高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第5回】社長のカリスマ性~原点は「不思議さ」にある(1993年10月26日)

 

 中小企業において、社長は対外的にも対内的にも「セールスポイント」がなければならない。とりわけ、いわゆるカリスマ性が必要だ。これをどう構築するかが社長の課題である。

 カリスマ性の第1は「不思議さ」があること。平凡ではカリスマ性は生まれない。例えば「いつ寝ているのだろう」でもいい。不思議さは部下にとって思いもよらない世界でなければならない。人格、識見、手腕、力量、多芸多趣味が、不思議さを醸し出す。平凡には魅力はない。不思議さイコール魅力である。

 不思議さとは「自在に話ができること」に始まる。しかも話題が豊富でその場での焦点を的確にとらえていること。社長の挨拶は、予め紙に書いたものを読むのではいけない。

 次には、相手の話が聞けること。さらに一言二言添えて、相手をハッとさせることが大切。そのためには、絶えず様々なことに関心をもっていないといけない。

 自分の頭で発表でき、相手の話を咀嚼して、そしてそれをさらに一段と広く深く気付かせる一言、あるいは相手を褒めてさらにプラスアルファーさせる独創性である。

 もうひとつカリスマ性で重要なのは、話ができることと関連するが、明確な意思表示、つまり明確な方向性を示すことである。それには、大きな声で話す、歯切れよく断言する、文書で公表する(口頭で明言し文書で断言する)ことが必要である。

 そして、うまくいったときは全員の努力の賜物、うまくいかなかったときは「オレの責任だ」とするところにカリスマ性の原点がある。

 リーダーシップとカリスマ性は全然違う。リーダーシップがあっても社員の3割は絶えず文句を言っている。そんな批判する権利を放棄させる力がカリスマ性だ。

 その意味で、カリスマ性とは大衆を盲従させる力であり、憧れの対象である。そのためには実績をあげること。これに尽きる。

 

「AIと私たち」 第7回

AIと人事労務(4)育成・経営・労務管理

 

■AI時代の人材育成

 第一に、AI時代の人材育成には、AIが発達する速度が激しい分、より一層のスピードが求められる。AI周りの技術進歩は加速度的であり、小学校で教わった基礎知識が中学校を卒業する頃には化石扱いとなる可能性も決してゼロではないのである。将来の発展性まで見極めた上で育成しなければならないのだから、教育者・指導者には極めて高い知識と情報収集力、予見力、柔軟な姿勢が求められよう。

 

 第二に、AI時代の人材育成は長期にわたって行われなければならない。第3回第6回でも触れたが、まず、学校教育による長期育成が必要である。また、社会人育成においても3、4日の研修によって新しい仕事をこなすことができる時代は去った。成果を上げるためには一定の年月が必要で、かつ、それを迅速に展開しなければならない。

 そのためには、人事労務の専門家が積極的に人材育成に当たらなければならない。AIの機能拡充に伴って先を見通した人材育成、人事配置をしていかなければならないからである。未来を見通して職種を決定するという人事配置に繋がる人材育成は、教育だけではなく、AIについての理解が深い人材が当たるべきである。同時に、労働移動もよりスピーディーに行われなければならない。

 

 第三に、若者の人材育成に注力することはもちろんであるが、中高年層の人材育成も大いに心掛けるべきである。平成の終わりになってもパソコンが扱えない大臣がいたように、AI時代に取り残される中高年層が大量に生まれることは容易に予見できる。これを克服するには教育、人材育成に依るほかあるまい。

 AIが発達し、人間の仕事へ参入すると、ベテランであることがかえって重荷になる。新進気鋭の人材がどんどん伸びていくのに対して、中高年層は伸びが遅く、AIの攻勢に晒され、担当職務がこなせなくなるからだ。人材育成の在り方を根本的に変えなければならない。若者中心から、中高年中心も抱き合せたダブルデッカー(2階建て)の人材育成へ変えなければならない。

 AIによって担当職務が陳腐化し、その職務に就けなくなった者は、新しい職務に対する理解を深め、現実にそれを実施して成果を上げる必要がある。すなわち人事労務担当者はまず、対象者が新しい職務を理解できるように落とし込まねばならない。新しい職務がインターネットやITに関わる内容である場合、それらに疎い世代にいかに短時間で本質を理解させ、苦手意識を払拭させ、むしろ好意的に受け止め、実施し、成果を上げてもらえるように導くかが、人事労務担当者の腕の見せ所である。

 

 AI時代の労働者は、AIを作る人、使う人、使われる人、そして、使われることも出来ない人の4つに分化する。我々はAIを使う人に、更に言えば作る人にならねばならないし、そういう人材を育てなければならない。

 

■労務管理にもAIの活用を

 AIによるデータ分析の特徴に「客観的」という面がある。これは個人の感情を抜きにして公平な分析や見解が欲しい場面で役立つ。そこで近年では、AIを人事労務管理に活用する企業が増えてきている。

