイルスについて、被災地にいる一中国人の視点から、現在の状況を記録する事にしました。

 まず、最新情報:1月29日24時までに中国衛建委(中华人民共和国国家卫生健康委员会)は、新たに38人が死亡したと発表しました。中国国内の死者は、これで合わせて170人となりました。
 と同時に、当局は、新型のコロナウイルスによる肺炎の患者が、29日24時までに、新たに1737人増え、7711人になったと発表しました。その他、感染の疑いのある人の数は4148人が増え、12167人と発表しました。(日本では11例)

 単なる数字だけでは、読者の皆様にはその重大性がわからないかもしれませんが、一つの例を上げると、17年前、2002年から2003年の間、半年以上にも渡って、東南アジアに恐怖を与えたとも言えるあの「SARS」も、発見から最終的な撲滅まで中国(香港、マカオーを含め)の感染者は全部で7082人しかいませんでした。
 つまり、わかず2ヶ月(2019年12月発見)の間に、今回の新型のコロナウイルスの規模、感染者、感染の疑いのある者、死亡者などの現状が既にSARSを全面的に超えたということです。しかも、その数が毎日増加し、減少する気配は見当たりません。

 今回の事件について、その発端や拡散の理由などに関して、今まで様々な説が挙げられましたが、人災だという声もありました。しかし、その各説の中に確たる証拠がなく、推測の領域を出ていないものが多いため、正式な発表がない今、私はここで特に言及しませんが、実際発生し、私が今体験している中国政府の対応策について、書きます。

 一つ、今回の春節にあたって、中国人にとって、一年に中で最も外出が頻繁とされる時期にも関わらず、中国政府が、全国を対象として、春節期間中外出を控え、自家隔離するようにという命令が出されました。今日までの一週間、このように篭って過ごす春節は人生初です。(政府命令により、まだ自家隔離中)
 二つ、最も深刻な湖北省武漢市がこれから10日以内に、二つの病院を建設し、竣工させると発表しました。“10日以内に、病院二つを”、豊臣秀吉の一夜城には敵わないが、現代病院建設史上としては、異例、異常とも言えるスピードでありましょう。
 これこそ、中国政府の決心、執行力の現れであります。このような覚悟があれば、今回我々も必ず、迅速に病状に勝つでしょう。 武漢、加油! 中国、加油!

 最後に、この場を借りて、九州の大分市が武漢に救援物資を援助することに対して、感謝いたします。
 大分市、ありがとう、日本、ありがとう。

 

 

第1回 『朝10時までに仕事は片づける』(1)
モーニング・マネジメントのすすめ

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生には、7冊の書籍をかんき出版から発行させていただきました。
 そのなかにはベストセラーになり、それがさらに図解のムック本になったものや、新書スタイルのポケット本になったものまであり、発行部数は累計41.1万部になっています。
 またこれらの書籍は、他の出版社から文庫本や新書になり、さらに多くの方に読まれていることになるでしょう。

 これらの本をもとに【高井語録】を集めてみます。

 『朝10時までに仕事は片づける』は、2002年12月に先生がかんき出版で最初に書かれた本で、多くのビジネスパーソンから支持されベストセラーになりました。
 この本の企画は、必然的に生まれたものとも言えます。それは私が高井先生の早朝出勤を知り、素直に強い興味をしめしたからです。なぜ朝6時に出勤するようになったのか? 時間の使い方をどう変えたのか? その結果、どのようなメリットがあったのか? などを書いてもらおうと……。

 著者のことばや文章を引用しながら進めていきます。

 

  • 優秀な人と同じ行動特性を備えた人は、成果を上げる確率が高い  

 高井先生も、30歳くらいまでは夜型人間だったという。ところがある人との出会いで生活態度を一変させることになります。
 「土光敏夫さんに出会ってショックを受けた。土光さんは、業績が悪化した東芝の再建を依頼され社長に就任、一年で再建に成功し、その後、経団連の会長などをされた人です。朝7時20分、土光さんの事務所へ書類をもらいに訪問したら、いつも朝6時半には出勤しているとのことだった。そんな刺激を受け、土光さんより若い自分は朝6時ころには事務所に出るようにした。その後も、多くの経営者・経営幹部の方と接してきて、学んだことがある。それは一流といわれ実績を上げている人ほど早く出社して、朝10時までには一仕事や大仕事を終わらせているということです」

