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2023年2月10日
訃報

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  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第8回目です。
  • 第8回目は アタックス税理士法人 酒井悟史様、株式会社リクルートキャリア藤井薫様(50音順)です。

 


 

■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第8回)■ ■ ■ 

 

アタックス税理士法人 公認会計士・税理士  酒井 悟史 様

株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT  編集長 藤井 薫  様

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昨今テレビや新聞を毎日賑わせている「人工知能(AI)」。人工知能が私たちの生活に及ぼす影響は甚大であり、今まさに大きな注目点です。より多くの方々にこの問題を身近に感じ、また考えていただく機会となることを願い、昨年4月~6月、「週刊 労働新聞」において連載「人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~(全12回)」を企画し、私を含め5名で執筆させて頂きました。

また同年10月には、ユカイ工学株式会社 代表 青木俊介氏と、株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長 藤井薫氏の2名を講師にお招きし、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」を開催し、企業におけるAIの活用状況や人間とAIのこれからの付き合い方についてお話しいただきました。

今回の一問一答は平素より小生が「AI」や「ビックデータ」についてご教示頂いている、アタックス税理士法人酒井悟史様、また上述のセミナーで講師をお願いした株式会社リクルートキャリア藤井薫様にお話しを伺いました。

 

酒井悟史様写真

[アタックス税理士法人 酒井悟史様プロフィール]

 

アタックス税理士法人 公認会計士・税理士 慶應義塾大学経済学部卒。

 
有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス事業部を経て、2014年アタックス税理士法人に参画。トーマツでは、監査業務の他、株式公開支援、業務プロセス効率化支援、連結財務諸表作成支援等に従事。現在は、主に上場中堅企業の法人税務業務の他、相続対策や資本政策等に従事している。

 

 

 

藤井薫様写真

[株式会社リクルートキャリア 藤井薫様プロフィール]

 

株式会社リクルートキャリア   リクナビNEXT編集長 兼 株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 編集委員 兼 リクルート経営コンピタンス研究所 エバンジェリスト 
リクルートキャリアリクナビNEXT編集長。


88年、リクルート入社。TECHB-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長を歴任。リクルートワークス研究所、リクルート経営コンピタンス研究所兼務。16年4月、現職に就任。

 

 

[今回のインタビュアーは以下の通りです]

  • 高井伸夫

(取材日:2016年11月15日(火)場所:中国飯店市ヶ谷店にて)

 


 

高井

本日はお集まりいただきありがとうございました。まずは皆様の近況をお伺いしたいと思います。まずは酒井さん、近況を教えてください。

 

酒井様

フィンテック企業(注1)のサービス等により、一次データの収集を通じて顧客行動を可視化したり、収拾したデータを後工程に転用して経理作業を効率化する支援をしています。また収集データの分析結果に基づいて、経営のアドバイスをしています。例えば、担当している美容業界の会社で言うと、店舗別スタイリスト別・曜日別時間別のデータを活用し、再来店率の向上に向けた取組みを会社と一緒になって検討しています。またクリーニング業界の会社では、店舗別のデータを収集するための仕組み作りや、一次データの後工程転用による経理処理の自動化する仕組み作りを支援しています。そもそもクリーニング店でのお客様データは、店舗での接点でしか収集ができなかったため、アナログなレジだとお会計が済んだら完結してしまい、そのデータを後工程で活用しようという発想がありませんでした。今まで見えなかった店舗別の顧客動線を可視化することで、洗濯物の収集ルートや回収先の工場を見直すことで、業務の平準化に活かす仕組みづくりの支援をしています。

注1 フィンテック企業:「フィンテック」とはファイナンスとテクノロジーの2つを併せた造語。「フィンテック企業」とは金融IT分野のベンチャー企業(新興企業)を呼ぶことがある。


高井

大手企業はどのような仕組み作りをしているのですか。

 

酒井様

大手企業は独自の基幹システムやPOSレジ(注2)を導入し、一次データの収集・活用をしているケースが多いです。中堅中小企業は業務の中にデータを収集する仕組みを組み込んでいない場合が多いため、業績に変化が生じた場合、原因の特定ができない、あるいは非常に時間がかかるため、効果的な改善策を実行できない、または実行が遅れることがしばしばあります。

 注2 POSレジ:売上が発生する時点で、その買上げ商品の値札に付与されているバーコード情報をスキャナーで瞬時に読み取り、その商品の部門、品名、値段などを画面に表示しレシートに印刷。それと同時にレジ本体の記憶部(メモリー)に各種情報を記録するレジのこと。


高井

藤井さんの近況はいかがでしょうか。


藤井様

リクルートグループでも美容業界への経営支援を展開していますね。ホットペッパービューティーという、ヘアサロンやネイルサロンの検索・予約サービス(BtoC)がありますが、経営支援ということで言いますと、『SALON BOARD』という顧客管理システムもサロン向けに展開しております。 また飲食店の予約サービスである、ホットペッパーグルメでは、Airレジ(注3)を使い、会計などの業務プロセスと販売促進を組み合わせて、より広範に経営を支援するお手伝いをしています。そうした意味では、リクルートは個人向けサービスに加え、企業向けサービスまで含めた、経営並びに業界全体の支援にチャレンジしています。

注3 Airレジ:0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ。会計の際伝票を作成せずに、ipadを使用することで、30分後の空席状況を把握でき、リアルタイムでホットペッパーグルメのサイトに反映できる。


高井

美容室は、リピーターを増やす事、また売上を増やすために、シャンプーなど物販販売をして顧客単価を上げることが重要だと思います。


藤井様

そうですね。物販販売や、ECサイト(注4)を持っている美容室もありますね。顧客単価の向上以外に、経営課題としてますます重要になるのが、人的資本の最適化も含めた生産性の向上です。これは美容業界だけに限らず、飲食業界、介護業界など、全てのサービス産業の企業に当てはまります。パート・アルバイトのシフトの最適化、長時間労働の是正、従業員の離職率の改善、さらに定着率の向上と能力の開花。そして生産性の向上。これらは、人口減少社会の中で経営を行う、全ての企業の重要な経営命題だと思います。そうした社会構造的な課題解決にリクルートグループはお手伝いをしていこうとチャレンジしています。

注4 ECサイト:自社の商品やサービスを、インターネット上に置いた独自運営のウェブサイトで販売するサイト


高井

リクルートとしてビジネスになっているのですか。


藤井様

はい。今後日本の人口は減少していきますので、採用に加えて活躍にもビジネスの力点をシフトしてゆく。これからは人口知能やピープル・アナリティクス(注5)など利活用して、希少な人的資本の最適化を支援する。時期は明言できませんが、そうしたような方向により進んでいくと思っています。

注5 ピープル・アナリティクス:人材・組織に関するデータを活用することで、生産性を高めて従業員に合った部署に配属したりすること。


高井

酒井さんは様々なデータ収集をしているとのことですが、今後そのデータをどう活用していきますか。


酒井様

我々のようなコンサルティング業務の一番の付加価値は、クライアントと対話を重ねて課題を正確に抽出し、改善策を提案し、実行を伴走することだと思っています。そのためには、課題を正確にえぐるための感度の高いデータが必要になります。従来は会計データに基づく分析から課題にあたりをつけて掘り下げていくことが主流でしたが、IoTの発達等もあり、非会計データが容易に収集できる時代になりました。先ほどの美容業界の会社のように、来店頻度等の非会計データの方が課題に対して分析感度が高く、より効果的な改善行動を計画しやすいのです。昨今、AI(人口知能)は士業の仕事を奪うと言われることが多いですが、クライアントと対話を重ねて、KPI(注6)を設定し、何をキーとして向き合っていくか。そのためにはどんなデータが必要で、どのように収集する仕組みを構築するか。一部の分析作業はAIに置き換えることが可能ですが、これら一連のファシリテート(注7)プロセスは人間にしかのできないと考えています。したがって、データを適宜活用しながら、高品質なファシリテートを実行していきたいと思ってます。