 これまでは上司や経営者が勘と経験などの主観で行ってきた評価や配置を、AIであれば膨大なデータを基に、客観的かつ網羅的に全社員を把握し、的確にかつ驚異的な速度で処理できる。退職リスクが高まった社員を検知し、アラートを発することも可能である。

 歩行パターンや行動データをAIで解析することで、組織内の人間関係を推定して効率よく仕事をこなせる組織づくりを行ったり、職場でのコミュニケーションや時間の使い方などの組織活性度の向上につながる行動に関するアドバイスを各人ごとに配信したりするサービスもある。

 これらは言うまでもなく企業の競争力向上や働き方改革につながる。組織マネジメントの根幹にこそ、積極的にAIを活用していくべきである。これによって人事労務担当者の仕事がなくなる、と危惧するのであれば、それは自身が「AIに使われる人」あるいは「使われることも出来ない人」であるということである。

 

まとめ

・AI時代の人材育成キーワードはスピード・長期・中高年

・AIを作る人、使う人、使われる人、使われることも出来ない人の4つに分化

・労務管理にもAIを積極的に取り入れよ

 

(第7回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

 

 

第4回 意志あるところに道あり

 

あすか人事コンサルティング
代表 太田 正孝

 

 4月1日に新元号「令和」の政府発表がありました。報道によると、多くの国民が新しい時代を迎えるという感慨をもったようです。一方で、国際化、情報化時代にあって日本独自の元号をつかうことは時代にそぐわない、といった意見も紹介されていました。しかし、大方は新元号を歓迎していて節目の重みを大事にする日本人の心理性向の根強さを感じました。昭和、平成、これからの令和と三代に亘って生きる私世代も令和時代をどのようにしてすごそうかという思いでいるところです。

 

 4月に宇宙関係の大ニュースもありました。

 小惑星探査実用機「はやぶさ2号」は現在まで順調な飛行をつづけているとのことです。JAXAの人達はもとより、膨大な精密部品づくりに貢献されてきた中小企業の方々はヒヤヒヤしながらも自信を深められたことと思います。まだまだ続くミッションを完全に成功させて、2020年末に予定されている無事帰還が期待されます。

 もう一つのビッグニュースは宇宙の神秘の一つ、ブラックホールの写真が公開されたことです。時間と空間の物理の常識が通じないブラックホールの写真は撮影することができないといわれていたので驚きでした。ブラックホール自体は真っ黒になっている実際の写真をみると、いままで理論に基づいてCGで作られた画像とそっくりだったので、人の想像力の素晴らしさにも驚きました。

 南極を含む世界各地の電波望遠鏡を原子時計で極めて正確に同期させ、地球規模の仮想電波望遠鏡(電波干渉計)の膨大なデータを2年かけて国際チームで処理した結果だ、という顛末を知り、改めて天文物理学者達のすさまじい執念、好奇心、智慧、国際協力など彼らの功績に感嘆しているところです。

 直径一万キロに相当するこの電波干渉計は、人間なら「視力300万」の解像力に相当し、月面においたテニスボールを識別できる位と聞いて科学技術のすさまじさを感じた次第です。まさに宇宙の神秘をなんとか知りたい、という学者達の共通意志がひとつ実ったわけです。

 高井先生もよく引用される言葉「意志あるところに道あり」、この言葉はリンカーンが言い出したとされ、あのアインシュタインも1922年の来日時、帝国ホテルのベルボーイにお礼の意味でこれを書いたメモを渡したという逸話を思い出しました。やはりスーパー天才も自分に言い聞かせながら業績を積み重ねていったのかもしれません。

 

 桜が満開になり気分も上向く4月はまた新年度をむかえる児童や学生、新入社員にとっては新しい道に踏み出す月でもあります。新入社員を迎える側でも期待を込めて待っている頃でしょうか。採用の場では良い人材を求めて売り手市場になった昔風にいえばこの「金の卵」をどのように確保していくかに知恵を絞っていたことでしょう。

 就職サービス関連会社のデータでは、キャリアアップをするために4割程度が将来転職を考えながら入社している、といわれ、また早期退職率では学歴にかかわらず新入社員の3割程度が3年以内に実際に会社を辞めているということです。

 

 新しい環境や仕事につくと誰でも不安な気持ちになり適応できるかどうかで悩みます。それを乗り越えて新たな展望を開く人と、辛抱ができずに適応努力をしない人とに分かれていきますが、職業人生航路の第一歩として選んだ仕事や会社になじめないとすればそれは多分不幸なことだと思います。昔から「石の上にも三年」という諺もありますので兎も角、初めての仕事に全力で取り組んでいくのが大事と思っています。自分に合うか合わないかはその後に、つまり3年経った後くらいに決めても遅くないのではないでしょうか。

 

 働き方改革の中で、AI(人口知能)やICT(情報通信技術)の著しい進展の先には、今は花形の仕事もいずれAIに取って代わられるなどといわれています。そのために今のうちに副業や複業をして、時代の流れに耐える能力を身につけておいた方がよいなどとの意見もかなりでてきています。