 

  • 仕事の生産性と人間らしい生き方を両立させるために、朝を有効活用する

 「ビジネスパーソンにとって重要なことは、いかに上手に時間を管理するか、ムダな時間を整理するか、ということです。同じ時間でも、私がとくに注目しているのは、朝の時間です。わたしはこの概念を、【モーニング・マネジメント】と呼んで、親しいビジネスパーソンや仲間たちと実践しています。つまり、長年の悪しきビジネススタイルを打破し、新しいビジネス&ライフスタイルを確立するーーを提唱しているのです」

 

  • 普段からしたいと思っていることはスキマ時間に、「いますぐ」を心がける

 「ビジネスパーソンにとって、美しいものを観ることは右脳にとっても有効です。美術鑑賞などは、暇ができたらーーと考えていたらいつまで経ってもできないことは当たり前。商談などのスケジュールを決めたとき、訪問先の途中に美術館などがあれば、ちょっと立ち寄ることをお勧めします。私の見方は独特で、まず部屋の中央に立ってぐるりと見回す。印象に残った絵を1つだけ探し鑑賞する。その基準は、この部屋のなかにあるどれか1点、あなたにあげると言われたら、どの絵をもらおうとするかな? その絵が決まったら、近づいてじっくり見る。同じことを各部屋で繰り返して出てくる。これだったら15分もあれば見終わる。これを繰り返しているうちに鑑賞眼が養われます。この場合も留意したいことは、所要時間です」

 

  • 時間は先回りして待ち伏せする必要がある

 「人を待たせて急いでいるときの時間は早く感じ、逆に、人を待っているときの時間は遅く感じる。ここに時間の秘密があり、時間の使い方のコツがある。つまり、時間は平等ではなく、追われると時間を奪われる。待ち伏せするとは、全体のなかから、今という時間を考えることです。新幹線で大阪へ行くとして車内での2時間40分にできることを実行するとき、意識はすでに2時間40分先まで到達しており、そこから逆算をして何かをしています。これが待ち伏せした使い方です。一流人物や成功者たちは、こういう意識で時間を有効有益にし、時間に追われることがなくなります」

 

  • 「すぐやらない」「先送り」「引き伸ばし」を無くす

「この原因は3つあります。

 ①自分の置かれている状況に危機意識がない。怠け者である
  やるべき仕事は、すぐしなければ変化とスピードの時代には致命傷になりかねない

 ②優先順位(プライオリティ)がつけられない
  自分の目的が明確になっていないので、最初にすべきことが見えていない

 ③判断基準が作れない。もっといい方法があるかもしれないと迷ってしまう
  私が選択肢を決める際の参考にするのが、正か邪・和か戦・勝か敗・損か得です

 これでも悩む人は、原点にもどること。原点とは幼少のころ、親によく言われた『人様に迷惑かけるんじゃないよ』でもいいし、『自分のやりたいことをやりなさい』でもいい。企業であれば『お客様の満足を第一に考える』でもいい。その一点を基準にして考えると、悩んでいたことがすーっと見えてくる」

 

 本書が出版されてから10年後の2013年10月、伊藤忠商事㈱が「朝型勤務」制度を導入しました。20時以降の残業を無くし、朝5時からの出社を認め、夜の割増残業手当と同じ率で早朝手当を支給。8時前に始業した人には軽い朝食を用意して応援することを実施。それでもトータルの経費は削減され、今は約半数の社員が朝型勤務になっているという。結果、会議は夕方がなくなり朝早くの時間に代わったそうです。

 さらに「朝型勤務」の導入のほかに、「110運動」を徹底した。これは「夜の会食や飲み会は、
1次会だけで10時までに終わる」という改革で、これにより夜遅くまで飲むという習慣がかなり減少したそうです。

 その結果、「朝型勤務のほうが仕事の効率が上がる」「疲労が蓄積されない」「短時間で集中して仕事ができるようになった」「夜早く帰ることで、家族との時間やビデオを見る時間が持て、リフレッシュにもつながる」と実感する社員が増えているといいます。

 もちろん朝型勤務の効果だけではないだろうが、下記の数字が示すように、伊藤忠の業績も極めて順調に成長している。株価や従業員一人当たり経常利益にも反映しています。

 

