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2023年2月10日
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「明るい高齢者雇用」

第36回 新しいものを拒否―衰える心身機能:再教育が不可欠に

(「週刊 労働新聞」第2182号・1997年12月22日掲載)

 

 高齢者に意欲を持たせるということは、新しいものに対する理解に努める姿勢を堅持させることであるが、さらには、あることを成し遂げたという達成感を与えることで意欲の衰退を防ぎ、それを保持させることにもつながろう。それには教育というものが必要だし、これが自己啓発を刺激していく。さらに本人の好きなものの領域、即ち指向性のある領域で活躍させるのが、意欲を継続させる方途となる。「好きこそ物の上手」という言葉もある。彼が好まない、あるいは嫌悪する領域で仕事をさせても意欲が沸くはずがないのである。もちろん、中年までの職場生活で意欲が沸かないような仕事ぶりや、達成感が不足するような仕事を長年続けて、突然、高齢になってから教育を始めても成果は期待できない。何事も先を見通すことが必要である。

 労働科学研究所から出版されている「年齢と機能」という書物の中に高齢者の行動特性について興味深い箇所がある。参考となるので少々長いが引用してみる。

 「…いままでに報告されている心理的諸機能の経年変化を見ると、心理的機能によっても違うが、ある年齢にあると衰退を示すが、経験の価値感覚は…年齢とともに広がりを増し、多様化するはずである。ところが高齢者には何をしても『満足しない』『喜びを感じない』『過去の生活だけを回想し、懐かしむ』『自分の考えだけを頑として守り押し通す』というようなことがしばしば観察されるが、これは価値属性の感覚の不毛を意味する。行動の価値属性の感覚がなければ、個人の過去の基準が少しも動かないこととなる。そのことが『過去の回想』『頑固』となって現れる。高齢者は若年層に比べて成長発達の長さにおいて一歩先んじているのであるから、経験を豊かにする条件において勝っているはずである。しかしもう1つの条件である全生活状況の範囲の広さと多様性において、個人的あるいは社会的に極めて大きな制約を受けている。例えば生理的機能において高齢者は著しく衰退を示すため、活動範囲が限定されるとか、定年制などによってやむなく職を離れなければならないといった制約が、経験の価値感覚の増加を止め、価値感覚の基準を固定化している。…」(森清善行『中高年者の心理的機能―その問題点』労働科学叢書66「年齢と機能」66-74頁)。

 人間は、外界に働きかけを行い、その結果として得られる情報を、意味を持つつながりを付けて記憶などのネットワークの中に保持し、生きた情報にするといわれている。このネットワークから得た情報を基に、常に更新された認知構造を持って外界を認識し、再び働きかけを行っているという。この基ともなる視覚や聴覚機能や記憶機能などの加齢に伴う低下は、外界からの新たな情報の受け入れとその情報の保持を難しくする。これは新しく変わる認知構造の幅を小さくさせることにつながる。その結果、すでに獲得されている経験からの情報に依存して、物事に退所しようとする行動をとりがちになるのである。従って、いかにして新たな認知構造を付与していくかということが高齢者を巡る教育の視点となろう。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第38回>企業には「ターゲット・セッター」が必要だ(1997年6月25日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 上海に法律事務所を設立する申請書を上海市政府に提出するにあたり、日本企業20社ほどの推薦状が必要になったため、先日ソニー副社長の橋本綱夫さんにお会いしお願いした。

 ソニーの業績を訊ねると、橋本さんは「うちはターゲット・セッターに恵まれていますから」とおっしゃった。ターゲットとは経営目標のこと。セッターとはバレーボールのセッターと同じで、様々な条件の中で、得点をあげるためにボールを誰に打たせるかを瞬時に決定する人。

 橋本さんは、アタッカーやポイントゲッターに恵まれている、とは言わず、ターゲット・セッターに恵まれているとおっしゃった。私は目からウロコが落ちる思いだった。

 企業にターゲット・セッターがいないところはダメである。年間のターゲットを定めても、厳しい変化に対応するために目標を微調整する人が重要になる。橋本さんはまさに人事と人材の時代にふさわしい話をして下さった。