 その背景には「終身雇用」が徐々に崩れてきている事実があるのでしょう。しかしながら、現実には身近に迫っていると実感している人は少ないのではないでしょうか。有名会社が副業を認める制度をいれたなどとの報道を見かけますが、みんなが副業を始めたら、それこそ新たな社会問題を起こさないか、よく考える必要があると思っています。

 

 欧米では一般に終身雇用ではないのが普通ですが、(だいぶ昔のことですが)私の通算10年ほどのドイツ・アメリカでの経験では現地の同僚達はできるだけ今の仕事をつづけて安定した生活を送りたいというのが普通でした。勿論、高みを求める人達はキャリアアップと収入アップを求めて転職していったのも事実ですが、欧米の文化の中では自己責任で生きていくというのが基本なので多様な価値観が併存は当然で、どちらでも良かったのかもしれません。

 

 日本では終身雇用が続けられる会社ではそれを続けて人々の安定生活を支える努力が今後も求められるでしょうし、会社生命が比較的短い浮き沈みの多い業界にいる人については、自分が進んで行きたいキャリアパスとそのキャリアラダーを想定してそれに必要は能力アップをしていくのが大事です。そのためには自分の性格、行動特性、得意分野、好奇心を持続できるエリア・楽しさ、粘着力、語学力、教養の程度、などなど冷徹に自分についての棚卸しが求められます。これを怠ると、自分向きと思って転職したとしてもそこで困難に直面すると又々転職を考えるという、いわゆるジョブホッパーになって人生の大事な時期を無駄に過ごすことになってしまいかねません。日本では転職が狙い通りうまくいく人はまだ少数だと思いますのでこの事実をよく見つめておくべきでしょう。

 

 最近、外資系に入社するのが就職を控えた優秀な学生さんの間で人気だそうです。確かに日本の会社に入る「就社」というより、はじめから専門分野を決めた採用方式をとる外資系は魅力的に見えるのでしょう。外資系では、おおむね能力・成果主義に基づく企業文化ですので、それを理解して厳しい状態に自分を置いて自らを磨きながら挑戦していくという若者には適しています。例えばアメリカに生まれ育ったつもりで就職し、自ら主体的にキャリアを築いていくのと同じことですので格別難しいことではないかもしれません。外資系にいた私の経験では、論理がすべてと考える人は成功していないように思いましたし、教養が豊かで喜怒哀楽といった人間そのものを理解する人でないと成功しないと思います。やはり人間の基盤は世界共通だという証かもしれません。また、日本の受験競争を勝ちぬいた実績そのものは実社会ではあまり役立たないでしょう。仕事では答えのない課題が多いので、事にあたっては「論理的に考え」、且つ、高井先生が言われる「ハートで考え」、そのバランスに立って最善の案をみちびきだして実行しなければなりません。

 外資系の門をくぐった人は、このところを良くわかって活躍してほしいものです。

 

 4月という春の心あらたまる頃にあって、今年のトピックスをもとに、新入社員に対して、あるいは迎える側としての思いを、「意志あるところに道あり」に込めてみました。

 そして5月からの「令和」時代が、文字通り美しく平和であることを願いつつ。

終わり

 

「明るい高齢者雇用」

第1回 失業率5.7%にも―世界的視野から模索―

(「週刊 労働新聞」第2147号・1997年4月7日掲載)

※当時の文章のまま掲載しております。

 

 日本のみならず全世界的にも「明るい高齢者雇用」はないのだろうか。まずは日本の現況を確認してみよう。平成7年10月1日時点で日本の高齢者65歳以上人口は1,860万人と総人口の14.8%を占め(「平成7年国勢調査」より)、65歳以上の労働力率(各年齢層に占める労働力人口の割合)では、日本37.6%、アメリカ9.1%、ドイツ4.6%(いずれも94年男性の数値)と国際的には極めて高い水準にある。

 またいわゆる定年制に関しては、高年齢者雇用安定法等によって平成10年4月1日までに60歳定年制が義務づけられており、現在60歳定年企業の割合は労働省「雇用管理調査報告」によれば、88.3%と着実に定着しつつある。しかし65歳まで働ける何らかの制度(65歳以上定年制、勤務延長制度、再雇用制度)を有する企業は20.4%にとどまっている。総じて高齢者の雇用は厳しく、平成7年平均で全体の失業率3.2%に対し60~64歳は5.7%、有効求人倍率も全体の0.63倍に対し、同0.08倍と全く冷え込んだ状況にある。

 一方中国では法律上の定年は男子60歳、女子55歳だが、現実には国有企業においては30年間働き続ける(国有企業であれば同一企業である必要はなく勤務年数は通算される)と定年時の給与の6~8割の年金が支給される。また、国有企業で30年勤務すると、退職後も終身医療保険の適用を受けることができる(30年未満で退職し、職に就かなかった場合には医療保険の適用がない)。

 このような状況下で、30年勤続した人は“肩たたき”があり退職せざるを得なくなる。退職後の年金の額が840元(1元は約15円)を超えないものには所得税がかからない。ちなみに法律上は800元を超えると所得税が掛かることになっているが、控除が40元あるので、840元ということになる。