注6 KPI:企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のこと。

注7 ファシリテート:会議やプロジェクトなどの集団活動がスムーズに進むように、また成果が上がるように支援することをいう。


高井

藤井さんの今後の目標をお聞かせください。


藤井様

日本だけの問題で言うと、急速に労働人口が減っています。今までの人材ビジネスは、良い人が採用できるかが鍵でしたが、それは人口が多くいた時のパラダイム。働き手が少なくなっている今は、入社後にどう活躍するかに軸足が移っています。しかし一人では活躍できませんので、どのようにして人を組み合わせるかが問われます。経営戦略との組み合わせ、業務との組み合わせ、組織との組み合わせ、生活との組み合わせなど、組み合わせをするポイントはかなり多くなってきました。一方で、AIテクノロジーの登場で、そうした無限の組み合わせに、きめ細かく向き合える機会も広がっています。利器を上手く使いこなし、一人一人が輝き活躍できる組み合わせを提供する。そんな社会になると良いと思っています。

 

高井

本日は色々なお話をありがとうございました。   

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本年10月に開催いたしました特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」の開催報告はこちらをご覧ください⇒AIセミナー開催報告

 

以上

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2016年12月14日(水)17:38 スーパームーンを撮影

 

 

 

株式会社 開倫塾
代表取締役 林 明夫

 

「多様な働き方改革を考える―人件費を固定費から流動費に―」

 

1.高井伸夫先生からお教え頂いたことは数知れません。

(1)「企業は原則倒産」

昨年のように今年があり、今年のように来年があると考えたら、2年後、3年後には、その会社は存在しない。

(2)「事情変更の原則」

企業を取り囲む環境変化は著しい。事情が大幅に変化したら、今までの考え方を中止し、状況に合った考えに基づいて行動しなければならない。

(3)「人件費を固定費から流動費に」

売り上げ、利益は、競争状態や社会の経済状況によってどんどん変化する。上昇し続ける人件費を、固定費として存続し続ける企業はない。人件費をどう流動費とすることができるかを考え続けよ。

(4)「雇用契約(労働契約)」を「請負契約」に

労働生産性が低い企業、とりわけ、サービス産業は雇用契約(労働契約)ではもたない企業が多い。新しくサービス産業をやるのなら、はじめから請負契約で行った方がよい。

(5)「多様な働き方改革」

この改革をすすめる企業以外、これからは生き残れない。

 

2.

 (1)以上の教えは物事の本質を見事に突くもので、文字通り「ぐうの音」も出ません。私にとっては考えたこともないことばかりで衝撃的で、しばらく思考停止になってしまうほどです。

(2)ただし、表現は激しく、抽象的ですが、折に触れ1つ1つの教えの本当の意味は何か、自分の会社にとってどのような意味があるかをゆっくり考えてみると、少しずつでも取り組むべき道筋が出てきます。

(3)開倫塾は1979年創業、2017で創業38年目を迎える栃木県・群馬県・茨城県に60校舎を展開する小学生・中学生・高校生を対象とする社員400名余りの地元になくてはならない中堅企業を目指す企業ですが、高井伸夫先生の教えを少しでも実行に移し、倒産しない会社づくりに昼夜励んでいる企業でもあります。

(4)この1年間12回にわたり、「髙井伸夫先生から教えて頂いたこと」というテーマで文章を書かせて頂いた最終回として、「開倫塾の多様な働き方改革への挑戦」を紹介させて頂きます。

 

3.開倫塾の働き方改革を考える

(1)「企業は原則倒産」―「倒産しない会社づくり」が第一。

①高井先生から「企業は原則倒産」と何十回も教えて頂いたのですから、働き方改革の前提として、どんなことがあっても「倒産」だけは避けたい。

②開倫塾は未公開会社ですが、2011年より四半期決算を確実に実施。その前提として、月次決算を行うために毎月末には本部と60校舎すべてで実地棚卸しを実施。2016年から財務会計に加え、管理会計も導入しました。経営者である私は、地域の中堅企業としての「統合報告(Integrated Reporting)」の勉強をスタート。社員や金融機関、ビジネスパートナー、地域社会の皆様が見るに耐えるだけの統合報告書の作成を目指しています。

③「人づくり」こそが、「倒産しない会社づくり」の「基本のキ」。経営幹部にはできるだけ質の高い専門家の先生方の直接指導・個別指導を毎月お願いしています。

(2)「出入り自由な開倫塾づくり」

①様々な理由で開倫塾を一度退社した方々をもう一度開倫塾にお迎えすることが、「超人手不足」の解消に直結します。

②10年前、20年前に開倫塾を退社なさった方々が、子育てや介護を終えられて、再び開倫塾で働くことができるよう、万全の体制を整えています。

(3)「パソコンのスキル向上のためのパソコン研修」

①2015年度から、開倫塾では全社員を対象に、年間で合計8日間の本格的なパソコン初級研修を実施。

②タッチタイピングを含む「パソコン基礎」「ワード初級」「エクセル初級」がその内容です。

③2017年は、開倫塾本部と60校舎すべてのパソコンをwindows10に交換するので、「パソコン研修windows10版」も企画。

(4)「キャリア権推進企業宣言」

①開倫塾は、2011年度より「キャリア権推進企業」を宣言。「自分のキャリアを自分で形成することは基本的人権の一つ」であると考え、塾生や保護者、地域社会の人々、ビジネスパートナー、そして何よりも社員の皆様の「キャリア形成」を全面的に支援しています。

②開倫塾のすべての研修会は、非常勤講師の先生や事務パートの皆様も参加可能で、すべての研修会への積極的な参加を呼びかけています。

③幹部登用に向けての外部研修の半数以上は女性の参加になるよう努めています。

(5)「85歳過ぎまで働ける職場づくり」

①開倫塾の先生の条件は3つ。「子ども好き」「声が大きい」「研究熱心」、この3つの条件に適い、塾生を教えるに足りる「学力」と「気力」のある方であれば、性別、年齢、出身などは一切関係なく、開倫塾の先生として活躍可能です。

*ちなみに、開倫塾の絶対的禁止事項は、「セクシズム(性による差別)」、「エイジズム(年齢による差別)」、「レイシズム(出身による差別)」です。

②事務やカウンセリング、校舎管理など、教科を教える以外の仕事も山ほどあります。

③開倫塾でよければ、元気に働ける間は、85歳過ぎまで働く。たとえ週1回、1時間でもOKですから、元気に働く。85歳過ぎまで働ける職場づくりが、開倫塾の目標です。

(6)「テレワーク推進企業」

①開倫塾の仕事の中には、本部事務所や校舎でなくても、自宅などでできる仕事がたくさんあります。

②2017年より、作業の見直しや標準化を大幅にすすめ、「テレワーク」を大いに推進したく存じます。

③現在でも、一部業務を自宅等でやって頂いております。

(7)「健康経営企業づくり」

①まずは、「歯科」を含む「定期健康診断」の全員受診と診断結果の最大活用が第一。

②そのために、総務部に「健康経営企業推進室」を設置。健康診断をしてくださっている病院と産業医、顧問をお願いしている歯科医の先生方との協力を綿密にして、非常勤講師や事務パートの皆様を含む全社員の健康づくりに励んでいます。