 原則倒産の時代の中で生き残るためには、同業他社の客を奪い取っていかなければならない。共存共栄の思想はない。「打倒、同業他社であれ」という話は社長フォーラムで繰り返ししているが、ターゲット・セッターとは、同業他社をつぶす戦術を展開する人でもある。

 今回はこれに加えてドメインの話をする。ドメインとはビジョンとフィロソフィーを合体させて自社の事業領域を確定すること。ビジョンと経営哲学を持っていても、限られた時間と戦力でライバルを倒すためには、ドメインの決定が非常に大事になる。事業領域の確定が経営体として今一番肝要なことである。

 規制業種には、ビジョンの発見、フィロソフィーの設定、ドメインの決定をする必要がなかった。こういうところでは事業家センスが要求されないだけに、競争社会でなくなる。当然、競争原理は否定され、優秀な人材が出たら殺されてさえしまう。

 いま企業としての事業領域、ドメインの決定が極めて大切な時代になっている。自社のセールス分野を確定しないでライバルとの戦いを乗り切ることはできない。

 今日のライバルだけではない。明日のライバル、明後日のライバルを絶えず意識して今日のライバルを潰さなければいけない。企業の安定地帯はもうなくなった。今日のライバルだけを意識してやっていると、社員はそれを倒したあと、次のライバルを倒す目標を見失い意欲さえ削がれる。今日のライバルと戦いながら、明日、明後日のライバルを社員に意識させるのが経営者である。

「明るい高齢者雇用」

第35回 ワン・モア精神で―衰える心身機能:新たな刺激も不可欠

(「週刊 労働新聞」第2181号・1997年12月15日掲載)

 

 前回の最後に前原氏の持論を紹介した。氏は「中高年者には成人病はつきものである。こんな時期こそ中高年世代が仕事と生活の在り方を『せっかく論』で振返るのもよいではないか」と、中高年の健康作りは近視眼的にことを運ばずに、「『人間らしい職場づくり』を先読みした中で焦らずに」と述べている。

「せっかく高齢者になったんだから以前より余裕のある生き方を」と観念することによって、自らの心身機能を含めて事態を正確・冷静に把握することができ、仕事や生活のバランスや残りの人生設計を考え直すことで、高齢者は明るさを取り戻せるのである。

 さて、高齢者の意欲の問題もまた重要な課題である。高齢者には好奇心の減退、意欲の喪失等が伴うことも広く知られているが、意欲を持ち続けること、新しい刺激に向かっていくこともまた、明るい高齢者雇用の実現にとって必要不可欠な要素となろう。それは人間の資質の問題とも絡んでいるであろうが、本人の「気の持ち様」ということにもなる。その気の持ち様は若年・中年の時代から指向性によっているということである。ワン・モア精神、もう1つ深く、広く極めるという姿勢が若年・中年において継続されるならば、高齢者となってもその指向性は幾らか微弱になろうとも、なお健在であろう。若年の時代、中年の時代からの生き方・仕事への取り組み方が高齢になってからの意欲・態度を左右するということになる。もちろん、若年から中年にかけての仕事の場面での「意欲の持たせ方」の工夫も大事である。意欲あるところに初めて、能力の向上が見られるといってよい。

われわれが受ける視力や調節機能(ピント合わせの機能)などの眼の検査でも、「標識をよく見て下さい」という言葉に励まされて見れば、その標識を識別できることがあるのも、意欲や意思などの精神機能と眼の機能との間にお互いに関係があることを示す一例である。意欲が無ければ機能の減退あるのみといっても決して言い過ぎでないのかもしれない。