  伊藤忠 三菱商事 三井物産 丸紅
株価  2011年12月30日(円) 782.0  2000.0  1250.0 469.0
   ※2013年12月30日(円) 1299.0 1900.0 1465.0  756.0
    2019年12月30日(円) 2534.5 2900.0  1950.0  810.0

    2011年対比(%)  324% 145% 156% 172%
従業員1人当たりの経常利益(万円) 7166 8000 3197 3685

 

(※伊藤忠が「朝型勤務」を始めた年)

 

 まず従業員が健康的になり笑顔になり、クリアなクリエイティブな頭で働くことで、生産性を上げ、顧客にも会社にも、三方よしの結果を生むことの一因になっていると考えられます。
 個人でも企業単位でも、「朝型勤務」がいろいろな面で有効なことを示している例といえます。会社も施策面でバックアップすることが求められる時代になってきたのでしょう。

 

                                             次回は2月28日(金)に掲載いたします。     

 

「明るい高齢者雇用」

第10回 解雇に恐怖感も―アメリカ 難しい高齢再就職―

(「週刊 労働新聞」第2156号・1997年6月9日掲載)

 

 『20年程前までは、現役時代の70~75%の収入を死ぬまで退職金として支給するとう退職年金制度が多くの大企業にありましたが、現在はそのような退職金制度を維持している企業はほとんどありません。ちなみに高齢者は、個人の貯金、株の配当、ソーシャルセキュリティーという税金の内から積み立てた年金の3本立てで生活しています。

 しかし、これらの収入よりシリコンバレーのインフレーションが高いので、現役時代の生活ができなくなり、高齢者は家を売り、アリゾナやフロリダなどの物価の安い州、または税金が安い州へ移住します。例えば50万ドル位のシリコンバレーの家は、アリゾナ州では8万ドル位で購入出来ます。約6分の1で家を購入出来るわけです。中流階級で技術的バックグラウンドの無い人(もともと文科系の人でしょうが)は、年と共に生活を維持することが苦しくなってくると思います。この様な人達が、年をとってシリコンバレー時代の生活を維持するために物価の高いカリフォルニアから物価の安い他州に移り、シリコンバレー時代同様の生活を維持するわけです』(前回からの続き)。

 高齢者雇用の実像に迫るとすれば、その第一は、高齢者子用の場が少ないと共に、高齢者雇用における賃金が極めて低いという事実が挙げられる。その結果として、高物価の所では高齢者は生活出来なくなるということである。小生も8年前にアリゾナのツーソンに赴いたことがある。そこでは真に物価が安く600万~700万円でゴルフ場に面した一戸建ての家が買えたが、今でも多分そうであろう。生活コストの安い土地へ移住することにより生活をエンジョイすることが重要であるが、日本においては、そのような地域があるのかすらも疑問があるところである。

 『アメリカには、終身雇用というものはありません。歳をとっていきますと、いつ解雇されるかということが日々の生活の中で、恐怖としてあるようです。企業も、高齢者が多くなってくると、給料の高い高齢者を対象に、早期退職を薦めてきます。ゴールデン・アンブレラといってかなり良い条件で会社を辞めてもらうプランを作ります。45歳位の人は、まだ、次の仕事を見つけるチャンスがあるので早期退職をしますが、60歳近くなりますと、次の仕事を見つけるチャンスは難しいので、“辞めさせられる”まで会社に残ります。

 シリコンバレーの環境の中で、高齢者が仕事を見つけられる確率は非常に低いと思われます。シニアシチズン・エンプロイメント・センターという就職斡旋機関で仕事を斡旋してもらった場合でも、時間給が5~6ドル(日本円で600~700円)位の仕事しか無いようです。もともとアメリカは年寄りを尊ぶというカルチャーはありません』。

 アメリカでは高齢者も自立を迫られるが、それは即ち家族の崩壊を意味しているといえる。日本の社会もその様相を呈し始めているが、果たしてそれで良いのか議論されよう。高齢者が増加する一方で自立できる基盤、即ち雇用の場がないとすれば、改めて家族主義の復活が社会秩序の安定を確保する意味から要請されてくることになろう。

 

 

引き続き若手中国人の米留学生による米国所感を連載いたします。

 

第4回 アメリカの音楽
~90年代ヒップホップ文化とトミーヒルフィガー~

 