③毎学期に一回ずつ、産業医や地元の足利工業大学看護学部長の先生方を講師としてお招きし、「健康ライフを考える会」を開催。

(8)①開倫塾では、社員が被選挙権を行使する際には、社員としての身分のままで立候補でき、また、公職を離れた場合には元の職に復帰できます。

②公民としての社会的義務を果たすことを支援する企業を目指しています。

③ただし、被選挙権を行使し、選挙に立候補する社員を企業として応援するか否かは、政策内容によります。社員同志が応援するのは自由です。

 

おわりに

(1)2016年1月から12月まで12回にわたり、高井伸夫先生から教えて頂いたことをどのように活かしたらよいかについて、私の拙い文章をお読み頂きありがとうございました。

(2)私自身、大学を出て29歳まで、開倫塾を創業するまで司法試験の勉強をし、また、実の弟の故林俊夫(ペンネーム、森圭司)が弁護士をしていたため、弁護士である髙井先生にお教え頂いたことをいつも特別な親しみと感謝をもってお伺いしておりました。

(3)お教え頂いたことを、少しずつ温め、試行錯誤、失敗に失敗を重ねながら、実行に移し、今日に至っております。これからも、読者の皆様とともに、高井伸夫先生にお教え頂き、一歩一歩確実に前進して参りたいと存じます。

ありがとうございました。

感謝

2016年12月26日(月)

 

 

開倫塾のホームページ(www.kairin.co.jp)に林明夫のページがあります。

毎週、数回更新中です。

お時間のあるときに、是非、御高覧ください。


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2016年12月10日(土)7:19 中目黒公園にてアゲラタムを撮影
花言葉:「信頼、幸せを得る」

 

 

 

成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第5回(最終回)

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、最終回は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

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■今回、話を伺って、私(鮒谷)が強く感じたのは、

私自身、十数年の長きに渡り、

莫大な量のコンテンツをネット上に発信し続けてきたわけで、

それが「私自身の思索のすべて」とまでは言わないにせよ、

それらをすべて吸い上げ、解析すれば、「私がどのような人物であるか」、

私という存在が、おおよそ理解されてしまう時代が遠からず、

そしておそらくは間違いなく、訪れるであろうということです。

 

■とはいえ、(以下、異論もあるかとは思いますが)

これから時代において、それを恐れて、

一切の情報を発信しないという選択は許されなくなりつつある、

のではないでしょうか。

 

■あるいは、もし、発信しないという選択を取ったとすれば、

「伝えなければ、伝わらない」わけだから、

その分、発信することに対する報いが少なくなるのも仕方ない、と自らを納得させるしかない、

という二律背反状態に置かれることになるのかもしれません。

 

■とはいえ、考えてみるとやはり、

「社会に対して何らかの貢献をする」「仕事上で成果を残す」

ことを心がけようと思ったら、

やっぱり、どうしたって、一切の発信を止めることはできないわけで、

であるならば、やがて、発信してきた情報から解析されるであろう、

「(私の)性格、価値観、思考、態度、姿勢」等々について、

解析されても問題ないように(!?)

今から自らを律し、躾け、陶冶していくしかないのではないか、と思われた次第。

 

■そのようなことは以前より、漠然とは考えておりましたが、

この度の講演を聞いて、漠とした思いが確信に変わりました。

どのみち、鮒谷という人間は近い将来、(もちろん私だけでなく、あなたもそうです)

外面のみならず、内面も含めて丸裸にされるわけだから、

「(永遠の理想であるところの)本物の存在」

になれる日は永久に訪れないとはいえ、目指すべき北極星として、

「本物」を目指し、日夜、精進を重ねていくことが

来るべき将来に向けて、今からできる最適、最善の準備、といえるのかもしれません。

 

■もちろん、私を含め、あなたも、あるいはこの世の全ての人間は、

これからも、そしてこれまでも不完全であり続けるわけであり、

それがAIの発展とともに、白日の下に曝け出されることとなるわけだから、

この大局的な流れの中で、それなりの時間をかけて

「新たな人間観」「新たな倫理観」が構築されていくのでしょう。

 

■だからこそ、(以下は仮説ですが)

どうしたって人間、聖人君子たり得ないわけであり、濁りから逃れることはできませんが、

多少濁っているけれども相対的に許容できる、

あるいは濁りきっていてとても社会的に許容されうる存在ではない、

といったことが見透かされる時代が遠からず訪れるのであるとするならば、

そうした未来が訪れる前提で、

今から「自らを律し、躾け、陶冶する」日々を過ごすことが

(一見、大変なように見えてその実)

「安寧の未来を手に入れる最善の道」なのではないかということを、改めて考えた次第です。

 

■こうした日常が習慣化されたレベルで実現できるようになれば

「仮説が当たっても、当たらなくても、未来の泰平が約束される」ようにも思われます。

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全5回にわたって、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」についてご報告させていただいた。

AIは今こうしている間にもすさまじいスピードで進化している。すべての人間にとって身近でかつ重大な問題であることは間違いない。少しでも読者のAIへの興味関心を喚起できていれば幸いである。

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2016年12月4日14:41 千代田区九段南3にてポインセチアを撮影
花言葉:「祝福、幸運を祈る」 

 


第19回人材グローバル化(終)
(2008年11月3日) 

 

 

協調性を重んじる意識

今年のノーベル物理学賞・化学賞を日本人が計4人受賞したことは、日本による研究が国際的に評価された結果である。自然科学3分野に限っていえば、日本人(出生時)受賞者はこれで13人になるが、同分野全体の530人に比べれば僅かにすぎない。そして、日本人受賞者には米国籍を取得したり米国の研究所に在籍している方が多いことを考えれば、純粋に日本の力であるとはいい得ず、素直には喜べない。日本国籍あるいは日本国内の研究所では世界に羽ばたけないという現実が研究者の世界にあるといわれて久しいが、改善が遅々として進んでいないようだ。

オリンピックを成功させた中国は、次なる目標としてノーベル賞受賞者の増大をめざし、全学者を叱咤激励していくに違いない。そこで日本もさらなる精進が必要であるが、それは研究者のグローバル化以外にない。

前回も述べたが、日本は人口減少の桎梏から逃れられない。2015年には世帯数も減少局面に入ると推計されているので、国力はあらゆる分野で衰退していく。その結果、世界における日本のプレゼンスは大いに低下し、経済では世界に相手にされない国となってしまうだろう。そのため、日本は経済的にもグローバル化せざるを得ず、幼稚園・小学校から実践につながる語学教育をたたき込むことは勿論のこと、日本史・世界史等の充実を図っていかなければならない。文部科学省が推進したゆとり教育などは、世界に遅れをとるあまっちょろい政策であることを自覚しなければならない。そしてダイバーシティ教育を単元として採用することも、グローバル教育の一環として必要になっていくであろう。今の日本の教育のままでは国内有名大学を卒業したとしても単なる井の蛙にすぎない。