この意欲もまた昨日の1つであるから、その機能の活用に心することは機能の維持につながると言ってよい。機能は使わなければ低下する一方であるからである。人には「物事に対して最少の努力で済ませよう」という面があるが、高齢者ではこれに加え、加齢による記憶力などの衰えから周りの環境の変化に応じて自らの認知の構造を変えづらくする、という面が特徴となってくる。すべてのことを現有の認知構造の範囲内で処理しようとする傾向が強くなり、新たな能力を開発しようとする努力が減少してくる。使わない昨日の低下は増す一方で、残っている機能はしばしば使われることにより活性化される。それが、新しいことは覚えようとしない、いつも同じ行動をとるなど、高齢者特有の行動パターンとなって現われてくるのである。

 そこで、若いうちからの教育はもちろん大切だが、高齢者にも教育を進めることが必要であるという考えが出てくる。次回は、この教育の問題について高齢者の行動特性から考えてみたい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<コラム>社長の接待学 その1・その2

 

社長の接待学(その1)~接待も成果主義で~

 私は、接待は大いにやりなさいと言っている。いまこそ接待が効果を発揮する時代だ。

 接待も成果主義でやらないといけない。つまり、話がまとまったときに接待する。まとまる前だと食い逃げされる恐れがある。これは私の実感だ。だから「この話がまとまったらパッとやりましょう」と堂々と言うわけだ。そうすると、まとまらない話もまとまる可能性が少し出てくる。少なくとも結論が早くなることだけは確かだ。

 

社長の接待学(その2)~「残心」の演出~

 接待は終わりが大切だ。まずお見送り。営業が成功するコツはエレベーターの前まで送ること。もっと熱心な社長は1階までついていき、車が見えなくなるまで頭を下げる。

 そして別れ際に「またこういう機会があればいいですね」と必ず言うこと。一度きりではなく、2度3度あり得ると思わせる。そして翌日、必ずお礼状を出す。

 これは「残心」の世界の極地だ。こういうことは社員にもしっかり教えないといけない。

「明るい高齢者雇用」

第34回 中年自殺が増加へ―衰える心身機能:“心”の問題重要に

(「週刊 労働新聞」第2180号・1997年12月8日掲載)

 

 高齢になれば誰しも人間としての機能が低下する。明るい高齢者雇用の実現には、この事実を受容し、前提としてかからなければならない。60歳の定年を境にガタッと落ち込む人がいる一方で、第2の職場でかくしゃくとして働く人も多い。そこで、今回からは労働科学の側面からこれらの心身の様子を検討し、明るい高齢者雇用のあり方をまずは「心身」という大きな枠組みの中で分析してみよう。

 まず第1に指摘しなければならないのは、「精神」の機能も「体」以上にバラエティーに富むという事実である。つまり、精神機能は高齢になっても十分な機能を保っている面もあり、50歳代まで発達し続け、60歳位までは30歳以前よりも水準が高いものも出てくる。精神的といっても数多くの機能があり、単純に同じ様に加齢に伴い低下するとは言えないのである。高齢者は機械的な暗記には弱いが、意味を持った事柄の記憶はさほど悪くないという実験結果も出ている。

 また、高齢者に対する記憶のさせ方も、自分にあったスピードで覚える場合には若者との成績の違いは少なくなってくる。高齢者の記憶実験の成績などがかなり異なってきたり、精神機能が単純には衰えていないという結果が出るのは、覚える内容や覚え方の違い、練習の効果による差であるとされている。これらが高齢者の個人差に他ならないのである。

 この個人差はまさに20歳・30歳からの心構え、即ち「精神」にみずみずしさを涵養することへの努力があったかどうかによって顕れる

 次に「心」の問題の極端な例である精神疾患や自殺の例で、精神的不健康の実態を見てみる。警察庁が最近発表した自殺統計では、50歳代の割合が90年代に入り徐々に増加しており、また、管理者の割合の伸びが著しくなっている。一方、都内の金融機関の調査では、精神疾患と診断される例が中間管理職に多く、とりわけ最近では30歳代の男性に目立つと報告されている。「体」以上にばらつきがある「心」の問題は、今後の高齢者雇用問題に大きく投影する。