 米国の音楽産業は黒人と白人、メインストリームとサブカルチャー、そして自由と弾圧など摩擦と対立によって築き上げられたものであることは言うまでもないだろう。白人のエリート社会の象徴だったマンハッタンから押し出され、その郊外にあるハーレムという小さな地域でブルースやジャズ、そしてヒップホップの人気に火が付いたのは米音楽史でも有名な話だ。今回はその黒人音楽ブーム中に起きたアパレル会社のトミーヒルフィガー社への影響について書いていこうと思う。

 90年代のアメリカは英国出身のプロテスタントが経済界や政界でのエリート層を支配していた。ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントの頭文字をとって、WASPという略称で呼ばれていた彼らは、集団内での結婚や縁故採用を推奨していたことから長年米国の支配層に君臨し続けていた。裕福な家庭で育った白人の若者は「プレパラトリー・スクール」というお金持ちの子息が通う名門私立校に通い、ラルフローレンやトミーヒルフィガーのような上質な服を着崩すスタイルが流行っていた。このスタイルはプレッピースタイルと呼ばれ、貧困層の子供たちからは羨望の目で見られていた。

 そんな社会的背景の一方で、都市部の若者の間ではヒップホップブームに火が付いていた。Jay-ZやSnoop Doggなど、ヒップホップ業界からは白人の子供からも親しまれるスターが排出されていた。この時彼らは音楽のみにメッセージ性を持たせるだけでなく、着る服からでも何かメッセージを伝えられないかと模索していた。そして採用されたのが前述のプレッピースタイルであり、人気のラッパー達は凝り固まったブランドや見た目に対するイメージを崩すために、好んでトミーヒルフィガーの服を着てメディアへの露出を増やしていた。黒人のラッパーが富裕層の象徴ともいえる衣服を身に纏った姿は多くの者にとって刺激的だった。貧困層出身のラッパーでも裕福になれるアメリカンドリームを体現していた彼らは、多くの貧しい若者に夢を与え、ブランドの名が爆発的に広まっていく中、トミーヒルフィガーの売上は増加した。当然、白人エリート層からは批判的な声が多かったが、トミーヒルフィガーはブランドのルーツを捨て、ブームに乗ることを決意した。その後、トミーヒルフィガーは大胆に自社の広告に黒人のラッパーを起用した。結果として、90年代にトミーヒルフィガーは国際的にも知られるブランドとなり、ヒップホップブームのおかげでグローバルに展開する大企業となった。

 

注:トミーヒルフィガー…ニューヨーク州出身のファッションデザイナー、トミー・ヒルフィガーが興したファッションブランド。

注:Jay-Z…ニューヨーク州ブルックリン出身のラッパー・プロデューサー・起業家。グラミー賞の常連で、最も偉大なラッパーの一人と評される。妻は歌手のbeyonce。代表曲「Empire State of Mind」は米ビルボードのシングルチャートで5週連続1位となるなど、世界的なヒットを記録した。

注:Snoop Dogg…カリフォルニア州出身のラッパー。これまで発売した楽曲のセールスは全世界で3500万枚にも上る。俳優としても活動しており、数多くの映画に出演している。

 

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第13回】役員の退任規定には「社長が推薦し」の一項を入れよ(1994年9月28日)

 

 人事権は社長の特権である。新任役員の選任についても、前項の「神棚意思決定」で指摘したように、他人の意見は聞いてもそれに左右されないことが大切である。最終決定はあくまでも社長が独自に決めたというプロセスを演出することが非常に重要。

 さて、社会も企業も実力主義が色濃く反映するようになったが故に、協調性、連帯感、助け合いが大切だ。企業は組織社会だからである。そこで役員の選任にあたっては、能力だけでなく、ことのほか人間性を尊ぶ心構えが必要である。正確的に偏った人物を選んではならない。実力主義が言われるだけに、能力については多くを語られているが、それだけに人間性、とくに社長との信頼関係が問われなければならない。

 逆に言えば、社長自ら全役員と信任関係に立てるよう努力研鑽することが大切だ。「社長はやり手だが人間的にはイヤ味だ」ではいけない。

 役員の選任にあたって社長の支配力を表現するポイントは、役員に就任するには「社長が推薦し、株主総会にはかり、その議決を得なければならない」という項目を役員規定に明文化すること。「社長が推薦し」は商法の規定にはないが、役員規定として入れる。