今の日本には、「第一の開国」(明治維新)、「第二の開国」(戦後復興)に続く「第三の開国」=「制度疲労を乗り越え、グローバル化を加速する」が必要であると説く文献は、私の認識と同一であるといってよい(『2015年の日本』東洋経済新報社)。

極東の島国であるという地勢的な問題もあり、日本人はグローバル化が不得手とみられがちであるが、諸外国と比べて日本人・日本企業は協調性を重んじる意識が高いという点は、グローバル化に向けての長所である。これを自覚し長所を伸ばしていけば、日本人はグローバル化が不得手と決め付けることはできない。

多様な人々と共に働き、社会を構成するには、民族・国籍等の属性を超越した生身の人間としてのコアな部分が、より一層重要な価値を持つことになる。それを象徴的に表現する言葉として「ハートワーク」があるが、これは「良心・善意・成長」を基本とする概念である。そして、「ハートワーク」よりもなお一層人間性如何が問われるものとして、「ヒューマンワーク」という概念が生まれる。これは、心身を限界まで尽くして、「血と汗と涙の結晶」としての全人格・全人間性をかけての自己表現をすることであり、人間の理想である「夢・愛・誠」の世界に通ずるものである。どんなに些細なことでも相手のことを考え、一生懸命に尽くし、「結晶」を見せることによって、猜疑心や反発で頑なになった心を溶かすことができるのである。

余りにも繊細すぎる表現や手法は普遍性を失い、民族性や文化が異なる相手には通じない。人間関係において、日本人が血と汗と涙をともに流すことができる存在として、外国人に認識してもらう態度を取れるかどうかが課題となるのである。

 

外に向け発信する努力

人事労務の課題としては、グローバル化には「日本ファン」を作ることも重要である。我々が相手国を尊敬する気持ちと同様に、日本文化に対する敬意を持つ人でなければ、パートナーとして選ぶことはできない。

中国人が日本を見て憧れるのは、よくある現象である。私の上海事務所と提携している中国人弁護士は、この夏初めて訪日した折の滞在記でその感動を語っていた。きれいな空気・青い空や海に感激するだけでなく、日本人社会の緻密さに強烈な印象を持ち、清潔感や繊細かつ緻密な美意識に富んでいること、日本人の生活が秩序立っていることに感動していた。そのように感じる中国人は非常に多い。

こうした気持ちになってくれる外国人を増やすことは、日本のグローバル化を下支えする重要な要素であるから、海外企業における人事労務は内にこもってはならず、外に向かって日本の良さを発信する努力をしなければならない。

また、企業がグローバル化すれば、自国の技術力は当然現地にも広まり、それを凌駕しようと各国のライバルが磨きをかけてくるから、他国の追い上げに負けぬよう自らの技術力・技能をさらに進化させなければならない使命を負うことになる。「技術」はデジタルな世界であって、教えたり伝えたりできるものだが、

「技能」はアナログな領分であり、教えることのできない匠の世界である。そのため、技能を身に付けるためには、民族・国籍を問わず、血と汗と涙の結晶を求めて磨き続けるしかないのである。

そしてこの論稿の最後に、明治30年代に日本人で海外経営に成功した人物を紹介しておこう。それは、のちに東京市長となった後藤新平(1857~1929)による台湾統治である。後藤は日本人が台湾に行って、台湾人を日本人のようにしようとしてもできるはずがないし、やってはならない、現地の人々の習慣を重んじるべきであるということを旨とし、台湾全土に向かって「民政優先」を宣言し、港や道路、鉄道を整備し、東京よりも早く上下水道まで完備したという。また殖産のためには、郷里(陸奥)の後輩、新渡戸稲造をスカウトし、彼が提言したというさとうきびの品種改良の大成功で、台湾に多くの富をもたらした。後藤と新渡戸は台湾の産業育成と近代化に大いに成功したのである。

 

他国の幸福を願うこころ

晩年の後藤がことあるごとに説いて回った「自治三訣」、つまり「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」という思想は、日本人の海外経営に当たっても教訓を与えるものである。即ち、経営の現地化に当たっては、現地の文化・習慣等を尊重して現地に合わせる姿勢を前提としたうえで、絶えず刺激を与え続けることが重要である。

今の世界的な金融不安により経済沈滞が、グローバル化を停滞させると見る向きもあるようだが、グローバル化という時代の流れはもはや決して押し止めることはできない。政治、経済、文化をはじめあらゆる面で世界と強く連動する時代のなのである。今後も世界の中で日本企業の存在感を保持し高め得るかは、謙虚で他国の人々の幸福をも心から願える人材を育成できるか、そして、そうしたグローバルに対応できる人事労務制度を構築できるか否かにかかっているといっても過言ではない。

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2016年12月10日(土)7:20 中目黒公園にてゴールデンボーダーを撮影
花言葉:「友情、献身」 

 

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第4回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第4回は、第2部「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~」について、講演要旨と、講師である藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長)のご感想を掲載する。

 

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1.講演要旨

【第二部:㈱リクルートキャリア リクナビネクスト編集長 藤井薫氏】

<新しい時代の幕開け>

今は第四次産業革命。AI で加速している。

・「新しい人事」の幕開け:能力の刷新、仕事の定義、人類のあり方が問われている。

・民多利器、國家滋昬。民多智慧、邪事滋起。(老子の言葉より)

訳:民に利器(=AI)が多く行きわたると、国はますます混乱する。老子の心配が現実になりつつある。

・今こそ民多智慧になるべき。訳:民に知恵多くなるべき。

人事プロフェッショナルこそ、現代の利器(=AI)の可能性と留意点を知らならない。

 

<人事は何故、AIに向き合う必要があるのか?>

・企業を取り巻く3つの変化:

GDP(Global/Diversity/Productivity)、サービス経済化、KKD(勘と経験と度胸) → KDD(Knowledge Discovery in Database)

・人事に要求される新たな力

L人智を超えた多様性対応力、人智を超えた可視化力、人智を超えた意味抽出力

 

<AI ×人事 何ができる?>

・人事のあらゆる領域でAIの利活用が広がっている

人材採用、労働生産性の向上、優秀人材の保持、業績管理・評価、動機付けなど

・グローバルでは既に5割前後の企業が、データで未来予測をしている。

 

<未来の活用例>

・AI×採用

AIが、世界中のWebの海から自社の戦略やタスク、ポートフォリオに合った人材を自動探索したり、景気シミュレーションを活かして、早めに組織構成・配置を変えるように提案する。

・AI×リテンション(維持)

従業員が希望するキャリアプランやプロジェクトアサイン期間、労働時間や日常のコミュニケーションデータから、意欲の低下や体調不良などの異常値がある場合に警告を発し、予防的に仕事やキャリアの見直しを提案する。

 

<人事×AI どう利活用する? 未来の留意点は?>

・Archiveなくして Analyticsなし

・Account (勘定)よりAccountability(説明責任)へ

※AIの限界を示す思考実験

・AI が下記のような提案をしてきた場合、それを実行できるか?