 さて実際の退職年齢についてみてみたい。文化大革命時の青年が現在壮年期にある。彼等の修学年限は中学校が2年間、高等学校が2年間と短縮されていたことから、大半は14歳もしくは16歳で労働についた。その大方の者は「下放」により農業に従事し、そのあと大学に進学し国有企業に就職した場合には44歳で退職する途が開かれることになる。

 かくして中国では極めて若くして仕事を離れることが多い。60歳以上の人は退職後専門職に従事できる人は別として、再就職できないといってよい。“一人っ子政策”の下、孫の世話をするのが一般的である。また40~50歳代で退職をした者は再就職を心掛けるが、45歳以上の女性の就職口は、現実にはまずないだろう。

 以上は中国北京の弁護士・王君氏の語るところである。希世軟件系統(上海)有限公司の社員、李国麗さんは、上海(北京に比して経済活動ははるかに好況)では男性は従来55歳が事実上の定年であったが、最近50歳に下がり、女性の事実上の定年は40歳ないし45歳であると語っている。これも中国の実定年年齢が下降していることを裏書きする証言である。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第4回】推進力とバランス感覚~安定を求めるな(1993年9月28日)

 

 若い頃に「法律とは、命令と禁止を定めたものだ」と教えられた。「しなければならない」と「してはならない」が法律だというわけだ。

 ここから発展させて、マネジメントと法律はどう違うかを考えたい。

 マネジメントは「した方がいい」とか「しない方がいい」で、「した方がいい」のごく一部に「しなければならない」があり、「しないほうがいい」のごく一部に「してはならない」がある。だから、法律よりマネジメントの方が概念が広く、難しい。

 「した方がいい」か「しない方がいい」か、そのバランス感覚が一番大切だ。それに推進力を付けるのが経営である。推進力がつくほどバランスは崩れそうになるが、その舵取りを巧みに行っていくのが名経営者である。

 また「何が何でも原理原則に立ち戻って、その上で例外があるかどうかを吟味するのが法律家の役割だ」ということも教わった。

 シェアを拡大しようとする。経済規模が拡大しているときは放っておいてもそうなったが、経済規模が縮小している今は、まさに死に物狂いの努力をして初めて素敵な発想も実現でき、成長させることができる。厳しい戦いである。

 安定とは、戦いを止めることと同じだ。人間の原理原則は競争であり戦いである。安定を求めてはいけない。

 

「AIと私たち」 第6回

AIと人事労務(3)キャリアコンサルタントの台頭と教育改革

 

■AI時代の働き方環境整備

 AI時代におけるキャリア転換を円滑に進めるには、個人の意識改革と同時に、社会にも意識や制度の改革が求められる。新たな能力開発を促す財政的支援や教育・職業訓練機会の提供、スキルを得た人が働き場所や働き方を変えやすくなるような法制度改革といった労働市場の整備が必要となる。例えば、短期での転職者に対する企業側・社会全体の意識改革、失業保険給付や有給休暇付与の条件変更などだ。都市部にしかない業種・会社の仕事に、地方在住者でも従事できるようなリモートワークの拡充も急がれよう。

 *リモートワーク…従業員が会社に出社せず、自宅など自由な場所で仕事をする働き方。

 高齢化が加速度的に進み、特に都市部で介護施設の供給が追い付いていない現状からみれば、介護離職に追い込まれる人材は増加の一途を辿る。人材不足と介護貧困の両問題を解決するには、時間と場所という制約について極めて柔軟な働き方を実現するほかにない。幸いにもAIやIoTによってそうした対応が技術的に容易になっているのだから、採り入れないのは人間の怠慢である。それで人が足りない、外国人を呼び込めと言っているのでは順番が違うのではないだろうか。

 

■キャリアコンサルタントの需要拡大

 産業構造の転換に対応した人材育成や成長分野への労働移動も必要になる中で、今以上に活躍が期待されるのが、職業選択や職業生活設計、職業能力の開発・向上に関する助言や指導を行うキャリアコンサルタントである。

 AI時代には既存の職種に代わる新たな職種が多く生まれるから、キャリア転換においても職種変更が多々生じうる。職種の変更は労働者のそれまでのキャリアを失わしめる行為であり、自分の人生を半ば失うことと同義といっても過言ではない。これを回避するために最も重要なのは、人生における最初の職業選択である。すなわち、将来に向けた職業とのマッチングだ。AI時代のキャリアコンサルタントは転職者だけではなく、むしろ新入社員にこそ大切な存在になるのではないだろうか。

 また、AI分野の知見のない企業の人事部だけでは、長期的に見て有効な採用・配属、さらにはその後の配置転換を判断できなくなるから、キャリアコンサルタントの意見を重視しなければならなくなるだろう。

 もちろん、これからのキャリアコンサルタントがAIの基礎知識を得るのみならずAIの今後の発展状況について逐次新しい情報を習得し、知見を養うことは大前提である。よりキャリアを伸ばす方向、すなわち、AIに奪われない、人間固有の能力に特化した方向へと提案しなければならないからだ。