 そして新任役員を発表するときは、まず神棚に祈って、次に「中には勇退していただく方もあるが、しかしこれは、わが社の展望を見据えた末の経営責任者としての私の決断であるので、ご了承いただきたい」と前置きして進めることが大切である。

 

 

 

今回より、高井・岡芹法律事務所 上海代表処 顧問・中国律師である沈佳歓先生に、中国の最新諸事情についてご寄稿いただきます。連載は1年間の予定です。

 

「中国の最新諸事情」
第1回 秦の始皇帝と香港民主化デモ

 

 最近、出版関連の顧客からある漫画を紹介された。中国の歴史を描いた傑作で、是非読んでみて欲しいと言われた。そう、原泰久による日本の漫画作品“キングダム”であった。秦の始皇帝が難局を乗り切っていき、古代中国を統一し、初の帝国を建設する成長物語である。

 実際、読んでみたところ、実に良くできた作品である。しかし、同時になんだか違和感もある。秦の始皇帝といえば、私の世代から見れば、どちらかと言うと暴君・独裁者的なイメージがあり、鮮血にまみれた印象が圧倒的に強かったが、この漫画の中では人間味溢れたリーダーで皆の憧れといった存在となっている。もちろん、漫画だからといって馬鹿にしてはならない。私は史記など文献を調べ、始皇帝が暴君とされる根源を探し出した。

 その発端には“焚书坑儒(ふんしょこうじゅ)”という歴史事件があった。簡単に言えば、天下統一をし、至上の権利を手に入れた始皇帝の周りに、媚びる詐欺師とヤブ医者が群れてきた。当初は看過ごされた詐欺や騙しはどんどんエスカレートし、ついに、始皇帝の逆燐に触れ、彼らは処分され、詐欺に使われた書籍も焼かれたという事件であった。この出来事が後世の悪意が満ちた人達により誇張され、始皇帝が天下全ての書籍を焼く、自分に反対する学者を皆殺しにしたという話にまで歪曲されたのである。そのため、後世に暴君と残虐者のレッテルが貼られることになってしまった。なんという悲しい結末だろうか。

 真実は語られる度に変わっていくものだ。時間が経てば経つほど物事本来の全貌と目的は見失われるだろう。最近、世間を騒がせた香港でのデモ事件も、最初は「逃亡犯条例」の改正案を巡る紛争だったが、そのうち、改正案の延期が決定されたにも関わらず、デモが止むことがなかった。参加する民衆は、今回の「デモ」という行動の本来の意味についてもう一度考え直す必要がある。始皇帝のように“焚书坑儒”の二の舞にならないことを祈るばかりだ。

 

 

第12回 宇宙からの視点が求められるこれからの時代に向けて

 

あすか人事コンサルティング
代表 太田 正孝

 

 令和元年も師走を迎えあっという間に終えようとしています。人は年齢を重ねるにつれ時間の進み方が早くなると言われていますので近年はなおさらそのように感じます。脳に記憶できる総量がかなり少なくなってきているので、記憶の「パラパラ漫画」のコマ数が減り、再生すると早送りになるようです。高井先生はじめ著名人のなかには高齢でも驚異的な記憶力を維持している方がおられるようですが多くの凡人は早送り型になっていきます。

 

 時間のことを考える時、思い浮かぶのはやはりアインシュタインの時間と空間を一体で考える「時空」のことです。それを思いながら晴れた夜空を見上げると無限の星々が瞬いていますが、夫々に異なる時代の姿なので「あの星はもう消滅しているのではないか」と想像したりします。

 

 冬の夜空ではオリオン座がよく見えます。四角い輪郭の左上はベテルギウスというオレンジ色に輝く星ですが地球から640光年余の距離にあります。超々巨大星で太陽の位置に置くと仮定すればベテルギウスの表面は地球を遙かに超えて火星の軌道あたりになる大きさで想像を絶します。近年の観測では既に球体が崩れて宇宙時間でいう近々のうちに爆発(超新星爆発)するといわれています。今見えている姿は約640年前のものですので日本でいえば室町時代になります。もし、ベテルギウスの周辺の惑星に「ベテル人」がいたとして瞬間移動で地球にきたら計算上では足利義満将軍に会えることになります。