「5 年後、売り上げを、10 倍にする打ち手があります。その答えは、経営陣全員クビ。その理由は説明できません。」

→人事は、「最適解」より「納得解」が大事である。人間の脳を真似る人工知能は説明しづらい。(例:「好き」に理由は無い。)

 

私たち人間は、「最適解<納得解」が必要 。

 

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2.講師からの感想

高井先生の構想で始まった『労働新聞社』様の連載「人工知能が拓く未来」にお声がけいただいたご縁で、講演の機会をいただきました。「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか?」随分、遠大な演台でお話しましたが、思いは一つ。AIが駆動する第四次産業革命の前夜の今こそ、「新しい人事」の幕開けであること。能力・仕事・会社の在り方も激変すること。その推進には、人事プロフェッショナルの概念工事が不可欠であること。そのことをお話しました。

可視化→最適化→自動化。AIが突きつける原因と結果の連動システム(因果律)の広範な社会適応は人・組織の新たな可能性を拓く。ただし全て可視化できるかと言われれば否。縁が起こり、臨機応変が生まれるのが社会の実相です。因果の間には縁がある。因果律ではなく因縁果律。その目に見えない「縁」を見つめ、臨機応変する力こそ、AI全盛時代に人事プロフェッショナルの正念場、真骨頂なのだと思います。私自身も、引き続き、機に臨み、変化に応じ、縁を観つめてゆきたいと思います。

(リクルートワークス研究所 兼 リクナビNEXT編集長 藤井 薫)

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※次回(最終回)は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

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2016年12月4日(日)14:42 千代田区九段南3にてビオラを撮影
花言葉:「誠実、信頼」

 

 

第18回人材グローバル化(4)
(2008年10月27日) 

 

 

この10月1日に松下電器産業がパナソニックに社名を変更した。同社が目指すのは、真の「Global Panasonic」の実現であるという(同社2007年度決算説明会〔2008年4月28日〕配布資料より)。同社は売上高に占める海外比率が50%程度であり、ライバル社と比べて国内依存度が高いことを弱点として、その克服を成長戦略の一つに掲げた。この社名変更はそこから脱却しようとする姿勢を象徴的に表している。同社は、グローバル化しなければ生き残れないとの判断に立ち未来像を描いていたのだ。

日本企業にグローバル化が必要なのは、諸外国の経済的発展が著しい中で、日本が人口減少から逃れられないからである。日本の総人口1億2700万人余は、2046年には1億人を割り込み、日本全体が“過疎化”し、“うつ状態”に陥るのは明らかである。

 

「海外人事部」の設置へ

そうした中で日本人が活性化し生きていくためには、発展している海外に市場を求め、自らを磨きあげてグローバル化を進展しなければならない。国としても、企業がグローバル化のために求める、より具体的な実学をベースとした最新の知見を集約する研究機関を持つべき時期にきている。海外事情について調査・研究の余裕のない中小企業でも海外進出できるための情報インフラの整備を主たる目的とする部署を置くべきである。

加えて、企業側のより進んだ対応としては、日本人への人事部とは別の組織として「海外会社人事部」を作らなければならない。なぜなら、現地では、労働法・労働慣習に沿って現地人の人事的な枠組みを決める必要があるからである。例えば、幹部に登用した場合の役割・権限・責任・報酬等について、大企業といえども未整備なところが多い。人材の選抜と定着が難しく、現地マネジメントの悩みになっている。いかに小規模の企業でも、小さいなりにグローバル対応の人事部署を設けることが必要となるのである。

経営的には対症療法的な取組みだけでなく、経営体質自体を強化する観点からの継続的取組みが必要となる。その一環としての海外人事部には、国内人事部と同等の権限を付与する必要がある。海外の占める割合が大きくなるにつれ、将来的に国内人事部以上により大きい権限を付与することになろう。

要するに、日本的な感覚だけで現地スタッフの配置・選抜・教育等を行ってはならず、それぞれの海外拠点に相応しい人事対応がなされなければならない。基本的な思想は、年功要素を排除し、能力重視型あるいは成果重視型の制度を打ち立てることである。グローバルに人材を扱う際の統一価値観であり、統一価値観はこれしかない。

企業における現地化にはいろいろな要素があるが、現地化としては人の問題に行き着く。社長たる者、専務たる者、総務、人事、経理、販売等々要職に就く者の現地化を進めなければならない。経営理念のしっかりした企業ほど、海外の現地雇用の社員に日本人と差異なく接していると感じられる。ただし、文化的な背景や社会性の違いなど働く者のモチベーションにかかわる部分等の心理的な面では、日本人の感覚とは異なるケースが多いので、この点留意する必要がある。それらにきちんと対処しながら、日本の本社と情報を共有し、かつ現地雇用の社員に将来展望をもってもらうという観点からすれば、早い段階で漸次現地社員に経営を委ねる必要があるが、本稿1~3回でも述べたとおり容易ではない。

しかし、終局的にはソニー、日産や日本板硝子のように、外国人社長が日本本社のトップに就任することも厭わないスタンスを持つことが、単なる理想論でなく現実的課題としてこれから次々と登場するであろう。

さて幹部候補となる優秀人材の採用と引留め策は、現地雇用の社員がキャリアを明確に描けるかどうか、特に優秀な者にとって、経営トップになれる夢を描くことができるかどうかにかかっている。中国でいえば、残念ながら日系企業ではその夢を果たせる可能性はまずない。そのため従業員は自身について明確な将来像を描けず、日本の企業は欧米の企業に比して劣位に置かれてしまうのである。

 

現地主義を貫く方法

日本企業は未だ終身雇用制を基調とした労務管理であるため一旦採用した者を囲い込む傾向があるから、雇用の流動性を旨とする多民族の行動・資質を理解し難いという弱点がある。

要するに、本人の資質が向上し労働価値が高まれば、当然のことながら転職し易くなる。ここにこそ、実は働く者の「学習権」「キャリア権」(本紙2665~2667号掲載拙稿「注目すべき『キャリア権』」参照)の本質があるといってよい。自分を磨き上げることによって、より広い活躍の場を得て、より高い報酬を得ることができる。これは、グローバル化に伴う当然の現象のみならず、国内企業も「学習権」「キャリア権」を意識して人事制度を改めなければならない時代に来ていることを示している。

企業が従業員に対して教育機会を提供し、実行していく姿勢をみせることが必要不可欠であると意識しなければ、企業はグローバル化を達成し得ない。企業自らの現在の成長だけではなく、将来にわたっての成長をもたらす優秀な人材を引き留めることができなくなるのである。

企業のグローバル化とは、競争が一層激しくなるがゆえに、「絶えざるイノベーション」につながっていくことが肝要である。そのために企業は、新商品・新経営システム・人事等の新諸制度・新事業を創出しなければならない。とすれば、本社の所在地は、企業としてのイノベーションを最も良く実現し得るのはどこかという視点から、全世界の都市を候補として検討される必要が生じるだろう。グローバル化の行き着くところ、企業グループが成長し続けるための本社の海外移転が、現地主義を貫く具体的な検討課題として現実性を帯びてくるに違いない。つまり、真のグローバル化とは、このテーマを真剣な態度で検討する姿勢を持つかどうかにかかっているのである。

それにはまず確固たるグローバル戦略を打ち立て、地域ごとに独自の経営組織を構築し、調和のとれた事業計画を推進する母体を作ることが大切である。

本社を日本国内に限定する拘りや先入観がなくなり、海外への本社移転を、身近な感覚で捉えられるようになると、人事労務のあり方も根本的に変質しよう。そのとき日本企業は“三種の神器”~「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」の呪縛から解放されることになるだろう。

では、日本企業の近い将来の新三種の神器とは何か?これについては多くの議論を重ねていく必要があるが、目指すべき方向性としては、①「キャリア権の尊重(個人の職業キャリアと人材教育の重視)」、②「ダイバーシティ(性・年齢・国籍によらない雇用の多様性)」、③「日本的成果主義(プロセスと成果の評価)」ではないかと思われる。少なくとも、これらを充足できない企業は脱落する。