 

■教育改革の必要性

 人材育成に取り組むリーダーや指導者、教師などの教育者層を再教育する必要性も高まる。トップ人材の育成とミドルスキル人材の底上げは、社会人教育のみならず、大学や大学院教育でも必要である。これに国は投資しなければならない。

 特に学校教育は抜本的に変えていかなければならない。小学生になる今の子どもの65%は、現時点で存在しない仕事、すなわち、将来生まれる新たな仕事に就くと予想されている。前回述べたように、創造性やコミュニケーション能力の醸成が極めて重要になるだろう。

 

■文理一体の改革を

 第3回で述べた通り、日本のAIやIoTといった最先端技術分野の人材不足は極めて深刻なのだが、これを受けた国は端的にAI人材を増やそうと理系強化に奔った。すなわち、2015年9月、文部科学省が国立大学に対し、人文科学や社会科学、教員養成について組織の廃止を含む見直しを求めたのである。

 しかし、AI時代には機械には真似できない「人間力」を養う文系学問の重みが増す。前回述べた「社会的知能」もこれに類するものだが、AIに対する人間の有利性を補強する力が大切になるのである。実際、英米の人工知能科学者は、「若い人には、数学や自然科学に加え社会科学、人文科学と幅広い分野をバランスよく教えるべき」、「自然科学は世界をどう理解するかを教え、人文科学は我々自身をどう理解するかを教えるので非常に重要。科学技術と支え合う道を探るべき」だと述べている。

 日本はAIを開発・研究する理系学生を増やすと同時に、AIを扱う人間を育てるためには文系も蔑ろにせず教育の質を高め、理系学生にも文系科目を学ばせねばならない。2021年からセンター試験に代わる「大学入学共通テスト」で問われるのは、従来の詰め込み型の知識や1つの正解ではなく、課題を見つけ、解決へ向けた思考力・判断力・表現力などの総合力である。

 AI時代においては理系、文系と区切ること自体が最早ナンセンスである。「仮説を立て検証するプロセスの訓練」と、「技術や科学を面白いと思う気持ち」を育成し、豊かな言葉で表現する、「人間力」を高めることが肝要である。

 

  まとめ

 ・企業も意識改革とリモートワークなどの環境整備を

 ・AIに長けたキャリアコンサルタントを活用する

 ・文理一体の教育で人間力を強化する

 

(第6回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

 

 

第3回 歴史・地理学の役割とホモサピエンスの責任

 

あすか人事コンサルティング
代表 太田 正孝

 

 かつて、詩人サミュエル・ウルマンの「青春」という詩が経営者の間で流行ったことがあります。松下幸之助さんが座右の銘にしていた、というので脚光をあびたようです。

 それは「青春とは、人生のある期間をいうのではなく心の持ち方を表す。優れた創造力(想像力)、逞しい意志、燃えるような情熱、勇猛心、冒険心、・・・ 年を重ねただけで人は老いない、理想を失うときに初めて老いが来る。・・・」というものです。

 私がこの詩を知ったのは20才代後半と思います。当時、定年は60才というのが主流でしたので、定年退職者表彰式の記事を読むと、多くの社長さんがこの詩を引用し、退職者を送り出されたようです。今、世の中は年を追って高齢者が増加していますが、元気に「青春」を実行されている人も多く見かけるようになりました。高井先生はこの言葉どおり青春まっただ中で活躍されていますが、私はじめ周りにいる仲間の多くは少々くたびれて「半分青い」くらいか、あるいは「白秋」を迎えているのが現状です。高井先生を見習って「青春」に返ることを目指して過ごしていきたいものです。

 

 ところで、私は初回で、歴史地理を学んできたことを書きました。その頃の気分に戻って、本当の「青春」時代を少し振り返りながら、実老人の「青春」の思いについて書きたいと思います。

  私の地理学の恩師は考古学と地理学を極め、独自の歴史地理学を築き、教えていた人だったですが、とりわけ野外での巡検(フィールドワーク)を大事にしておられました。

 この学問はその場所に行かないと真の研究にならないという信念から地理学教室の面々を恩師の巡検に同行させ指導するスタイルでした。今の時代でいう率先垂範、現場主義ということでしょうか。いまその時を思い返すと結構その後の旅行の仕方に影響していると感じます。景色を眺めながらその地に暮らす人々や歴史を想像する癖となって残っています。

 

 歴史地理学の研究では、対象地域の名士のお宅を訪れて古記録や古地図など資料を収集したり、古老の話をうかがったりしながら調査と解読、解釈をしていきます。正直、古文書を読むのが大変で苦労した思い出があります。この過程で好奇心と探究心、忍耐力、粘着力、推理力などが身に付き始めたように思いますし、誰もよく知らない庶民や農民漁民の知恵や工夫の歴史を垣間見て、高校で習う権力者の歴史だけが歴史ではないと考えるようになりました。尤もこれはマニアックかつ地味すぎて世間受けはしないですが。

 