 宇宙規模で時空(空間と時間)を考えると普段何気なくすごしている現在という瞬間も厳密にいえば一人一人違っているということに気付きます。思考訓練上では宇宙空間や高高度を飛行している人は地上に比べて時間が早く進んでいるのでその分早く年をとっていると言うわけです。もちろん原子時計でようやく分かるレベルなので人の寿命とは直接関係ないのですが、厳密にいえば時間の進み方は人それぞれで違うということになります。

 

 人は自らの立ち位置を主張しながら日々生活していますが、周りの人達とうまくいかないことが多いのが現実です。その理由として育った時代や環境、生まれもった性格の違いからと言われることも多いのですが、もしかしたら同じ時間・同じ場面を共有してきたとしても見ていた景色が異なっていたからかもしれません。だとすると「時空」を共有できない宿命をもつ人間として人を理解する能力は「自分の視点は一旦脇に置いておいて相手の視点での時間・景色をどの程度想像できるか」で評価できると思います。自分の視点視座から見えるもののみが絶対正しいと信じている人は大げさにいえば宇宙の理にも反していると言えそうです。

 

 かつて部下を預かる立場になったときに心がけたのは彼らと一緒により高い視点を身につけて成長することでした。部下だった頃、尊敬する上司から言われてきたことを真似たわけです。地面にへばりついていないで鳥のように鳥瞰しろ、飛行機から眺めて地平をみろ、人工衛星から国境のない地球をみろ、さらには月から眺めたつもりで星としての地球をみろ、と偉そうに言ってました。私自身宇宙好きだったこともありついつい熱気を帯びて話すので一部のリアクションとして「うちの上司はいつも宇宙がどうのこうのと変なことを長々と説教するので大変・・・」というのが耳に入っていました。話しの中で「UFO(未確認飛行物体)」のことも言っていたので変な人とみられても当然だったのですが、めげることなくこのスタイルを続けてきました。その後もあちこちで自己流に宇宙とUFOのことを話していたので「宇宙とUFO」についての「楽しい講演」を頼まれたこともあります。勿論オカルト的なことではなく科学に基づいて・・・。

 よくUFOと宇宙人はイコールと扱われますが分けて考えないといけません。ただ世界中のUFO目撃例の5%はどうしても合理的な説明がつかないようなので宇宙人の存在は完全否定できないまま残っています。ここに空想を楽しむ余地があるわけです。

 この妙な例ではありましたが世の中の多くの事象が科学的合理的に説明できるものばかりでないにも関わらず、昨今の世相は自明な事柄でも重箱の隅をつつくがごとく攻撃するなど余裕のない窮屈な社会になってきたように思います。IoT、AIの時代だからこそ人間的な柔らかさからくる多様な考え方を相互に認め合うことがより大事になっていると思います。高井先生が常々主張され行動基準とされているように時代のキーワードは「多様性の共有と寛容」しかないと思っています。

 

 ITに関する分野で成功した人の多くは何故か宇宙・航空に関連する事業に夢中です。

 ビルゲイツ、ブランソン、イーロンマスク、ザッカーバーク、ベゾスなどの世界的な有名人、それに日本ではホリエさんなど皆さん民間の力で宇宙開発をやろうとされています。

  職業柄この人達やその協力者・社員達はどのような働き方をしているのかが気になります。おそらく共通の夢を追っているのでしょうから彼らは労働時間を考えるよりも自らの夢の実現のために楽しみながら仕事をしていると思われます。人は自分のやりたいことや何か新しいチャレンジをしたい場面では寝食を忘れて熱中してしまいがちですがこれが楽しい人をも時間で縛るのはどうかと思います。 

 昨今、働き方改革が政治主導で進められていますがその大きな目玉の一つは残業規制のようです。人事コンサルタントとして残業は一律に法で細かく規制をかけるようなものではないように思います。仕事の種類が多岐にわたる現代ではこのような網掛けは当然うまく適合しない職種も多くあるので副作用も無視できないと思います。

 

 ことの本筋は働く人の希望を尊重してその人の意欲と能力に応じた仕事に就け、かつ円滑に移動できるようにする仕組みと定着にあるのは明らかです。高齢者や女性の登用、外国人労働力の拡大など歴史上初経験の事情も加わって新施策も必要になっています。

この有効な考え方として、何度か述べてきたように諏訪康雄法政大名誉教授の「キャリア権」の確立と、それに伴って仕事と人材の需給バランスを調整する人材マーケットの整備が必要です。(真新しいことではなく先進国では普通に行われています)