 さて、「せっかく高齢者になったのだから」というコンセプトでなければならないと提言しているのは、(財)労働科学研究所労働生理心理研究部主任研究員・前原直樹氏である。労働科学研究所は、工場やオフィスなど産業現場の労働に関する実証的な調査研究を行い、作業方法、職場環境や労働生活の改善に役立てることを目的に活動している文部省所管の民間研究所である。その研究方法は、医学、心理学、工学、社会科学などにまたがる学術的なアプローチを基に、現場の問題解決に有効な科学的で現実的な対策を提言するというユニークな特色をもっている。1996年の『労働の科学・51巻・7号』で前原氏は「せっかく中年というハンディを背負ったんだから」という巻頭言を書いているが、そこでは「21世紀はハンディを持ちながら働き続ける人が増える時代であり、その中心は体力が衰えた中高年であることは間違いない。」だからこそ「体力の衰えを経験と知性で補うことが必要だ」と述べている。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第37回>絶対的な評価基準はない~社長の主観を明確にする以外にない~(1997年5月21日)

 

 人事と人件費の問題にメスを入れる時に、いつも遭遇するのは評価の問題だ。経営者は、いかに正しく評価するかを考え、それを見直し続ける努力を惜しまないこと。それが企業の発展と共に、浮揚感、上昇感を与えることにもつながる。評価の問題が一番難しいのだ。

 足腰の時代はスピードで評価できた。手先の時代はスピードと手際の良さ、即ち品質で評価できた。商業・サービス業の口先の時代は売上げという数字で決着がついた。

 ところがソフト化の時代となると非常に評価が難しい。評価する人の感じ方、考え方、思い方によって評価が左右されるからだ。

 主観で評価するためには八方美人ではダメ。経営者の個性によって評価されるということを社内に浸透させること。そして主観性を明確にすることだ。モノサシをはっきりさせて評価基準を社内に透徹する。社長がモノサシを明確に定めること。それを明確に語り続けること。

 年功序列給は年を重ねるごとに雪ダルマ方式に賃金が増えるシステム。一方、年俸制は下がる人もあれば上がる人もいるという世界を作ることである。各人が成果を上げ、そして企業の業績が上がれば給料も上がるというシステムだ。

 ただし年俸制は評価基準の明確化が一層求められる。ソフト化の時代になったがゆえに、管理職の評価基準が非常に難しい。社長は、企業のソフト化の要請に応じた管理職のマネージメント力を判定する数値的なモノサシを持たなければならない。モノサシを明確にし、それがなぜわが社に必要かを語らなければならない。

 

「明るい高齢者雇用」

第33回 5タイプから選択―60歳代の職業生活:自分自身に答え聴け

(「週刊 労働新聞」第2179号・1997年12月1日掲載)

 

 今回は「ライフスタイル選好型」の実例を紹介するべく、まずは教師となって憧れを実現した丁氏について語っていこう。大学の先生の定年は極めて遅い。即ち70歳を定年とする大学が今もってたくさんある。丁氏はある東京の、短大から大学に昇格した大学に国際経済の専攻の教授としてスカウトされた。本人は、自ら今もって一番幸せな人と言っているが、それは若くして就職した企業において決して恵まれなかった人生であったからである。スポットライトが当たらなかった人物が今、若い女性に取り囲まれて、生き生きと仕事をしているのである。当人も極めて前向きであったことがこのような喜びを与えていると言ってよい。例えば大学教授に転職するに当たって、休暇を取りアメリカに短期自主留学をし、レポートを作成し、また抗議プランをまとめ上げたという人物である。即ち自費で留学までして、次の仕事に備えたのである。

 (ホ)長期就業型

 何の仕事であれ、長期に仕事を持ちたいという願望を実現するタイプである。これは、家庭の事情により働き続けなければならないとか、あるいは働くこと自体が趣味であるといった人物によくあるケースである。

 以上、ここまで高齢者雇用のタイプを5つに分けて見てきたが、これらのチャレンジ型、エキスパート型、リカバリーショット型、ライフスタイル選好型、長期就業型のどれに自分を当てはめていくかを40歳代の後半から見極めることが肝要だということである。つまり、高齢者になる前から一体自分はどこに値打ちがあり、またどんな生き方を望むかを自分自身に良く問い、自分自身の答えを聴き続けることが必要なのである。