 

  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第7回目です。
  • 第7回目は トッパン・フォームズ株式会社元代表取締役社長福田泰弘様です。
■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第7回)■ ■ ■ 
福田泰弘様 
(トッパン・フォームズ株式会社 元代表取締役社長)
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

[福田泰弘様のご紹介]

1935年兵庫県生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業後、凸版印刷株式会社入社。1990年同社取締役就任。1993年常務取締役関西支社長就任(兼パッケージ事業本部副事業本部長兼関西商印事業部担当)、1995年トッパン・ムーア株式会社(現・トッパン・フォームズ株式会社)代表取締役社長就任。2004年代表取締役会長就任。2012年同社退職後に一般社団法人ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会理事長、eBASE株式会社取締役(現任)等歴任。神戸在住。

小生が、開催していた「社長フォーラム」に熱心に参加いただいたのがご縁で、お付き合いいただいております。現在は引退され、チャーチル会に所属して絵を描いたり、囲碁を楽しまれたり、旅行、ゴルフと、なお精力的に活動されています。今回は、同じく「社長フォーラム」第30期から最終回まで参加されていた株式会社ことば未来研究所代表取締役 鮒谷周史様、神戸在住の学校法人塩原学園 元学園本部長塩原一正様、石草流いけばな 奥平清祥様とともに、福田様に「老いの楽しみ」の極意についてお伺いいたしました。

 

[今回のインタビュアー・同席者は以下の通りです]

  • 奥平清祥様(石草流いけばな)
  • 塩原一正様(学校法人塩原学園 元学園本部長)
  • 鮒谷周史様(株式会社ことば未来研究所 代表取締役)
  • 高井伸夫

5人写真

左から鮒谷周史様、塩原一正様、高井伸夫、奥平清祥様、福田泰弘様 
神戸ポートタワーを背景に
取材日 2016年9月30日 
(場所)神戸メリケンパークオリエンタルホテル 14階 中国料理「桃花春」

 

高井

お久しぶりです。引退されて、「老いの楽しみ」は何ですか?

 

福田様

趣味でしょうか。絵やゴルフ、碁などです。絵ではチャーチル会(日曜画家の集まり)に所属しています。私が凸版印刷に入った時の最初の社長が、チャーチル会の創立者の1人でした。そんな縁で、チャーチル会に所属し、定期的に開催される展覧会等に出品したりしています。趣味とは童心にかえる事と思います。家から徒歩10分圏内のところにアトリエと称した部屋があります。そこで童心にかえり楽しんでいます。

 

高井

絵画について、自慢話をお聞かせ下さい。

 

福田様

何年も前の話ですが、アメリカの経済紙「フォーブス」の顧問をやっていた、アメリカの元国防長官が日本にやってきた際に野村証券の人と3人で食事をしました。その時に、私が絵を書くという話をしましたら、「ちょうどよかった。NYにあるフォーブスの美術館でビジネスマネージャーの集まりの展覧会をやるから、絵を出品しないか」と言われて、せっかくだから出しましょうと約束をしました。ところが、大変なことになってしまいました。というのも、上手でも下手でも、30号の大きさの絵を運送するということは、美術品の運送になりますので・・・。

 

高井

運送料がとんでもなく高いと思います。いかがでしたか?

 

福田様

そうなんです。保険料がむちゃくちゃ高くて、何十万円もする。僕の絵はそんな高いものではありませんから・・・。やっぱり出品しなくていいよと言いましたが、そういうわけにはいかないということで運ばなければなりませんでした。それでアメリカに転勤する若い社員がいたので持っていかせることにしました。ANAに頼んだら引き受けてくれました。若い社員をビジネスクラスに乗せまして、絵画を手荷物として機内に持ち込みました。そしたらそのANAのスチュワーデスがえらく親切にしてくれたようで、その後結婚、ゴールインしてしまいました。

 

奥平様

キューピットですね!

 

福田様

それからうちの会社で、私は縁結びの神様になっちゃいました。私の荷物を持ちたいと言うやつが増えて・・・(笑)。本当に不思議なものですよ。こんなこと夢にも思いませんでした。

 

高井

それで、展覧会は成功したのですか?

 

福田様

薬師寺を描いたのですが、みんな見に行ってくれました。ただ、見に行っても写真撮影はダメで、撮影した写真は全部没収でした。フォーブス美術館のVIPルームに通されて、そこでフォーブスの社長に会ったのですが、大変でした。あんな赤っ恥をかいたのは始めてです。フォーブスですから、雑誌の記者が10人くらい、ずらーっと並んでいまして、私はてっきり絵の話が出るのかと思ったら、日本経済の状況について聞かれて・・・そもそも美術の話だと思っていたので、インタビューの回答は、もう全然ダメでした・・・。

絵葉書

当時描かれた絵ですが、上記絵葉書になったとのことです。

 

高井

インタビュー記事はフォーブスに載ったのですか。

 

福田様

僕のアホみたいな経済の話は載りませんでした。いやあ、本当にあれはすごい思い出になりました。

招待状

当時のカクテルパーティ招待状、美術展出展者リスト

高井

絵以外の趣味は何ですか。

 

福田様

やっぱり碁でしょうか。ボケ防止です。アマチュア8段です。ただ、8段というと連敗しますので、あまり人には言いません(笑)。碁というのは、一度段を取ると落ちることがありませんが、年々実力は落ちています。

 

鮒谷様

囲碁はハマってしまうと、面白すぎて仕事どころではなくなってしまいそう、という印象がありますが、現役時代はどのくらい碁をされていましたか。そもそもいつから碁をやっていたのですか。

 

福田様

私は中学1年で碁を覚えまして、学生のときは「語学」は英語ではなくて、「碁学」でした。学校行って、碁を打って、時間になると帰って・・・。もう、その頃に5段くらいになっていました。英語は全然できない。職員室で先生と碁を打っていた。お前は受験勉強をしなくてもいいのか、と言われて、いやいや碁学をやっていますと言いました。

それ以外に、ゴルフもけっこうやっていますし、旅行にもよく行っています。

 

高井

「老後の苦しみ」はありますか?

 

福田様

そうですねえ・・今まで、どこに行っても大御所、大先輩という人がたくさんいました。今はどこに行っても、長老と言われます。乾杯の音頭をとれとか、なんやかんや言われて、俺はまだ若造なのになあと思います(笑)。

 

高井

81歳というともう長老ですが、福田さんは好奇心の塊なんですね。ところで、一番の失敗は何ですか?