 義務教育や高校では他に学ぶべき多くの事柄があるために「主な歴史的事象」とその年号などを主に学ぶようです。大学受験でも歴史や地理はあまり重視されていないので、大学生か社会人になって興味があれば歴史書や小説、旅行、映画、TVなどで勉強してください、といったことになっていて残念です。日本は地震、火山など災害の多い国で歴史的、地理的要素が防災、減災に大きく関連するのでもう少し重視した方がいいのではないでしょうか。歴史に造詣が深い経営者も多くおられるので社員の採用の際には、その人の思考過程に歴史が含まれているかどうかを考慮していただきたいものです。

 

 さて、地理学ですが人間の歩みを研究する歴史学と重なるところもありますが、自然環境とのかかわりにおいて、地形や気象条件の違いからくる多様な地域社会の姿、独特の文化を研究する分野です。古くはドイツの地理学者が唱えた決定論「人間の活動は環境とりわけ自然環境によって支配されている」、フランスの地理学者が唱えた可能論「人間は自然に干渉し、自然に服従することはない。人間の叡智・技術による限りない未来への可能性」と両論のせめぎ合いがありました。

 要は人間と自然環境のどちらに重きを置くかであって単純に割り切れない問題であるものの、色んな分野で派生的に研究されています。例えばダーウィンの進化論は適者生存が幹にあるので決定論に寄っていると思いますし、さらに昨今の自然災害を考えると地形、気象など圧倒的な自然力に対して人間の文明が太刀打ちできないのをみると決定論が優勢と言えます。どうでもいいように思われるかも知れませんが、原発立地などの報道をみていると議論は可能論と決定論の戦いであり、両論での整理をして落としどころを探ればより建設的な議論ができるのではないかと思います。

 

 この3月11日で東日本大震災から丸8年が経ちました。すさまじい地震と津波は地球の巨大なプレートの動きに因るものでした。

 日本列島は2千万年前あたりから大陸の一部が離れてゆっくりと作られ、現在の形にだいたい落ち着いたのは2万年前くらいといわれています。この変動は、止まることなく少しずつ進行しています。そうなっていることは頭ではわかってはいるのに今日明日に大きな変動は起こらないだろうと楽観しがちですが、人間は「茹でカエル」状態が心地よく感じていられるほど短命だからでしょう。

 

 近所の団地造成現場をみると、小高い丘を削って谷間を埋めて一面平らにする工事が進んでいます。いずれこの地に家が建つでしょうが、大きな地震がくると谷間だった部分は崩壊リスクが高いでしょう。地理的特性・個性を考慮しないで経済効率優先で地表の細工をつづけているわけです。福島第一原発も元々高さ30mあった場所を炉冷却用海水循環の効率化のためか、わざわざ大幅に「嵩下げ」して建設したことが基本問題と考えられます。 仮に標高を下げたら補助電源とその燃料を頑丈な高所に複数置くとかのトレードオフ対策をしておく必要がありました。発電所なので自然災害時であっても冷却電力を失うことはない、と考えてメルトダウン絶対阻止の二重三重の対策をしていなかったのでしょうか、残念です。何せ相手はなにが起こるかわからない自然の営み、しかも千年万年単位のスパンで起こることですから、可能論ではなく決定論にたって考えておくべきだったと思います。

 

 私達は太陽という巨大な核融合炉からあまたの恩恵を受けています。太陽エネルギーが太古の昔から植物や動物にその形を変え、その蓄積された石炭、石油や天然ガスなどのエネルギー資源を急速に消費していることを人はあまり意識しません。今や、超巨大な石油タンカーやLNG船が日常的に航海しています。万一の重大事故に備えてフェールセーフ策がとられているのは当然ですが、設備の劣化、システムの欠陥、人的ミス、さらにはテロなど人間起源のリスクがあるのも昨今の姿です。こうしたことから地球規模の災害につながりかねない時代ですので、歴史的地理的視点も取り入れ、広い視野と長い時間スパンから文明社会の諸問題を考えるようにしたいものです。

 

 われわれホモサピエンスの最大の責任は、あらゆる動植物の運命を左右する地球の環境保全に尽きるのではないでしょうか。 

                                       終わり

 

「仕事人のための接待学」 高井伸夫

第10回 節度知り気後れなく

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年6月14日掲載

 

 日産自動車が行った「仕事上での接待を辞退する」などの「接待禁止」宣伝に対して、ソニーの大賀典雄会長(当時)やトヨタ自動車の奥田碩社長(当時)は「続ける」と言明している。

 大賀会長は「企業としては、景気に水をかけて冷やすような行為の決定は、厳禁だと思っています」(雑誌『財界』1998年5月19日号)。また奥田社長は「日本の慣習として必要不可欠で、トヨタとして全廃する考えはない」(日本経済新聞1998年5月21日付)と述べたという。

 すべての接待を拒否することは、人間が社会的動物である、すなわち意思疎通、心の交流を図って生きる存在であることを看過した見解であり、手厳しいシッペ返しを受けるだろう。