 

 高井先生はかねてより日本の将来の姿を正確にとらえそれに対応していくための避けて通れない道を示すなかでこの「キャリア権の法制化」に主導的に取り組んでおられます。

 将来のことを具体的に思い浮かべるのは簡単ではないのですが、過去現在という時の流れの「パラパラ漫画」を虚心坦懐に宇宙からの視点で眺めれば将来のために今やるべきことが浮かぶのではないかと思います。過去現在に過度にとらわれていると「思考の時空」は拡がらないことを肝に銘じたいものです。

令和2年は現時点では未来です。現在は直ちに過去になりその過去はもう存在しないのですから、年末は未来に集中してどう過ごしていくか考えたいと思っているところです。

 

 これで12回目、最終回になった私の高井先生のブログ「無用の用」への寄稿は終了です。この機会を与えてくださった高井先生、事務所の方々に感謝申しあげます。また拙い文をご覧くださった皆様には改めて御礼申しあげます。どうもありがとうございました。

終わり

 

「明るい高齢者雇用」

第9回 若年者が圧倒的―シリコンバレー 20年間で急成長―

(「週刊 労働新聞」第2155号・1997年6月2日掲載)

 

 私は、昨年12月20日から2泊4日でシリコンバレーに行った。それは著名なシリコンバレーの実像に触れることが目的であった。アメリカで経済的に最も活発であるというシリコンバレーの様相を見ながら、高齢者の雇用問題の実情を尋ねたかったからである。しかし、そこではそもそも高齢者の姿は見かけられなかった。

 S-MOS SYSTEMSの業務部長である三木和一郎氏にお会いした。三木氏は28年前に気の弱い自分を鍛えるために、2ヵ月分の生活費を持って、米国のマサチューセッツ州ボストンにある大学に留学、渡米した。4年間苦労の連続であったが、無事大学を卒業。その後、学生中にアルバイトや勉学で時間がなく、“見ることのできなかったアメリカを見るため”に米国に留まった。

 最初の10年間、3度転職した。米国企業で働き、特に興味のあったアメリカの底辺で生活をしている人達をより良く知るために、その人達との交流を、時間が許す限りした。

 1983年にカリフォルニア州に移住し、現在はコンピューターのメッカといわれるシリコンバレーで、半導体を販売する日系企業(S-MOS)に勤務している。アメリカ人の奥様と結婚され、シリコンバレーの生誕の地である、スタンフォード大学のある町、パロアルトで家族4人と暮らしている。

 様々なことを勉強されている三木氏から教えられることが多かったが、この度その三木氏に高齢者雇用問題について、以下のご報告を頂いた次第である。ちなみにS-MOSは、セイコーエプソンの子会社である。

 『まず第一に、シリコンバレーでは高齢者が働いているのをあまり見かけません。シリコンバレーは1980年代に脚光を浴び、ここに移ってきた会社、ここからスタートした会社も若いエンジニアが2、3人で始めた会社が多く、会社で仕事に従事しているエンジニアは、やはり、若い年齢層が圧倒的に多いのです。人事部長に聞いてみたところ、わが社では、60歳以上の人は2名(総従業員約250名)しかいないそうです。

 もともと、シリコンバレーは、ほとんどが農園か畑でありましたが、次から次へとビルが建ち、ここ20年くらいで大きな町になりました。シリコンバレーは、私が住んでいるパロアルトという市からサンノゼ市までの小さな平野を指し、狭い地域に何千というハイテクの会社がひしめいています(日本的感覚からすると「散在している」という表現が適切でしょう)。また、ここはアメリカでも1位か2位に物価が高い土地であることも有名です。そのせいか、そもそもあまり高齢者の人達をみかけません。見かけても、中流以上の人か、逆に経済的に困っている人達の2種類の人が多く、いわゆる中流の老人の姿はほとんど見られません。

 例えば私が住んでいる家は、1947年に建てられたものですが、当初8,000ドルから1万3,000ドルで売り出されたこれらの家は、現在40万ドルから50万ドルするそうです。アメリカでは金利が高いため、働いているうちはローンを支払えますが、仕事を辞めますとローンを支払うことができず、家を維持することができなくなってしまいます』。

 

 

 

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

2022年11月
« 10月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

最近の投稿

カテゴリー

月別アーカイブ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
https://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成