 

福田様

やっぱり僕は、“忘れんぼ”です。海外で、パスポートを2回取られました。そういう時に限って普段は少ないのに財布に大金が入っている。旅行の初日に、全部なくしてしまいました。1回目はハワイです。15年前です。その次が香港です。ハワイで、最初に取られたときは、社員が一緒でした。皆に笑われました。まず再発行の時、パスポートの再発行の際には、写真を撮りますが写真屋のおっさんにバカにされて・・・(笑) こんどは領事館に行くと、領事館のおばちゃんにバカにされて・・・こんな日本人いるんだなと、それからJALのおっさんにバカにされて・・・。散々でした。

香港の時は嫁さんと一緒でした。盗まれる5分前に、あなた、財布は私が持つと言われて、財布は渡していました。

 

高井

それはよかったですね。

 

福田様

それが、セカンド財布を持っていたのです。日本円を入れているお財布を渡して、香港のお金を入れた財布を取られまして。パスポートも。それが、この時はついていまして、お金は戻ってこなかったのですが、パスポートだけはかえってきました。ついていたんでしょうね。

 

高井

仕事での失敗話はありますか。

 

福田様

印刷屋というのは、ミスがよくおきます。印刷屋はミスをおこす産業であると言われていますから。その中でもよく覚えているのは、お酒の容器としてビンに変わり紙容器がはじまった頃です。そこからお酒が漏れちゃいまして、それが、全国の酒屋さんに配送した後だったのです。全国から回収するのに、めちゃくちゃお金がかかります。

 

高井

どのくらいの損害だったのでしょうか。

 

福田様

数億円くらいです。原因は、結局は、”経験不足“でした。

 

高井

印刷屋はミスの連続、そして経験こそ、成功のもとですね。

 

福田様

本当にそう思います。基本を忠実に守ることが大切です。漏れてしまった酒造会社の社長さんがとても良い方で、とにかく何年かかってもいいから償却しろと言って値段を上げてくれたり、全部印刷の仕事をいただいたりしまして、なんとか、損害を少なくすることができました。温かい心に感激したことを思い出します。

 

高井

では、「よくやった、神様はいたんだ!」という出来事はありますか?

 

福田様

私は、振り返ってみて一番よくやったというのは、私が社長になったことです。私が社長になった、これがやっぱり不思議なこと、ツキですよね。私はトッパンで社長に一番縁のない存在でしたが、ドンと指定されました。麻雀のパイと一緒じゃないでしょうか。たまたまめくってみたら福田って書いてあったからというように。それから、人生やビジネスでツキが大きなウェートをもち、そのツキを呼びこむ努力をしていくことが大切と考えるようになったんです。

 

高井

人生の中で、神様がいるなと思った瞬間はありますか?

 

福田様

私がトッパン印刷から、トッパンムーア(現:トッパン・フォームズ(株))に転勤するという任務がありまして、ちょうどそのころ電通で年賀会がありました。その年賀会で占い師が何人か来ていまして、20人くらい列をなしていたのですが、1人だけ空いている占い師がいました。サイコロ占いです。サイコロ転がすだけ。こんなの当たるわけないと思いつつも、試しにみてもらいました。私が3個のサイコロをころがすと、その結果をじっくりながめて、「あなたは職を変えますね」と開口一番に言われました。驚きました。それで「あなたは東の方向へ行きます」と。当時、大阪にいたのですが、トッパンムーアは東京でしたから東へ行くというのは当たっていました。「東へ行く。あなたは数年間素晴らしい運勢だ」「あなたはそれを信用して、こちらの職に変わりなさい」と言われたのです。それでトッパンムーアに着任した日の挨拶で「この会社のスタッフはいりません。1人だけ占い師を雇います。」と言いましたら、従業員にえらく恨まれました・・・。そんなこともあって、トッパンムーアでどんなにピンチになっても、俺の運勢はついているんだから、俺の言うことを信じろと言い続けることができました。

 

高井

話は変わりますが、福田さんは現在はどんな方と親しくされていますか。

 

福田様

中学の時の友達で常時会っているのが1人、高等学校で常時会っているのが2人、大学で常時会っているのが5人、凸版系の会社で会っているのが10人前後、あとは、圧倒的に、この学校友達、会社友達以外です。1つは、お客さんとしてお付き合いしているなかで、いつの間にか、家族同士でお付き合いしている方。なんとなく意気投合しちゃう、こういう方が意外と結構います。もう1つは、旅に出て、たまたま行程が一緒になった人、そういう偶然の人が結構あります。それから、もう一つは絵、囲碁、ゴルフなど共通の趣味を通して、又、その先生を通しての知り合い、これは結構、国際的な感じで海外の方も多いです。親しい方は一番の財産です。

 

高井

幅広い人脈をお持ちなんですね。今日は色々な話を聞かせていただきありがとうございました。

 

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福田様は、関西人らしく、笑顔と笑いの絶えない快活、愉快な方です。81歳という年齢にもかかわらず、大変お元気で、多芸多趣味でいらっしゃって、久しぶりにお会いしましたが、あっという間に時間が過ぎてしまいました。福田様は年に10回ほど旅行をするというほどで、絵画や囲碁、ゴルフなど趣味に超多忙な日々を過ごされていましたが、また2年後にメンバーを1~2名増やして会合を開催する約束をしました。

以上

 

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2016年11月23日(水)8:40 武道館にてユッカを撮影
花言葉:「勇壮、偉大、颯爽とした」

 

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第3回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第3回は、第1部「センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善」について、講演要旨と講師である青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表)のご感想を掲載するを掲載する。

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1.講演要旨

【第一部:ユカイ工学㈱ 代表 青木俊介氏】

<AIとは何か>

AI=人口知能

弱い人口知能(機械学習、ディープラーニング)←今ブームになっている。

強い人口知能(ヒトと同じ汎用的知能、ココロを持つ)

 

<AIブームの背景>

1.ビッグデータの登場

Google、Facebookなど

2.ディープラーニング

ビッグデータを学習することにより、ヒトより高い精度の画像認識が可能に。

計算機の高速化により実現した。

 

<AIの特徴>

1.ビッグデータが必要

勤怠情報などを学習するとしても、社員数や勤続年数の少ない事業所では精度が落ちる

2.データがあれば学習ができる

センサを使用し、ビッグデータを収集すれば学習が可能になる

 

2.講師からの感想

「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」という、今一番新しく、また注目度の高いテーマにおいて、新聞記事連載と講演の機会をいただき有り難く思います。

連載や講演でも述べさせていただきましたが、現在実用化されているAIは、汎用的な人工知能や人の心を再現するものではなく、ビッグデータと呼ばれる膨大な量のデータを処理して意味のある結果を導き出す技術です。そのため、画像処理、音声認識、翻訳などの、インターネット上のデータを利用できる分野においてAIの応用が先行してきました。そのAIが、今後は人間の行動、性格、感情の予測・分析にも応用が進んでいくのは必然的な流れだと思います。現在、人材のマッチング、退職者の予測などを目的としたサービスが数多く出始めており、その有効性が注目されています。それに加え、従業員にセンサを装着し、行動・生体データを収集すると、今まで数値では見えてこなかった、ストレス・モチベーションといった従業員の心理も数値化できることがわかってきています。

上記のような、新しいAIの応用が矢継ぎ早に開発されつつある状況で、弊社でもセンサを使った人の行動のモデル化の取り組みを進めているところです。弊社の事例を中心にいくつかの事例を紹介させていただきましたが、皆さまの業務においてもAIの応用に取り組むきっかけになれば幸いに思います。

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※次回は、第2部「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~」について、講演要旨と、講師である藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長)のご感想を掲載する。

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2016年11月23日(水)11:30 にてストック・ベイビーを撮影
花言葉:「愛情の絆」

 

 

第17回「貧困問題の克服」
(平成28年5月30日) 

 

 

「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」(古代ローマの哲学者セネカ)。

世界で一番貧しい大統領と呼ばれたホセ・ムヒカ氏(前ウルグアイ大統領)が講演でよく引用するこの言葉は、老子の「足ることを知る者は富めり」(知足者富)と同じ思想に立つものであろう。物質的な欲望を肥大させて欲しがり続けることの愚かさと不幸を説いていると思う。