 これについては「経費削減なら分かる。接待はすべて後ろめたいとなると過剰反応ではないか。接待で疑似的な仲間関係を作るのは欧米でも同じ。要は節度、規律の問題だ」(日本経済新聞1998年5月21日付「春秋」欄)という指摘もあった。もとより妥当な評論であろう。

 節度といえば、民・官の贈収賄などと同様、民・民にも涜職(とくしょく)罪があることは、ほとんど知られていない。

 商法第493条(現・会社法第967条)は、取締役等が職務に関し不正の請託を受け財産上の利益を収受・要求・約束したときは5年以下の懲役または5百万円以下の罰金(1項)、利益の供与・申し込み・約束を為した側の者は懲役3年以下の懲役または3百万円以下の罰金(2項)に処せられる旨規定している。

 この条文は現在、事実上死文化している。だが、競争の時代となり、ルールの適用が日々厳格になるにつれて、この条文が生命力を持つ時代が間もなくやってくるだろう。接待がこれに該当するとされる時代も見込まなければならない。

 さて、「接待は社会性を持つ」と言ったが、そのことを学ぶに好適な書物がある。西川恵氏著『エリゼ宮の食卓』(新潮社刊)である。

 社会主義者であったミッテラン前フランス大統領がいかにその「饗宴(きょうえん)と美食外交」を尊び、実践してきたかを活写し、同大統領の教養とフランス文化を体現する行為として接待が行われていることを語っている。

 接待を否定することは、教養の披露と文化の交流を否定することにもなる。接待は、その意図を昇華せしめる人間性を必要とするという大前提で、気後れなく取り組めば、何の恐れを持つ必要もない。(終)

 

※編注:2019年3月現在の事情に合わせ、一部加筆いたしました。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第3回】社長の最大の仕事は「方向性を示す」こと(1993年7月22日)

 

 哲学者ニーチェが語った様々な原理原則の中で、私の記憶に残っているのはたった1つ。「偉大とは方向性を指示することなり」。日本の政治家も経済人も方向性が示せないわけだ。だから偉大な政治家も経済人もいない。

 経営者の最大かつ重要な仕事は、ビジョン・方向性を明示することだ。

 今はことさらに経営力が問われる時代になった。このとき重要なことは明確な方向性を打ち出すことである。ビジョンを提示しないといけない。ビジョンとは「お金の落ちているところ」を指し示すことである。

 経営者自身が、絶えず新商品、新事業、新拠点づくりに関心を持ちつづけ、絶えざるチャレンジ精神をもって取り組むこと。拡大拡張を意識しないといけない。今の委縮経営の中でこそ、自社がどのような方向に進むのかをきちっと語らなければならない。ビジョンを明確にし、方向性を明示する企業が伸びていく。

 2番目に大事なことは、頭で考えるだけでなく、明文化すること。これが非常に大切だ。

 3番目には、方向性を明示するだけでなく、迅速にこれを実現しなければならない。変化とスピードの時代には、実現していくことにこそ価値がある。

 課題は「お金の落ちているところ」を発見できる嗅覚があるかどうかにかかる。市場の発見、商品の創造、人材の見定めができる経営者が勝ち残る。

 

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<働き方改革> 第5回 トランスコスモス株式会社

 

一時、私が体調を崩していたため、連載を休止しておりました連載「働き方改革」ですが、今年からまた再開することと致しました。

再開第一回目に取り上げさせていただくのは、トランスコスモス株式会社様です。

トランスコスモスは本社を東京に構えていますが、大阪本部、名古屋・和歌山・福岡・京都等の支社の他、米シリコンバレーにも支店があり、その社員数は約5万3千人にものぼります。このような大きな会社で、「働き方改革」を推進するためには、どのようなことを行っているのでしょうか。

執行役員 人事本部担当 兼 サービス推進本部人材マネジメント統括部担当 名倉英紀様と人事本部 企画推進部 HR推進部 課長代理の中村彩香様にお話を伺いました。

 

1 意識の共有

トランスコスモスは社員国内約3万5千人の大規模企業であるにもかかわらず、今回の取材で伺ったお話からは、足並みを揃えて働き方改革に取り組まれている様子が窺われました。

これまで別個に行ってきた取り組みを、「働き方改革」という大きなプロジェクトとして一つにまとめ、各々の取組の進捗状況を管理しながら、特に法にかかわってくるものについては人事部主導で促していく、という形態で現在、働き方改革を推進しているとのことです。

会社HPにも働き方改革のページを作成するなど、全社を挙げて働き方改革に取り組んでいることを明瞭にしていることも、良い効果をもたらしているのでしょう。対外的なアピールのみならず、社員に意識改革を促し、働き改革による新制度を利用しやすい環境になっているのだと思います。

 

2 長時間労働の削減

今回の取材でまず印象に残ったのは、労働時間の削減です。

従来100時間を超すことも珍しくなかったという残業時間が、バックアップ体制や日々の管理、長時間の残業が生じた際の役員面談、産業医面談の義務付け、さらには残業が連続した場合は評価へ反映など、徹底した管理や成果主義を採用したことにより、現在は平均して1か月20時間程度になったとのことで、目に見えて成果が出ていることが分かります。