 これまでの総括として、海外生活の期間が長かった戊氏に登場してもらおう。イギリスのロンドンにある日本のセカンダリースクールの舎監に就任した戊氏は、子供から慕われるというまさに若々しい世界で活躍している。それも本人が望んで赴いたということである。まさに若返るには若い人と接触することが必要であるが、学校の舎監というのはそれにうってつけの仕事であり、そして子供たちに慕われているとなれば、なおさら幸せな第2の人生が保障されているということである。

 チャップリンは、老後を過ごすための条件として、「好奇心」と「健康」と「すこしばかりのお金」を挙げたが、戊氏は若者に対応できるに足る若さをなお保持していることが成功の因となった。

 さて、明るい高齢者雇用にとって、何よりも健康であることが大切であることはいうまでもない。次回からは、高齢者の就業に影響を及ぼす精神的、肉体的な健康の意味について、労働科学の視点から分析してみたいと考えている。高齢になったからといって、一概に身体の機能が衰えるというものでもないだろうし、経験の蓄積によってむしろ向上する能力もあるのではないか。個人差も大きく、気持ちのあり様、日頃の行動スタンスによっても異なるだろう。心身共に若さを保ち、生き生きと働き続ける「秘訣」を、労働科学の専門家の分析に基づき述べてみたい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第36回>これからは「人事と人件費」の時代 「抜擢と淘汰」の時代(1997年3月19日)

 

 これからの最大の経営課題は「人事と人件費」である。事業計画も人事問題に焦点を合わせたものでなければ意味がない。

 人事の本質は、優秀な者を引き立て、かつ無能な者を辞めさせることだ。引き立てる方は誰でもできる。ところが日本にはダメな者を辞めさせる仕組みがない。だから自社でつくるしかない。

 人件費の課題は、端的に言えば生きたお金を使えということ。つまり成果のあがらない者には報酬を払わないことである。

 要するに、実力主義・成果主義の時代に生き残るために、コア(核)になる人材の確保をいかに進めるかということだ。同業他社から引き抜かれそうな人間を何人抱えているか。社員100人ならば2人、いや3人は欲しい。社内で価値があるだけでなく、業界で価値ある人材を確保するのが人材・人事の時代ということである。

 そしてさらに、淘汰をすすめる人事でなくてはならない。そしてそれが企業の浮揚感、社員の上昇感とを実現できることが企業のコンセプトとなるから、人員削減や人件費削減も、この浮揚感、上昇感を与える手続きとして理解しないと本末転倒になる。

 今は水増しで10人のうち4~5人が管理職になっている。これを2人まで落とす。そのプロセスが人材含み損清算の手続きである。

 もうひとつは組織のフラット化だ。社長から平社員まで4段階以内にする、というLess Than Fourの思想を日本でも取り入れること。これはソフト化時代に対応してのこと。ソフト化時代には頭脳労働がメインとなり、知恵、情感、意思、といったものが価値ある時代になる。

 頭脳は個々の能力格差が大きい。その差の大きさは意欲によって決定的に左右されるため、自由、フレキシビリティのある世界が必要である。

 規模の小さい中堅・中小企業はもともと階層化されていないところが多いから、人材さえ確保されればフラット化できる。組織の複雑な大企業より迅速に対応できる利点がある。企業には人は少なくていい。3人分の仕事をしてくれる人に切り替えていくことが今後の課題だ。

 

「明るい高齢者雇用」

第32回 失敗体験をバネに―60歳代の職業生活:”裏キャリ”も駆使

(「週刊 労働新聞」第2178号・1997年11月24日掲載)

 