しかし、物欲を批判し、精神の豊かさを称揚するだけでは解決できない厳しい現実が、いまの日本にはあるのではないか。子どもの貧困、下流老人、老後破産などという言葉がごく普通に使われ、足るを知るどころか、改善の見込みのない貧困に陥る人が大いに増えている。

これは、日本全体が貧しくなっている実情の反映でもあろう。民間給与実態統計調査(国税庁)によれば、正規・非正規を合わせて1年を通じて勤務した給与所得者1人当たりの年間平均給与額(男女計)は415万円(2014年)だが、ピークだった1997年に比べて52万3000円も減少している。そして、エンゲル係数(消費支出に占める食料品の割合)は、2005年に総世帯ベースで最低値22・7%だったところ15年には25%と上昇している(総務省)。また、生活保護受給者数についてみると、最低だった1995年度の約88万2000人からほぼ増加し続け、2011年度に過去最高を更新、今年2月分概数で2・5倍近くの約216万1300人となっている(厚労省)。給与所得が下がり、家計は苦しく、困窮者が増え続けているのである。

この4月に発表されたユニセフの報告書によると、子ども(0~17歳)のいる世帯の所得格差は、OECDやEU加盟の41カ国中、日本は8番目に大きく、最も所得の低い層の所得は中程度の所得層の4割ほどにすぎないという(各国所得のデータは主に13年)。親の貧困がストレートに投影される子どもの貧困問題の深刻さを思わずにいられない状況である。衣食足りて礼節を知るという言葉のとおり、貧困になればなるほどモラルは低下し、育児放棄のみならず親が子どものアルバイト代を奪う例まであると聞く。年老いた親の年金をあてにする無職成人と同じ“たかり”の発想である。

日本の15歳未満の人口は1982年以来35年連続で減少し、社会の活気が失われているが、これに子どもの貧困問題が加わると、日本全体を覆う沈滞ムードは倍増する。将来を担うべき子どもたちが、厳しい環境にあってもなお未来を信じて夢や希望や目標を持てる社会にしなければ、日本は消滅の危機に瀕するだろう。

私や私の親の世代は社会全体が貧しく、皆が必死で働き、家庭や近隣社会には温かさと愛情があった。子どもの貧困に関する法律が施行されたり、貧困対策が様ざまに議論されているが、実効性は未知数である。すべてが精神から始まるべしという摂理に照らせば、親や大人の心の貧困こそが貧困問題の根本であることを直視し、たとえ迂遠であろうとも、親や大人が自立心・自律心と責任感を持って働くための心の教育と、時代に合った仕事力を身につけるキャリア教育を施すしかない。

子どもは社会の宝である。子どもの貧困問題は国を挙げて取り組むべき最優先のテーマであることを、私たちは決して忘れてはならないのである。

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2016年11月27日(日)8:12 千代田区麹町6にてプリムラを撮影
花言葉:「青春の恋」

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第2回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第2回は当日の私の開催挨拶文を一部抜粋して掲載する。

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「ご挨拶に代えて ~AIの限界 人間の素晴らしさ~」(抜粋)

 

2 AIと人間の違い、人間がAIになお優ることとは

AIが凄まじい勢いで発達する今、AIと人間の違い、そして、AIがどれだけ発達してもなお人間に劣ることが何かを見極めることが、これからの時代を生き抜いていく上で最も重要になります。昨今テレビや新聞などをにぎわしている人間の脳に匹敵する知能、場合によっては人間の脳を凌駕する知能を備えたAIと、人間との決定的な違いとはなんでしょうか。

自然界において生物は生きるか死ぬかの生存競争の中で生きています。しかし人間は頭を使い、脳を発達させ、人として、人類として、保全されるようになったため、生存競争に身を置くことがなくなってしまいました。

一方、なお生存競争の只中にある動物一般は、絶えず生きるか死ぬか、日々おびえながら生活しています。雪崩が起きたときに動物の死骸がないのは、彼らに雪崩を事前に察知する能力が備わっているからです。

人間は文明の力によって自らの身を守れるようになったことと引き換えに、こうした危険予知能力を鈍化させてしまいましたが、たとえば「胸騒ぎがする」、「虫の知らせ」といったものはわずかに残された危険予知能力による反応でしょう。実体験に即して言えば、裁判で胸騒ぎがするときは、敗訴するという予感がしますから、そうした時には一層裁判に勝ち抜く努力をしたものです。

すなわち、生物には、生まれながらの野性的な本能から、第六感ともいうべき危険予知能力が備わっているのです。それに引き換え、生物ではないAIにはこうした本能に基づく能力が全くありません。

 

人間の機械に対する決定的優位は「死」です。人間が有する深い情緒はすべて、いずれ朽ち果てるという絶対的宿命に起因しています。いつか死ぬという運命にあるからこそ、生きている中でより多くのことを感じ取り、思いを馳せることができるのです。永遠に生き長らえるのであれば、私たちのあらゆる情緒は極めて希薄になるか、あるいは消失するでしょう。人間には「死」があるからこそ恐怖がもたらされ、生きる喜びを感じ、幸福感を得るのです。孤独になれば寂しさに浸り、身内や親しい人を亡くせば哀しみを感じます。「死」という概念と無縁であるAIが果たしてこうした情緒を持ちえるでしょうか。こうした情緒に由来する小説や音楽を生み出すことができるでしょうか。将来AIが完全に自律的に発想し、物事を創造できるようになったとしても、肉体を持たず、生命体ではないという点は、覆しようがありません。その創造力にはおのずと限界があるように感じております。

 

特定の作業に対するAIの能力は人間を簡単に越えていきますから、人間固有の能力を伸ばさないと、なんでもAIに依存するようになってしまいます。人間がひらめくためのヒントとして、また、生産性や効率を向上させるためのツールとして、AIを最大限に利用し、最終的な判断や決断は、「死」という限界のある命をもった、情緒のある人間が、時には第六感を活用し、自信をもって下してゆくことが大切です。

 

3 AIに使われず、AIを使う立場になる

AIに代替させることで、今ある人事の業務の多くは不要になります。たとえばAIは、人間が作業するよりも早く、正確に、客観的に人事選考や評価の基準を導き出すでしょう。しかし、そうして導き出された基準を運用するのは私たち人間です。最終的な判断は、データ以外の印象や直感も加味して行われます。企業にはそれぞれ文化があり、人材との相性がありますが、企業も時代とともに変化します。データが教えてくれるのは、過去あるいは現在において最適な人材に過ぎません。

自らの仕事、ひいては人事部の仕事がなくなってしまう、とAIを恐れたり毛嫌いしたりするのではなく、もっと柔軟に技術的な進化を受け入れて、より精度が高く、効率的な方法に目を向けるべきです。AIを使えるところは使い、生産性や利益を最大化し、最終的な判断は人間が担えばよいのです。

AIの発達によって大規模な失業が生じたり、人間力や社会力が衰退したりするのではないかという懸念の声もありますが、そうとは言えません。技術の進歩で社会構造は大きく変化し、社会状況も現在とは変わる可能性が高いわけですから、従来の知識にこだわらず、様々な可能性を視野に入れた広い議論が必要でしょう。AIに頼ること、人間がやるべきこと、これからの時代をどう生き抜いていくかを考えるきっかけとしていただければ幸いです。

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※次回は、第1部「センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善」について、講演要旨と、講師である青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表)のご感想を掲載する。

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高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
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Nobuo Takai

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