また、上から残業を減らすように指示するだけでは、現場はサービス残業などで対応し、実質的な解決にならないということから、説明会を開き、社員に直接働きかけを行ったそうです。

その他にも、3S運動(※1)のような改善運動を行ったり、コンテスト形式で年間300人以上の優秀な従業員を表彰したりするなど、徹底して業務を改善して、生産性を向上することに務めました。

また、タイムカードのみならずパソコンのログイン・ログアウトの記録、入館・退館記録のチェックなどを通して、毎月厳しく労働時間を管理しているそうです。

 

3 ダイバーシティー

(1)女性活躍推進

トランスコスモスは、IT企業としては珍しく、スタート時は9割以上の社員が女性だったそうで、現在でも正社員の4割、契約社員の8割を女性が占めています。

しかし、以前は、女性の役員が数人いたところ、その後、人数が減少したため、9年前から管理職に占める女性の割合を増やすことを目標として「女性活躍推進プロジェクト」を立ち上げ、現副社長がオーナーとなって、積極的に女性活躍に関する様々な施策に取り組んできたそうです。その結果、管理職に占める女性の割合は、現在は20%近くまで増えてきました。

施策の内容の一部としては、管理職となることに二の足を踏みがちな女性の背中を押し、キャリアアップを促すために、選抜されて全国各本部から集められた優秀な女性社員を対象として、社内研修「キャリアバリュー」では次々世代のマネジメント層にあたる女性社員の育成を行い、「キャリアベーシック」では次々世代のマネジメント層にあたる女性社員の育成と管理職候補の女性向けの研修を行っているとのことです。いずれも、「上を目指すためにはどういったことをしなくてはいけないか」を常に考えて行動することを意識づけるための研修が行われているそうです。

また、女性が働きやすい環境を作る施策の一環として、産休・育休の復帰に当たってのサポートや休暇中のコミュニケーション、児童が小学校3年生修了まで時短勤務を認める等の措置をとり、その結果として、毎年、産休・育休をとる社員が150名程度いる中で、休暇後の復職率は96%を誇ります。現在は、育児のために退職してしまうことを防ぐために、在宅勤務をトライアル的に導入しているとのことです。

こういった取組みが認められ、トランスコスモスは、厚生労働大臣による、「えるぼし認定」(※2) や「くるみん認定」 (※3)など、多くの認定を受けています。

 

(2)外国人労働者の受け入れ

現在、トランスコスモスには、外国籍を有して日本で働いている従業員が300名程度いるそうで、その数は今後も増え続ける見込みです。

毎年、韓国・中国・ベトナムから新卒で10名~15名程度をコンスタントに採用しているのみならず、インターシップの受け入れも積極的に行っているそうです。

他企業でもこれから増えるであろう外国人労働者の採用に向けて留意点を伺ったところ、「相手の文化を尊重すること」というシンプルでありながら真摯な回答をいただきました。また、当然、言葉の問題があるので日本語の勉強会を開催するなど、コミュニケーションをきちんととることも大事にしているそうです。家族を伴って来日している場合、家族へのサポートやケアも検討するなど、慣れない土地で働く労働者に対し、心身ともに手厚い配慮をしています。

 

3 コラボヘルス

トランスコスモスでは、社員の健康管理を推進することができるよう、けんぽ組合と人事が連携を取るよう努めています。今年1月からは、より、けんぽと人事の垣根をとって効率性を高めるために、人事の健康推進課のメンバーを兼務出向という形でけんぽに送っているそうです。

また、産業医・保健師・臨床心理士のチーム化を図り、より有機的に機能するよう整備する予定とのことです。

最終的には、社員に健康診断の受診を促すのみならず、診断結果の分析など受けた後のフォローをワンストップで行うことで、社員一人一人に対する健康をケアし、更にそれができるようになったら、より予防的な施策を一緒になって行うことを目指しています。

 

4 まとめ

実は、今回の取材にトランスコスモスにお邪魔した際に、早くに到着してしまったので、エントランス横のソファをお借りし、10分程度座っていました。

そこで、社員の方たちが出入りをする様子を眺めていたのですが、皆さんの表情の明るさや華やいだ様子が非常に印象に残りました。

今回伺ったお話しからも分かるとおり、トランスコスモスでは、社員が安心して働くことができる空気がまずあり、それに基づいて作られた制度・環境が整っているのでしょう。

また、トランスコスモスでは、女性や外国人など、幅広い人材を積極的に受け入れているように見受けられました。日本経済向上のためには、多様な労働力の確保が必要不可欠ですから、トランスコスモスの受け入れの姿勢や取り組みには大いに学ぶべきところがあると思います。

 

(※1)…職場環境の維持改善で用いられるスローガン。3Sは、整理、整頓、清掃の頭文字。

(※2)…一般事業主行動計画の策定、届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる。

(※3)…次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動契約を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けることができる。

 

以上

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