 前回に引き続いて、高齢者の雇用のタイプを、その実例をもとに考えていきたい。今回は高齢になって花開くケースと、人生における夢を実現するケースを紹介する。

 (ハ)リカバリーショット型

 30年、40年の職業人としての人生において、挫折感を味わうこと一再ならずという人物が、思いがけず高齢者雇用の場において花咲き、実らせるということもある。まさに明るい高齢者雇用を実現するのである。それには、裏のキャリアとか失敗体験をバネに、第2の仕事人生を切り拓くという状況で構築される場合が多い。そこでは、新分野が大方であるので、出向経験があるとか、あるいは彼が専門としてきた仕事以外の脇の仕事に従事したことがあるとかいった裏のキャリア、即ち本筋の経験でないものを駆使して仕事をする、生きる、ケースが多い。限界体験・失敗といった苦しい思いをしたことが、この時初めて生きてくるケースも極めて多い。

 人生後半労働で三段跳びした丙氏について述べよう。丙氏は繊維の仕事を長年務めていたものであるが、子会社に移った時に、人員整理という限界体験をした。そこで初めて総務部の仕事を学んだのである。さらに、畑違いの電気メーカーの総務を任され、そして日本を代表するある大きな会計事務所に移って、総務部長に就任したのである。人生後半労働の三段跳び、スリークッションであった。即ち人員整理を実行し、またそのことにより関連会社の総務部に勤め、最終的には会計事務所に勤めることになったのである。それは、1つには先に述べた通り限界体験をしたということであるが、実は人柄に優れていたということである。明るい高齢者雇用を実現する本人の資質として、能力・意欲・人柄が必要である。能力が要求されることは言うまでもないことであるが、意欲が求められるのは、まさに求めてこそ与えられる世界であるからである。そしてなぜ人柄が必要かといえば、「年下の者と仲間になる」ことが、高齢者雇用における明るさを発揮する第一の要素と言ってよいからである。もちろん、能力・意欲・人柄が共に前向きな存在であることが問われるが、とりわけ人柄には前向きな明るさが大切だということである。

 三段跳びのリカバリーもまさに本人の人柄のよさの賜物であった。

 (ニ)ライフスタイル選好型

 自分の個性や特技との適合、または独自のライフスタイルの選択といった視点から雇用の場を見つけて、明るい高齢者雇用を実現しているグループもある。個性を生かす・特技を生かす・趣味を生かす・信条人生観を尊ぶ、といった世界にライフスタイル型がある。要するに「自分に生きる」ということである。例えば教師になりたいと少年時代から数十年夢見てきたところ、高齢になって初めて、教師の場が与えられ活躍する、まさに仕事に励むということを初めて体験・体感することになったのは、その事例であろう。人生における憧れを実現し得たというライフスタイル型として、まさに充実した明るい高齢者雇用となるのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

第35回>オンリーワン企業を目指せ(1997年2月26日)

 

 経営に求められるのは「緻密さ」「勇気(勇敢さ)」そして「スピード」である。

 本物の経営者は今日のことだけ考えていてはいけない。今日のことを考えるのは部下にもできる。経営者は先のことを絶えず考える姿勢でいるべきである。そのためには時間に余裕を持つこと。職場から離れて勉強する場と時間を持つことだ。

 真の経営者とは、常に将来を見据え、事業構造の変革を絶えず考え、実行していかなければならない。

 今、中途半端な半死半生の企業が山のようにある。決して伸びているとはいえない企業ばかりである。「なるほど、伸びているな」と思えるのは東京でも数えるほどしかない。大阪ではさらに少ない。あとは皆、半健康体、半病人体で、健康体の企業はほとんどないのが現状だ。

 5年経ったら現在の企業の2分の1はなくなるだろう。10年経てば8割はなくなると考えて間違いないだろう。そこで生き残るためにはオンリーワン企業を目指すことだ。

 5~6年前に「最初に潰れない企業になるには」という話をし、その次に「最後に潰れる企業になるには」という話をしたが、これからは「オンリーワン」が新しいキーワードである。最後まで潰れないためには、たった1つしかない企業を目指すことだ。

 アメリカではあらゆるものがランクづけされているが、日本でもこれからはランキングの時代を意識しなければならない。どんな小さな世界でもいいからトップになることだ。トップになれば生き残れる。

 

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